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台頭することと食い者しようとする大人
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次の日の朝、早速動画を見ると既に、再生は一万回を超えていた。 「いいね」を押すものが大半で、コメントも概ね良好であった。 しかし、既に慰安婦の歌に認定のコメントが上がっていた。 千鶴とキムジウがコメントに「応援してください」と返信すると、「神対応」とのコメントが上がり、ますます、コメントが付くようになり、盛り上がって行った。
ダイスケが、5チャンネルを開きスレが上がっていないか確認すると、既に二人の正体を晒してとのスレが上がり、犯人捜しの様相を呈していた。 二人の対応を真似して対応をしていると、ホームページの掲示板に千鶴から、「特定されました。」と書き込まれ、キムジウからも同様の書き込みが続いた。 この書き込みを見た綱島からは「予想以上でした。ダイスケさんヘルプです。」との書き込みがあり、綱島の家の住所が知らされた。
ダイスケが、横浜の綱島の家に向かおうとPCXに乗ると雪乃が家から出てきて、不安そうな表情で「大丈夫かい?」と聞いてきた。 雪乃も動画の勢いをみて心配になってきたようであった。 「私にもできることがあるなら」と雪乃が言ったので、「二人の対応に倣ってコメントの対応をして欲しい。」とダイスケが言うと、「頑張ってみるよ。」と答えた。
ダイスケは、PCXを逗子インターから横浜横須賀高速道路に乗った。 緊急事態である。少しでも速く綱島を助ける必要があった。 PCXは、街乗りではその強みを発揮したが、高速では全車種中最弱な馬力と軽さが弱点となっていた。 その日は強い風が吹いており、全速で回すダイスケは、横風に煽られていた。 高速を降りて、サイトで既に見付けていた二輪車用の駐輪場に停め、綱島が住んでいるという家に向かった。
綱島の家は、横浜駅から徒歩で5分ほどの豪華なマンションで、とても大学生が一人で住むところとは思えなかった。 指定された部屋番号を押すと、心もとない声で、「直ぐ開けます。」と綱島がインターフォン越しに答え、オートロックが解除された。 綱島の部屋は、その外観からは想像できない汚ない部屋であった。 今も昔も片づけの不得意な男の一人暮らしはそういうものである。 部屋に通した綱島は、気まずそうな顔でダイスケを見ていたが、ダイスケに「俺の学生の頃より綺麗。」との言葉に安心したようだった。 ダイスケを招き入れた一室は、何処かのコントロールルームのようにコンピュータと撮影機材が整然と並べられていた。 初めに通されたリビングとは大違いである。
綱島は、「すみません。ダイスケさん、ネットでお願いしてもよかったのですけれど、一緒に作業した方が効率が良くなると思って呼び出してしまいました。」と言いつつ、作成中のサイトをダイスケに見せた。 もう既に枠組みはできていて、後は文書と画像を入れれば、十分なように思えた。
「ダイスケさん、この絵コンテに合わせて文書を書いてくれませんか。 出来れば、今日撮影を予定している時間までに。」と言うと、このページに合わせイメージした絵の描かれた絵コンテを渡してきた。 才能と言うのは残酷である。 ダイスケは漫画が好きで、以前漫画家を目指したこともあったが、いくら努力しても上手くならない絵心に諦めた経験があった。 もし、綱島ほどの能力があれば漫画家になっていたであろう。 そんなことを考えながらダイスケは、「分かった。」と答えた。
16時にはダイスケが、文書をテキストに打ち込み、綱島に渡すと綱島は、「ダイスケさん、誤記が多いですよ。 まあ、僕のイメージにはあっていますが。」と言いつつ、サイトを仕上げていった。 サイトに上がった文章をみると確かにダイスケのイメージした趣旨からは逸れてはいないものの、ほとんど違うものになっていた。 但し、綱島の文章の方が良くできていたので文句の付けようはなかった。 18時を過ぎると、綱島は、「ビブレに行きますよ。」と動画にコメントをするダイスケに言った。 そのころには動画のコメントにも「反日工作」や「慰安婦は売春婦です」などの書き込みが多くなってきていた。 綱島は、ビブレで若者向けの女性服を次々と買っていた。 ダイスケが「いずれ経費で落ちるから。」とカードを渡そうとしたが、「経費で落ちるならポイントつくから。」と自分のゴールドカードで支払いを済ませた。 学生がゴールドカードとは恐れ入るとダイスケが思っていると、 「部屋もそうですけど、ユーチューバーって儲かるんですよ。 親のすねかじりではありませんよ。」と言った。 ダイスケは、自分が綱島と同じ年であった頃に何をしていたか考えてみたが、パチスロに麻雀、バイトと不毛な時間を過ごしながら、親からの仕送りを食いつぶして生きていたことを思い出し、この青年に畏敬の念を抱いた。
約束の時間に横浜駅の南口改札に行くと既に、キムジウが来ていた。 キムジウはスマホでコメントの対応しており、ダイスケたちに気付くと「大変なことになった」と困った様子で言った。 ほどなく、千鶴たちが到着した。 山田の後に大柄の黒人男性が立っていた。
「彼、レオンくんね。」山田が言うと大柄の男は、「レオンです。 アメリカのルポライターです。 今日は、山田さんに誘われてやってきました。」と流暢な日本語で挨拶した。
山田の話では、レオンは子供の頃に横須賀のベースで働く両親に連れられ日本で五年ほど過ごしたことがあり、アメリカ軍の帯同ライターとしてイラクやアフガンにも行ったことのあり、ここ数年は横須賀のベースを中心に記事を書いている人物で、以前に日本の違法ギャンブルについて取材をしていた時にあの雀荘で知り合ったらしい。 以後、顔の広い山田に何度か世話になっていたため、今回のことをポロリと漏らした山田の話に興味を持ち付いて来たとのことであった。
「ダイちゃん、こんなに展開が早くなるなんて思っていなかったから、まだ話してなかったけど、今回の活動は、英語でもハングルでもきちっと発信しないといけないと思ったから、思い切ってレオンくんに話したんだ。 今回は、レオンくんには英語のライティングと中立な立場からの助言、さらに記録映像を頼むことにして、雇おうと思っているのだけど、どうかな。」と山田が自信なさげに言った。
ダイスケは「願ってもないよ、山田さん。皆もいいよな。」と答えた。
スタジオでは、撮影が綱島の手際の良い段取りで着々と進行した。 綱島が選んだ衣装は、二人にとても似合っていた。 撮影に参加していたレオンが、ダイスケに話し掛けてきた。
「ダイスケ、徴用工問題や慰安婦問題は、日韓請求間協定で解決積みであるのに、ことある毎に蒸し返す韓国のことを本当はどう思っているか?」
「そのことについては、国家間で条約や協定、合意を作って問題を解決する枠組みを揺るがす行為であり、クローバル化が進んでいる現代においては、不合理なことだと思う。 しかし、その陰で過去の理不尽な行為を受けたことが、語れない世の中ではその行為が繰り返される危険性が孕んでいるとも考えられる。 実際、今の日本では、徴用工や慰安婦が、通常の労働者や希望した売春婦のように扱われている。」
厳しい表情で、「では、どうすればいい・・・」とレオンが言うと、ダイスケが言った。「2007年の西松建設事件の最高裁判決では司法上の救済はできないとする一方で被害者救済に向けた関係者の自発的努力を促した。 もし仮に過去に被害を受けた人たちに向き合ってくれれば、よかったのではないかと思う。 そして、それは記録され、継承されるべきだと思う。」
「個人への対応が必要と考えているのか。 合理的なアメリカ人では、考えない思想だな。でも、他国の戦争に介入して泥沼になっていくアメリカよりはましさ。 国の利益のために、自国と他国の国民の命を奪っているのだから。」とレオンが笑いながら言った。
撮影が終わると、その場で、綱島が編集作業をテキパキと行っていた。
「そう言えば、まだ名前を決めていませんでしたけど。どうしますか?」と間の抜けた質問をしてきた。 確かに動画のタイトルは、「少女二人が昭和の部屋でオリジナル曲を歌ってみた」であったが、その後、デュオの名前をどうするかの話題が出ていなかった。 そもそも、ファンサイトを作成していた時に、綱島は気付いていたに違いなかったのに。
「ここで言うのか?」とダイスケが思っていると、綱島は言った。
「いやだな、僕は気付いていましたよ。今は、ジウと千鶴(仮)としていますよ。」 皆、アイディアを持ち合わせていなかったのか、全員が「それでいい」と同意し確認した後サイトがアップされた。 サイトの内容は、二人を紹介するごく一般的なものであったが、興味のあることとして平和と人権問題という言葉を入れることにした。
その週の土曜日の朝、綱島から依頼されたファンサイトの会員規約を作成に奮闘しながら、ダイスケは、ユーチューブの荒れていくコメント欄を見ながら今後の展開を考えていた。再生数は、十万回を超え、相変わらず評価するコメントが多かったが、反日工作、慰安婦というコメントを繰り返す視聴者も少なくなかった。 特にユーザー名「ネコミミハンター」と「日本政府は正義の味方」は執着型で、この動画を陥れるための仕事をしているようにさえ感じられた。 ダイスケが二人の対応について考えていると、定例会の時間が迫ってきた。綱島に「できませんでした。」と言うのも癪だったが、明日まで待ってもらえるようお願いしようと思い家を出た。
定例会議では、綱島から動画の再生数やコメントの傾向、ファンサイトの利用履歴が報告された。 綱島から「会員規約はできましたか?」とダイスケに聞いてきたので、予定通りの言い訳の「明日まで待ってくれ」と答えた。 綱島は、囲い込むべき人材のコメント傾向とそのフォローを千鶴とキムジウに依頼し、新たなコメントに対する回答例集を作成した。そしてこれから時間があるときは千鳥、山田、雪乃にも行うよう依頼した。
「会社みたいだな」と山田が茶化すように言う。
「それ以上だと考えてください。矢面に立つ二人が潰れたら、全て終わりますよ。」と綱島が言った。 続いて、キムジウから、来週末の訪韓の日程が報告され、来週までのタイムスケジュールが、組まれて行った。 幾つかのメディアから取材の申し込みがコメントに寄せられていることから、
「日韓問題に触れることなく、人権や世界平和の観点からインタビューを早期に受けては?」との綱島からの提案があり、
「事情を伝え、情状してもらえるのであれば。」とダイスケが言うと、
「知り合いのギルバートにお願いできると思う。」とレオンからの申し出があった。
少し急ぎすぎではないかとの慎重論もあったが、今後のことを考えて申し出を受けることになった。 レオンがギルバートにメールで連絡すると「明日の15時だったら可能だ」との返信があった。 キムジウと千鶴の二人から、「回答集が必要ね。」の言葉に
ダイスケが「二人の本音を話せばいい。」と返し、
雪乃から「いつでも自分の言葉で。」と声が上がった。
売れない自称フリーライターの加藤が、歌う少女の一人が大家の孫である千鶴であることに気付いたのは、動画がアップされて直ぐであった。 ネタを探してユーチューブをチェックしている時に千回ほど再生された動画をたまたま見つけた。 以前反韓感情を煽る記事で少し稼がせてもらったが、有名な雑誌や記者が参戦してきて、最近は仕事にありつけない状況になっていた。 今まで、ほとんど顔を見せなかった少女が、このところ頻繁に姿を見せるようになったので、昨日雪乃に誰なのかと聞くと、
「私の孫。 お前はちょっとでも近づくんじゃないよ。 追い出すよ。」と言われた。
その歌声に感動したものの、動画回数もうなぎ上りで、今後話題になって行くことが容易に予想できた。 「カモがきた」と加藤は思った。それから毎日、千鶴を尾行すると雪乃や同じアパートに住む男、外人などと行動を共にしていることが分かった。 芸能プロダクションの関係者かとも思ったが、どうも様子が違った。 メディアに取り上げられ、注目され初めたらすぐに彼女の記事を「フライデー」にでも売れば、金になると思っていた。
日曜日の朝の9時には綱島がダイスケの部屋を訪れて作業をしていた。 昨晩ダイスケが送った会員規約を受けファンサイトの更新を相談しながら行うことと、取材の準備をするためであった。 ダイスケも綱島の指示を受けながら作業を進めながら、煙草を吸いに外に出ようとすると
「気にしませんから、煙草。山田さんもダイスケさんも雀荘では容赦なしに吸っていたし、自分も気にしていませんから。」と言いながら、
「これからもっと忙しくなるから、体にだけは注意してください。」と付け加えた。
「ダイスケさん相談があるんですが」と綱島は作業を続けながら言った。
「俺、今回のフアンサイトに集まる人や、今度アップする我々の活動に参加してくれる人の行動原理についてデータを収集してみたいのですが、問題ありますか?」と聞いて来た。ダイスケが、「行動原理とは?」と聞くと、綱島は、
「例えば、どのような理由でフアンクラブに参加したのか? またこの活動に参加したのか? 活動が過熱していく理由や冷めてゆく理由などをアルゴリズムを組んで分析したいのです。 今では、動画再生も数百万回となり、フアンサイトも十万アクセスあります。まさにビックデータになりつつあります。 社会学的に貴重なデータに成り得ると思います。」と言った。
ダイスケは、嬉しそうに「わかった。但しみんなにも聞いてからね。」と言いつつ、「日本の個人データの取得についての問題点についてわかるかい?」と綱島に聞くと、綱島は「わからない。」と答えた。
「先のリクナビで内定辞退率をAIで分析するソフトの販売について、本人の個人情報が分かるとか、本人より同意が不十分であったという事件があったが、俺は、リクルートが本人を特定できる情報があったという情報は間違っていると思う 。流石に優秀なハッカーが時間を掛けて個人を特定するために努力すれば、個人を特定する情報の一つには成り得ると思われるが、それにより得られる対価は非常に小さい。 もし、リアルタイムでリクルートが個人を特定した企業からの依頼にその個人のリクルート状況をAI分析させていたら論外だが、いくら何でもリクルートがやるとは思えない。 ということは、日本における個人情報のあやふやさを司法が理解していないことが予測される。」とダイスケが言うと、
「なるほど、ではどうすればいいのですか?」と綱島が聞き、
「十分な説明文書と同意文書が必要だ。」とダイスケが答えた。
「説明文書には、実験の方法と個人情報が公開されることがないこと、個人が損害を受けることがないことが記載されていなければならないし、同意書は、それについて同意しますと本人に納得させなくてはいけない。 また、同意しない者がデータから外されるよう注意が必要だし、同意の撤回も十分に注意すべきだ。」と話すと、
綱島が「了解です。」と言い、暫くすると「これでいいですか?」とダイスケに見せた。そのすぐれた出来に目を見張っていると「ダイスケさんもさぼらず、頑張ってください。」と憎まれ口を叩いた。ファンサイトに「本日、インタビュー生中継」との告知とメールアドレスとツイッターを埋め込むと既に13時を回っていた。 雪乃から昼ごはんが差し入れられると、ほどなく全員が集まった。
食後の打ち合わせで、日韓問題のこと、両国政府の批判などを行わないことを確認した後、ダイスケから話が切り出された。
「これから二人には先頭に立って、この計画を引っ張ってもらう必要があるし、他の人たちも色々な文書やコメントを出してもらうことになるかも入れない。 我々がこれからすることは一種のプロパガンダである。」ダイスケの言葉に驚いた様子の綱島を見て、
「プロパガンダってなんだ? 綱島くん。」というダイスケの問いに、
「僕は、理系だからうろ覚えだけど、国とか政治家が自分の支持を得ようと行う扇動とか演説みたいなもので、イメージの良くないものだったような感じ。」と綱島が答えた。
それに対しダイスケは、言った。
「ウィッキによると、あらゆる宣伝や広告、広報活動、政治活動はプロパガンダに含まれる。人々が支持しているということが自らの正当性であると主張する者にとって、支持を勝ち取り維持し続けるためのプロパガンダは重要なものとなりえる。対立者が存在する者にとってプロパガンダは武器の一つであり、自勢力やその行動の支持を高めるプロパガンダのほかに、敵対勢力の支持を自らに向けるためのもの、または敵対勢力の支持やその行動を失墜させるためのプロパガンダも存在するとある。」
「なるほど、私たちの被害者一人ひとりの立場に立って解決するというメッセージが、一つのプロパガンダになり、場合によっては「解決済みである」との日本政府のプロパガンダと対立するものとなる可能性があるのね。」とキムジウが答えた。
そうだとダイスケが頷き、続けた。
「海外の有名人を使った地球温暖化をテーマにしたドキュメンタリーで、サハラ砂漠南のサヘル地帯の砂漠化が進み、大量の環境難民が出ている理由について、人類が産業革命以来使い続けた化石燃料だとし、産業革命以降2℃の気温上昇があったとするデータを示しながら現地の活動家が語るシーンがあった。 ジウちゃん、この発言が間違っていると思う?」
キムジウは、「私も間違っていないと思うわ。 私は、何にもしていないけれど、地球の温暖化がこのまま進むと大変なことになると、多くの人が言っているもの。」と自信なさげに言った。
「キムジウさんの言うことは、正しい。ダイスケ、この後は地球温暖化防止運動かい。」と雪乃が言った。
「グーグルと、直ぐにサヘル地帯の砂漠化の主な原因が、人口の急激な増加であることが分かる。 この番組のプロパガンダは、“地球温暖化を防ぐためには、化石燃料を使わないようにするしかない”であり、“大金を稼ぐ化石燃料という悪の組織との聖戦”を共感する者を扇動することにある。」とのダイスケの言葉に、
山田が「なるほど。 でも地球温暖化は、真実だろう。悪いことじゃないとは思わないか?」と言うと、ダイスケが反論した。
「確かに、多くの科学者が言うように、地球温暖化が進めば、気象災害が増えて、海面上昇が起こるだろう。 しかし、その理由が石炭燃料の使用であることを化石燃料が原因であることを客観的に証明した報告もない。 だからと言って温暖化を抑える努力を怠るという意味ではないけれどね。 ちなみに産業革命以降、2℃の上昇は、2℃以内に抑えることが国連の目標値であることと、その地域での気象データの取得が継続的に行われていたか疑わしいので、そのデータは捏造されたものに思われてしまう。」
「では、どうすればいいの?」と千鶴が聞いた。
「だからこそ、常に本音で語ってほしい。 世の中には、煽ったり、訴えたることで、自分の言わせたいことを他の人に言わせるようにする者や、言葉巧みに騙す者など色々な方法で人を操るやつがいる。 そういう人たちに迎合することなく、自分を保って本音を話して欲しい。 もちろんここに居る人も同じで、違うと思う言動や思想があれば、それは指摘して声を出していって欲しい。 全てを理解し、行動できる人はいないのだから。 もう一つは、他人が言った言葉に根拠があるか否かも自ら確かめて欲しい。」
「でも、決めかねていることや分からないことはどうすればいいの?」そう千鶴が聞くと、ダイスケが「わからない、検討中です。と答えればいい。」と言うと
「ダイちゃん。俺もそう思うよ」と山田さんが言った。
ダイスケが、5チャンネルを開きスレが上がっていないか確認すると、既に二人の正体を晒してとのスレが上がり、犯人捜しの様相を呈していた。 二人の対応を真似して対応をしていると、ホームページの掲示板に千鶴から、「特定されました。」と書き込まれ、キムジウからも同様の書き込みが続いた。 この書き込みを見た綱島からは「予想以上でした。ダイスケさんヘルプです。」との書き込みがあり、綱島の家の住所が知らされた。
ダイスケが、横浜の綱島の家に向かおうとPCXに乗ると雪乃が家から出てきて、不安そうな表情で「大丈夫かい?」と聞いてきた。 雪乃も動画の勢いをみて心配になってきたようであった。 「私にもできることがあるなら」と雪乃が言ったので、「二人の対応に倣ってコメントの対応をして欲しい。」とダイスケが言うと、「頑張ってみるよ。」と答えた。
ダイスケは、PCXを逗子インターから横浜横須賀高速道路に乗った。 緊急事態である。少しでも速く綱島を助ける必要があった。 PCXは、街乗りではその強みを発揮したが、高速では全車種中最弱な馬力と軽さが弱点となっていた。 その日は強い風が吹いており、全速で回すダイスケは、横風に煽られていた。 高速を降りて、サイトで既に見付けていた二輪車用の駐輪場に停め、綱島が住んでいるという家に向かった。
綱島の家は、横浜駅から徒歩で5分ほどの豪華なマンションで、とても大学生が一人で住むところとは思えなかった。 指定された部屋番号を押すと、心もとない声で、「直ぐ開けます。」と綱島がインターフォン越しに答え、オートロックが解除された。 綱島の部屋は、その外観からは想像できない汚ない部屋であった。 今も昔も片づけの不得意な男の一人暮らしはそういうものである。 部屋に通した綱島は、気まずそうな顔でダイスケを見ていたが、ダイスケに「俺の学生の頃より綺麗。」との言葉に安心したようだった。 ダイスケを招き入れた一室は、何処かのコントロールルームのようにコンピュータと撮影機材が整然と並べられていた。 初めに通されたリビングとは大違いである。
綱島は、「すみません。ダイスケさん、ネットでお願いしてもよかったのですけれど、一緒に作業した方が効率が良くなると思って呼び出してしまいました。」と言いつつ、作成中のサイトをダイスケに見せた。 もう既に枠組みはできていて、後は文書と画像を入れれば、十分なように思えた。
「ダイスケさん、この絵コンテに合わせて文書を書いてくれませんか。 出来れば、今日撮影を予定している時間までに。」と言うと、このページに合わせイメージした絵の描かれた絵コンテを渡してきた。 才能と言うのは残酷である。 ダイスケは漫画が好きで、以前漫画家を目指したこともあったが、いくら努力しても上手くならない絵心に諦めた経験があった。 もし、綱島ほどの能力があれば漫画家になっていたであろう。 そんなことを考えながらダイスケは、「分かった。」と答えた。
16時にはダイスケが、文書をテキストに打ち込み、綱島に渡すと綱島は、「ダイスケさん、誤記が多いですよ。 まあ、僕のイメージにはあっていますが。」と言いつつ、サイトを仕上げていった。 サイトに上がった文章をみると確かにダイスケのイメージした趣旨からは逸れてはいないものの、ほとんど違うものになっていた。 但し、綱島の文章の方が良くできていたので文句の付けようはなかった。 18時を過ぎると、綱島は、「ビブレに行きますよ。」と動画にコメントをするダイスケに言った。 そのころには動画のコメントにも「反日工作」や「慰安婦は売春婦です」などの書き込みが多くなってきていた。 綱島は、ビブレで若者向けの女性服を次々と買っていた。 ダイスケが「いずれ経費で落ちるから。」とカードを渡そうとしたが、「経費で落ちるならポイントつくから。」と自分のゴールドカードで支払いを済ませた。 学生がゴールドカードとは恐れ入るとダイスケが思っていると、 「部屋もそうですけど、ユーチューバーって儲かるんですよ。 親のすねかじりではありませんよ。」と言った。 ダイスケは、自分が綱島と同じ年であった頃に何をしていたか考えてみたが、パチスロに麻雀、バイトと不毛な時間を過ごしながら、親からの仕送りを食いつぶして生きていたことを思い出し、この青年に畏敬の念を抱いた。
約束の時間に横浜駅の南口改札に行くと既に、キムジウが来ていた。 キムジウはスマホでコメントの対応しており、ダイスケたちに気付くと「大変なことになった」と困った様子で言った。 ほどなく、千鶴たちが到着した。 山田の後に大柄の黒人男性が立っていた。
「彼、レオンくんね。」山田が言うと大柄の男は、「レオンです。 アメリカのルポライターです。 今日は、山田さんに誘われてやってきました。」と流暢な日本語で挨拶した。
山田の話では、レオンは子供の頃に横須賀のベースで働く両親に連れられ日本で五年ほど過ごしたことがあり、アメリカ軍の帯同ライターとしてイラクやアフガンにも行ったことのあり、ここ数年は横須賀のベースを中心に記事を書いている人物で、以前に日本の違法ギャンブルについて取材をしていた時にあの雀荘で知り合ったらしい。 以後、顔の広い山田に何度か世話になっていたため、今回のことをポロリと漏らした山田の話に興味を持ち付いて来たとのことであった。
「ダイちゃん、こんなに展開が早くなるなんて思っていなかったから、まだ話してなかったけど、今回の活動は、英語でもハングルでもきちっと発信しないといけないと思ったから、思い切ってレオンくんに話したんだ。 今回は、レオンくんには英語のライティングと中立な立場からの助言、さらに記録映像を頼むことにして、雇おうと思っているのだけど、どうかな。」と山田が自信なさげに言った。
ダイスケは「願ってもないよ、山田さん。皆もいいよな。」と答えた。
スタジオでは、撮影が綱島の手際の良い段取りで着々と進行した。 綱島が選んだ衣装は、二人にとても似合っていた。 撮影に参加していたレオンが、ダイスケに話し掛けてきた。
「ダイスケ、徴用工問題や慰安婦問題は、日韓請求間協定で解決積みであるのに、ことある毎に蒸し返す韓国のことを本当はどう思っているか?」
「そのことについては、国家間で条約や協定、合意を作って問題を解決する枠組みを揺るがす行為であり、クローバル化が進んでいる現代においては、不合理なことだと思う。 しかし、その陰で過去の理不尽な行為を受けたことが、語れない世の中ではその行為が繰り返される危険性が孕んでいるとも考えられる。 実際、今の日本では、徴用工や慰安婦が、通常の労働者や希望した売春婦のように扱われている。」
厳しい表情で、「では、どうすればいい・・・」とレオンが言うと、ダイスケが言った。「2007年の西松建設事件の最高裁判決では司法上の救済はできないとする一方で被害者救済に向けた関係者の自発的努力を促した。 もし仮に過去に被害を受けた人たちに向き合ってくれれば、よかったのではないかと思う。 そして、それは記録され、継承されるべきだと思う。」
「個人への対応が必要と考えているのか。 合理的なアメリカ人では、考えない思想だな。でも、他国の戦争に介入して泥沼になっていくアメリカよりはましさ。 国の利益のために、自国と他国の国民の命を奪っているのだから。」とレオンが笑いながら言った。
撮影が終わると、その場で、綱島が編集作業をテキパキと行っていた。
「そう言えば、まだ名前を決めていませんでしたけど。どうしますか?」と間の抜けた質問をしてきた。 確かに動画のタイトルは、「少女二人が昭和の部屋でオリジナル曲を歌ってみた」であったが、その後、デュオの名前をどうするかの話題が出ていなかった。 そもそも、ファンサイトを作成していた時に、綱島は気付いていたに違いなかったのに。
「ここで言うのか?」とダイスケが思っていると、綱島は言った。
「いやだな、僕は気付いていましたよ。今は、ジウと千鶴(仮)としていますよ。」 皆、アイディアを持ち合わせていなかったのか、全員が「それでいい」と同意し確認した後サイトがアップされた。 サイトの内容は、二人を紹介するごく一般的なものであったが、興味のあることとして平和と人権問題という言葉を入れることにした。
その週の土曜日の朝、綱島から依頼されたファンサイトの会員規約を作成に奮闘しながら、ダイスケは、ユーチューブの荒れていくコメント欄を見ながら今後の展開を考えていた。再生数は、十万回を超え、相変わらず評価するコメントが多かったが、反日工作、慰安婦というコメントを繰り返す視聴者も少なくなかった。 特にユーザー名「ネコミミハンター」と「日本政府は正義の味方」は執着型で、この動画を陥れるための仕事をしているようにさえ感じられた。 ダイスケが二人の対応について考えていると、定例会の時間が迫ってきた。綱島に「できませんでした。」と言うのも癪だったが、明日まで待ってもらえるようお願いしようと思い家を出た。
定例会議では、綱島から動画の再生数やコメントの傾向、ファンサイトの利用履歴が報告された。 綱島から「会員規約はできましたか?」とダイスケに聞いてきたので、予定通りの言い訳の「明日まで待ってくれ」と答えた。 綱島は、囲い込むべき人材のコメント傾向とそのフォローを千鶴とキムジウに依頼し、新たなコメントに対する回答例集を作成した。そしてこれから時間があるときは千鳥、山田、雪乃にも行うよう依頼した。
「会社みたいだな」と山田が茶化すように言う。
「それ以上だと考えてください。矢面に立つ二人が潰れたら、全て終わりますよ。」と綱島が言った。 続いて、キムジウから、来週末の訪韓の日程が報告され、来週までのタイムスケジュールが、組まれて行った。 幾つかのメディアから取材の申し込みがコメントに寄せられていることから、
「日韓問題に触れることなく、人権や世界平和の観点からインタビューを早期に受けては?」との綱島からの提案があり、
「事情を伝え、情状してもらえるのであれば。」とダイスケが言うと、
「知り合いのギルバートにお願いできると思う。」とレオンからの申し出があった。
少し急ぎすぎではないかとの慎重論もあったが、今後のことを考えて申し出を受けることになった。 レオンがギルバートにメールで連絡すると「明日の15時だったら可能だ」との返信があった。 キムジウと千鶴の二人から、「回答集が必要ね。」の言葉に
ダイスケが「二人の本音を話せばいい。」と返し、
雪乃から「いつでも自分の言葉で。」と声が上がった。
売れない自称フリーライターの加藤が、歌う少女の一人が大家の孫である千鶴であることに気付いたのは、動画がアップされて直ぐであった。 ネタを探してユーチューブをチェックしている時に千回ほど再生された動画をたまたま見つけた。 以前反韓感情を煽る記事で少し稼がせてもらったが、有名な雑誌や記者が参戦してきて、最近は仕事にありつけない状況になっていた。 今まで、ほとんど顔を見せなかった少女が、このところ頻繁に姿を見せるようになったので、昨日雪乃に誰なのかと聞くと、
「私の孫。 お前はちょっとでも近づくんじゃないよ。 追い出すよ。」と言われた。
その歌声に感動したものの、動画回数もうなぎ上りで、今後話題になって行くことが容易に予想できた。 「カモがきた」と加藤は思った。それから毎日、千鶴を尾行すると雪乃や同じアパートに住む男、外人などと行動を共にしていることが分かった。 芸能プロダクションの関係者かとも思ったが、どうも様子が違った。 メディアに取り上げられ、注目され初めたらすぐに彼女の記事を「フライデー」にでも売れば、金になると思っていた。
日曜日の朝の9時には綱島がダイスケの部屋を訪れて作業をしていた。 昨晩ダイスケが送った会員規約を受けファンサイトの更新を相談しながら行うことと、取材の準備をするためであった。 ダイスケも綱島の指示を受けながら作業を進めながら、煙草を吸いに外に出ようとすると
「気にしませんから、煙草。山田さんもダイスケさんも雀荘では容赦なしに吸っていたし、自分も気にしていませんから。」と言いながら、
「これからもっと忙しくなるから、体にだけは注意してください。」と付け加えた。
「ダイスケさん相談があるんですが」と綱島は作業を続けながら言った。
「俺、今回のフアンサイトに集まる人や、今度アップする我々の活動に参加してくれる人の行動原理についてデータを収集してみたいのですが、問題ありますか?」と聞いて来た。ダイスケが、「行動原理とは?」と聞くと、綱島は、
「例えば、どのような理由でフアンクラブに参加したのか? またこの活動に参加したのか? 活動が過熱していく理由や冷めてゆく理由などをアルゴリズムを組んで分析したいのです。 今では、動画再生も数百万回となり、フアンサイトも十万アクセスあります。まさにビックデータになりつつあります。 社会学的に貴重なデータに成り得ると思います。」と言った。
ダイスケは、嬉しそうに「わかった。但しみんなにも聞いてからね。」と言いつつ、「日本の個人データの取得についての問題点についてわかるかい?」と綱島に聞くと、綱島は「わからない。」と答えた。
「先のリクナビで内定辞退率をAIで分析するソフトの販売について、本人の個人情報が分かるとか、本人より同意が不十分であったという事件があったが、俺は、リクルートが本人を特定できる情報があったという情報は間違っていると思う 。流石に優秀なハッカーが時間を掛けて個人を特定するために努力すれば、個人を特定する情報の一つには成り得ると思われるが、それにより得られる対価は非常に小さい。 もし、リアルタイムでリクルートが個人を特定した企業からの依頼にその個人のリクルート状況をAI分析させていたら論外だが、いくら何でもリクルートがやるとは思えない。 ということは、日本における個人情報のあやふやさを司法が理解していないことが予測される。」とダイスケが言うと、
「なるほど、ではどうすればいいのですか?」と綱島が聞き、
「十分な説明文書と同意文書が必要だ。」とダイスケが答えた。
「説明文書には、実験の方法と個人情報が公開されることがないこと、個人が損害を受けることがないことが記載されていなければならないし、同意書は、それについて同意しますと本人に納得させなくてはいけない。 また、同意しない者がデータから外されるよう注意が必要だし、同意の撤回も十分に注意すべきだ。」と話すと、
綱島が「了解です。」と言い、暫くすると「これでいいですか?」とダイスケに見せた。そのすぐれた出来に目を見張っていると「ダイスケさんもさぼらず、頑張ってください。」と憎まれ口を叩いた。ファンサイトに「本日、インタビュー生中継」との告知とメールアドレスとツイッターを埋め込むと既に13時を回っていた。 雪乃から昼ごはんが差し入れられると、ほどなく全員が集まった。
食後の打ち合わせで、日韓問題のこと、両国政府の批判などを行わないことを確認した後、ダイスケから話が切り出された。
「これから二人には先頭に立って、この計画を引っ張ってもらう必要があるし、他の人たちも色々な文書やコメントを出してもらうことになるかも入れない。 我々がこれからすることは一種のプロパガンダである。」ダイスケの言葉に驚いた様子の綱島を見て、
「プロパガンダってなんだ? 綱島くん。」というダイスケの問いに、
「僕は、理系だからうろ覚えだけど、国とか政治家が自分の支持を得ようと行う扇動とか演説みたいなもので、イメージの良くないものだったような感じ。」と綱島が答えた。
それに対しダイスケは、言った。
「ウィッキによると、あらゆる宣伝や広告、広報活動、政治活動はプロパガンダに含まれる。人々が支持しているということが自らの正当性であると主張する者にとって、支持を勝ち取り維持し続けるためのプロパガンダは重要なものとなりえる。対立者が存在する者にとってプロパガンダは武器の一つであり、自勢力やその行動の支持を高めるプロパガンダのほかに、敵対勢力の支持を自らに向けるためのもの、または敵対勢力の支持やその行動を失墜させるためのプロパガンダも存在するとある。」
「なるほど、私たちの被害者一人ひとりの立場に立って解決するというメッセージが、一つのプロパガンダになり、場合によっては「解決済みである」との日本政府のプロパガンダと対立するものとなる可能性があるのね。」とキムジウが答えた。
そうだとダイスケが頷き、続けた。
「海外の有名人を使った地球温暖化をテーマにしたドキュメンタリーで、サハラ砂漠南のサヘル地帯の砂漠化が進み、大量の環境難民が出ている理由について、人類が産業革命以来使い続けた化石燃料だとし、産業革命以降2℃の気温上昇があったとするデータを示しながら現地の活動家が語るシーンがあった。 ジウちゃん、この発言が間違っていると思う?」
キムジウは、「私も間違っていないと思うわ。 私は、何にもしていないけれど、地球の温暖化がこのまま進むと大変なことになると、多くの人が言っているもの。」と自信なさげに言った。
「キムジウさんの言うことは、正しい。ダイスケ、この後は地球温暖化防止運動かい。」と雪乃が言った。
「グーグルと、直ぐにサヘル地帯の砂漠化の主な原因が、人口の急激な増加であることが分かる。 この番組のプロパガンダは、“地球温暖化を防ぐためには、化石燃料を使わないようにするしかない”であり、“大金を稼ぐ化石燃料という悪の組織との聖戦”を共感する者を扇動することにある。」とのダイスケの言葉に、
山田が「なるほど。 でも地球温暖化は、真実だろう。悪いことじゃないとは思わないか?」と言うと、ダイスケが反論した。
「確かに、多くの科学者が言うように、地球温暖化が進めば、気象災害が増えて、海面上昇が起こるだろう。 しかし、その理由が石炭燃料の使用であることを化石燃料が原因であることを客観的に証明した報告もない。 だからと言って温暖化を抑える努力を怠るという意味ではないけれどね。 ちなみに産業革命以降、2℃の上昇は、2℃以内に抑えることが国連の目標値であることと、その地域での気象データの取得が継続的に行われていたか疑わしいので、そのデータは捏造されたものに思われてしまう。」
「では、どうすればいいの?」と千鶴が聞いた。
「だからこそ、常に本音で語ってほしい。 世の中には、煽ったり、訴えたることで、自分の言わせたいことを他の人に言わせるようにする者や、言葉巧みに騙す者など色々な方法で人を操るやつがいる。 そういう人たちに迎合することなく、自分を保って本音を話して欲しい。 もちろんここに居る人も同じで、違うと思う言動や思想があれば、それは指摘して声を出していって欲しい。 全てを理解し、行動できる人はいないのだから。 もう一つは、他人が言った言葉に根拠があるか否かも自ら確かめて欲しい。」
「でも、決めかねていることや分からないことはどうすればいいの?」そう千鶴が聞くと、ダイスケが「わからない、検討中です。と答えればいい。」と言うと
「ダイちゃん。俺もそう思うよ」と山田さんが言った。
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