46 / 85
世界終わろう委員会
星石
しおりを挟む
星々が流れる。
だけど、流れるどの星々も僕達の本当の願いを叶えてはくれないのだろう。
尾張さんは、願い事を呟く。
ただ、自分の事を忘れるようにと。
僕は、何も言えなかった。言葉が見つからなかった。
忘れたくない。離れたくない。僕の気持ちを無視したそんな願いをしないでほしい。そんなグチャグチャな感情をただぶつけるだけなら今の僕にもできただろう。
だけど、僕のことを本気で思ってくれている女の子にそれを言えるほど僕はまだ理性を捨て切ることは出来なかった。
寂しそうな彼女の顔を見ることができず、空を見上げる。
一筋の流星が流れる。
それは、彼女の願いを聞き届けるように長く長く空を切り裂いた。
そして、その星は僕達の目の前に落ちた。
咄嗟に尾張さんの二の腕を掴んで引き寄せる。
その衝撃は、地面を揺らしたように錯覚させた。
「はっ・・・・・・? うそでしょ?」
泥のはねた顔を手で拭う。
「尾張さん大丈夫ですか⁉︎ 怪我とかしてないですか?」
「怪我なんかするはずないでしょう。私もう死んでるんだから。痛っ⁉︎」
尾張さんは、右手で頭を押さえる。
「尾張さん⁉︎ 頭怪我したんですか!」
「・・・・・・いえ、大丈夫よ」
尾張さんは、ボーッとしながら僕を見る。暫くするとその頬には涙が伝いはじめた。
「尾張さん⁉︎ そんなに痛むんですか?」
「・・・・・・違うわ。ちょっと思い出したのよ」
思い出した? って一体何を?
「最低な記憶と、ちょっとだけいい思い出かしらね」
尾張さんは、嫌そうに笑うと言った。
「紀美丹君。私達やっぱり結婚の約束なんてしてないじゃない」
「⁉︎」
どうやら、流星は彼女の願いを叶える代わりに、彼女の記憶を戻したようだった。
「思い出したんですか⁉︎・・・・・・僕の事も?」
「思い出したわ。全部。どうやら紀美丹君にはおしおきが必要のようね?」
尾張さんはニッコリと笑うと、そう言った。
「なんでですか⁉︎ 僕が一体何をしたっていうんですか‼︎」
「自分の胸に手を当てて考えてみなさい。記憶のない私にある事ない事吹き込んだり、するなって言った絡み方してきたり、好き放題しすぎよ」
どうやら、余計なことまで思い出してしまっているようだ。
「いや、違うんです! あれはよかれと思って! 悪気は全くなかったんです!」
「えぇ、そうね。きっと、あったのはそうなればいいなぁっていう願望と下心くらいでしょうね」
尾張さんは、ジト目でこちらを見ながらスカートについた泥を払う。
「だから、今ここで言いなさい」
「え?」
尾張さんは頬を染めながら、
「だから!・・・・・・あなたの気持ちを」
「さっき私のことは忘れなさいって言ってませんでした?」
尾張さんは、ぐっと喉を鳴らすと、
「無効よ」
とボソリと言った。
「えぇ・・・・・・。僕のこのグチャグチャな感情はどうしたらいいんですか?」
「仕方ないじゃない。さっきまでは紀美丹君の事は恩人くらいにしか思ってなかったんだから」
そういうものだろうか。
「恋なんてそんな勝手なものよ」
そっぽを向きながら、そう呟く彼女に苦笑いしながら、さてどうしようかと考える。
そして、あの言葉を言うことに決めた。その言葉がきっと今、この瞬間に最も適した言葉だと思うから。
彼女の目を真っ直ぐに見つめる。
「好きです」
初め、尾張さんはびっくりしたような顔をして何か言いたそうにパクパクと金魚のように口を動かしていた。
その後、一度深呼吸すると泣き笑いのような表情で言った。
「死んでも君に恋してました」
普通に恥ずかしかった。そして、何故か無性に泣きたくなった。
だけど、流れるどの星々も僕達の本当の願いを叶えてはくれないのだろう。
尾張さんは、願い事を呟く。
ただ、自分の事を忘れるようにと。
僕は、何も言えなかった。言葉が見つからなかった。
忘れたくない。離れたくない。僕の気持ちを無視したそんな願いをしないでほしい。そんなグチャグチャな感情をただぶつけるだけなら今の僕にもできただろう。
だけど、僕のことを本気で思ってくれている女の子にそれを言えるほど僕はまだ理性を捨て切ることは出来なかった。
寂しそうな彼女の顔を見ることができず、空を見上げる。
一筋の流星が流れる。
それは、彼女の願いを聞き届けるように長く長く空を切り裂いた。
そして、その星は僕達の目の前に落ちた。
咄嗟に尾張さんの二の腕を掴んで引き寄せる。
その衝撃は、地面を揺らしたように錯覚させた。
「はっ・・・・・・? うそでしょ?」
泥のはねた顔を手で拭う。
「尾張さん大丈夫ですか⁉︎ 怪我とかしてないですか?」
「怪我なんかするはずないでしょう。私もう死んでるんだから。痛っ⁉︎」
尾張さんは、右手で頭を押さえる。
「尾張さん⁉︎ 頭怪我したんですか!」
「・・・・・・いえ、大丈夫よ」
尾張さんは、ボーッとしながら僕を見る。暫くするとその頬には涙が伝いはじめた。
「尾張さん⁉︎ そんなに痛むんですか?」
「・・・・・・違うわ。ちょっと思い出したのよ」
思い出した? って一体何を?
「最低な記憶と、ちょっとだけいい思い出かしらね」
尾張さんは、嫌そうに笑うと言った。
「紀美丹君。私達やっぱり結婚の約束なんてしてないじゃない」
「⁉︎」
どうやら、流星は彼女の願いを叶える代わりに、彼女の記憶を戻したようだった。
「思い出したんですか⁉︎・・・・・・僕の事も?」
「思い出したわ。全部。どうやら紀美丹君にはおしおきが必要のようね?」
尾張さんはニッコリと笑うと、そう言った。
「なんでですか⁉︎ 僕が一体何をしたっていうんですか‼︎」
「自分の胸に手を当てて考えてみなさい。記憶のない私にある事ない事吹き込んだり、するなって言った絡み方してきたり、好き放題しすぎよ」
どうやら、余計なことまで思い出してしまっているようだ。
「いや、違うんです! あれはよかれと思って! 悪気は全くなかったんです!」
「えぇ、そうね。きっと、あったのはそうなればいいなぁっていう願望と下心くらいでしょうね」
尾張さんは、ジト目でこちらを見ながらスカートについた泥を払う。
「だから、今ここで言いなさい」
「え?」
尾張さんは頬を染めながら、
「だから!・・・・・・あなたの気持ちを」
「さっき私のことは忘れなさいって言ってませんでした?」
尾張さんは、ぐっと喉を鳴らすと、
「無効よ」
とボソリと言った。
「えぇ・・・・・・。僕のこのグチャグチャな感情はどうしたらいいんですか?」
「仕方ないじゃない。さっきまでは紀美丹君の事は恩人くらいにしか思ってなかったんだから」
そういうものだろうか。
「恋なんてそんな勝手なものよ」
そっぽを向きながら、そう呟く彼女に苦笑いしながら、さてどうしようかと考える。
そして、あの言葉を言うことに決めた。その言葉がきっと今、この瞬間に最も適した言葉だと思うから。
彼女の目を真っ直ぐに見つめる。
「好きです」
初め、尾張さんはびっくりしたような顔をして何か言いたそうにパクパクと金魚のように口を動かしていた。
その後、一度深呼吸すると泣き笑いのような表情で言った。
「死んでも君に恋してました」
普通に恥ずかしかった。そして、何故か無性に泣きたくなった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる