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真凛
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千鶴は、眠れない夜に悶々としつつも、 小中と同級生であった真凛のことを思っていた。小柄でがりがりに痩せていた真凛は、内気な少女で誰かが話し掛けても愛想笑いをするばかりで、クラスメートからは都合のよいペットのように扱われていた。 意地の悪い担任から真凛が修学旅行の費用が積み立てられなかったとみんなの前で告げられると、真っ赤な顔で目を伏せていたことが印象的であった。 それから、クラスメートからボンビーとあだ名を付けられ、よくからかわれていた彼女にはその家族も含め、根も葉もない様々な噂がされていた。 ある裕福な家庭の子が、みんなの前で、彼女に「あなたは泥棒よね。」と意地悪な顔で言ったのを聞いた千鶴が、「いい加減にしなよ。本当に不愉快だ。」と言うと、その子は、勝ち誇った表情で「だって、給食費も払わずに給食たべているもの。 ママがそう言っていた。」と残酷に笑った。当時の千鶴はその言葉に返す言葉を失って、彼女の胸ぐらをつかみ「そんなことは言うものじゃない。」と小さく呟くと、真凛は、「本当のことだから。別にいいの。」と寂しげに自虐の笑みを浮かべた。 その後、真凛はあまり学校に来なくなったが、千鶴が度々彼女の家を訪問することで、中学を卒業することが出来た。 中学三年生の頃に真凛は、「貧乏って想像以上に辛いものよ。いろいろなものを諦めなくてはいけないから。」とポロリと本音を漏らした。 その寂しげな表情を今でも忘れはしない。 そもそも積立金を払えずに修学旅行に行けないことや、貧乏であることを苛めの理由にすることが、この日本という民主主義国家の中で許されていいのかと考えてしまう。 彼女のように自分の境遇を恥じて誰にも迷惑を掛けないように教室の隅で只無駄に時間を消費しているのを見過ごすことが 民主主義の健全な姿であるのかと考えてしまう。 社会的弱者の声は、他を圧倒する民衆の声に揉み消される。 今、真凛は深夜のコンビニの店員として働き、自分がかつて味わった屈辱を味合わせないように、わずかな給料を弟達の給食費や修学旅行費に充てていた。 彼女はダイスケが指摘した、学習性無力化の罠に捕らわれているのではないかと考えてしまう。 暮らすに十分とはいえない賃金により、その人格を表現することも出来ず、夢を見ることもなく只日々の営みを行うだけの生涯となってしまうのではなかと。 そもそも、日本は本当に民主主義国家なのであろうかとの考えが浮かばざるをえない。 確かに選挙で選ばれた政治家が日本の仕組みを形成しているが、本当に民衆の為に行われている政治なのであろうか? そうか考えるとなにが正しいのかわからなくなってきた。 しかし、自分たちが行なっている活動は、その歪んだ社会の仕組みを変えるきっかけになるかもと思うと千鶴は胸が熱くなった。
千鳥は、団体社員の賃金規定を作成しつつも、そろそろ社内規定や雇用契約書なども会社法に基づき作成する必要があると考えていた。 既に月額数千万円の収入があるにも関わらず、NPO申請に使われた書類だけでは不十分であった。 ダイスケに相談したうえで、会社を持つ山田に助言を得ようと考えていると、知らないアドレスからメールが届いた。 メールには家の前で千鶴を見送る千鳥の写真が添付されており、「監視している」と綴られていた。 そのメールをダイスケたちに報告すると綱島が
「メールアドレスは、フリーのものだし、足が付くようなものはありませんね。しかし、公安とゼロワンのどちらからですかね?」と言い首を傾げた。ダイスケは、
「いずれにしても注意する必要があるな。」と言うと、
「正体もわからないし、目的もわからない。注意のしようがないね。」と雪乃が続いたレレオンが「ダイスケ、とりあえず百万円用意できるか?」と聞いて来たので、
「なにに必要なのか」と尋ねると
「公安なら問題がないが、ゼロワンは気を付ける必要がある。 俺が出来ればいいのだが、このとおり外国人だし。 街中で目立つからね。 でも腕のいい仲間がいるからそいつに警護も含め発注しようと思う。 百万円は、特別価格さ。 そいつとは持ちつ持たれつだからな。」と言い、不器用なウインクをした。ダイスケたちはこの件をレオンに一任した。
相賀は、千鶴が投稿するのを見届けると愛車のカブに乗り込み国会図書館へ向かった。 国会図書館は、日本で発売された全ての出版物が収蔵されていることから、ゼロワンのことが書かれた記事がないか調べるためであった。 とりあえず、九十年代の右翼や秘密結社を取り上げ特集した雑誌を閲覧した。 どの雑誌もゼロワンを特集したものはなかったが、オウム真理教を特集した記事の中に、今後注意すべき左翼団体として飯田の名前が挙げられていた。 相賀は、その記事の乗った雑誌に担当記者の所在を問い合わせたが、出版直後に担当記者が不慮の事故で亡くなり、当時はオウム真理教によるものと考えられたが、証拠が挙がらず事故として取り扱われていたことが伝えられた。 オウム真理教は過激な犯罪集団であったが、数多くの記事が出た中でこの記者を狙った理由が見つからない。 有賀の印象では本社の爆破や編集長の暗殺が構想されたサンデー毎日に比べれば、その内容は面白味もなかった。 登場する他団体も殺人を起こすようなところはなく、この記者だけが飯田の名前を載せていた。 有賀は、日本では珍しい楽しい案件になると確信していた。
デモの前日、レオンより有賀からの報告が伝えられるとみんなの表情が暗く曇った。有賀は、さらに飯田の同級生をつてに飯田が行った心理実験の参加者から話を聞くことできたため、その異様さを理解した。 レオンが
「千鶴ちゃんと千鳥さんは、今日からここに居てください。念のため、キムジウちゃんもね。 僕が守るから。」と自慢の腕を見せつけた。続けてレオンが言った。
「できるなら、他の人もここに居て欲しい。 組織というものは行動を起こす時に象徴として生贄を求める傾向があります。 山田さんもデモの監視に行かない方がいいのでは?」
「大丈夫じゃ。」と山田が根拠のない自信を見せた。 山田の性格から引き下がることはないし、山田を拉致監禁や殺害することの意義は見いだせないことから、仕方なくレオンが
「何か、あった場合は、この連絡先に電話を入れてください。」と有賀の電話番号を渡すと、綱島がメモを奪い、山田の携帯を取り上げて電話番号を登録した。
「そんなの自分でできるわい。」と山田がむくれると、綱島が神妙な顔で
「山田さん、あなたは絶対しませんよ。メモをポケットに押し込み危険が迫っても、もごもごとメモを探してポケットをまさぐるだけでしょう。」とポケットをまさぐる真似をした。
ダイスケも綱島の言い分が正しいと思っていたが、怒る山田のフォローの為に綱島に対し「失礼だぞ。」と言ったが、にやついた顔に本心が現れていた。
その後、キムジウから会議概要について、開催日は来週の土曜日、会場は横浜開港記念館の講堂、出席予定者は約300名となったと報告された。 横浜開港記念館は、大正七年に開港された歴史ある建物で、その棟から横浜ジャックの名称で観光名所になっている。
480名が入る講堂でも、使用料は土日でも12,600円と格安であった。 その後ダイスケが「時間について考えてことはあるかい?」と質問すると、千鶴は、困った表情で、
「時間がないとか、暇だとかいうことかしら?」と答えた。ダイスケは、真剣な表情で
「違う。 これまでも多くの人が、我々の為にその人生の内の貴重な時間を使ってくれていることは理解できるよね。」 ダイスケの言葉に千鶴は、はっと気付いた。
「私たちの歌を聞く時間、インタビューやホームページを見る時間、それらの時間は、その人たちの貴重な人生の一部であり、言い換えれば寿命を削っていることにもなっているのね。」 その考えをダイスケに伝えると、ダイスケは、嬉しそうに
「そうだ。」と答え、こういう考え方もあると言いながら例を挙げた。
「例えば、仕事をするのであれば、そうだな、時給千円として、300名が6時間働くとどうなる?」 綱島が
「180万円ですか?」と驚いた様子で答えた。 みんな急に落ち着かない様子になった。「それぞれが費やす時間を全て合計すると、1800時間になる。 実に75日分だ。 だから、使わせている我々にはその責任があるとは思わないか?」とダイスケは言った。
「それは、大変なことね。 無駄な時間であると思わせないようにしなくっちゃ。」とキムジウが気を引き締めた。 レオンの提案により今日から二日間は、事務所のあるアパートにみんなで泊まり込むことになった。 千鶴たちは、東逗子のしまむらへ着替えを買いに出かけていった 。千鶴がキムジウとパジャマを選んでいると、愛花が現れ、
「ジウちゃんってファザコンでしょう?」と尋ねてきた。 キムジウが
「なんでそう思うの?」と聞くと、
「ダイスケさんを見る目が最近怪しくなっている。」と指摘した。慌てたキムジウは、
「ダイスケさんは、尊敬できる大人だけど年も離れすぎているし、恋愛の対象ではない。」と否定したが、愛花が
「だったら、私がアタックしようかしら?」と言うと、複雑な表情で黙ってしまった。
千鶴も何故かもやもやとした心境になっていた。 愛花は、
「冗談よ。」と短めのショートパンツと胸元が大胆に空いたランニングの部屋着を手にその場を離れた。
「全く愛花さんはつまらない冗談を。」とキムジウが言い、愛花と色違いの部屋着を手に取ると、千鶴も別の色のものを選んだ。 二人は顔を見合わせ照れ笑いした。
お風呂に入った後、部屋着に着替えて事務所に行くと、ダイスケと綱島が難しい表情でパソコンの画面を見つめていた。 真剣なダイスケの表情を見て先ほどの愛花の言葉を思い出し、もやもやした心境になったが、
「何をしているの?」と声を掛けた。綱島が
「ちょっとね。」といい加減な返事をしたのに腹を立てた千鶴が
「教えてくれてもいいじゃない。」と強めに言うと、二人は、驚いた様子で千鶴を見たが、大胆な部屋着に驚いたようで直ぐに目を反らし、
「ゼロワンのことについて情報収集していた。」と綱島が答え、ダイスケが漏らした。
「なかなか強敵だな。 ただ、『日本よ永久に』というワードがキーになりそうだ。」
「作戦会議するから、千鶴ちゃんみんなを呼んできてくれないか?」と言われ、
「今の時間から?」と千鶴は、不満を口に出しつつもみんなを呼びに行った。
「こんな遅い時間に。」と文句を言いつつも集まった仲間たちに向かい、ダイスケが飯田について説明した後、綱島が
「ダイスケさんが言う通り、非常に危険人物であり、かつ我々に賛同している人たちをも利用しようとしていることから、飯田を世間にあぶり出したいと思います。」と言うと、
「どうやって?」と雪乃から声が上がった。 綱島が、
「実は記者の加藤さんに、飯田の情報を既に与えています。」と答えた。 飯田のことは、自分が対処することを任されていたと思っていた山田から
「すでに決定事項か。」と怒りの声が挙がったが、
「本当にすみません。 山田さんが反対するのであれば加藤さんに取材を止めるように言いますよ。」と言う綱島の申し訳なさそうな様子に、山田が
「まあ、最善策だ。」と苦笑いした。
千鳥は、団体社員の賃金規定を作成しつつも、そろそろ社内規定や雇用契約書なども会社法に基づき作成する必要があると考えていた。 既に月額数千万円の収入があるにも関わらず、NPO申請に使われた書類だけでは不十分であった。 ダイスケに相談したうえで、会社を持つ山田に助言を得ようと考えていると、知らないアドレスからメールが届いた。 メールには家の前で千鶴を見送る千鳥の写真が添付されており、「監視している」と綴られていた。 そのメールをダイスケたちに報告すると綱島が
「メールアドレスは、フリーのものだし、足が付くようなものはありませんね。しかし、公安とゼロワンのどちらからですかね?」と言い首を傾げた。ダイスケは、
「いずれにしても注意する必要があるな。」と言うと、
「正体もわからないし、目的もわからない。注意のしようがないね。」と雪乃が続いたレレオンが「ダイスケ、とりあえず百万円用意できるか?」と聞いて来たので、
「なにに必要なのか」と尋ねると
「公安なら問題がないが、ゼロワンは気を付ける必要がある。 俺が出来ればいいのだが、このとおり外国人だし。 街中で目立つからね。 でも腕のいい仲間がいるからそいつに警護も含め発注しようと思う。 百万円は、特別価格さ。 そいつとは持ちつ持たれつだからな。」と言い、不器用なウインクをした。ダイスケたちはこの件をレオンに一任した。
相賀は、千鶴が投稿するのを見届けると愛車のカブに乗り込み国会図書館へ向かった。 国会図書館は、日本で発売された全ての出版物が収蔵されていることから、ゼロワンのことが書かれた記事がないか調べるためであった。 とりあえず、九十年代の右翼や秘密結社を取り上げ特集した雑誌を閲覧した。 どの雑誌もゼロワンを特集したものはなかったが、オウム真理教を特集した記事の中に、今後注意すべき左翼団体として飯田の名前が挙げられていた。 相賀は、その記事の乗った雑誌に担当記者の所在を問い合わせたが、出版直後に担当記者が不慮の事故で亡くなり、当時はオウム真理教によるものと考えられたが、証拠が挙がらず事故として取り扱われていたことが伝えられた。 オウム真理教は過激な犯罪集団であったが、数多くの記事が出た中でこの記者を狙った理由が見つからない。 有賀の印象では本社の爆破や編集長の暗殺が構想されたサンデー毎日に比べれば、その内容は面白味もなかった。 登場する他団体も殺人を起こすようなところはなく、この記者だけが飯田の名前を載せていた。 有賀は、日本では珍しい楽しい案件になると確信していた。
デモの前日、レオンより有賀からの報告が伝えられるとみんなの表情が暗く曇った。有賀は、さらに飯田の同級生をつてに飯田が行った心理実験の参加者から話を聞くことできたため、その異様さを理解した。 レオンが
「千鶴ちゃんと千鳥さんは、今日からここに居てください。念のため、キムジウちゃんもね。 僕が守るから。」と自慢の腕を見せつけた。続けてレオンが言った。
「できるなら、他の人もここに居て欲しい。 組織というものは行動を起こす時に象徴として生贄を求める傾向があります。 山田さんもデモの監視に行かない方がいいのでは?」
「大丈夫じゃ。」と山田が根拠のない自信を見せた。 山田の性格から引き下がることはないし、山田を拉致監禁や殺害することの意義は見いだせないことから、仕方なくレオンが
「何か、あった場合は、この連絡先に電話を入れてください。」と有賀の電話番号を渡すと、綱島がメモを奪い、山田の携帯を取り上げて電話番号を登録した。
「そんなの自分でできるわい。」と山田がむくれると、綱島が神妙な顔で
「山田さん、あなたは絶対しませんよ。メモをポケットに押し込み危険が迫っても、もごもごとメモを探してポケットをまさぐるだけでしょう。」とポケットをまさぐる真似をした。
ダイスケも綱島の言い分が正しいと思っていたが、怒る山田のフォローの為に綱島に対し「失礼だぞ。」と言ったが、にやついた顔に本心が現れていた。
その後、キムジウから会議概要について、開催日は来週の土曜日、会場は横浜開港記念館の講堂、出席予定者は約300名となったと報告された。 横浜開港記念館は、大正七年に開港された歴史ある建物で、その棟から横浜ジャックの名称で観光名所になっている。
480名が入る講堂でも、使用料は土日でも12,600円と格安であった。 その後ダイスケが「時間について考えてことはあるかい?」と質問すると、千鶴は、困った表情で、
「時間がないとか、暇だとかいうことかしら?」と答えた。ダイスケは、真剣な表情で
「違う。 これまでも多くの人が、我々の為にその人生の内の貴重な時間を使ってくれていることは理解できるよね。」 ダイスケの言葉に千鶴は、はっと気付いた。
「私たちの歌を聞く時間、インタビューやホームページを見る時間、それらの時間は、その人たちの貴重な人生の一部であり、言い換えれば寿命を削っていることにもなっているのね。」 その考えをダイスケに伝えると、ダイスケは、嬉しそうに
「そうだ。」と答え、こういう考え方もあると言いながら例を挙げた。
「例えば、仕事をするのであれば、そうだな、時給千円として、300名が6時間働くとどうなる?」 綱島が
「180万円ですか?」と驚いた様子で答えた。 みんな急に落ち着かない様子になった。「それぞれが費やす時間を全て合計すると、1800時間になる。 実に75日分だ。 だから、使わせている我々にはその責任があるとは思わないか?」とダイスケは言った。
「それは、大変なことね。 無駄な時間であると思わせないようにしなくっちゃ。」とキムジウが気を引き締めた。 レオンの提案により今日から二日間は、事務所のあるアパートにみんなで泊まり込むことになった。 千鶴たちは、東逗子のしまむらへ着替えを買いに出かけていった 。千鶴がキムジウとパジャマを選んでいると、愛花が現れ、
「ジウちゃんってファザコンでしょう?」と尋ねてきた。 キムジウが
「なんでそう思うの?」と聞くと、
「ダイスケさんを見る目が最近怪しくなっている。」と指摘した。慌てたキムジウは、
「ダイスケさんは、尊敬できる大人だけど年も離れすぎているし、恋愛の対象ではない。」と否定したが、愛花が
「だったら、私がアタックしようかしら?」と言うと、複雑な表情で黙ってしまった。
千鶴も何故かもやもやとした心境になっていた。 愛花は、
「冗談よ。」と短めのショートパンツと胸元が大胆に空いたランニングの部屋着を手にその場を離れた。
「全く愛花さんはつまらない冗談を。」とキムジウが言い、愛花と色違いの部屋着を手に取ると、千鶴も別の色のものを選んだ。 二人は顔を見合わせ照れ笑いした。
お風呂に入った後、部屋着に着替えて事務所に行くと、ダイスケと綱島が難しい表情でパソコンの画面を見つめていた。 真剣なダイスケの表情を見て先ほどの愛花の言葉を思い出し、もやもやした心境になったが、
「何をしているの?」と声を掛けた。綱島が
「ちょっとね。」といい加減な返事をしたのに腹を立てた千鶴が
「教えてくれてもいいじゃない。」と強めに言うと、二人は、驚いた様子で千鶴を見たが、大胆な部屋着に驚いたようで直ぐに目を反らし、
「ゼロワンのことについて情報収集していた。」と綱島が答え、ダイスケが漏らした。
「なかなか強敵だな。 ただ、『日本よ永久に』というワードがキーになりそうだ。」
「作戦会議するから、千鶴ちゃんみんなを呼んできてくれないか?」と言われ、
「今の時間から?」と千鶴は、不満を口に出しつつもみんなを呼びに行った。
「こんな遅い時間に。」と文句を言いつつも集まった仲間たちに向かい、ダイスケが飯田について説明した後、綱島が
「ダイスケさんが言う通り、非常に危険人物であり、かつ我々に賛同している人たちをも利用しようとしていることから、飯田を世間にあぶり出したいと思います。」と言うと、
「どうやって?」と雪乃から声が上がった。 綱島が、
「実は記者の加藤さんに、飯田の情報を既に与えています。」と答えた。 飯田のことは、自分が対処することを任されていたと思っていた山田から
「すでに決定事項か。」と怒りの声が挙がったが、
「本当にすみません。 山田さんが反対するのであれば加藤さんに取材を止めるように言いますよ。」と言う綱島の申し訳なさそうな様子に、山田が
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