31 / 33
伝家の宝刀
しおりを挟む
くそっ⁉︎ どうする⁉︎ ピエロ仮面に唯一対抗できそうなヒロシゲはラプティのせいで戦闘不能だし、なぜか魔法打ち消せるミリアは気絶してる・・・・・・これ、もしかして積んだ?
「こちら、お茶請けのふわふわパンケーキ~春告げる再会の喜び~になります」
「わぁ~‼︎ 本当にふわふわだ~‼︎ すご~い‼︎」
いつのまに用意したのか、白いテーブルクロスをかけた丸いテーブルの上にユキが香ばしく甘い香りを漂わせるパンケーキを置く。
フィアは用意された琥珀色のハチミツと溶かしバターをたっぷりかけると、ナイフとフォークを使って一口サイズにしたものを口へ運ぶ。
「ちょっとそこの駄メイド⁉︎ なにしてんの⁉︎」
「駄メイド⁉︎ーー接待しておいた方がよろしいかと思いまして・・・・・・」
一瞬ショックを受けたものの、気を取り直したように小首を傾げながら、悪びれた様子もなく答えるユキにアスハは苛立つ。
「そいつ魔王だからな⁉︎ 敵だぞ⁉︎ それと今戦闘中だから‼︎ 緊張感もって‼︎」
「魔王って呼ばないで‼︎」
フィアは、その呼称がよほど気に入らないのか、ぷくっと頬を膨らませてテーブルを勢いよく叩く。
「お言葉ですがアスハ様。私はメイドです。メイドにとっては、主人に尽くすことが至上目的。ーーいわば、これが私の戦場なのです」
当然のことを言ったとでもいうような表情のユキにアスハが意を唱える。
「尽くす相手がおかしい‼︎ せめて、俺に尽くしてくれませんかねぇ⁉︎」
「いえ、アスハ様はどうやら、これから死ぬ予定のようなので、新しい主人に取り入ろうかと。ーーあ、後ろ危ないですよ?」
「⁉︎ーーあっぶねぇ⁉︎」
マリベルの放った魔法がアスハの体スレスレを通過し、目の前の服屋らしき建物を吹き飛ばす。
「僕の店がぁああああ⁉︎⁉︎‼︎‼︎」
ショートボブの男性冒険者が絶望の叫びをあげる。
「戦闘中に仲間割れとは随分と余裕があるようですね。ーーそれと魔王様‼︎ 敵からの施しなど受けてはなりません‼︎ 毒が入ってたらどうするんですか‼︎」
マリベルは、ホットケーキで懐柔されつつあるフィアが気になるようで、足元で倒れる二人へのとどめをいまだにさしていない。
「ーーえっ?ーーでも、美味しいよ?」
フィアは頬をリスのように膨らませながらパンケーキを口に詰め込む。
「失礼な事を言わないでください。このパンケーキは、コック長が、久しぶりに元気な姿が見れた古参の冒険者にと腕を振るってくださったものです」
ギルドの奥の厨房でコック長らしき左腕がサムズアップしているのが見えた。
「ーーコック長・・・・・・」
フィアは目を潤ませながら、パンケーキの最後の一切れを口に運ぶ。
「コック長・・・・・・? いえ、そんなことはどうでもいいです! 魔王様! そんな人間の甘言に惑わされてはいけません‼︎ お忘れですか‼︎ 人間達があなたに一体何をしたか‼︎ こいつらは必ずあなたを悲しませる‼︎ それが人間の本質です‼︎」
マリベルの声に炎のような激しい感情が灯る。それと相反するように、フィアの声からは、感情が消えていく。
「ーーわかってるよ。だから、マリベルーー」
ーー全部消して?
仮面の奥のマリベルの目が感情を失ったように静かになる。
「ーー仰せのままに」
マリベルの両手に先ほどと同じ黒い球体が出現する。
「ディストラクションノヴァ」
「させるか‼︎」
「なっ⁉︎ 小娘⁉︎」
気を失っていたはずのミリアの身体がマリベルの両手の黒い球体に触れる。
放たれれば全てを闇に飲み込む大技ディストラクションノヴァ。それが打ち消される事で、魔法使用者にできた、一瞬の隙。
エクスカリバーを両手に持った男は、それを見逃さなかった。
一振りでドラゴンすら屠る必殺の剣撃。それが、マリベルの仮面を両断する。
「ぐっ⁉︎ があぁぁあぁあああ⁉︎‼︎‼︎」
仮面がマリベルの足元でいまだに倒れ伏すヒロシゲの鎧にぶつかり、硬質な音をあげる。
「くそっ‼︎ 浅かった‼︎」
「ーーこのっ⁉︎ 人間風情がぁああぁあぁあ‼︎‼︎⁈‼︎⁉︎」
仮面を破壊され顕になった顔を憤怒に染め、マリベルは己の顔に深い傷をつけた男の顔を睨みつける。
勇者が落としたエクスカリバーを両手で持ち、緊張で引きつった顔をしたアスハは、投げ飛ばしたミリアの無事を確認すると、叫ぶ。
「ラプティ‼︎」
ラプティのパラライズショックが、激昂し反撃に移ろうとするマリベルの動きを一瞬止める。
「ーーこれで、さっきのは帳消しですよね‼︎」
「それはそれこれはこれ‼︎」
「なんでですか‼︎」
ラプティの叫びを聞き流しながら、振るわれたエクスカリバーの一撃は、今度こそマリベルの首を両断した。
「こちら、お茶請けのふわふわパンケーキ~春告げる再会の喜び~になります」
「わぁ~‼︎ 本当にふわふわだ~‼︎ すご~い‼︎」
いつのまに用意したのか、白いテーブルクロスをかけた丸いテーブルの上にユキが香ばしく甘い香りを漂わせるパンケーキを置く。
フィアは用意された琥珀色のハチミツと溶かしバターをたっぷりかけると、ナイフとフォークを使って一口サイズにしたものを口へ運ぶ。
「ちょっとそこの駄メイド⁉︎ なにしてんの⁉︎」
「駄メイド⁉︎ーー接待しておいた方がよろしいかと思いまして・・・・・・」
一瞬ショックを受けたものの、気を取り直したように小首を傾げながら、悪びれた様子もなく答えるユキにアスハは苛立つ。
「そいつ魔王だからな⁉︎ 敵だぞ⁉︎ それと今戦闘中だから‼︎ 緊張感もって‼︎」
「魔王って呼ばないで‼︎」
フィアは、その呼称がよほど気に入らないのか、ぷくっと頬を膨らませてテーブルを勢いよく叩く。
「お言葉ですがアスハ様。私はメイドです。メイドにとっては、主人に尽くすことが至上目的。ーーいわば、これが私の戦場なのです」
当然のことを言ったとでもいうような表情のユキにアスハが意を唱える。
「尽くす相手がおかしい‼︎ せめて、俺に尽くしてくれませんかねぇ⁉︎」
「いえ、アスハ様はどうやら、これから死ぬ予定のようなので、新しい主人に取り入ろうかと。ーーあ、後ろ危ないですよ?」
「⁉︎ーーあっぶねぇ⁉︎」
マリベルの放った魔法がアスハの体スレスレを通過し、目の前の服屋らしき建物を吹き飛ばす。
「僕の店がぁああああ⁉︎⁉︎‼︎‼︎」
ショートボブの男性冒険者が絶望の叫びをあげる。
「戦闘中に仲間割れとは随分と余裕があるようですね。ーーそれと魔王様‼︎ 敵からの施しなど受けてはなりません‼︎ 毒が入ってたらどうするんですか‼︎」
マリベルは、ホットケーキで懐柔されつつあるフィアが気になるようで、足元で倒れる二人へのとどめをいまだにさしていない。
「ーーえっ?ーーでも、美味しいよ?」
フィアは頬をリスのように膨らませながらパンケーキを口に詰め込む。
「失礼な事を言わないでください。このパンケーキは、コック長が、久しぶりに元気な姿が見れた古参の冒険者にと腕を振るってくださったものです」
ギルドの奥の厨房でコック長らしき左腕がサムズアップしているのが見えた。
「ーーコック長・・・・・・」
フィアは目を潤ませながら、パンケーキの最後の一切れを口に運ぶ。
「コック長・・・・・・? いえ、そんなことはどうでもいいです! 魔王様! そんな人間の甘言に惑わされてはいけません‼︎ お忘れですか‼︎ 人間達があなたに一体何をしたか‼︎ こいつらは必ずあなたを悲しませる‼︎ それが人間の本質です‼︎」
マリベルの声に炎のような激しい感情が灯る。それと相反するように、フィアの声からは、感情が消えていく。
「ーーわかってるよ。だから、マリベルーー」
ーー全部消して?
仮面の奥のマリベルの目が感情を失ったように静かになる。
「ーー仰せのままに」
マリベルの両手に先ほどと同じ黒い球体が出現する。
「ディストラクションノヴァ」
「させるか‼︎」
「なっ⁉︎ 小娘⁉︎」
気を失っていたはずのミリアの身体がマリベルの両手の黒い球体に触れる。
放たれれば全てを闇に飲み込む大技ディストラクションノヴァ。それが打ち消される事で、魔法使用者にできた、一瞬の隙。
エクスカリバーを両手に持った男は、それを見逃さなかった。
一振りでドラゴンすら屠る必殺の剣撃。それが、マリベルの仮面を両断する。
「ぐっ⁉︎ があぁぁあぁあああ⁉︎‼︎‼︎」
仮面がマリベルの足元でいまだに倒れ伏すヒロシゲの鎧にぶつかり、硬質な音をあげる。
「くそっ‼︎ 浅かった‼︎」
「ーーこのっ⁉︎ 人間風情がぁああぁあぁあ‼︎‼︎⁈‼︎⁉︎」
仮面を破壊され顕になった顔を憤怒に染め、マリベルは己の顔に深い傷をつけた男の顔を睨みつける。
勇者が落としたエクスカリバーを両手で持ち、緊張で引きつった顔をしたアスハは、投げ飛ばしたミリアの無事を確認すると、叫ぶ。
「ラプティ‼︎」
ラプティのパラライズショックが、激昂し反撃に移ろうとするマリベルの動きを一瞬止める。
「ーーこれで、さっきのは帳消しですよね‼︎」
「それはそれこれはこれ‼︎」
「なんでですか‼︎」
ラプティの叫びを聞き流しながら、振るわれたエクスカリバーの一撃は、今度こそマリベルの首を両断した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
140字小説〜ロスタイム〜
初瀬四季[ハツセシキ]
大衆娯楽
好評のうちに幕を閉じた750話の140字小説。
書籍化が待たれるもののいまだそれはなされず。
というわけで、書籍化目指して頑張ります。
『140字小説〜ロスタイム〜』
開幕‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる