この悪縁に祝杯を

初瀬四季[ハツセシキ]

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同じ穴のムジナ 「改」

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 それから、他人の嫌悪の目に晒されながら、なんとか水場までたどり着いたアスハを待っていたのは、現代のような管理された浄水道ではなかった。
 それは、穴を掘り造られ、縄の着いた桶を投げ込み水を組む所謂井戸であった。

「・・・・・・まあ、ね。さすが異世界。特に期待はしてなかったよ」

 その呟きが聞こえたのかどうなのか、井戸を囲う柱からこちらを伺う影があった。

「なんか、臭う。これは・・・・・・動物の糞・・・・・・」

「あ、すいません。実は肥溜めに足突っ込んじゃいまして、水使わせてください」

 その人物は物陰から出ないまま声だけで返事をする。

「ええ、どうぞ。あっでも半径五メートル以内に近づかないでくださいね。臭うので」

「・・・・・・えーと、それだと水が使えないのですが・・・・・・」

 水場に近づけば自ずと、声の主に接近することになる。

「そうですね」

「いや、そうですねじゃなく」

 何なんだこの人。
 あれかな、遠回しにここは、お前が来るような所じゃないんだよ坊主。さっさと帰りなって事を伝えようとしてるのかな?

「とにかく、さっさと洗いたいんで使わせてもらいますね」

 アスハが特にきにせずに水場に近づいていくと、その人物はいきなり叫び声を上げる。

「来るなーーーーっ‼︎‼︎⁉︎‼︎‼︎⁉︎」

「ええっ⁉︎」

 驚いたアスハが思わず立ち止まる。

「いいか? その影から一歩でもこちらに近づいてみろ⁉︎ その右足吹き飛ばすぞ‼︎」

「⁉︎」

 何もそこまでしなくても・・・・・・。
 しかし、ここまで言われると逆に近づきたくなるのが人情ってもんですね。

「まぁ、落ち着いてくださいよ、何も取って食おうってわけじゃないんです。ただ、そこの水を使いたいだけなんですよ。こちらとしては」

 そういいつつジリジリと間合いを詰める。

「あれ、なんだ? 何かがあちらから、向かって・・・・・・」

 もちろん、フェイクである。

「っ⁉︎」

 そういい指を指した方向にその影が振り向いた瞬間走る。

「ダラッシャァァ‼︎⁉︎ルァッッッ⁉︎⁇」

「‼︎⁉︎‼︎・・・・・・あっ・・・・・・」

 アスハの目にはピンクの髪の少女の汚物にまみれたあられもない姿が映っていた。

「なんか、すまんかった」

「・・・・・・グスッ・・・・・・臭い・・・・・・」





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