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暖衣飽食の夢
64. 軍議ーベルドレッド南辺境伯ー
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バルタザークが陣へと戻った同日。ベルドレッド南辺境伯は朝一番にティモテ子爵の居城へと入場していた。
「到着が遅いのではないか!?」
ティモテ子爵はベルドレッド南辺境伯を一喝した。村を襲われて相当頭にきているようだ。
「到着が遅れて申し訳ない。もちろん補填はさせていただく」
ベルドレッド南辺境伯は素直に頭を下げた。振り上げた拳の下ろしどころが無くなってしまったティモテ子爵は「そ、それなら良いのだ」と現金な反応を見せていた。
「しかし、これからどうする?」
そう声を掛けたのはエイダム伯爵であった。背筋が伸びており気品のある佇まいをしていた。その問いに応えたのはファート家の家臣であるナグィスであった。
「それはもちろん、このまま突撃でしょう! 我が方は一五〇〇名で敵方は一二〇〇名です。小細工せずに真正面から今すぐにぶつかりましょう!」
何とも若い意見である。しかし、悪くはないとバルドレッド南辺境伯は考えていた。兵数が有利なのであれば相手に対応させる時間を与える方が勿体無いと考えたのである。
「悪くはないがもう一工夫欲しいところだ。其方の考えではこちらにも相応の被害が及ぶぞ」
その言葉で皆が口々に案を出した。
「兵を二部隊に分け一部隊を森に隠し、挟撃を狙いましょう」
「いや、各個撃破の的になるだけだ。兵を分けるのは上策ではない」
しかし、採用には至らなかった。それもこれもベルドレッド南辺境伯が策の反論をするからである。これでベルドレッド陣営の皆が考え込んでしまった。
結局、話はまとまらず、結論は翌日に持ち越すこととなった。
セイファー歴 756年 9月29日
今日も軍議は白熱していた。会議は踊る、されど進まずである。そこに一つの情報がもたらされたのであった。
「申し上げます。三〇〇名ほどの部隊が南下し、キシル村方面へと向かっております」
「紋は」
「紋章官によるとアシュティア家のものと」
飛び込んできた兵士に対し、冷静に対処するベルドレッド辺境伯。右手の指先で何度か顎を撫でた後、次のような指示を出した。
「私の部隊から兵を一〇〇を派遣してキシル村の防衛に当たらせろ。将は……この間のレフェルに任せてみよ」
「はっ!」
飛び込んできた兵に指示を出したが、「待て!」と言ってその場に停止させる。
そして一言。
「良い手を思いついたぞ」
そこからのベルドレッド軍の動きは速かった。
「到着が遅いのではないか!?」
ティモテ子爵はベルドレッド南辺境伯を一喝した。村を襲われて相当頭にきているようだ。
「到着が遅れて申し訳ない。もちろん補填はさせていただく」
ベルドレッド南辺境伯は素直に頭を下げた。振り上げた拳の下ろしどころが無くなってしまったティモテ子爵は「そ、それなら良いのだ」と現金な反応を見せていた。
「しかし、これからどうする?」
そう声を掛けたのはエイダム伯爵であった。背筋が伸びており気品のある佇まいをしていた。その問いに応えたのはファート家の家臣であるナグィスであった。
「それはもちろん、このまま突撃でしょう! 我が方は一五〇〇名で敵方は一二〇〇名です。小細工せずに真正面から今すぐにぶつかりましょう!」
何とも若い意見である。しかし、悪くはないとバルドレッド南辺境伯は考えていた。兵数が有利なのであれば相手に対応させる時間を与える方が勿体無いと考えたのである。
「悪くはないがもう一工夫欲しいところだ。其方の考えではこちらにも相応の被害が及ぶぞ」
その言葉で皆が口々に案を出した。
「兵を二部隊に分け一部隊を森に隠し、挟撃を狙いましょう」
「いや、各個撃破の的になるだけだ。兵を分けるのは上策ではない」
しかし、採用には至らなかった。それもこれもベルドレッド南辺境伯が策の反論をするからである。これでベルドレッド陣営の皆が考え込んでしまった。
結局、話はまとまらず、結論は翌日に持ち越すこととなった。
セイファー歴 756年 9月29日
今日も軍議は白熱していた。会議は踊る、されど進まずである。そこに一つの情報がもたらされたのであった。
「申し上げます。三〇〇名ほどの部隊が南下し、キシル村方面へと向かっております」
「紋は」
「紋章官によるとアシュティア家のものと」
飛び込んできた兵士に対し、冷静に対処するベルドレッド辺境伯。右手の指先で何度か顎を撫でた後、次のような指示を出した。
「私の部隊から兵を一〇〇を派遣してキシル村の防衛に当たらせろ。将は……この間のレフェルに任せてみよ」
「はっ!」
飛び込んできた兵に指示を出したが、「待て!」と言ってその場に停止させる。
そして一言。
「良い手を思いついたぞ」
そこからのベルドレッド軍の動きは速かった。
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