俺は彼女に養われたい

のあはむら

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白鷺沙羅と鳳条瑠璃

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 そんな表面的な馴染み方をしながらも、霧の頭の中はいつだってフル稼働している。

(さて、問題はこっからだ。この学園生活の真の目的は、金持ちのお嬢様と仲良くなること。どの女子と接触を図るか……ターゲット選びが重要だ。)

 放課後、霧は校内を適当に歩きながら、心の中でクラスの女子たちの情報を整理していた。

(派手なグループの中心にいるアイツは、距離が近づきすぎると面倒そうだし……大人しい子は悪くないけど、話題が尽きそうだよな。それに比べて――)

 霧の視線が花壇のほうへと向いた。そこには、一人でしゃがみ込みながら丁寧に花の手入れをしている少女がいた。白鷺沙羅。優しい性格で、誰にでも分け隔てなく接するクラスの癒し系。実家が地主でかなりの資産家だという噂も耳にしている。
 霧がそんなことを考えていると、沙羅がこちらに気づき、ふわりと優しい笑顔を向けてきた。

「あれ…桐崎君、だよね?」

 いきなり話しかけられた霧は、一瞬驚いたふりをしてみせたが、すぐに自然な笑顔を返した。
「え、俺のこと知ってんの?なんか照れるな」
「だって、特待生って話題になっていたもん。それに、クラスでも結構色んな人と話しているよね」
その言葉に、霧は「ちゃんと見てるな」と感心しつつも、軽く肩をすくめて答える。
「まぁ、一応頑張ってるんだけどさ。実際はどう見えてるんだろうね。浮いてたりしない?」
「全然そんなことないよ!普通に話しやすいし、ちゃんと馴染んでいると思うけど」
 その肯定的な評価に、霧は内心で小さくガッツポーズを決めた。
(よし、好感触だ。この調子で距離を詰めるぞ。)

「そう言ってもらえると安心するな。ところで、白鷺はここで何しているの?」
「ここ、私が担当してる花壇なの。暇なときに手入れしているんだよ。桜華院の花壇って、すごくきれいだと思わない?」
沙羅はスコップを片手に、誇らしげに花壇を指差した。色とりどりの花が整然と並んでいる光景に、霧は素直に感心した。

「たしかに、すごくきれいだな。俺なんか、家の観葉植物すら枯らすタイプだから、こんなふうに育てられるのは尊敬するわ」
「ふふ、そんなことないよ。ちゃんとお世話すれば、植物は応えてくれるんだよ」
 その笑顔を見た瞬間、霧の中で確信が生まれた。
(間違いない。この子だ……!絶対に外れがないタイプ!)
 あくまで自然体を保ちながら、霧は軽く言葉を付け加えた。
「それにしても、花壇の手入れか。なんか手伝えそうなことがあれば言ってよ」
「本当?今度お願いしてもいい?」
 沙羅のキラキラした瞳を前に、霧は軽く手を挙げて笑う。
「もちろん。俺でよければいくらでも手伝うよ」


 霧が白鷺沙羅と花壇の前で別れた後、心の中は妙な達成感で満ちていた。
 軽やかに廊下を歩いていると、不意に訪れた――運命などとは思いたくない瞬間。それはほんの一瞬、肩が触れ合っただけだった。
「あ、ごめ――」
 謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、鋭い視線が霧を貫いた。

「気をつけてよね。この学園で無駄な動きは迷惑よ」

 冷ややかな声が横から降ってきた。霧が顔を向けると、そこに立っていたのは鳳条瑠璃――桜華院学園の中でも、その頭脳と美貌で知られる才女だった。彼女は見下ろすような視線を霧に向けていて、その瞳には氷のような冷たさが宿っていた。

「あ、悪い悪い。急いでたから気づかなくて――」
 霧は笑って軽く頭を下げたが、瑠璃の表情は微動だにしない。

「言い訳なんて聞いてないわ。ただ、二度と同じことをしないで」
 それだけ言い放つと、彼女は踵を返して歩き去ろうとする。その背中から漂うオーラは、完璧に作り上げられた要塞のようだった。

 霧はその場に立ち尽くしながら、心の中で叫ぶ。
(なんなんだよ、あいつ!軽く肩がぶつかったくらいであんな言い方するって、どんな思考回路してんだ?)

 平常心を装うのが得意な霧も、今回はさすがに顔が引きつりそうだった。ぐっとこらえて、深呼吸をする。

(いやいや、冷静になれ。ああいうタイプは関わるとロクなことにならない。俺の信条は“楽して生きる”なんだ。絶対に近寄らねぇぞ!)

 だが、その一方で霧は思った。
(でもあいつ、あんなにムカつくのになんで顔はあんなに整ってんだよ。余計に腹立つわ!)
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