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暖衣飽食の夢
63. 無茶な命令
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その日の夜、バルタザークは再びダドリックに呼び出されていた。どうやら今後の方針が決定したらしい。
「お呼びでしょうか」
「うむ。まあ掛けてくれ」
ダドリックに促されバルタザールは椅子に腰かけた。と言っても簡素な造りの椅子で座り心地は宜しくない。
「一杯どうだ?」
「いえ、結構です。それよりも本題を」
バルタザークは進められた果実酒を断り、本題に入るよう促す。早く自分の陣地に戻りたいのが窺って取れた。
「ふむ、そうか。明日、ここを出立して南下する。目的地はベルドレッド南辺境伯のキシル村だ」
キシル村はここから五キロほど南下したところにある中規模の村であった。人口は八〇〇人は居るだろう。もう町と言っても過言ではない規模だ。そして、ベルドレッド南辺境伯が襲撃を黙って見過ごすとは思えなかった。
「それは……スポジーニ東辺境伯の全部隊で、でしょうか」
「いや、前回と同様に其方とコスタ、フィーゴの部隊に加えて三〇の兵をつける。これでどうだ?」
バルタザークは頭の中で算盤を弾いた。少なく見積もっても二〇〇人の農民兵がいるだろう。それに対してこちらは七〇。そしてベルドレッド南辺境伯の梃入れがあると考えると……現実的な数字ではない。
「兵が足りません。難しいと思われます」
バルタザークは淡々と事実だけを述べた。その解答は予想していたのかダドリックは即答する。
「そうか。ではさらに二〇増やして合計で九〇だ。これ以上は無理だ。これで何とかしてくれ」
「……承知、しました」
バルタザールは不満を隠そうともせず、ぶっきらぼうに承諾の意を返した。ダドリックはバルタザークが上層部に嫌われる理由を何となく察したのである。
バルタザークはダドリックの元を後にして自分の陣地に戻った後、三馬鹿トリオを探し出すとこう命令を出した。
「おいデグ。ダンドンを知らねぇか?」
「はい?」
バルタザークの死角に居たダンドンが声を上げる。ダンドンとデグ、それからドージェを呼び出してバルタザークは次のように命じた。
「お前たち三人で南にあるキシル村に潜入してくれ。オレは軍を率いてゆっくりと進む予定だ。できれば今日中にここを発ってくれ」
「承知しました。ですが、向こうで何をすれば?」
「兵力、糧秣、士気など全てだ。特にベルドレッド南辺境伯の軍が入ってるかどうかは確実に頼む」
三人はすぐに支度すると闇夜に紛れて陣地を後にした。
「精々、死なないように頑張りますか」
バルタザークが独り言ちて空を見上げると、下弦の月が雲に飲み込まれていた。
「お呼びでしょうか」
「うむ。まあ掛けてくれ」
ダドリックに促されバルタザールは椅子に腰かけた。と言っても簡素な造りの椅子で座り心地は宜しくない。
「一杯どうだ?」
「いえ、結構です。それよりも本題を」
バルタザークは進められた果実酒を断り、本題に入るよう促す。早く自分の陣地に戻りたいのが窺って取れた。
「ふむ、そうか。明日、ここを出立して南下する。目的地はベルドレッド南辺境伯のキシル村だ」
キシル村はここから五キロほど南下したところにある中規模の村であった。人口は八〇〇人は居るだろう。もう町と言っても過言ではない規模だ。そして、ベルドレッド南辺境伯が襲撃を黙って見過ごすとは思えなかった。
「それは……スポジーニ東辺境伯の全部隊で、でしょうか」
「いや、前回と同様に其方とコスタ、フィーゴの部隊に加えて三〇の兵をつける。これでどうだ?」
バルタザークは頭の中で算盤を弾いた。少なく見積もっても二〇〇人の農民兵がいるだろう。それに対してこちらは七〇。そしてベルドレッド南辺境伯の梃入れがあると考えると……現実的な数字ではない。
「兵が足りません。難しいと思われます」
バルタザークは淡々と事実だけを述べた。その解答は予想していたのかダドリックは即答する。
「そうか。ではさらに二〇増やして合計で九〇だ。これ以上は無理だ。これで何とかしてくれ」
「……承知、しました」
バルタザールは不満を隠そうともせず、ぶっきらぼうに承諾の意を返した。ダドリックはバルタザークが上層部に嫌われる理由を何となく察したのである。
バルタザークはダドリックの元を後にして自分の陣地に戻った後、三馬鹿トリオを探し出すとこう命令を出した。
「おいデグ。ダンドンを知らねぇか?」
「はい?」
バルタザークの死角に居たダンドンが声を上げる。ダンドンとデグ、それからドージェを呼び出してバルタザークは次のように命じた。
「お前たち三人で南にあるキシル村に潜入してくれ。オレは軍を率いてゆっくりと進む予定だ。できれば今日中にここを発ってくれ」
「承知しました。ですが、向こうで何をすれば?」
「兵力、糧秣、士気など全てだ。特にベルドレッド南辺境伯の軍が入ってるかどうかは確実に頼む」
三人はすぐに支度すると闇夜に紛れて陣地を後にした。
「精々、死なないように頑張りますか」
バルタザークが独り言ちて空を見上げると、下弦の月が雲に飲み込まれていた。
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