26 / 33
歯車が噛み合わない
しおりを挟む
草原をチキンが走る。羽を毟られ頭を落とされながらも、懸命に生きるチキンを追う人影が四つ。
「ミリア! そっち行ったぞ!」
「気絶してます‼︎ なんでですか⁉︎ まだ何もしてないのに‼︎」
人影は三つになった。
気絶したミリアにノーヘッドチキンの鉤爪が迫る。
間一髪のところで、ユキがノーヘッドチキンの僅かに残った首を掴む。
「やった‼︎ やっと一匹捕まえた‼︎ーーってやってられるか‼︎」
小一時間かけて、捕獲したノーヘッドチキンは一匹のみだった。
顔合わせを兼ねて簡単な依頼を受けようと、ノーヘッドチキンの捕獲に再挑戦したアスハ達だったが、その成果は芳しくない。
危険はほぼ無い依頼ではあるが、野生のノーヘッドチキンを素手で捕獲するのはかなり骨が折れた。
ミリアがいつのまにか気絶しているのはいつも通りであったが、アスハの体調も万全ではない。
そして、ラプティにも問題があった。
「魔法で奴らを麻痺させて動きを止めます‼︎ パラライズショック‼︎」
「ラプティ⁉︎ まて! それはチキンじゃない‼︎」
ユキが麻痺魔法を受けてビクンッと一度震えるとそのまま倒れて動かなくなる。
そして、倒れたユキにノーヘッドチキンが群がり、集団で踏みつけはじめる。
「ユキー⁉︎ ラプティ‼︎ 味方を攻撃するな⁉︎」
「? そんなことするわけないじゃないですか? 私をなんだと思っているんですか‼︎ 失礼な‼︎ パラライズショック‼︎」
「イギっ⁉︎」
ラプティの麻痺魔法を受けたアスハは、一度ビクンッと震えると地面に倒れる。
先程から何度も繰り返された光景であった。
「パラライズショック‼︎ くっ⁉︎ 素早い‼︎ アスハ‼︎ どこへ行ったんですか⁉︎ 早く奴らを捕まえてください‼︎ 逃げられてしまいます‼︎」
草むらに突っ伏しているアスハは痺れる舌で反論しようとするがそれは叶わない。
「ーーなんだこの状況」
気絶から目を覚ましたミリアが倒れ伏したアスハとユキ、所構わずパラライズショックを撃ちまくるラプティ。逃げまどうチキンをぼーっと見つめながら呟く。
その音に反応したラプティが、パラライズショックを放つ。
「そこにもいましたか! パラライズショック‼︎」
「は?」
ミリアが、ラプティの凶行に間の抜けた声を出すと同時に、その小さな身体に魔法が直撃する。
それを視界の端で捉えたアスハが、呻き声をあげる。
「?」
ミリアは、体についた葉っぱを払うと、何事もなかったように、ラプティに向かって歩いていく。
外れたのか? アスハの胸中を疑問が埋め尽くす。
徐々に身体の痺れがとれていく。アスハが何とか身体を起こした時、ミリアがラプティの背後に立っていた。
「なにすんだ‼︎ 駄ピンク‼︎」
その掛け声とともにバックドロップを喰らわせる。
「⁉︎ グエッ⁉︎」
ラプティが突然の背後からの強襲に意識を失う。そして、バックドロップを喰らわせたミリアも、意識を失ったラプティの下敷きになり気絶した。
ノーヘッドチキンがそんな二人に向かって群がり、脚で踏みつけ始める。
「ーーなんだこれ」
呆然と現状を確認すると、アスハは草むらに仰向けに寝転がる。
「ーーおそらあおい・・・・・・」
暫く現実逃避していたアスハの顔を何かが覗き込む。
「ーーあの、大丈夫?」
風鈴が鳴ったようにか細く、しかしよく通る声だった。
真っ黒な長髪を風に靡かせながら、その少女は倒れるアスハを拾った木の棒でつつく。
「ーー誰?」
アスハの口からこぼれた呟きに、黒髪の少女はビクッと震えるとオドオドと話しだす。
「あっ、えっと、わ、我が名はフィア‼︎ 天に選ばれし最強の調教師にして、魔物を統べるもの‼︎」
アスハは考えるのをやめた。
「ーーおそらあおい・・・・・・」
「えっ⁉︎ あの、ちょっと! 無視しないで⁉︎」
フィアは涙目でアスハの身体を揺らす。
また、変なのが現れた。
「ミリア! そっち行ったぞ!」
「気絶してます‼︎ なんでですか⁉︎ まだ何もしてないのに‼︎」
人影は三つになった。
気絶したミリアにノーヘッドチキンの鉤爪が迫る。
間一髪のところで、ユキがノーヘッドチキンの僅かに残った首を掴む。
「やった‼︎ やっと一匹捕まえた‼︎ーーってやってられるか‼︎」
小一時間かけて、捕獲したノーヘッドチキンは一匹のみだった。
顔合わせを兼ねて簡単な依頼を受けようと、ノーヘッドチキンの捕獲に再挑戦したアスハ達だったが、その成果は芳しくない。
危険はほぼ無い依頼ではあるが、野生のノーヘッドチキンを素手で捕獲するのはかなり骨が折れた。
ミリアがいつのまにか気絶しているのはいつも通りであったが、アスハの体調も万全ではない。
そして、ラプティにも問題があった。
「魔法で奴らを麻痺させて動きを止めます‼︎ パラライズショック‼︎」
「ラプティ⁉︎ まて! それはチキンじゃない‼︎」
ユキが麻痺魔法を受けてビクンッと一度震えるとそのまま倒れて動かなくなる。
そして、倒れたユキにノーヘッドチキンが群がり、集団で踏みつけはじめる。
「ユキー⁉︎ ラプティ‼︎ 味方を攻撃するな⁉︎」
「? そんなことするわけないじゃないですか? 私をなんだと思っているんですか‼︎ 失礼な‼︎ パラライズショック‼︎」
「イギっ⁉︎」
ラプティの麻痺魔法を受けたアスハは、一度ビクンッと震えると地面に倒れる。
先程から何度も繰り返された光景であった。
「パラライズショック‼︎ くっ⁉︎ 素早い‼︎ アスハ‼︎ どこへ行ったんですか⁉︎ 早く奴らを捕まえてください‼︎ 逃げられてしまいます‼︎」
草むらに突っ伏しているアスハは痺れる舌で反論しようとするがそれは叶わない。
「ーーなんだこの状況」
気絶から目を覚ましたミリアが倒れ伏したアスハとユキ、所構わずパラライズショックを撃ちまくるラプティ。逃げまどうチキンをぼーっと見つめながら呟く。
その音に反応したラプティが、パラライズショックを放つ。
「そこにもいましたか! パラライズショック‼︎」
「は?」
ミリアが、ラプティの凶行に間の抜けた声を出すと同時に、その小さな身体に魔法が直撃する。
それを視界の端で捉えたアスハが、呻き声をあげる。
「?」
ミリアは、体についた葉っぱを払うと、何事もなかったように、ラプティに向かって歩いていく。
外れたのか? アスハの胸中を疑問が埋め尽くす。
徐々に身体の痺れがとれていく。アスハが何とか身体を起こした時、ミリアがラプティの背後に立っていた。
「なにすんだ‼︎ 駄ピンク‼︎」
その掛け声とともにバックドロップを喰らわせる。
「⁉︎ グエッ⁉︎」
ラプティが突然の背後からの強襲に意識を失う。そして、バックドロップを喰らわせたミリアも、意識を失ったラプティの下敷きになり気絶した。
ノーヘッドチキンがそんな二人に向かって群がり、脚で踏みつけ始める。
「ーーなんだこれ」
呆然と現状を確認すると、アスハは草むらに仰向けに寝転がる。
「ーーおそらあおい・・・・・・」
暫く現実逃避していたアスハの顔を何かが覗き込む。
「ーーあの、大丈夫?」
風鈴が鳴ったようにか細く、しかしよく通る声だった。
真っ黒な長髪を風に靡かせながら、その少女は倒れるアスハを拾った木の棒でつつく。
「ーー誰?」
アスハの口からこぼれた呟きに、黒髪の少女はビクッと震えるとオドオドと話しだす。
「あっ、えっと、わ、我が名はフィア‼︎ 天に選ばれし最強の調教師にして、魔物を統べるもの‼︎」
アスハは考えるのをやめた。
「ーーおそらあおい・・・・・・」
「えっ⁉︎ あの、ちょっと! 無視しないで⁉︎」
フィアは涙目でアスハの身体を揺らす。
また、変なのが現れた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
140字小説〜ロスタイム〜
初瀬四季[ハツセシキ]
大衆娯楽
好評のうちに幕を閉じた750話の140字小説。
書籍化が待たれるもののいまだそれはなされず。
というわけで、書籍化目指して頑張ります。
『140字小説〜ロスタイム〜』
開幕‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる