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虎の尾を踏む 「改」
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そこに立っていたのは、華美な甲冑に身を包んだ金髪の少女だった。
「聞こえてないのか? 愚民。それとも、言語すらわからん原人か?」
「すいません」
突然の罵倒に内心穏やかではなかったが、仕方なく脇にどける。
くそ、とりあえず謝ってしまう日本人気質が憎い。
「ふん。それでいいのだ。次はないぞ? 愚民は愚民らしく周りには気を遣って卑しく生きろよ」
あ、これ殴っていいやつだ。絶対許されるよね? ね?
血管をヒクヒクさせながら、なんとか怒りを沈めようと深呼吸する。
少女は、掲示板を眺めて上の方が見辛いのか背伸びをする。
しかし、それでも届かないのか、
「おい、そこの愚民。そこに四つん這いになれ」
と、アスハに命令する。
「ちょっとなに言ってんのかわかんないです」
「私に逆らうつもりか?」
少女は、その金色の眼を煌々と輝かせると、その脇にさした二本の剣の柄に手をかける。
「や、やる気か⁉︎ そんな凶器で脅したって俺はやらないぞ⁉︎ だいたい、愚民愚民って、お前何様だよ⁉︎ 背伸びしても届かない子供のくせに‼︎」
「お、おい兄ちゃん⁉︎ やめとけ⁉︎ その嬢ちゃんはヤバイ‼︎」
モヒカンの男が見ていられないと言った表情で警告する。
しかし少女は、頬をひくつかせながら、
「もう遅い。この愚民は私を怒らせた。万死に値する」
そういうと、二本の剣を抜いて、アスハに斬りかかる。
「ひいっ⁉︎」
情けないアスハの声が、酒場に響いた。
数刻の後、酒場の一角では気絶した少女とそれを見下ろす一人の少年の姿があった。
「いま、起こった事をありのまま話すぜ。俺が、剣を避けようとただ、しゃがんだら、それにつまづいたこの少女が転んでそのまま頭を打って気絶しちまった。なにを、言っているのかわからねぇと思うが、俺にもわからねぇ。頭がおかしくなりそうだ」
アスハが、その現状に混乱していると、酒場の冒険者達は、
「あーあ。やっちまった」
と、不憫なものを見る目で、アスハの方を見ていた。
「え? これ、俺が悪いの?」
ちょっと罪悪感を感じながら、少女の方へ近づいていくアスハ。
その背後には、いつのまにか二つの影が現れていた。
その二つの影は、アスハの肩を叩く。
「え?」
振り向いたアスハは、それを見るより前に意識を失った。
次にアスハが眼を覚ました時、アスハの体は酒場の梁にロープで逆さ吊りにされていた。
「なんだこれ」
目の前では、先程の金髪の少女が、仁王立ちしている。
「どうやら、眼を覚ましたようだな。愚民」
「おい! なんだよこれ!」
アスハは抗議の意を込めて叫ぶ。
少女は、それを見下したように見ると、
「お前の敗因を教えてやろう」
と言うと、髪をかきあげる。
「お前は私を怒らせた。たった一つのシンプルな答えだ」
「いや、お前に負けた覚えはないが」
そう呟いたアスハの耳元で姿の見えない何者かの声が聞こえる。
「命が惜しかったらその口を閉じてください。現在貴方の首筋に見えない刃が押し当てられています」
「だ、誰だよあんた⁉︎」
首筋に冷たい感触が触れる。
「喋るなと言ったはずですが?」
アスハは口をつぐむ。
「貴方はこれから、なにも考えずに私が言った言葉を繰り返してください。そうすれば解放してあげます」
その声は、そういうとうなずくアスハに耳打ちする。
アスハはなにも考えずに、その言葉を繰り返す。
「私のような愚かなゴミムシがミリア様にたてついた事を深く反省し、心より謝罪申し上げます。どうか、命ばかりはお許しください。あと、そのおみ足をどうか舐めさせてください。ってなんでだよ‼︎」
おっと、つい願望が。と呟くと、その影は縄を切って姿を消した。
頭から落下したアスハが、悶絶していると、ミリアと呼ばれたその少女は、
「なんだお前、気持ち悪いな」
とアスハを見下ろしながら言うのだった。
「聞こえてないのか? 愚民。それとも、言語すらわからん原人か?」
「すいません」
突然の罵倒に内心穏やかではなかったが、仕方なく脇にどける。
くそ、とりあえず謝ってしまう日本人気質が憎い。
「ふん。それでいいのだ。次はないぞ? 愚民は愚民らしく周りには気を遣って卑しく生きろよ」
あ、これ殴っていいやつだ。絶対許されるよね? ね?
血管をヒクヒクさせながら、なんとか怒りを沈めようと深呼吸する。
少女は、掲示板を眺めて上の方が見辛いのか背伸びをする。
しかし、それでも届かないのか、
「おい、そこの愚民。そこに四つん這いになれ」
と、アスハに命令する。
「ちょっとなに言ってんのかわかんないです」
「私に逆らうつもりか?」
少女は、その金色の眼を煌々と輝かせると、その脇にさした二本の剣の柄に手をかける。
「や、やる気か⁉︎ そんな凶器で脅したって俺はやらないぞ⁉︎ だいたい、愚民愚民って、お前何様だよ⁉︎ 背伸びしても届かない子供のくせに‼︎」
「お、おい兄ちゃん⁉︎ やめとけ⁉︎ その嬢ちゃんはヤバイ‼︎」
モヒカンの男が見ていられないと言った表情で警告する。
しかし少女は、頬をひくつかせながら、
「もう遅い。この愚民は私を怒らせた。万死に値する」
そういうと、二本の剣を抜いて、アスハに斬りかかる。
「ひいっ⁉︎」
情けないアスハの声が、酒場に響いた。
数刻の後、酒場の一角では気絶した少女とそれを見下ろす一人の少年の姿があった。
「いま、起こった事をありのまま話すぜ。俺が、剣を避けようとただ、しゃがんだら、それにつまづいたこの少女が転んでそのまま頭を打って気絶しちまった。なにを、言っているのかわからねぇと思うが、俺にもわからねぇ。頭がおかしくなりそうだ」
アスハが、その現状に混乱していると、酒場の冒険者達は、
「あーあ。やっちまった」
と、不憫なものを見る目で、アスハの方を見ていた。
「え? これ、俺が悪いの?」
ちょっと罪悪感を感じながら、少女の方へ近づいていくアスハ。
その背後には、いつのまにか二つの影が現れていた。
その二つの影は、アスハの肩を叩く。
「え?」
振り向いたアスハは、それを見るより前に意識を失った。
次にアスハが眼を覚ました時、アスハの体は酒場の梁にロープで逆さ吊りにされていた。
「なんだこれ」
目の前では、先程の金髪の少女が、仁王立ちしている。
「どうやら、眼を覚ましたようだな。愚民」
「おい! なんだよこれ!」
アスハは抗議の意を込めて叫ぶ。
少女は、それを見下したように見ると、
「お前の敗因を教えてやろう」
と言うと、髪をかきあげる。
「お前は私を怒らせた。たった一つのシンプルな答えだ」
「いや、お前に負けた覚えはないが」
そう呟いたアスハの耳元で姿の見えない何者かの声が聞こえる。
「命が惜しかったらその口を閉じてください。現在貴方の首筋に見えない刃が押し当てられています」
「だ、誰だよあんた⁉︎」
首筋に冷たい感触が触れる。
「喋るなと言ったはずですが?」
アスハは口をつぐむ。
「貴方はこれから、なにも考えずに私が言った言葉を繰り返してください。そうすれば解放してあげます」
その声は、そういうとうなずくアスハに耳打ちする。
アスハはなにも考えずに、その言葉を繰り返す。
「私のような愚かなゴミムシがミリア様にたてついた事を深く反省し、心より謝罪申し上げます。どうか、命ばかりはお許しください。あと、そのおみ足をどうか舐めさせてください。ってなんでだよ‼︎」
おっと、つい願望が。と呟くと、その影は縄を切って姿を消した。
頭から落下したアスハが、悶絶していると、ミリアと呼ばれたその少女は、
「なんだお前、気持ち悪いな」
とアスハを見下ろしながら言うのだった。
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