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世界終わろう委員会

手紙

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「殺された?」

 それは、六歳の女の子の口から告げられるには、余りにも凄惨な話だった。

 平日の昼下がり。会社員の父親は仕事に行き彼女の家には、母親と風邪を引いて寝ていた彼女のみがいた。

 そこに、配達業者を名乗る男が一人訪れたそうだ。

 その男は、いきなり母親に襲いかかると、隠し持っていたナイフで母親を刺し殺したのだという。
 
 彼女は、それを扉の影からただ見ていた。
 何度も何度もナイフが彼女の母親を刺し貫く。
 身動きすらしなくなった母親にそれでも執拗に傷跡を増やしていく。
 やがて満足したのか、男は洗面所に入っていくと、シャワーを浴びはじめたという。

 彼女は、その間に家から飛び出し助けを求めた。
 しかし、隣人は仕事で家を空けており、誰もいない。

 結局、1番近い交番に駆け込むのに十分以上かかったそうだ。

 そして、警察官が現場に到着した時には、既に男は居なくなっており、母親の冷たくなった亡骸のみが残されていたという。

「紀美丹君」

「なんですか?」

 尾張さんが渋い顔をしている。

「いきなり過ぎて受け止め切れないわ」

「奇遇ですね。僕もです」

 しかし、の意味はなんとなく理解できた。
 もし幽霊がいるなら、ママも幽霊になっているかもしれない。そういう意図での発言だったのだろう。

「ねぇ、お姉ちゃん! ママに会わなかった? わたしね、ママにお手紙書いたの!」

 尾張さんがさらに渋い顔になった。

「紀美丹君。どうすれば良いのかしら、この場合」

「僕に聞かれても」

 未来ちゃんは、そんな僕たちの様子を見てとると、目を潤ませて、下を向いた。

「・・・・・・ママにお手紙渡したいの」

 尾張さんは、それを見ていられなかったのか、ため息をつくと、

「わかったわ。その手紙を渡しなさい。もし、会えたら渡してあげるから」

 と、しぶしぶと言った様子で右手を差し出す。
 
 未来ちゃんは、パッと顔を輝かせると、肩から下げていたポシェットから、桃色の封筒に入った手紙を出して尾張さんに渡す。

「ありがと! 幽霊のお姉ちゃん!」

「あまり、期待はしないでね。あと、その呼び方はやめなさい」

 尾張さんは、手紙をポケットにしまうと、ひらひらと手を振り、

「子供はそろそろ家に帰りなさい。もう日が暮れるわ」

 と、照れ隠しのように言うのだった。

「よかったんですか?」

 未来ちゃんが見えなくなってから、尾張さんに尋ねた。

「何のこと?」
 
「手紙。あんな安請け合いしちゃって」

「しかたないじゃない。あんなの」

 反則よ。と尾張さんは苦々しげに呟いた。

 

 




 
 
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