21 / 33
旅は道連れ世は情け
しおりを挟む
ユキが破壊したランプを、何故かアスハが弁償した後、依頼を受けるために酒場へやってきた。
「なぁ、おかしくないか?」
「なにがでしょう?」
依頼書を精査しながらボソリと呟くアスハ。
ユキは不思議そうな顔で、そんなアスハの顔を見る。
「なんで俺が、お前が破壊したランプを買取りしなきゃいけないんだ?」
「メイドの不手際は、主人の不手際。その責任を取るのは当然のことだぞ?」
ミリアが腕を組みながら何を当たり前のことを。といった様子でアスハの疑問に答える。
「そうですね。私の不手際は、アスハ様の不手際です。その後始末を出来ることがメイドを雇う最低限の甲斐性というものです」
「メイド解雇したいんだけど」
このままでは、金がいくらあっても足りない気がする。
「待ってください⁉︎ アスハ様に捨てられたら私どうやって生きていけばいいんですか⁉︎」
「誰か優しい人が拾ってくれるさ」
遠い目をしながら、ボソリとこぼすアスハの腰にしがみつきガクガクと揺らすユキ。
グワングワンと揺れる上半身のその勢いに押されて、後頭部を壁にぶつけるアスハ。
一瞬意識を持っていかれる。
「ーーはっ⁉︎ 俺は一体何を?」
これ幸いとユキはアスハにあることないこと吹き込みはじめる。
「絶体絶命の中、私に命を救われたアスハ様は、私に惚れこみ、ぜひメイドになって欲しいと、毎月の三十万メルクのお給金と食事付きの一軒家住まいを約束して下さいました。さあ、早く依頼を受けてお金を稼いでくるのです」
「そんなこと一言も言ってないからな! 記憶失ったわけじゃねぇよ! 洗脳しようとするな!」
ユキは吹けない口笛を吹きながら、明後日の方向を向いている。
ミリアはそんな二人を完全にスルーしながら、依頼書に手を伸ばす。
「これを受けるぞ」
ミリアが出した依頼書を受け取ったのは、いつもの受付のお姉さんではなく、猫耳の生えた眠そうな目の女性だった。
「不受理ですにゃ」
「何故だ!」
ミリアがまた、依頼の受付を拒否されている。アスハが依頼書の内容を確認すると、そこには、見覚えのある文字列が並んでいた。
「ドラゴンは無理だろ」
「無理ですね」
アスハに続いて、ユキも頷く。
ミリアはぐぬぬっと悔しそうに歯噛みすると、じゃあこれだ。と別の依頼書を受付の机に叩きつけるように置く。
「不受理ですにゃ」
「何故だ!ユニコーンぐらい楽勝で捕まえてやる!」
猫耳のお姉さんは、やれやれと肩を竦める。
「ユニコーンの捕獲もドラゴン討伐と難易度殆ど変わらにゃいにゃ」
ミリアは、親の仇のように依頼書を睨みつけると、別の依頼書を持ってくる。
「これは「不受理ですにゃ」
ミリアが持ってきた依頼書をチラッと見ると、すぐに不可を告げる。
ヤケになったミリアが、掲示板から大量に依頼書を持ってきて、受付の机に叩きつけるように置く。
「これ「全て不受理ですにゃ」
「なんで‼︎」
ミリアが涙目になっている。
「めんどくさいからにゃ」
猫耳のお姉さんが背後から現れた受付のお姉さんに後頭部を叩かれる。
「何してるんですか、ミケさん?」
「いたいにゃ。にゃにするにゃリスト。いきなり頭を叩くなんてパワハラにゃ。訴えるにゃ」
ミケは頭をさすりながら、リストに抗議する。
「申し訳ありません。この子まだ新人なので、クレーマーへの対応方法がまだわかっていないんです。ここは私の顔を立てて、穏便にお願いします」
「誰がクレーマーだ‼︎」
ミリアがガルルっと威嚇しながら噛み付く。
側からみてもその行動はクレーマーっぽいが、本人は至って真面目に精一杯生きているだけである。
「わけがわからにゃいにゃ」
ミリアに絡まれ、先輩に頭を叩かれたミケは、不貞腐れたように依頼書の束を弾く。
その理不尽に打ちのめされているような姿に少し己を重ねたアスハはついボソリと呟く。
「同意だにゃ」
ミケは、びくりと反応する。
「にゃにゃ⁉︎ お前も寝猫族かにゃ?」
猫耳を探すようにしげしげとアスハを眺めるミケ。
アスハは右手を顔の前に当てニヒルに笑う。
「違うにゃ」
「じゃあ、にゃんで語尾ににゃをつけてるにゃ?」
ミケは眉間にシワを寄せながら、アスハを見る。
それを受けてアスハはやれやれと肩を竦める。
「にゃんとにゃくにゃ」
「もしかして、わたしのまねしてるにゃ?」
ミケは嫌そうな顔をする。
「せやにゃ」
「まにぇしにゃいで欲しいにゃ」
しっしっと手を振り帰れとジェスチャーで暗に伝えるミケ。
それに気づかないフリをするアスハ。
「にゃんでかにゃ?」
「にゃんか馬鹿にされてる気ににゃるにゃっ!」
ミケの尻尾が左右にゆらゆらと揺れている。
「ハハッワロス・・・・・・にゃ」
「杜撰! 杜撰だにゃ!」
ミケの尻尾が膨らむ。
「わろにゃ」
「ワロタっていったにゃ? 馬鹿にしてるにゃ‼︎」
ミケの瞳孔が細くなる。
「せやにゃ」
「ころころしていいにゃ?」
ミケの声がワントーン低くなる。
「にゃんか不穏にゃ空気を感じるにゃ」
アスハが危機感の薄い声を出す。
「いい加減にしにゃいと怒るにゃ?」
ミケが微笑みを浮かべる。
楽しくなってきたアスハがさらに煽る。
「からにょーにゃ?」
「本気でぶちころころしますよ?」
「語尾にょにゃがきえたにゃ‼︎?!」
驚愕するアスハに対して、ミケが飛びかかる。
「ぶっころころす!」
めっちゃころころされた。
「なぁ、おかしくないか?」
「なにがでしょう?」
依頼書を精査しながらボソリと呟くアスハ。
ユキは不思議そうな顔で、そんなアスハの顔を見る。
「なんで俺が、お前が破壊したランプを買取りしなきゃいけないんだ?」
「メイドの不手際は、主人の不手際。その責任を取るのは当然のことだぞ?」
ミリアが腕を組みながら何を当たり前のことを。といった様子でアスハの疑問に答える。
「そうですね。私の不手際は、アスハ様の不手際です。その後始末を出来ることがメイドを雇う最低限の甲斐性というものです」
「メイド解雇したいんだけど」
このままでは、金がいくらあっても足りない気がする。
「待ってください⁉︎ アスハ様に捨てられたら私どうやって生きていけばいいんですか⁉︎」
「誰か優しい人が拾ってくれるさ」
遠い目をしながら、ボソリとこぼすアスハの腰にしがみつきガクガクと揺らすユキ。
グワングワンと揺れる上半身のその勢いに押されて、後頭部を壁にぶつけるアスハ。
一瞬意識を持っていかれる。
「ーーはっ⁉︎ 俺は一体何を?」
これ幸いとユキはアスハにあることないこと吹き込みはじめる。
「絶体絶命の中、私に命を救われたアスハ様は、私に惚れこみ、ぜひメイドになって欲しいと、毎月の三十万メルクのお給金と食事付きの一軒家住まいを約束して下さいました。さあ、早く依頼を受けてお金を稼いでくるのです」
「そんなこと一言も言ってないからな! 記憶失ったわけじゃねぇよ! 洗脳しようとするな!」
ユキは吹けない口笛を吹きながら、明後日の方向を向いている。
ミリアはそんな二人を完全にスルーしながら、依頼書に手を伸ばす。
「これを受けるぞ」
ミリアが出した依頼書を受け取ったのは、いつもの受付のお姉さんではなく、猫耳の生えた眠そうな目の女性だった。
「不受理ですにゃ」
「何故だ!」
ミリアがまた、依頼の受付を拒否されている。アスハが依頼書の内容を確認すると、そこには、見覚えのある文字列が並んでいた。
「ドラゴンは無理だろ」
「無理ですね」
アスハに続いて、ユキも頷く。
ミリアはぐぬぬっと悔しそうに歯噛みすると、じゃあこれだ。と別の依頼書を受付の机に叩きつけるように置く。
「不受理ですにゃ」
「何故だ!ユニコーンぐらい楽勝で捕まえてやる!」
猫耳のお姉さんは、やれやれと肩を竦める。
「ユニコーンの捕獲もドラゴン討伐と難易度殆ど変わらにゃいにゃ」
ミリアは、親の仇のように依頼書を睨みつけると、別の依頼書を持ってくる。
「これは「不受理ですにゃ」
ミリアが持ってきた依頼書をチラッと見ると、すぐに不可を告げる。
ヤケになったミリアが、掲示板から大量に依頼書を持ってきて、受付の机に叩きつけるように置く。
「これ「全て不受理ですにゃ」
「なんで‼︎」
ミリアが涙目になっている。
「めんどくさいからにゃ」
猫耳のお姉さんが背後から現れた受付のお姉さんに後頭部を叩かれる。
「何してるんですか、ミケさん?」
「いたいにゃ。にゃにするにゃリスト。いきなり頭を叩くなんてパワハラにゃ。訴えるにゃ」
ミケは頭をさすりながら、リストに抗議する。
「申し訳ありません。この子まだ新人なので、クレーマーへの対応方法がまだわかっていないんです。ここは私の顔を立てて、穏便にお願いします」
「誰がクレーマーだ‼︎」
ミリアがガルルっと威嚇しながら噛み付く。
側からみてもその行動はクレーマーっぽいが、本人は至って真面目に精一杯生きているだけである。
「わけがわからにゃいにゃ」
ミリアに絡まれ、先輩に頭を叩かれたミケは、不貞腐れたように依頼書の束を弾く。
その理不尽に打ちのめされているような姿に少し己を重ねたアスハはついボソリと呟く。
「同意だにゃ」
ミケは、びくりと反応する。
「にゃにゃ⁉︎ お前も寝猫族かにゃ?」
猫耳を探すようにしげしげとアスハを眺めるミケ。
アスハは右手を顔の前に当てニヒルに笑う。
「違うにゃ」
「じゃあ、にゃんで語尾ににゃをつけてるにゃ?」
ミケは眉間にシワを寄せながら、アスハを見る。
それを受けてアスハはやれやれと肩を竦める。
「にゃんとにゃくにゃ」
「もしかして、わたしのまねしてるにゃ?」
ミケは嫌そうな顔をする。
「せやにゃ」
「まにぇしにゃいで欲しいにゃ」
しっしっと手を振り帰れとジェスチャーで暗に伝えるミケ。
それに気づかないフリをするアスハ。
「にゃんでかにゃ?」
「にゃんか馬鹿にされてる気ににゃるにゃっ!」
ミケの尻尾が左右にゆらゆらと揺れている。
「ハハッワロス・・・・・・にゃ」
「杜撰! 杜撰だにゃ!」
ミケの尻尾が膨らむ。
「わろにゃ」
「ワロタっていったにゃ? 馬鹿にしてるにゃ‼︎」
ミケの瞳孔が細くなる。
「せやにゃ」
「ころころしていいにゃ?」
ミケの声がワントーン低くなる。
「にゃんか不穏にゃ空気を感じるにゃ」
アスハが危機感の薄い声を出す。
「いい加減にしにゃいと怒るにゃ?」
ミケが微笑みを浮かべる。
楽しくなってきたアスハがさらに煽る。
「からにょーにゃ?」
「本気でぶちころころしますよ?」
「語尾にょにゃがきえたにゃ‼︎?!」
驚愕するアスハに対して、ミケが飛びかかる。
「ぶっころころす!」
めっちゃころころされた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
140字小説〜ロスタイム〜
初瀬四季[ハツセシキ]
大衆娯楽
好評のうちに幕を閉じた750話の140字小説。
書籍化が待たれるもののいまだそれはなされず。
というわけで、書籍化目指して頑張ります。
『140字小説〜ロスタイム〜』
開幕‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる