【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

文字の大きさ
上 下
166 / 187
4.最終章

2.突然の来訪者(コロネ視点)

しおりを挟む
「うん?護衛につきたい理由?一目惚れかな?」

 男の言葉に――宮廷魔術師であるエルフの男は固まった。
 女神の御告で、かつて異界の神々との戦いで散った大神ガブリエラの力を宿す戦士を集めよという、神託の元、大神の力を持つものを集めた中に。
 なぜか皇帝直属の騎士団にではなく、自分の護衛につきたいと主張するものがいると言われ、会ってみればこれである。

「貴方は男性に見えるのですが?」

 宮廷魔術師のエルフの男が聞けば、黒髪の長身の端正な顔立ちの男は微笑んで

「ああ、そうだけど。何か問題があるか?」

 と、物凄く自信満々に答える。
 宮廷魔術師の男は一瞬自分が間違っているかのような錯覚を覚えるが……。

「男同士で一目惚れというのはおかしいと思うのですが」

「ああ、大丈夫!プラトニックな関係ですませるから」

 と、抗議の声もよくわからない笑顔で封殺される。

 これが、彼との出会いだった。

△▲△

「あぁ、コロネ、お前にもやっと春がきたらしいじゃないか」

 豪勢な皇帝の謁見の間で、面白そうに皇帝テオドールが宮廷魔術師であるコロネに話しかけた。
 現在謁見の間には二人の姿しかなく、騎士達は外で控えている。
 もちろん猫まっしぐらという男も外で待機させてある。

「……冗談でもやめてください。大体あれは男ですよ!?
 なぜあれを私の護衛につけるのですか!?」
 
 皇帝であるテオドールをキッとコロネが睨む。
 エルフの里で育った皇帝と宮廷魔術師は、二人だけの時はお互い遠慮はない。
 あまりにも予想外の申し出だったため、主であり、幼馴染の彼に相談してみれば、これである。
 
「いいじゃないか。この際、男でも。
 女神より賜った神力計を壊すほどの人材だぞ?
 国としてもお前の操一つで、そのような貴重な戦力が手に入るなら大歓迎だ」

 と、テオドール。

「勝手に人の操を差し出さないでいただきたいのですが」

「大丈夫、痛いのは最初だけらしいじゃないか。
 それなりに楽しめばいいだろう」

「だから、捧げるのを前提で話さないでいただきたい」

 皇帝の首根っこをつかみ、コロネがすごむ。

「別にちょっとスポーツでもする気分で寝ればいいだけだろう?」

「な!?性行為とはそのような不純なものではないでしょう!?」

「……お前、意外と純情だったのだな」

「死にますか?」

 結局、皇帝であり友であるテオドールに相談してみたが、問題は何一つ解決しなかった。

△▲△

「――はぁ」

 アケドラル帝国 帝都 ザンベルク にある自宅で、宮廷魔術師のコロネはため息をついた。
 結局、自分に一目ぼれをしたという、猫というフザケた名前を名乗る男はテオドールに偉く気に入られてしまい、コロネの護衛につくことになった。
 
 本当に意味がわからない。

 自分の護衛に付きたいなどと申し出があったときは、エルフである自分が人間の国で宮廷魔術師をしている事をやっかんでいる貴族の嫌がらせかとも思ったが……。
 そもそもこれほど神力の強い、優秀な戦士を嫌がらせだけでこのような事に使うということはまずないだろう。
 彼の戦士としての力量は……正直、マケドラル帝国--いや、神話級の魔物ですら敵う者がいないほどの強さなのだ。
 嫌がらせで使うより、そのまま国を乗っ取ったほうがはやいのだ。
 彼ならその気になれば帝国一つ滅ぼすのもたやすい。
 

 ――つまるところ、彼の自分に一目惚れしたなどという理由以外の理由らしい理由が見当たらないのだ。

 チラリと猫と名乗る青年の方を見てみれば、呑気に短剣を磨きながら、自分の少し後ろで座りながら控えている。

「貴方は本当に私の護衛につくつもりですか?」

 睨みながら聞けば、猫はにっこり笑って

「うん?そのつもりだけど?」

 と、にっこり微笑む。

「わかりませんね。貴方ほどの力があれば、国王になるのも夢ではないのに。なぜ私の護衛なのでしょうか?」

「うん?だから一目惚れ」

 コロネの問いに身も蓋もない返事を返す。

 ああ、本当にこの人は意味がわからない。男である自分に惚れるということはつまるところ、そういう趣味の人なのだろう。
 にしても、普通はもう少し隠すべきことなのではないのだろうか?

「にしても、メイドも誰もいないけど、人も雇っていないのか?」

 国の宮廷魔術師というわりにはこじんまりとした建物に、猫が不思議そうに尋ねてきた。

「エルフである私の元で働きたいというものは、そうそういませんから」

「へぇ、意外だな。エルフって尊敬されてるんじゃなかったのか?」

 猫は本気で不思議そうに訪ねてくる。

「……貴方はどこの出身の者なのですか?エルフほど人間に忌み嫌われてる存在はいないでしょう?」

 コロネが問えば、猫は本当に不思議そうな顔をして

「へぇ、知らなかった。自分の住んでた村じゃ、エルフは祀られていたけどな」

 と、肩をすくめた。一部地域ではエルフと人間の親睦がある地域があるとは聞いていたが、彼はそちらの方から来た人間なのだろうか。

「貴方くらいですよ。私に仕えたいという珍しい人間は」

 と、ため息をつけば

「イケメンなのにもったいない」

 と、聞いているコロネが恥ずかしくなるようなセリフでかえす。

「メイドもいないなら食事はどうしてるんだ?」

「薬で事足りるでしょう。満腹感もあるように調合しました」

「……ええー。食べる楽しみは?」

「そんなものは不要です。嫌なら貴方一人で外食に行けばいいでしょう。
 私は貴方がいなくても問題はありません」

「それじゃあ護衛の意味がないだろ?」

「そもそも護衛を頼んだ覚えもないのですが?」

 言えば、コロネの腕がふいに猫に掴まれる。

「……なっ!?」

「この手首の傷は?」ぐいっと服をまくられて、手首の傷が晒される。

「……実験の時の傷です。対した事では……」

「それに脇腹にも切り傷があるだろう?それも命を狙われた時のものなんだろう?」

「……なぜ知っているのですか?」

「何でだと思う?」

「……まさか、人の入浴を覗いたのでしょうか?」

「え、いや、ちがっ!!テオドールに聞いたんだよ!」

「それはそれで問題です!皇帝陛下といいなさい!何故呼び捨てなんですか!」

「ちょ!?昔のコロネ細かっ!」

「……昔?」

「あー、いや、こっちの話」

 猫が露骨に視線をそらし、その様子をコロネがジト目で睨む。

「にしても、命を狙われてるのになんで護衛もつけてないんだ?」

 話題を逸らすかのように猫が言えば

「その護衛に刺されたのがこの傷です」

 と、コロネがそっけなく返す。

「昔、心配して皇帝が私につけた護衛の中に間者が紛れ込んでいました」

「……エルフってそんなに嫌われてるのか?」

「エルフ如きが国の中枢にいるというのが問題なのですよ。人間の貴族にとってはね」

「ああ、うん。なんだか思っていた以上に大変なんだな」

「わかったのなら、私の護衛などやめて、さっさと騎士団に……」

 言いかけた、コロネを猫がそのまま抱きしめる。

 ――!?
 突然の事にコロネが顔を赤くして、自分より身長の高い猫を見上げれば

「言ったろ?一目惚れだって。絶対自分が守るから」

 と、微笑んだ。

 まったく、この人は本当にわけがわからない。
 なぜこのようにすぐ人を抱きしめるのか。

 そして何より――その行為を何故か一瞬喜んでしまった自分が一番わけがわからない。
 自分は――そういう趣味があったのだろうか?
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜

たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?  途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定? ※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...