33 / 46
第33話 獣人の国ドベル
しおりを挟む
「獣人の国ドベルを侵略するように命令がきた」
皇帝の指令所を片手に俺が言う。
あれから数日、カンドリアの砦を俺が制圧し、掌握したところで指令が入る。
「……また無茶な事を。兵の補充もあれだけなのにですか?」
勅命の書に目を通していたシャルロッテが悲鳴に近い声を上げる。
そう先ほどのカンドリア騎士団との闘いで第二皇子が率いていた軍はほぼ壊滅。
その後侵略用に補充された兵士はたったの100人。だが彼らは砦の維持に回さなければいけず、侵略は無理といっても差し支えない。
「簡単な事さ。皇帝は四天王の濁流のグーンと繋がっている。キルディスの力で侵略してキルディスが目立つのを望んでる。そうすれば大賢者の標的はキルディスになる。あいつらにとっちゃ、エルフの大賢者が死んでもよし、キルディスが死んでもよし、得にしかならない。キルディスに派手に暴れろということだろう」
俺が菓子を食いながら言うと、キルディスが「いやぁぁぁぁぁ」と叫んで、ソファの後ろに隠れる。
「マスターはこの無茶な指示に従うと?」
「ああ。もちろんだ。ここの魂を捧げれば、一応魔王を倒すぎりぎりの力を送り込めることになるんだよなカルナ?」
「そう、でもあと二つくらいは大きな戦いをおこしたほうが無難。いまはデータ上で本当にぎりぎり」
「エルフの大賢者が復活する前にやっておかないとな。正直魔族なんて敵じゃない。俺たちに脅威になりえる敵はエルフの大賢者のみだ。侵略はさっさとやる」
言いながら俺は視線をアレキアとシャルロッテに向けた。
「で、お前らはどうする?アレキアにシャルロッテ。兵士相手だった今までと違う。今までは戦いの最前線の砦のみで魂の吸収範囲だったため見逃されてきたが、今回は獣人の国すべてが魂吸収範囲だ。戦闘の意志のない無関係な一般人も無慈悲に殺さなきゃいけなくなる。女子供も関係なく殺る。
いくら生き返らせるとしても、一度殺すことにはかわりない。
どんな大義があろうとも、それは俺達にとっての大義で、殺されるやつらには関係ない、これは正義もなんでもない、大量殺人だ」
そう言って俺は二人を見つめる。これは大事な事だ。
「いいか、お前ら二人のメンタルの心配じゃない。
これは作戦をたてるうえで重要な事だ。やれるかやれないか正直に答えろ。
お前たちがためらった途端、計画が破綻する可能性は0じゃない。
お前らが無理なら計画を変えるだけだ。言っちゃ悪いが、お前ら二人がいなくても、俺一人で十分できる。少し時間がかかるか短時間でできるかのだけの違いだ。だからやれと強制はしない。やれないのにやれるという強がりが一番迷惑だ。やれないなら正直に言え」
「英霊化したその時から我らの心は決まっております マスター」
俺の言葉に二人は大きくうなずいた。
★★★
「シャルガ様。カンドリアは帝国の手によって陥落。カンドリア辺境伯も村民を避難してくださったラシューラ様もその部隊も戦死したとの報告がはいりました」
獣人の国ドベルの帝国との国境の砦で、獣人の国の豪拳獣姫と呼ばれるシャルガは部下に声をかけられた。金髪猫耳の小柄な獣人だ。
獣人の国の鬼神と呼ばれ、その強さは父である国王を上回る。
それが故、前線で戦う事が多く、彼女の参加した戦では敗北したことがない
「そうか。援軍は間に合わなかったか」
そう言ってシャルガは砦からカンドリアの方角に視線を向ける。
ジャルガは近々戦争が起こると、ラシューラが辺境の村々の住人を砦まで避難させた知らせをうけ、精鋭部隊をまとめて王都からきたのだがジャルガが到着した時にはすでにカンドリアの砦は堕ちてしまっていた。
「ラシューラ嬢とカンドリア辺境伯の死は無駄にできぬな」
「はっ。帝国もカンドリアの騎士との激闘で兵士の消耗が激しく、帝国から援軍が来る気配もありません。最近100人ほどの騎士が送られてきましたが、我が国に攻めてくるほどの兵では……」
「何を言っている。来てるではないか」
「は?」
兵士の言葉を遮ってジャルガがにまぁっと笑った。
慌てて兵士が視線を向けると、カンドリア騎士団の甲冑を被った大量の騎士を引き連れて、帝国軍が向かってくる。あの旗印はたしか第八皇子のものだ。
ざっと見ただけでも兵士の数は2000近くいる。
「まさか、カンドリア騎士団はほぼ壊滅していました。城内に積まれた死体も我々は確認しております」
獣人の騎士が目を細めて言う。
「おそらく帝国兵が鎧を着ているのであろう。カンドリア騎士団が我々と親睦があったのを知っていて、その情を利用しているのであろうが……我らはそう甘くはないぞ帝国」
そう言って豪拳獣姫が砦内に響く雄たけびをあげる。
砦内の兵士達がそれに呼応するかのように、一斉に雄たけびをあげた。
「さぁ、カンドリア騎士団の弔い合戦といくのじゃ、我らドベルの力見せてやろうではないかっ!!!」
皇帝の指令所を片手に俺が言う。
あれから数日、カンドリアの砦を俺が制圧し、掌握したところで指令が入る。
「……また無茶な事を。兵の補充もあれだけなのにですか?」
勅命の書に目を通していたシャルロッテが悲鳴に近い声を上げる。
そう先ほどのカンドリア騎士団との闘いで第二皇子が率いていた軍はほぼ壊滅。
その後侵略用に補充された兵士はたったの100人。だが彼らは砦の維持に回さなければいけず、侵略は無理といっても差し支えない。
「簡単な事さ。皇帝は四天王の濁流のグーンと繋がっている。キルディスの力で侵略してキルディスが目立つのを望んでる。そうすれば大賢者の標的はキルディスになる。あいつらにとっちゃ、エルフの大賢者が死んでもよし、キルディスが死んでもよし、得にしかならない。キルディスに派手に暴れろということだろう」
俺が菓子を食いながら言うと、キルディスが「いやぁぁぁぁぁ」と叫んで、ソファの後ろに隠れる。
「マスターはこの無茶な指示に従うと?」
「ああ。もちろんだ。ここの魂を捧げれば、一応魔王を倒すぎりぎりの力を送り込めることになるんだよなカルナ?」
「そう、でもあと二つくらいは大きな戦いをおこしたほうが無難。いまはデータ上で本当にぎりぎり」
「エルフの大賢者が復活する前にやっておかないとな。正直魔族なんて敵じゃない。俺たちに脅威になりえる敵はエルフの大賢者のみだ。侵略はさっさとやる」
言いながら俺は視線をアレキアとシャルロッテに向けた。
「で、お前らはどうする?アレキアにシャルロッテ。兵士相手だった今までと違う。今までは戦いの最前線の砦のみで魂の吸収範囲だったため見逃されてきたが、今回は獣人の国すべてが魂吸収範囲だ。戦闘の意志のない無関係な一般人も無慈悲に殺さなきゃいけなくなる。女子供も関係なく殺る。
いくら生き返らせるとしても、一度殺すことにはかわりない。
どんな大義があろうとも、それは俺達にとっての大義で、殺されるやつらには関係ない、これは正義もなんでもない、大量殺人だ」
そう言って俺は二人を見つめる。これは大事な事だ。
「いいか、お前ら二人のメンタルの心配じゃない。
これは作戦をたてるうえで重要な事だ。やれるかやれないか正直に答えろ。
お前たちがためらった途端、計画が破綻する可能性は0じゃない。
お前らが無理なら計画を変えるだけだ。言っちゃ悪いが、お前ら二人がいなくても、俺一人で十分できる。少し時間がかかるか短時間でできるかのだけの違いだ。だからやれと強制はしない。やれないのにやれるという強がりが一番迷惑だ。やれないなら正直に言え」
「英霊化したその時から我らの心は決まっております マスター」
俺の言葉に二人は大きくうなずいた。
★★★
「シャルガ様。カンドリアは帝国の手によって陥落。カンドリア辺境伯も村民を避難してくださったラシューラ様もその部隊も戦死したとの報告がはいりました」
獣人の国ドベルの帝国との国境の砦で、獣人の国の豪拳獣姫と呼ばれるシャルガは部下に声をかけられた。金髪猫耳の小柄な獣人だ。
獣人の国の鬼神と呼ばれ、その強さは父である国王を上回る。
それが故、前線で戦う事が多く、彼女の参加した戦では敗北したことがない
「そうか。援軍は間に合わなかったか」
そう言ってシャルガは砦からカンドリアの方角に視線を向ける。
ジャルガは近々戦争が起こると、ラシューラが辺境の村々の住人を砦まで避難させた知らせをうけ、精鋭部隊をまとめて王都からきたのだがジャルガが到着した時にはすでにカンドリアの砦は堕ちてしまっていた。
「ラシューラ嬢とカンドリア辺境伯の死は無駄にできぬな」
「はっ。帝国もカンドリアの騎士との激闘で兵士の消耗が激しく、帝国から援軍が来る気配もありません。最近100人ほどの騎士が送られてきましたが、我が国に攻めてくるほどの兵では……」
「何を言っている。来てるではないか」
「は?」
兵士の言葉を遮ってジャルガがにまぁっと笑った。
慌てて兵士が視線を向けると、カンドリア騎士団の甲冑を被った大量の騎士を引き連れて、帝国軍が向かってくる。あの旗印はたしか第八皇子のものだ。
ざっと見ただけでも兵士の数は2000近くいる。
「まさか、カンドリア騎士団はほぼ壊滅していました。城内に積まれた死体も我々は確認しております」
獣人の騎士が目を細めて言う。
「おそらく帝国兵が鎧を着ているのであろう。カンドリア騎士団が我々と親睦があったのを知っていて、その情を利用しているのであろうが……我らはそう甘くはないぞ帝国」
そう言って豪拳獣姫が砦内に響く雄たけびをあげる。
砦内の兵士達がそれに呼応するかのように、一斉に雄たけびをあげた。
「さぁ、カンドリア騎士団の弔い合戦といくのじゃ、我らドベルの力見せてやろうではないかっ!!!」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪
naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。
「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」
そして、目的地まで運ばれて着いてみると………
「はて?修道院がありませんわ?」
why!?
えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって?
どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!!
※ジャンルをファンタジーに変更しました。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。


僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる