【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

文字の大きさ
上 下
143 / 187
3章 魔獣と神々

23.  単なる自作自演

しおりを挟む
『あれ…コロネ、背中光ってる』

 私がリリとコロネをぎゅっと抱きしめていればリリがふと、気づいたようにコロネの背後を見る。

『はい?そうですか?』

 私も二人を解放してコロネの背中を見るが……確かにマントごしに光っている。

『あの背中の紋章かな?コロネ、マント脱げるか?』


 私の言葉にコロネは頷き、そのまま服を脱げば……確かに背中の紋章が光っているのだ。
 そして――背中の紋章の光が、何故か眩しく光り輝きだす。

「ちょ!??コロネ!!」

 私がコロネに手を伸ばし、そのままコロネの腕をつかんで、引き寄せ抱きしめる。
 またコロネがどこかへ連れて行かれると思ったからだ。

 
 背中の光は一気に光線のようにコロネの背から立ち上ると、そのまま神殿内に霧散した。
 そして幻想的な光を放ちながら、神々の閉じ込められていた水晶が一瞬光る。

『い、一体何が……』

 コロネを抱いた状態で私は呟いた。
 そのままコロネの背中を見れば――紋章はあるものの、もうすでに光は失われている。
 一瞬光った神々が眠っている水晶も、何事もなかったように先ほどと同じ光をたたえていたのだ。

『なんだったんだろう?』

『わ……わかりません』

 コロネも呆然とつぶやく。結局、謎は再び増えただけだった。

 ▲△▲

「さて、それでは現状を確認しましょう」

 あれから――天界は異界の女神の力が強まり危険ということで、私たちはリュートの視界で瞬間移動してエルフ領に戻ってきた。

 やや疲れた顔でコロネが言えば

「アルファー達戻さなくていいの?」

 と、エルフの神殿でリュートが用意してくれたお菓子を食べつつリリちゃん。

「また戦闘になるかもしれないから、後にしよう。
 今回は流石に疲れた」

 と、私。肉体的にってのもあるが精神的にってのも大きい。
 リリちゃんとコロネが死んだと思ったせいですごい疲れた。

 これでまたアルファーたちが操られてた!なんて事になって戦闘になるのはかなりきつい。

「ナスターシャの記憶はどれくらい覗けたんだ?」

「うーん。神様だからガードが固かった。
 最近考えたことだけしかわからない」

「それでも大分わかりました。
 現在この世界に来ている異界の神はナスターシャとクリファの二人です」

「ふむ」

 私がぱくぱくお菓子を食べながら肯けば、同席してたリュートが目を細める。
 うん、リュートはこれまでの経緯知らないしね。
 にしても、何も聞いて来ないところをみると私達の話を聞く方に徹するらしい。
 リュートの隣にいるザンダグロムも黙っているので話に参加はしないようだ。
 ちなみにザンダグロムの魔道具はとっぱらってある。

「異界の女神も何故世界が蘇ったのかはわからないようです。
 ナスターシャとクリファはこの世界の滅びの巻き添えで一度滅びかけたところを、魔王によって復活させられました。
 本来神の敵であるはずの魔王が何故二人を生き返らせたはわかりません」

 と、コロネ。

「今、こっちの神様達封印されてる。
 だから、ナスターシャとクリファの二人で、この世界の神様になるつもり。
 この世界で暴れてるプレイヤー達も、もう少ししたら、ナスターシャとクリファの二人が倒して、この世界の住人に感謝されて神になる予定だった」

 コロネに続くリリちゃん。

「えー。なんだよ。それ単なる自作自演じゃないか」

「そうなりますね。
 ですが、猫様がプレイヤー達を倒してしまってるので、予定が狂ったのでしょう。
 だから邪魔な私たちを殺しにきたのかと」

 と、コーヒーを飲みながらコロネが言う。

 コロネの話をまとめるとこうだ。

 まず最初にこの世界は一度ナスターシャとクリファ達などの異界の神々に乗っ取られた。
 異界の神の人数は全部で15人。
 彼らは自分たちのいる世界の生命を乱雑に扱ったために、魂の輪廻が壊れてしまい、魂すらをも滅ぼしてしまった。
 魂さえ存在すれば何度でも生命は誕生させられる。
 だが魂がなければ神々がいくら生命をつくっても、そこに命は芽生えないのだ。
 彼ら神々を祀るはずの生命を全て滅ぼしてしまったのである。
 祀る存在がなければ神々は存在できない。
 そこで、異界の神々が目をつけたのが、既に違う世界の神(魔獣の元となった大神)に一度襲撃を受けて、大神が不在だった、この世界だったのである。
 本来この世界にいる神々セシウス達は以前の神々同士の戦いで、一度世界の崩壊の危機を迎えた事を後悔していた。
 そしてまた、神々同士の戦いで魂が疲弊してしまえば、この世界も魂の輪廻が壊れてしまう恐れがあったのだ。
 そこでセシウス達は生き物達を無闇に殺さない。
 魂の輪廻を壊すような事をしない。
 と異界の神々との決して破れない誓いをたてさせ、自分たちは世界の礎となって世界を譲ってしまったのだ。

 神々の入れ替わりを、人間はすぐ認め、新たな神々を祀ったがエルフはそれを認めなかった。
 当時エルフの王であったセズベルクが人間と神々に戦いを挑んでしまったのである。

 だが異界の神々の加護をうけた人間に敵うはずなのどなく、エルフは惨殺され世界から駆逐された。
 異界の神々はセシウスたちとの約束を守り、自らはエルフ惨殺の手をくださなかったのだが、結論からいえば自ら手をくださなかっただけで、干渉しまくった。

 人間を煽動し力を与え、自分たちを神と認めないエルフ達を皆殺しにしたのである。

 逆らう者のいなくなった世界でナスターシャ達異界の神々は世界の神になるかと思われたが……。

 何故か世界は崩壊に向かった。

 異界の神が本来その世界の神を押しのけて世界を支配すると誕生する『審判の御子』がこの世界に誕生してしまったのだ。

『審判の御子』は神々ですら逆らえない。

 誕生すればその世界はすべて無にかえる。
 審判の御子の存在が知られるようになったのは本当に最近の事だった。
 まるで狙いすましたかのように同時期に、他の巨人の世界を乗取った神々をその世界の生命ごと滅ぼしはじめたのだ。

 審判の御子の誕生に異界の神々は一目散にこの世界から逃げ出したのだが……クリファとナスターシャは逃げ切れず審判の御子の最後の裁きに巻き込まれた。

 二人の女神は裁きで一度は滅んだかと思われたが……何故か気づけばこの世界の魔王によって蘇らせられていたのである。
 そして、蘇った世界には何故かレベルなどというシステムができており、クリファとナスターシャにもレベルが適応されていたのだ。

 この世界の神々は、蘇った世界でも眠ったままであり、天界で水晶漬けになっている。

 その理由はナスターシャやクリファ達もわからないらしい。


「まぁ、だいたいの経緯と、女神たちの狙いはわかったけど――。
 結局なんで世界がゲーム化したのかは謎なままか」

 私がコーヒーとミルクと砂糖をかき混ぜながら言えば

「そうなります。この背中の紋章も謎のままですし……」

 と、やや疲れた顔でコロネも同意する。

「皆さん一度休まれてはいかがでしょうか?
 大分顔色が悪いですし……」

 と、げっそりした顔の私とコロネに言う。
 まぁ、確かに連戦しすぎて疲れた感はある。小難しい事はまた明日にしよう。
 すでにお菓子を食べながら寝てしまったリリを抱え、私はいそいそとリュートの用意してくれた部屋で休むのだった。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜

たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?  途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定? ※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...