最狂裏ボス転生~チート能力【迷宮の主の権限】を駆使して世界を騙せ~

てんてんどんどん

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第30話 闇の紋章

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「ひぃぃぃぃ、ゆ、許してくれ」

 カンドリア騎士団に囲まれた第二皇子が悲鳴をあげた。――結局、反撃にでたカンドリア騎士団は強く、内側に入り奇襲をかけたはずの帝国兵が勝っていたのは最初だけだった。
 ロンド騎士団長が指揮をし立て直したとたん、地の理と統率ででカンドリア騎士団達は帝国兵を倒してしまったのである。

「常に前線にいるわれらを甘くみたな」

 ロンド騎士団長が第二皇子に槍を向ける。

「せいぜい人質にでもなってもらおうか」

 ロンドが言った途端。

「あー。そりゃ無駄だ。父上はそいつも俺も死ぬのを望んでる。人質をとったと、それを理由にまた兵を出兵し、見殺しにするだけだ、俺達皇子は人質しての価値がないどころかマイナスだぞ」

 別の所から声が聞こえ、そちらに目をやると、帝国の衣装をきた男と、黒い甲冑に身を包んだ騎士二人が建物の屋根の上に立っていた。

「……レイゼル殿下」

 ロンドが声をあげた。昔虐め現場にラシューラが遭遇して助けたことがある。温和そうな顔立ちのレイゼルとは感じがかなり違うが、間違いないだろう。

「アンタらはよくやったよ。あの状況からよく覆した。さすがカンドリア騎士団だ。だから、敬意を示そうじゃないか」

「どういうことですか」

 ロンドが油断しないように槍を構えた。

「苦しまずに殺してやろう」

 レイゼルのその言葉とともに……ロンドの首が吹き飛んだ。

「隊長!!」

 槍を構えたカンドリア騎士団の首も突如現れた黒い鎧をきた騎士二人に首をはねられる。

「せめてもの慈悲だ。痛まないように一瞬で終わらせる」

 俺の言葉とともに鋭利な刃となった無数の闇魔法が騎士たちの首をはねるのだった。




「闇の紋章エグイな」

 俺はカンドリア騎士団の死体の前でキルディスからもらった闇の紋章を見ながらつぶやいた。すでに俺と、アレキアとシャルロッテの攻撃でカンドリア騎士団は死に絶えている。
 闇の紋章から放つ闇魔法はかなり広範囲に狙い通り攻撃できる。
 闇魔法攻撃が俺の意思そのままの形になり具現化するのだ。
 VRMMOではまた未実装だったため、初めて使うがかなりのチート能力だ。
 ゲーム上ではキルディスに騙されて刻まれる紋章。
 一応、俺は魔族のキルディスに闇の紋章を与えられて強くなったという設定にするため紋章を刻んだのだ。でないと急に強くなった説明がつかなくなってしまう。

「まぁ心が闇に喰われていくというデメリットはあるのだが……」

「マスターなら大丈夫でしょう」
「そうですね。大丈夫です」

 シャルロッテとアキレアが太鼓判を押してくれる。

「おぅ、それはどういう意味でだ?」

 俺がにんまりしていうと、二人とも露骨に視線をそらした。

 ふっ。どいうつもこいつも俺の事を把握しやがって。
 
 まぁ、冗談はともかく、迷宮のマスターの俺に精神支配が効かないだけなのだが。レイゼルが闇の紋章がきいたのは迷宮のマスターになる前だったからにすぎない。

「あとは、キルディスの頑張り次第だな」

 俺は辺境伯が向かった山の方に視線を向けるのだった。


★★★

「おぬしなんて事をしてくれたんじゃ」

 空を浮かびながら濁水のグーンがペルシを睨みながら言う。
 四天王の二人は空中で対峙していた。
 彼らの下には神の槍で貫かれた巨大な黒い肉の塊が鎮座している。

「いいじゃない。エルフの大賢者は寝てるんでしょ?こんな岩山にある肉塊になんて気づくわけないわ」

 ペルシが髪をかき上げながら言うと、濁水のグーンは、背中の触手をうねうねとさせた。

「貴様はエルフの大賢者を相手をしたことがないから言えるのじゃ。あれは必ずこれを見つけ出し、戦いに介入してくる、やつはそういう奴じゃ!!」

「へぇ、なら私を殺せば?そうすればこの肉の塊も消えるわよ」

 ペルシが面白そうにくすくす笑う。その姿に濁水のグーンは極端に長い額に青筋を浮かべた。四天王同士は争ってはいけない。ペルシは魔族間の掟があるのを知っていて言っているだ。エルフの大賢者の誓約同様、魔族もその掟は破ることができない。

「小娘……っ!!」

「あははっ。可哀想なおじいちゃん。私を殺せばこの肉塊も消えるのに手も足もでないなんて」

「ならば、私が貴方を倒しましょう。新たな四天王になるために戦いを挑む事は禁止されていませんから」

 ペルシの言葉に続いて、別の場所から声が聞こえた。

 慌てて、ペルシと濁水のグーンがそちらを見やると、そこにいたのは半魔のキルディス。彼が笑いながらぷかぷかと浮いていた。

「貴様、半魔のキルディス」 濁水のグーンが声をあげ

「あらー♡久しぶり。あの虐められてたキルディスが私を倒すですって?」ペルシが笑う。

「ええ、第八皇子を操って、行動していたのですが……魔族の波動を感じてきてみたら、なかなか面白い事になっていましから、こちらにきてみたのです」
 
 そう言いながらキルディスはにんまり笑って、肉塊とペルシとグーンに視線を移す。

「まさか貴方様に会えるとは光栄ですよペルシ様。濁水のグーン様もいますから、立会人もいます。各下の魔族が四天王に挑み、倒せば新たな四天王としての資格を得られる。そうですよねグーン様」

「まぁ確かにそうなるのぉ」

 キルディスの言葉に濁水のグーンが頷いた。
 グーンがペルシをみると肩をわなわなと振るわせて、うつむいている。

「どうした小娘?」

 グーンが聞くと、酷く歪んだ顔で、ペルシが顔をバッとあげた。

「挑む? 半分人間の半端者が私に挑む?
 何を対等な気でいるのよ、人間の血がはいった半端者が、私と勝負するつもりなんて……許さない、許さないわっ!!この落ちこぼれ風情が!!」

 ペルシの身体が醜く変形し、巨大な卵のような形の球体からうねうねとした触手だらけの姿になる。

「では、成立ということで」

 キルディスが笑うと、濁水のグーンが頷いた。
 
「この雑魚がぁぁぁぁぁぁ!!!醜く死になさいぃぃぃぃぃ!!!!」

 ペルシの触手が一斉にキルディスを襲うのだった。


★★★

「がはぁぁっ!!!」

 戦いが始まって一分もたたないうちに、ペルシはキルディスに触手を切られて血を吐き出した。糞雑魚の半魔が、魔族の頂点四天王のペルシ様に挑んできた。
 それだけで許せる事ではなかったのに、なぜか戦い始めた途端、一方的に負けてるのはペルシの方だったのだ。

(どうして、どうして攻撃が当たらないの?)

 姿を卵型の肉塊とし全身から無数の触手を放ち、キルディスに向かわせるが、キルディスは華麗にその触手をよけ、あっさりと手で切り刻んでしまう。
 キルディスのレベルは100でペルシのレベルは110のはず。
 このような圧倒的なレベル差があって、何故このような事ができるのか。
 そもそも半分人間のキルディスに負けるなんて事があってはならないはずなのに、キルディスは笑って、触手を切り刻み、ペルシは確実にダメージが蓄積されていく。

「どうしてあんた!そんなに強くなったのよ!!」

 球体からぼこりとペルシの顔が浮かび上がり、キルディスに問うと、キルディスはにこりと笑った。

「貴方が馬鹿にしていた半魔ゆえですよ。魔族は完璧な存在故成長できない。ですが私は半分人間だったがゆえに、成長することができた」

 そう言ってキルディスの両手が巨大な鎌に変化する。
 そして一斉に触手を切断した。

「がはっ!!!」

 襲ってきた痛みにペルシは苦悶の声をあげる。

「どんな気分です。半分人間だからとおもちゃにして遊んでいた魔族に無様にやられる気分は」

「きさまぁ……」

 ペルシが人間型に戻り、爪を伸ばし戦闘態勢を取るが力がでない。

「な、なんで力がでないのよ!?」

「わかりませんか?最初の触手での一撃です。触手を切り刻んだ部分に毒を塗布しておきました。そろそろ全身が動かなくなるのでは」

「なんですって!?」

「だってそうでしょう? 身体に私の一部がまとわりついているのに貴方は気づきもしなかった」

 キルディスの言葉にはっとしてペルシは寒気に一瞬体を強張らせ、そして気づく、足の方から大量の蜘蛛がペルシの身体を這い上がってきていることに。

「ちょ、何なのよ!!これ気持ち悪……」

 ペルシが引きはがそうとして、身体が動かない事に気が付いた。おそるおそるキルディスを見ると、醜悪な笑みを浮かべて、ペルシの事を見下ろしている。

「神経性の毒です、これから貴方はその蜘蛛たちに喰われます。ああ、その蜘蛛は負の感情が大好物でしてね。確実に対象に死にたくなるような苦痛を与えながら、回復させるを繰り返してゆっくりと食べていくんですよ。動けなくてもちゃんと痛覚は残してありますから、安心してくださいね」

 キルディスが目に狂気をたたえて、ニマニマ笑う。その笑みにペルシはぞっとした。以前のキルディスとは比べ物にならない、覇気を感じ、思わずグーンを見る。

「ちょ、なんでこんなに強いのよ!! 聞いてないわっ!! とめてグーン!!同じ四天王でしょ!?」

 ペルシが言うと、グーンは「ほっほっほ」と笑いながら「決闘は手をだしてはならぬ、なぁ、掟じゃよ掟。おぬしが死んでくれたほうがわしとしても喜ばしいからのぉ」と、嬉しそうに目を細めた。

「くそじじぃぃぃ!!!」

 ペルシが睨んだ瞬間、ざしゅりと腹がキルディスの魔法でえぐり取られ、その空いた隙間に我先にの蜘蛛が潜り込んでくる。

「さぁ、私の母を殺したように、貴方も苦痛にもがき苦しみしんでください」

 キルディスがにまぁっと笑った。

★★★

「痛い 痛い 痛い 苦しい やめろ やめろ やめろ」

ペルシの悲鳴にならない声があたりに響く。
目の前では嬉しそうにニマニマ笑う半魔の男がいる。
魔族と人間との間に生まれた魔族の面汚し。

だから虐めてやったのに。だから不浄を生んだ人間を殺してやっただけのことなのに。なぜ自分はこのような目にあっている?

生体の違い故本来なら生まれるはずのないそれ。半魔が自分を苦しめて笑っている。

表面を食いちぎっては、またか復元させてまた食いちぎる。
精神すら犯すその半魔の蜘蛛は容赦なく苦痛を与えながら、それでいて死ぬことを許さない。それなのに少しずつ少しずつペルシの力を奪い取り消滅へといざなう。

「どうです?あなたの肉塊と同じでしょう?苦しみもがき永遠に苦痛を与えられる。貴方にぴったりの死に方ではありませんか」

 けらけらと笑う半魔の男。

「あ、あんたの母親を殺したのは謝るわ!でも魔族と子供を産んだりするからよ!悪いのは私じゃないわ!純粋な魔族をけがし……」

 ごぼっ!!

 ペルシの顔の半分がキルディスの攻撃で吹き飛んだ。

「何故それを私の前で言うのか理解に苦しみますね。その子どもが私でしょう?」

「だ、だって魔族よあんたも半分魔族な……」

 ごしゅ!!!

 今度はキルディスの放った魔力の塊で顔ごと吹っ飛ぶ。

「うるさい。この糞女。苦しみもがき死ね!!!」

 キルディスの怒りの声とともに、激しい痛みとともにペルシは蜘蛛に生きたまま喰われ始めるのだった。
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