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地獄の沙汰も金次第 「改」
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「死んだ?」
「縁起でもないこと言わないでください」
意識を失ってから、ピクリとも動かないミリアを上から眺めるアスハ。
「あなた、ちょっと確かめてください」
「なんで俺が⁉︎」
影は、アスハを縛る縄を切る。また、頭から落下するアスハ。悶絶しながら、
「ふざけんなよお前ら!」
「いいから、はよ?」
アスハは、渋々、ミリアの脈と呼吸を確認する。
「生きてるよ、たぶん」
影に向けて、そう報告する。
「では、あなたが介抱してください」
「何故⁉︎」
あなたが原因なのだから、当たり前でしょう。変なことしたら殺します。とだけ言い残すと影はそれきりだんまりを決め込むのだった。
「変なことなんかするか‼︎」
流石にこんな荒くれ者の巣窟のような場所に意識のない女の子を放置するのも気が引けた。
仕方なく、ミリアを抱え上げる。そして、空いていたテーブルの座席に寝かせる。
しばらく後、ミリアが目を覚ました。額にのせられた濡れタオルをとると、
「おい、具合はどうだ?」
そう問いかけるアスハに、
「なんのつもりだ?」
と、訝しげなミリア。
「別に。やむを得ない事情があったから仕方なくだ」
介抱しなければ、殺されるというほぼ強制的な理由であった。
ミリアは、アスハのその態度をどう受け取ったのか、
「なるほどな。そういうことか」
と、一人で納得したようだった。
「お前、私の下僕になりたかったのか」
「ちげぇよ‼︎」
ひどい勘違いをされていた。
ミリアは、一人うんうんと頷くと、
「隠さなくていい。私の下僕になりたいというのも致し方ないことだ。なにせ、私には、隠しても、隠しきれないカリスマ性があるからな」
「お前から見てとれるのは、溢れんばかりのポンコツロリ具合だけだが?」
「だが、そこがいい!」
耳元で、影が呟いた気がした。ミリアは、アスハの発言を聞いていないのか、
「よかろう。では下僕に最初の仕事を与えてやろう。椅子になれ」
「断る」
首筋に冷たい何かが触れる。
「かしこまりました」
アスハは、掲示板の前で四つん這いになる。
ミリアは、それを見ると、アスハの背中に立膝で乗る。
「よし、もう少しだもう少しで届く」
どうやら、まだ届いていないらしい。
「なぁ、俺がその依頼書取った方が早いんじゃあ」
「黙りなさい」
首筋にまた冷たい何かが触れる。
「ミリア様がご自身でやりきることに意味があるのです。なによりそっちの方が可愛いでしょう! 見なさいあの健気にも手を思いっきり伸ばしても届かない愛らしい姿を! 尊いでしょう!」
床しか見えません。それと、背中がゴリゴリと痛いです。
暫く背中をゴリゴリされながら床を見る時間が続いた。
その後、なんとか目的の依頼書を手に入れたミリアは、
「よし、いくぞ下僕」
と、アスハを引きずりながら、受付に向かった。
「いや、まて‼︎ なんで俺までお前とクエスト受けなきゃいけないんだ‼︎ 絶対嫌だ‼︎! 失敗する未来しか見えない‼︎!」
暴れるアスハを無理矢理引っ張るミリア。
「安心しろ。私は、最強だからな。ドラゴンくらい一瞬で輪切りにしてやろう」
「ドラゴン⁉︎ 無理! 絶対無理! ほら、俺装備もまだだし、初心者だから‼︎」
ミリアは、勢いよく受付に依頼書を出すと、
「これを受ける!」
「受理できません」
受付で一蹴される。
「何故だ!」
ミリアが受付のお姉さんに噛みつく。
「いえ、募集条件がランクA以上ですので。ミリアさんまだランクFですよね」
「ランクF⁉︎」
俺より下がいるだと。
「ランクなど飾りでしかない。本当に必要なのは、実力だ」
「はい。その実力が足りてないです」
受付のお姉さんが困った顔で辛辣な事を言っている。
「馬鹿な! 私は最強だぞ⁉︎」
「秒で気絶する方はちょっと。あ、こちらの迷いぬこ探しとかどうですか?」
自然に別の依頼を進められている。
「ぬこってなんですか?」
猫とは違うのだろうか。
「愛玩用に品種改良されたぬこ科のかわいい生き物ですよ」
ぬこ科ってなんだよ。
「ちなみに報酬っていくらぐらいなんですか?」
「五千メルクです」
メルク?
「あの、それってどれくらいの価値になるんですか?」
「そうですね・・・・・・切りつめれば五千メルクで半月の食費は賄えるんじゃないかと思いますよ」
ということは、大体一メルク一円くらいの価値なんだろうか。
「いや無理だろ。そんな端金一瞬でなくなる」
ミリアが、ジト目で迷いぬこの依頼書を見ている。
「ミリアさんの金遣いが荒すぎるだけだと思いますよ?」
受付のお姉さんは呆れたような顔で事務作業に戻っていった。
「縁起でもないこと言わないでください」
意識を失ってから、ピクリとも動かないミリアを上から眺めるアスハ。
「あなた、ちょっと確かめてください」
「なんで俺が⁉︎」
影は、アスハを縛る縄を切る。また、頭から落下するアスハ。悶絶しながら、
「ふざけんなよお前ら!」
「いいから、はよ?」
アスハは、渋々、ミリアの脈と呼吸を確認する。
「生きてるよ、たぶん」
影に向けて、そう報告する。
「では、あなたが介抱してください」
「何故⁉︎」
あなたが原因なのだから、当たり前でしょう。変なことしたら殺します。とだけ言い残すと影はそれきりだんまりを決め込むのだった。
「変なことなんかするか‼︎」
流石にこんな荒くれ者の巣窟のような場所に意識のない女の子を放置するのも気が引けた。
仕方なく、ミリアを抱え上げる。そして、空いていたテーブルの座席に寝かせる。
しばらく後、ミリアが目を覚ました。額にのせられた濡れタオルをとると、
「おい、具合はどうだ?」
そう問いかけるアスハに、
「なんのつもりだ?」
と、訝しげなミリア。
「別に。やむを得ない事情があったから仕方なくだ」
介抱しなければ、殺されるというほぼ強制的な理由であった。
ミリアは、アスハのその態度をどう受け取ったのか、
「なるほどな。そういうことか」
と、一人で納得したようだった。
「お前、私の下僕になりたかったのか」
「ちげぇよ‼︎」
ひどい勘違いをされていた。
ミリアは、一人うんうんと頷くと、
「隠さなくていい。私の下僕になりたいというのも致し方ないことだ。なにせ、私には、隠しても、隠しきれないカリスマ性があるからな」
「お前から見てとれるのは、溢れんばかりのポンコツロリ具合だけだが?」
「だが、そこがいい!」
耳元で、影が呟いた気がした。ミリアは、アスハの発言を聞いていないのか、
「よかろう。では下僕に最初の仕事を与えてやろう。椅子になれ」
「断る」
首筋に冷たい何かが触れる。
「かしこまりました」
アスハは、掲示板の前で四つん這いになる。
ミリアは、それを見ると、アスハの背中に立膝で乗る。
「よし、もう少しだもう少しで届く」
どうやら、まだ届いていないらしい。
「なぁ、俺がその依頼書取った方が早いんじゃあ」
「黙りなさい」
首筋にまた冷たい何かが触れる。
「ミリア様がご自身でやりきることに意味があるのです。なによりそっちの方が可愛いでしょう! 見なさいあの健気にも手を思いっきり伸ばしても届かない愛らしい姿を! 尊いでしょう!」
床しか見えません。それと、背中がゴリゴリと痛いです。
暫く背中をゴリゴリされながら床を見る時間が続いた。
その後、なんとか目的の依頼書を手に入れたミリアは、
「よし、いくぞ下僕」
と、アスハを引きずりながら、受付に向かった。
「いや、まて‼︎ なんで俺までお前とクエスト受けなきゃいけないんだ‼︎ 絶対嫌だ‼︎! 失敗する未来しか見えない‼︎!」
暴れるアスハを無理矢理引っ張るミリア。
「安心しろ。私は、最強だからな。ドラゴンくらい一瞬で輪切りにしてやろう」
「ドラゴン⁉︎ 無理! 絶対無理! ほら、俺装備もまだだし、初心者だから‼︎」
ミリアは、勢いよく受付に依頼書を出すと、
「これを受ける!」
「受理できません」
受付で一蹴される。
「何故だ!」
ミリアが受付のお姉さんに噛みつく。
「いえ、募集条件がランクA以上ですので。ミリアさんまだランクFですよね」
「ランクF⁉︎」
俺より下がいるだと。
「ランクなど飾りでしかない。本当に必要なのは、実力だ」
「はい。その実力が足りてないです」
受付のお姉さんが困った顔で辛辣な事を言っている。
「馬鹿な! 私は最強だぞ⁉︎」
「秒で気絶する方はちょっと。あ、こちらの迷いぬこ探しとかどうですか?」
自然に別の依頼を進められている。
「ぬこってなんですか?」
猫とは違うのだろうか。
「愛玩用に品種改良されたぬこ科のかわいい生き物ですよ」
ぬこ科ってなんだよ。
「ちなみに報酬っていくらぐらいなんですか?」
「五千メルクです」
メルク?
「あの、それってどれくらいの価値になるんですか?」
「そうですね・・・・・・切りつめれば五千メルクで半月の食費は賄えるんじゃないかと思いますよ」
ということは、大体一メルク一円くらいの価値なんだろうか。
「いや無理だろ。そんな端金一瞬でなくなる」
ミリアが、ジト目で迷いぬこの依頼書を見ている。
「ミリアさんの金遣いが荒すぎるだけだと思いますよ?」
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