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貧乏暇無し 「改」

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 異世界転移後、いきなりドラゴンを討伐しに行って逃げ帰ってから数日。

 アスハは、竜車の隅で独特の臭いの中、藁をベッドに寝泊りしながら日銭を稼いでいた。

 というのも、ぬこ探しの報酬は結局ミリアと影達で四分割したため、切り詰めても三日分の食費にしかならなかったため、宿代が支払えないのである。

「辛い。勉強頑張って平凡だけどちゃんとした大学にも行って安定した職業に就けるはずだったのに。どうして俺はこんな日雇いの肉体労働や、ぬこ探しみたいな似非探偵稼業をしてるんだ?」

 安定した職業に就職が決まっていた覚えはないが、どう考えても今のこの状況よりはマシだったはずである。

「・・・・・・慣れ親しんだ1DKの我が家が恋しい。・・・・・・ポテチ食べながらコーラ飲みたい。・・・・・・ゲームしたい」

 昔懐かしい思い出に浸りながら、藁の上をゴロゴロ転がっていると、金髪幼女の可愛らしい声に似合わない尊大な台詞が竜車の中に響く。

「いつまで寝ている! 下僕‼︎ クエストに行くぞ‼︎」

「・・・・・・誰が下僕だ」

 そんなここ数日の日課のようなやりとりを交わしつつ。しかし、どうにもやる気がでない。

「なんというかあれだよなぁ。毎日毎日、道路工事して、ぬこ探して、塀のレンガ積んで、ぬこ探して。俺、何の為に異世界に来たんだろう」

 というか、ぬこ逃げ出しすぎだろ。この頃、いつも同じぬこを捕まえてるぞ? 飼い主ちゃんとしろよ。

「それは、あれか? そろそろドラゴンにリベンジしたいという意思表示か?」

「なんでそうなる。あんなの勝てる訳ないだろ! そもそも俺の装備すら買えてないのに!」

 そうアスハは未だにリクルートスーツ姿で異世界ライフを送っていた。
 因みに武器はない。丸腰である。
 そして金もない。つんでいる。

「なんだそんなことか。だったらお前のその服売ればいいだろ?」

 ミリアは顎をしゃくってアスハの着るスーツを示す。

「は? 売るってそんなことしたら、俺、半裸でどこに向けてのサービスだかわかんない格好になるんだけど?」

「いや、別の安い服買って着るんだよ。それ仕立てをみるに結構いい服だろう?」

 ミリアが半眼でアスハを見た後に、スーツを上から下まで眺めながら言う。

「でも、売るったって何処で・・・・・・」

「私の知り合いにそういうの集めてる変人がいるから紹介してやる。ついてこい」

 変人? これ以上変な奴と関わりあいたくないなぁ。
 それにいくら装備のためとはいえ、唯一の地球の所持品売っ払うのはなぁ。
 
 渋るアスハにミリアがボソリと呟く。

「たぶんその服なら、百万メルクぐらい出すと思うぞ?」

「その変人の元へ案内してもらおうか?」

 やっぱり役に立たない思い出より、目先の生活費の方が重要だよね!

 
 
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