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暖衣飽食の夢
61. 見せしめ
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「どうやら降伏されたようですね」
「ああ。それで食糧を全て譲り受けることとなった。フィーゴ隊はそれを貰って来てくれ。全てだぞ。それからゲティス隊は村人たちがおかしなことをしないか見張れ。そしてコスタ隊は、隠されている食糧を暴き出せ」
三人は肯定を示すと自分の仕事にすぐに取りかかった。バルタザークはトットが二つ返事で降伏を承諾したのを訝しんでいる。
なにせ食糧が一切無くなるのだ。これで隠していなければどうやって生きていくつもりなのであろう。
「ドージェ。食糧の場所、わかったりし……ないよなぁ」
「流石にわかんないんだなぁ」
いくら食い意地が張っているとはいえ、犬や豚ではないのだから食糧を探し当てることは無理だろう。地道に少しずつ探していくほかなかった。
バルタザークは食糧やお金以外にも矢や木材、布に鉄器など必要と思えるものは根こそぎ奪い取っていた。コスタも何か所か食糧の隠し場所を見つけていた。
凶作だったとはいえ、これだけの人数で農業を営んでいたら、それなりの量になるのだろう。バルタザークたち五〇人であれば三か月は持ちそうな食糧の量だ。大樽が天高く積まれている。
「これで全部のようですね」
フィーゴとコスタが集めてきた食糧にバルタザークは違和感を覚えていた。
「おかしいな。家畜の類が一匹も居ねぇ。飼っている形跡はあるのにな」
村には家畜小屋が建っていた。手入れも行き届いている。にもかからわず、家畜が一匹も居ないのだ。それを不審に感じたバルタザークは村の中ではなく周囲の森や平原を捜索させる。
「なかなか凝った真似するじゃねぇか」
バルタザークはトットに話しかけた。トットは不愉快そうな厳しい顔つきをしている。そんなトットを横目にダンドンが進み出る。
「バルタザーク隊長。これだけ発見しました」
ダンドンとデグの両手には二つの革袋が置かれていた。中を覗くと片方には銀貨が五〇枚、もう片方には銅貨が二四〇枚入っていた。デグはというと、ニ十反ほどの布を両手で持ってる。
「良くやった」
バルタザークは銅貨の革袋に手を突っ込むと銅貨を適当な枚数だけ握ってダンドンに渡す。
「これは褒美だ。三人で分けろよ。残りは全部ジョルトに渡してくれ」
「ありがとうございます。そのように」
ダンドンとデグがドージェの元へと歩いていく。接収した荷物を纏めてバルタザークたちが帰り支度を進めていると一人の兵士が近くの森の中にウール―が五〇匹ほど隠されていたのを発見した。
もちろん、それも全て連れて帰る。そして、その中からオスを一匹とメスを二匹選び、ジェイクに連れて帰るようこっそりと命令を出した。これは暗にジョルトも帰すための方便である。
「よし、じゃあ村に火をかけるよう、コスタ隊に命じろ」
するとコスタ隊は勇んで村に火を放ち始めた。これはティモテ子爵を誘き出すだめの挑発行為であることを忘れてはならない。
「ホント、戦ってのは人を畜生にするな」
バルタザークはそう呟いて天を見上げた。それと同時にセルジュを連れて来なくて良かったとも安堵した。その後、この村がどうなったのかは知る由もなかった。
「ああ。それで食糧を全て譲り受けることとなった。フィーゴ隊はそれを貰って来てくれ。全てだぞ。それからゲティス隊は村人たちがおかしなことをしないか見張れ。そしてコスタ隊は、隠されている食糧を暴き出せ」
三人は肯定を示すと自分の仕事にすぐに取りかかった。バルタザークはトットが二つ返事で降伏を承諾したのを訝しんでいる。
なにせ食糧が一切無くなるのだ。これで隠していなければどうやって生きていくつもりなのであろう。
「ドージェ。食糧の場所、わかったりし……ないよなぁ」
「流石にわかんないんだなぁ」
いくら食い意地が張っているとはいえ、犬や豚ではないのだから食糧を探し当てることは無理だろう。地道に少しずつ探していくほかなかった。
バルタザークは食糧やお金以外にも矢や木材、布に鉄器など必要と思えるものは根こそぎ奪い取っていた。コスタも何か所か食糧の隠し場所を見つけていた。
凶作だったとはいえ、これだけの人数で農業を営んでいたら、それなりの量になるのだろう。バルタザークたち五〇人であれば三か月は持ちそうな食糧の量だ。大樽が天高く積まれている。
「これで全部のようですね」
フィーゴとコスタが集めてきた食糧にバルタザークは違和感を覚えていた。
「おかしいな。家畜の類が一匹も居ねぇ。飼っている形跡はあるのにな」
村には家畜小屋が建っていた。手入れも行き届いている。にもかからわず、家畜が一匹も居ないのだ。それを不審に感じたバルタザークは村の中ではなく周囲の森や平原を捜索させる。
「なかなか凝った真似するじゃねぇか」
バルタザークはトットに話しかけた。トットは不愉快そうな厳しい顔つきをしている。そんなトットを横目にダンドンが進み出る。
「バルタザーク隊長。これだけ発見しました」
ダンドンとデグの両手には二つの革袋が置かれていた。中を覗くと片方には銀貨が五〇枚、もう片方には銅貨が二四〇枚入っていた。デグはというと、ニ十反ほどの布を両手で持ってる。
「良くやった」
バルタザークは銅貨の革袋に手を突っ込むと銅貨を適当な枚数だけ握ってダンドンに渡す。
「これは褒美だ。三人で分けろよ。残りは全部ジョルトに渡してくれ」
「ありがとうございます。そのように」
ダンドンとデグがドージェの元へと歩いていく。接収した荷物を纏めてバルタザークたちが帰り支度を進めていると一人の兵士が近くの森の中にウール―が五〇匹ほど隠されていたのを発見した。
もちろん、それも全て連れて帰る。そして、その中からオスを一匹とメスを二匹選び、ジェイクに連れて帰るようこっそりと命令を出した。これは暗にジョルトも帰すための方便である。
「よし、じゃあ村に火をかけるよう、コスタ隊に命じろ」
するとコスタ隊は勇んで村に火を放ち始めた。これはティモテ子爵を誘き出すだめの挑発行為であることを忘れてはならない。
「ホント、戦ってのは人を畜生にするな」
バルタザークはそう呟いて天を見上げた。それと同時にセルジュを連れて来なくて良かったとも安堵した。その後、この村がどうなったのかは知る由もなかった。
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