上 下
7 / 85
世界終わろう委員会

幕間:ヒトの項目 

しおりを挟む
 誰もいない夕暮れの教室に一人の少年と、一人の少女が居残っている。
 少年は、特に何をするでもなく弄っていたスマホを操作しながら、どうでも良いことのように呟く。

「ウィキペディアのヒトの項目の画像ってアカ族らしいですよ」

 文庫本に目を落としていた少女は、少年の呟きに興味を惹かれたのか、それとも、文庫本の区切りがよかっただけなのか、判断がつかない程度の動きで顔を上げると疑問符を投げかける。

「どうして?」

 少女の端的な質問に、得意気な顔をしながら雑学を披露する少年。

「アルファベット順でAから始まるかららしいです」

 少し考えるような仕草をする少女。そして、

「それなら、アイヌ民族の方が適当じゃないかしら?」

 少年は虚をつかれたような顔をすると、

「なんでですか?」

 と尋ねる。

「akhaとainuなら、後者の方がアルファベット順ではやいでしょう?」

「ホントですね」

 素直に納得する少年に、少女は、

「世界って結構出鱈目にできてるわよね」

 どうでもよさそうに結論を告げる。

「それでも回ってるからすごいですよね」

 それに対して少年も適当に相槌を打ちながら、メッセージアプリを起動する。
 そして、いましがた結論が出た雑学を呟きはじめる。

「やっぱり一度終わらせた方が良いかしら」

 何の気なしに呟かれた一言を聞いた少年は、慌てて少女に向きなおる。

「世界をですよね? 僕をじゃないですよね?」

 少女はニッコリと笑って、口を噤んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

ボロボロになった心

空宇海
恋愛
付き合ってそろそろ3年の彼氏が居る 彼氏は浮気して謝っての繰り返し もう、私の心が限界だった。 心がボロボロで もう、疲れたよ… 彼のためにって思ってやってきたのに… それが、彼を苦しめてた。 だからさよなら… 私はまた、懲りずに新しい恋をした ※初めから書きなおしました。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...