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自律学習AI搭載型メイドロボット『ロボ子』
自律学習AI搭載型メイドロボット『ロボ子』
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最近家のロボットの調子がおかしい。
三週間前に父が酔った勢いでメイドロボットを買ってきた。そして、酔い潰れながらそのロボットに『ロボ子』と安直な名前をつけた。
母は父の無駄遣いに最初はいい顔をしなかったが、ロボ子の働きぶりに、今ではロボ子を一番可愛がっている。
ロボ子の見た目は若い女性を模しているため、最初は遠巻きに見ていた俺ではあるが、今では、こいつに命令するのが当たり前になっていた。
そんなロボ子の様子がなにやらおかしい。
父や母にその事を話しても、「気にしすぎだろーー思春期か?」などとからかわれ、全く取り合ってくれない。
しかし、どう考えてもおかしいのだ。
家の仕事はいつも通り完璧にこなすし、指示すれば俺の命令通りに動く。しかし、
「おい、ロボ子! あの荷物俺の部屋に運んでおけよ?」
「は? 仕方ねぇな。ったく。これぐらい自分で運べよな」
ロボ子は十キロはあろうかという段ボールをひょいっと担ぐと俺の部屋へ運び入れ戻ってくる。
それを見ていた母が、戻ってきたロボ子へ用事を頼む。
「ロボ子ちゃん、買い物に行ってきてくれないかしら?」
「かしこまりましたお母様!」
「ロボ子ちゃん! ついでにおつまみも買ってきてくれないかなぁ?」
久しぶりの休日で昼から管を巻いている父が、買い物へ向かおうとするロボ子の背中へ声をかける。
ロボ子は、一度振り向くと恭しく頭を下げる。
「かしこまりましたお父様」
「やっぱりロボ子ちゃんを買ってきて正解だったな! グダグダ文句も言わないし、なんでも笑顔でこなしてくれるしな!」
「そうね! 本当ロボ子ちゃんがいてくれて助かるわ!」
「いやおかしいだろ」
俺の言葉に父と母が不思議そうに振り向く。
「どうした? なんかあったか?」
「反抗期かしらね」
「反抗期じゃねぇよ! ロボ子の対応がおかしいって‼︎」
肩を怒らせる俺に、父が首を傾げる。
「そんな違ったか?」
「さぁ? よくわからないわね」
母がキョトンとした顔でこちらを見る。俺は頭をガリガリかくとロボ子が出て行った玄関を指差して叫ぶ。
「俺だけ塩対応すぎるだろ‼︎ どうなってんだよ‼︎」
「・・・・・・とか言われてもなぁ」
父は分厚い取扱説明書を取り出すとパラパラとめくり始める。
「・・・・・・ああ、なるほどな」
「なんだよ! なにがわかったんだよ!」
「これ、読んでみ?」
父は取扱説明書のあるページを開くと俺に見せてくる。
『本製品のAIは話しかけられた言語、方言、口調を学習しその家庭にあった性格に変化していきます。さあ、メイドをあなた色に染めあげましょう!』
「なんだこれ」
取扱説明書というよりは、怪しいキャッチコピーのような文面に辟易しながら、父の顔を窺う。
「ようは、お前の口調が荒っぽいからロボ子ちゃんの対応も荒っぽくなるってことだろうな」
「なんだそれ⁉︎ なんでそんな機能ついてんだよ‼︎ 制作者は馬鹿なのか⁉︎」
「おいおい、そういうとこだぞ?」
ぐうの音も出ない俺に、父が窘めるように続ける。
「ロボ子ちゃんが父さん達に優しく接しているように見えるのは、父さん達がロボ子ちゃんに優しく接しているからってことだな。お前もロボ子ちゃんに優しくしてみたらどうだ? いつもは亭主関白よろしく、『おい』だの『やれ』だの言ってるからなぁ。お前」
「なんでロボットに気をつかわなくちゃいけないんだよ‼︎」
「どうかなさいましたか?」
いつのまにか買い物から戻ってきていたロボ子が背後から声をかけてくる。
「うわっ⁉︎ いきなり出てくんな‼︎」
「は? うっせーし」
「おかえりーロボ子ちゃん! おつまみ買ってきてくれた?」
「はい! オイルサーディン買ってきました! どうぞ!」
父はロボ子から渡された缶詰を早速開けると、ビールを飲みながらつまみ始める。白けた目でそれを見る俺に母が背後から耳元で囁く。
「ほら、そんな乱暴な言葉使わないで、『おかえりロボ子ちゃん!』って言ってあげなさい。ほらっはやく!」
「なっ⁉︎・・・・・・おかえり、ロボ子ちゃん・・・・・・」
顔が熱くなるのを感じながら下を向く俺に、ロボ子が一瞬呆けたような顔をする。そして、
「は? きもちわる。なんですかいきなり?」
「こいつクーリングオフしよう! 決めた! 絶対クーリングオフする!」
「落ち着け、クーリングオフ期間はもう過ぎてるぞ?」
「もう学習期間終わってるのかもしれないわねぇ」
ロボ子は買い物袋を置くと、騒ぐ俺たちを横目に、ボソリとこぼす。
「ーーただいま。ご主人」
三週間前に父が酔った勢いでメイドロボットを買ってきた。そして、酔い潰れながらそのロボットに『ロボ子』と安直な名前をつけた。
母は父の無駄遣いに最初はいい顔をしなかったが、ロボ子の働きぶりに、今ではロボ子を一番可愛がっている。
ロボ子の見た目は若い女性を模しているため、最初は遠巻きに見ていた俺ではあるが、今では、こいつに命令するのが当たり前になっていた。
そんなロボ子の様子がなにやらおかしい。
父や母にその事を話しても、「気にしすぎだろーー思春期か?」などとからかわれ、全く取り合ってくれない。
しかし、どう考えてもおかしいのだ。
家の仕事はいつも通り完璧にこなすし、指示すれば俺の命令通りに動く。しかし、
「おい、ロボ子! あの荷物俺の部屋に運んでおけよ?」
「は? 仕方ねぇな。ったく。これぐらい自分で運べよな」
ロボ子は十キロはあろうかという段ボールをひょいっと担ぐと俺の部屋へ運び入れ戻ってくる。
それを見ていた母が、戻ってきたロボ子へ用事を頼む。
「ロボ子ちゃん、買い物に行ってきてくれないかしら?」
「かしこまりましたお母様!」
「ロボ子ちゃん! ついでにおつまみも買ってきてくれないかなぁ?」
久しぶりの休日で昼から管を巻いている父が、買い物へ向かおうとするロボ子の背中へ声をかける。
ロボ子は、一度振り向くと恭しく頭を下げる。
「かしこまりましたお父様」
「やっぱりロボ子ちゃんを買ってきて正解だったな! グダグダ文句も言わないし、なんでも笑顔でこなしてくれるしな!」
「そうね! 本当ロボ子ちゃんがいてくれて助かるわ!」
「いやおかしいだろ」
俺の言葉に父と母が不思議そうに振り向く。
「どうした? なんかあったか?」
「反抗期かしらね」
「反抗期じゃねぇよ! ロボ子の対応がおかしいって‼︎」
肩を怒らせる俺に、父が首を傾げる。
「そんな違ったか?」
「さぁ? よくわからないわね」
母がキョトンとした顔でこちらを見る。俺は頭をガリガリかくとロボ子が出て行った玄関を指差して叫ぶ。
「俺だけ塩対応すぎるだろ‼︎ どうなってんだよ‼︎」
「・・・・・・とか言われてもなぁ」
父は分厚い取扱説明書を取り出すとパラパラとめくり始める。
「・・・・・・ああ、なるほどな」
「なんだよ! なにがわかったんだよ!」
「これ、読んでみ?」
父は取扱説明書のあるページを開くと俺に見せてくる。
『本製品のAIは話しかけられた言語、方言、口調を学習しその家庭にあった性格に変化していきます。さあ、メイドをあなた色に染めあげましょう!』
「なんだこれ」
取扱説明書というよりは、怪しいキャッチコピーのような文面に辟易しながら、父の顔を窺う。
「ようは、お前の口調が荒っぽいからロボ子ちゃんの対応も荒っぽくなるってことだろうな」
「なんだそれ⁉︎ なんでそんな機能ついてんだよ‼︎ 制作者は馬鹿なのか⁉︎」
「おいおい、そういうとこだぞ?」
ぐうの音も出ない俺に、父が窘めるように続ける。
「ロボ子ちゃんが父さん達に優しく接しているように見えるのは、父さん達がロボ子ちゃんに優しく接しているからってことだな。お前もロボ子ちゃんに優しくしてみたらどうだ? いつもは亭主関白よろしく、『おい』だの『やれ』だの言ってるからなぁ。お前」
「なんでロボットに気をつかわなくちゃいけないんだよ‼︎」
「どうかなさいましたか?」
いつのまにか買い物から戻ってきていたロボ子が背後から声をかけてくる。
「うわっ⁉︎ いきなり出てくんな‼︎」
「は? うっせーし」
「おかえりーロボ子ちゃん! おつまみ買ってきてくれた?」
「はい! オイルサーディン買ってきました! どうぞ!」
父はロボ子から渡された缶詰を早速開けると、ビールを飲みながらつまみ始める。白けた目でそれを見る俺に母が背後から耳元で囁く。
「ほら、そんな乱暴な言葉使わないで、『おかえりロボ子ちゃん!』って言ってあげなさい。ほらっはやく!」
「なっ⁉︎・・・・・・おかえり、ロボ子ちゃん・・・・・・」
顔が熱くなるのを感じながら下を向く俺に、ロボ子が一瞬呆けたような顔をする。そして、
「は? きもちわる。なんですかいきなり?」
「こいつクーリングオフしよう! 決めた! 絶対クーリングオフする!」
「落ち着け、クーリングオフ期間はもう過ぎてるぞ?」
「もう学習期間終わってるのかもしれないわねぇ」
ロボ子は買い物袋を置くと、騒ぐ俺たちを横目に、ボソリとこぼす。
「ーーただいま。ご主人」
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