俺は彼女に養われたい

のあはむら

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約束

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 翌日、鳳条瑠璃とのペア活動を何とか乗り切った霧は教室の自分の席で深々とため息をついた。
「やっと解放された……あいつとペア組むの、もう二度とごめんだな」
 机に突っ伏して小声で愚痴をこぼす霧だが、顔を少し上げてクラスの中心にいる白鷺沙羅を見ると、すぐに気持ちを切り替えた。

(そうだ、ここでうじうじしてる場合じゃない!俺の目標は白鷺との距離を縮めることだ!)
 沙羅はクラスメイトたちに囲まれて、いつものように優しい笑顔を振りまいている。その柔らかな雰囲気に、霧の心はさらに決意に燃えた。

(あの癒やし系女子に近づくには、こっちから動くしかない。待ってても進展なんかしないんだよな……よし、デートに誘うか!)

 霧は拳を軽く握りしめ、胸を張って一人うなずいた。少し先の未来を思い浮かべると、彼のテンションはどんどん上がっていく。
(さりげなく趣味とか好きなものを聞き出して……白鷺が興味を持ちそうな所だったら誘いやすいよな…)

 勝手に膨らむ妄想に、霧の顔はだんだんニヤけ始めたが、隣からの冷たい声がその思考を断ち切った。
「桐崎君、気持ち悪い顔になっているわよ。何かバカなこと考えてるんじゃないでしょうね?」
 振り向くと、そこには腕を組んでこちらを睨む鳳条瑠璃の姿が。

「うるせえな。別にお前には関係ないだろ?」と言いかけそうになったが慌てて口を閉じた。下手に突っかかれば面倒なことになるのは目に見えている。
「いや、考えてないけど…俺は元々こんな顔だよ」
「どうせくだらないことを考えてたんでしょうね」
 瑠璃は冷たい視線を向けたまま、机の上に置いてあった霧のノートを指でトントンと叩いた。
「そんな暇があるなら、もっと建設的なことを考えたらどう?たとえば……成績を少しは上げるとか?」
「ほっとけよ、俺だってちゃんと考えてるよ!」
 霧は苦笑いを浮かべながら返したが、内心では瑠璃の指摘にイラっとしていた。
「そう。まあ、あなたがどうなろうと私には関係ないけど……」と言い残し、瑠璃はその場を去っていった。

 霧はため息をつき、机に突っ伏した。
(なんであいつはいっつもああやって俺の行動に文句つけてくるんだよ……)

 霧は机に突っ伏したまま、ぼんやりと教室の窓から見える青空を眺めていた。
(くそ、鳳条のせいで気分が台無しだ。でも、ここで落ち込んでる場合じゃない。白鷺を誘うチャンスを逃すわけにはいかない!)

 霧はガバッと体を起こすと、白鷺沙羅がひとりで廊下に向かおうとしているのを目ざとく見つけた。周りに他のクラスメイトがいない今がチャンスだと判断し、急いで教室を出て彼女を追いかけた。

「白鷺!」
 霧の声に沙羅が立ち止まり、振り返る。優しい笑顔が眩しくて、霧は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに平静を装った。
「どうしたの、桐崎君?」
 沙羅が首をかしげる仕草に霧は心の中で拳を握りしめた。
「ちょっとお願いしたいことがあるんだ」
「お願い?何?」
 霧は少し申し訳なさそうに首をかしげながら言った。
「実はさ、俺が当たっちゃったんだよね、カフェのペアチケット」
「ペアチケット?」
「そう、新しくできたスイーツカフェの。抽選に当たったんだけどさ、これペア限定なんだよ。男一人で行くとか無理だろ?でも、期限が今月末までで……使わないと無駄になるんだよね」
 沙羅は少し驚いたように霧を見つめた。
「それは確かに……男の子一人じゃ入りにくそうだね」
 霧は苦笑いを浮かべながら続けた。「白鷺はそういうの好きかなと思って。せっかくだし、どう?」
 沙羅は一瞬考え込んだ後「それって、私を誘ってるってこと?」と少し照れくさそうに笑った。

「そういうこと!ゴミにしちゃうのは勿体無いし……お願い!」
 霧は軽く頭を下げて頼み込む。沙羅は少し困ったようにしながらも「うん、いいよ。無駄にするのはもったいないもんね!」と笑顔で答えた。
「本当に助かるよ!いつなら行けそう?」
 沙羅は少し考え込むように指を唇に当て「えっと……日曜日の午後とかなら空いてるかな」と答えた。
「じゃあ、日曜日の午後決定!場所とか時間は後で連絡するから!」
 霧は勢いよく話を進めた後で、ふと冷静になり、さりげなく付け足した。
「あ、でも白鷺、忙しかったら無理しなくてもいいからね?」
「ううん、大丈夫だよ。楽しみだね!」
 沙羅は柔らかい笑顔を浮かべながら、うなずいた。その笑顔に霧は一瞬見惚れてしまい、慌てて視線を逸らした。

 霧が(よっしゃ!これでデート確定!)と内心叫ぶ一方、その様子を廊下の角からじっと見つめていた冷たい視線に霧は気づいていなかった。

「……くだらないことに頭を使うのだけは得意みたいね」
 視線の主は冷ややかに呟きながら、廊下を曲がって姿を消した。
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