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第25話 地獄
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「エルフの大賢者が動いた?」
円卓会議で魔族であり四天王の一人、憤土のデウウが思わず聞き返した。
巨大な体躯の黒い大きな角の生えた魔族だ。
憤土のデウウの前には砂漠と遺跡で殺された魔族たちのいた場所が映し出されている。
現在魔族の根城では四天王が集まり今後についての会議を行っていた。
「ならもう隠れる事なんてないんじゃないかしら。どんどんやってしまいましょうよ」
美しい女性姿の風惑のペルシがくすくす笑いながら言う
「いや、別で活動していた魔族を殺しまわっていただけだ。まだ国の中枢に関わっていることは見破れていない。各地で生贄をして人体実験をしていた魔族だけがやられただけで、我らには関係ない」
体格のいい黒い肌の燃えるような赤髪の魔族、狂炎のガルフが告げる。
「ああ、魔王様を自分達で復活させるとか言っていた生意気な奴らね。まぁあれなら殺されても痛くもかゆくもないわ」
ペルシがピンクの長い髪をくるくると指で弄びながら言う。
「大賢者はその時の戦いで深手を負って、今エルフの里で療養しているという噂もある」
老人姿の魔族。濁水のグーンがエルフの里のある森を水晶に映し出す。
「それはいい気味ね、ならエルフの里に乗り込んじゃう?」
「罠だったらどうするつもりだ。エルフの賢者は狡猾だ。以前もそれでやられたことがあっただろう。エルフの里に入るのは自殺行為だ。魔王様が復活してからでなければ我らに分がわるい」
ガルフの言葉にペルシは頬を膨らませ、
「知らないわ。エルフの大賢者に四天王が壊滅させられた時は私生まれてなかったし♡私がいたならそんな失態おかさなかったのに」
ペルシの言葉にデウウが「なんだと!?」と怒声をあげるがガルフが制す。
「とにかく、大賢者が負傷してくれているなら好都合だ。いまのうち我らは魔王様に魂をささげる」
ガルフがにやりと笑った。
★★★
「さぁ、食べなさいあなたの母親を。そうしたら魔族と認めて生かしてあげる」
目の前で、長いピンク髪の妖艶な魔族ペルシがニタニタと笑いながら少年に告げる。
「ママっ!ママっ!!」
泣きながら、少年が倒れている黒髪の女性に縋り付くが、女性はその少年の手をとって笑う。すでに女性は血だらけであちこち傷だらけだ。
「私を……食べなさいキルディス」
「やだ、やだ、やだっ!! ママを食べるくらいなら僕も死ぬ!!」
女性の手をとって、黒髪の少年がいやいやと首を横に振る。
「どうしてそんなひどい事を言うのママ?
ママを食べられるわけがない。
パパが魔族だから?でもいやだよ。大好きなママを食べれるわけがないっ!!」
ペルシから守るように必死に覆いかぶさるけれど、黒髪の女性は血を吐きながら優しく笑う。
「食べなきゃこのまま死ぬの。お願い」
そう言って笑う母。キルディスが拒むと、母をペルシが嬲りはじめた。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫びながら、キルディスはそこで目を覚ました。
「ど、どうしたキルディス?」
前に座って菓子をバリバリ食べていたレイゼルがびっくりしたようにキルディスを見る。
いつもの迷宮のいつもの部屋。
レイゼルが内装をほどこしたので、弱冠趣味は悪いものの、普通の応接室。いつの間にかソファで寝ていたキルディスは目を覚ましたのだ。
どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
「………いえ、昔の夢を見ていました」
ソファで寝た状態だったキルディスはゆっくりと起き上がる。
「悪魔でも夢見るのか。なんかイベントで悪魔は夢みない云々言っていた気がするが」
「……半分人間ですから。いつも中途半端なんですよ。悪いところばかりの寄せ集めで」
キルディスは皮肉めいた笑みを浮かべた。
自分が魔族として純粋で強ければ――母を目の前で殺されなくてすんだ。
自分が純粋な人間だったら――魔族だとばれず父も神の子エルフに殺されないですんだ。
どちらにもなれない半端者。
せめて魔族として魔王復活に貢献して地位を手に入れようとしたら、あっけなくレイゼルに奴隷にされるし、本当に自分自身が嫌になってくる。
「そんなことないだろう」
キルディスが顔を覆って落ち込んでいたら、目の前でばりっとお菓子をかみ砕いてレイゼルが言う。
「え?」
「魔族は完成形だからレベルがあげられない。だがお前は半分人間の血が入っているからレベルがあげられる。この差は大きい。お前は魔族の高ステータスを保持しながら、レベルがあげさらにステータスの底上げができる。どう考えてもいいところどりだろう?」
真面目な顔でレイゼルがキルディスを見つめた。
(……一応、慰めてくれてるつもりなのでしょうか?)
キルディスがレイゼルの態度に戸惑っていると、
「マスター。新マップできた。マスターのいっていた地獄のレベル上げマップ」
と、カルナがひょいっと部屋に入ってくる。
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!!そういうわけだ。いくぞキルディス!俺もお前もレベル120にする!!カンストだ!!」
「はぁ!?」
「言っただろう。お前は素晴らしいと!というわけで地獄のレベル上げ!!!いくぞアレキア!シャルロッテ!」
「はい。マスター」
「頑張りましょう。キルディスさん」
そう言って現れたアレキアと、シャルロッテにキルディスは持ち上げられる。
「いざ参る!俺の考えた最強効率短時間レベルアップ地獄コースへ!!!」
レイゼルがうっとりした顔で言い、キルディスは顔を真っ青にする。
レイゼルの言う通り、レイゼルの考えるレベル上げはたしかに効率はいい。
だが、経験値をえるための効率だけなのだ。体力、MP、HPなどは計算に含まれているがそこにキルディスの心労というものが全く含まれていない。
延々と体力とMPとHPを回復させられて、同じ作業をさせられる苦行である。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
キルディスの悲鳴が応接室に響くのだった。
円卓会議で魔族であり四天王の一人、憤土のデウウが思わず聞き返した。
巨大な体躯の黒い大きな角の生えた魔族だ。
憤土のデウウの前には砂漠と遺跡で殺された魔族たちのいた場所が映し出されている。
現在魔族の根城では四天王が集まり今後についての会議を行っていた。
「ならもう隠れる事なんてないんじゃないかしら。どんどんやってしまいましょうよ」
美しい女性姿の風惑のペルシがくすくす笑いながら言う
「いや、別で活動していた魔族を殺しまわっていただけだ。まだ国の中枢に関わっていることは見破れていない。各地で生贄をして人体実験をしていた魔族だけがやられただけで、我らには関係ない」
体格のいい黒い肌の燃えるような赤髪の魔族、狂炎のガルフが告げる。
「ああ、魔王様を自分達で復活させるとか言っていた生意気な奴らね。まぁあれなら殺されても痛くもかゆくもないわ」
ペルシがピンクの長い髪をくるくると指で弄びながら言う。
「大賢者はその時の戦いで深手を負って、今エルフの里で療養しているという噂もある」
老人姿の魔族。濁水のグーンがエルフの里のある森を水晶に映し出す。
「それはいい気味ね、ならエルフの里に乗り込んじゃう?」
「罠だったらどうするつもりだ。エルフの賢者は狡猾だ。以前もそれでやられたことがあっただろう。エルフの里に入るのは自殺行為だ。魔王様が復活してからでなければ我らに分がわるい」
ガルフの言葉にペルシは頬を膨らませ、
「知らないわ。エルフの大賢者に四天王が壊滅させられた時は私生まれてなかったし♡私がいたならそんな失態おかさなかったのに」
ペルシの言葉にデウウが「なんだと!?」と怒声をあげるがガルフが制す。
「とにかく、大賢者が負傷してくれているなら好都合だ。いまのうち我らは魔王様に魂をささげる」
ガルフがにやりと笑った。
★★★
「さぁ、食べなさいあなたの母親を。そうしたら魔族と認めて生かしてあげる」
目の前で、長いピンク髪の妖艶な魔族ペルシがニタニタと笑いながら少年に告げる。
「ママっ!ママっ!!」
泣きながら、少年が倒れている黒髪の女性に縋り付くが、女性はその少年の手をとって笑う。すでに女性は血だらけであちこち傷だらけだ。
「私を……食べなさいキルディス」
「やだ、やだ、やだっ!! ママを食べるくらいなら僕も死ぬ!!」
女性の手をとって、黒髪の少年がいやいやと首を横に振る。
「どうしてそんなひどい事を言うのママ?
ママを食べられるわけがない。
パパが魔族だから?でもいやだよ。大好きなママを食べれるわけがないっ!!」
ペルシから守るように必死に覆いかぶさるけれど、黒髪の女性は血を吐きながら優しく笑う。
「食べなきゃこのまま死ぬの。お願い」
そう言って笑う母。キルディスが拒むと、母をペルシが嬲りはじめた。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫びながら、キルディスはそこで目を覚ました。
「ど、どうしたキルディス?」
前に座って菓子をバリバリ食べていたレイゼルがびっくりしたようにキルディスを見る。
いつもの迷宮のいつもの部屋。
レイゼルが内装をほどこしたので、弱冠趣味は悪いものの、普通の応接室。いつの間にかソファで寝ていたキルディスは目を覚ましたのだ。
どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
「………いえ、昔の夢を見ていました」
ソファで寝た状態だったキルディスはゆっくりと起き上がる。
「悪魔でも夢見るのか。なんかイベントで悪魔は夢みない云々言っていた気がするが」
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自分が魔族として純粋で強ければ――母を目の前で殺されなくてすんだ。
自分が純粋な人間だったら――魔族だとばれず父も神の子エルフに殺されないですんだ。
どちらにもなれない半端者。
せめて魔族として魔王復活に貢献して地位を手に入れようとしたら、あっけなくレイゼルに奴隷にされるし、本当に自分自身が嫌になってくる。
「そんなことないだろう」
キルディスが顔を覆って落ち込んでいたら、目の前でばりっとお菓子をかみ砕いてレイゼルが言う。
「え?」
「魔族は完成形だからレベルがあげられない。だがお前は半分人間の血が入っているからレベルがあげられる。この差は大きい。お前は魔族の高ステータスを保持しながら、レベルがあげさらにステータスの底上げができる。どう考えてもいいところどりだろう?」
真面目な顔でレイゼルがキルディスを見つめた。
(……一応、慰めてくれてるつもりなのでしょうか?)
キルディスがレイゼルの態度に戸惑っていると、
「マスター。新マップできた。マスターのいっていた地獄のレベル上げマップ」
と、カルナがひょいっと部屋に入ってくる。
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!!そういうわけだ。いくぞキルディス!俺もお前もレベル120にする!!カンストだ!!」
「はぁ!?」
「言っただろう。お前は素晴らしいと!というわけで地獄のレベル上げ!!!いくぞアレキア!シャルロッテ!」
「はい。マスター」
「頑張りましょう。キルディスさん」
そう言って現れたアレキアと、シャルロッテにキルディスは持ち上げられる。
「いざ参る!俺の考えた最強効率短時間レベルアップ地獄コースへ!!!」
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レイゼルの言う通り、レイゼルの考えるレベル上げはたしかに効率はいい。
だが、経験値をえるための効率だけなのだ。体力、MP、HPなどは計算に含まれているがそこにキルディスの心労というものが全く含まれていない。
延々と体力とMPとHPを回復させられて、同じ作業をさせられる苦行である。
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キルディスの悲鳴が応接室に響くのだった。
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