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3章 魔獣と神々
3. 魔王と女神(2)
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三人称視点(女神側です)
「よもやあの魔獣を復活させるとはな」
黒い鎧に仮面を付けた男――魔王が呟く。
その隣では得意気な表情の女――異界の女神クリファが誇らしげに胸をはった。
「あのプレイヤーは調子に乗りすぎじゃ。
わらわの遠視能力を邪魔しまくっただけでなく、せっかく召喚して世界を荒らしまわっているプレイヤーまで始末してしまっておるではないか!
これ以上捨て置けぬ!」
「そのために自分が召喚したプレイヤーの魂を魔獣に捧げるとは。なかなかどうして」
魔王が呆れた様子で用意されていた禍々しい装飾の椅子に腰をかけた。
相変わらずこの女は趣味が悪い。
と心の中でつぶやきながら。
「たいした事ではなかろう?
どの道死ねば、あやつらの魂は帰る場所がなく浮遊したあと消滅するだけじゃ。
なら有効活用してやるのが道理じゃろう。
プレイヤーの魂は、定着しているだけあってこの世界の住人より質がいい。
6人紋章に捧げれば魔獣を復活させるには十分じゃった。
……まぁ、なぜかレオンとかいうプレイヤーが魔獣の意志を乗取ったのは想定外じゃったが」
言って女神は泉に映った魔獣に視線を落とす。
魔獣に同化したレオンはなぜかコロネというNPCの名を叫びながら、まっすぐに帝都に向かっていた。
まだ魔獣の姿が見えるということは、あの憎き猫まっしぐらというプレイヤー達は到着してないのだろう。
あのプレイヤー達が到着すれば、結界か何かで防いでいるのか女神の遠視が一切効かなくなる。
「しかし、もし、また魔獣があのプレイヤー達によって倒されたらどうするつもりだ?
まだあれはアルテナの涙とナースの鏡を所持しているはずだ。
可能性は0ではない」
「そ、そんな事は流石にあるわけが」
「ないとは言い切れないぞ。そもそも倒されたカエサルは、魔獣よりレベルも知能も高かったはずだ。
それに私の部下も既に三躰やられた。
なかなか頭の切れる部下だったにも関わらずだ」
「そ、それがどうしたというのじゃ!!セファロウスには超回復✩がある!
聖杯がない今決して負けはせぬ!」
「そうだといいがな」
魔王はそう言うと、泉に視線を落とす。
「しかし万が一、セファロウスが負けた場合――あのプレイヤー達はさらにレベルを上げることになる。
そして、お前を危険視して倒しにくる可能性も高くなるが……。
その時はどうするつもりだ?」
その仮面のせいで顔は見えないが、女神には魔王がにやりと悪い笑を浮かべたように見えた。
相変わらずこの男は意地が悪い。
存在が滅びかけていた異界の女神である自分を何故か保護し、このようにゲーム化した世界に魂を定着させるという、離れ業をやってのけたのだ。
この男はきっととてつもない強さなのだろうと、女神――クリファは思う。
だが考えている事がさっぱりわからない。
魔王だというのに、世界を滅ぼす気があるのかないのかわからないのだ。
今もこの状況を危機的状況というよりも、楽しんでいる節がある。
「そ、それは、ナスターシャがなんとかしてくれるはず!!」
と、クリファはもう一人の双子の神。ナスターシャの名をあげる。
「………恐ろしく他人頼みだな」
魔王が呆れながら言えば
「仕方ないじゃろう!!あやつは私よりは頭が廻る!!」
と、クリファ。
「頭が良くないという自覚はあったのか」
「余計なお世話じゃ放っておけ!!」
「ナスターシャでも無理だった場合はどうするつもりだ?」
「その時は……呼ぶ事も検討するしかあるまい」
「ほう……何をだ?」
「散り散りになった他の神々もじゃ。
どうせならわらわとナスターシャの二人でこの世界の神に君臨したかったが、それが無理そうなら姉君達を呼び寄せる。
まさか邪魔するわけではあるまいな?」
女神の問いに魔王は沈黙し――
「邪魔をするといったらどうするつもりだ?」
「もちろん諦めるにきまっておろう!!
お主に逆らうことは死を意味するっ!!
しかし、諦めろというならお主が責任をもってあのプレイヤー達を始末するべきじゃ!!」
と、叫ぶ女神。
「――ふむ。そうだな――。
だが答える前に、まずはあれのお手並みを拝見しようじゃないか」
言って手から黒いコウモリのような悪魔を召喚する。
「さぁ、行け。我が隸よ。我の代わりにその目となるがいい」
言うと同時――。黒いコウモリの悪魔は消えるのだった。
「よもやあの魔獣を復活させるとはな」
黒い鎧に仮面を付けた男――魔王が呟く。
その隣では得意気な表情の女――異界の女神クリファが誇らしげに胸をはった。
「あのプレイヤーは調子に乗りすぎじゃ。
わらわの遠視能力を邪魔しまくっただけでなく、せっかく召喚して世界を荒らしまわっているプレイヤーまで始末してしまっておるではないか!
これ以上捨て置けぬ!」
「そのために自分が召喚したプレイヤーの魂を魔獣に捧げるとは。なかなかどうして」
魔王が呆れた様子で用意されていた禍々しい装飾の椅子に腰をかけた。
相変わらずこの女は趣味が悪い。
と心の中でつぶやきながら。
「たいした事ではなかろう?
どの道死ねば、あやつらの魂は帰る場所がなく浮遊したあと消滅するだけじゃ。
なら有効活用してやるのが道理じゃろう。
プレイヤーの魂は、定着しているだけあってこの世界の住人より質がいい。
6人紋章に捧げれば魔獣を復活させるには十分じゃった。
……まぁ、なぜかレオンとかいうプレイヤーが魔獣の意志を乗取ったのは想定外じゃったが」
言って女神は泉に映った魔獣に視線を落とす。
魔獣に同化したレオンはなぜかコロネというNPCの名を叫びながら、まっすぐに帝都に向かっていた。
まだ魔獣の姿が見えるということは、あの憎き猫まっしぐらというプレイヤー達は到着してないのだろう。
あのプレイヤー達が到着すれば、結界か何かで防いでいるのか女神の遠視が一切効かなくなる。
「しかし、もし、また魔獣があのプレイヤー達によって倒されたらどうするつもりだ?
まだあれはアルテナの涙とナースの鏡を所持しているはずだ。
可能性は0ではない」
「そ、そんな事は流石にあるわけが」
「ないとは言い切れないぞ。そもそも倒されたカエサルは、魔獣よりレベルも知能も高かったはずだ。
それに私の部下も既に三躰やられた。
なかなか頭の切れる部下だったにも関わらずだ」
「そ、それがどうしたというのじゃ!!セファロウスには超回復✩がある!
聖杯がない今決して負けはせぬ!」
「そうだといいがな」
魔王はそう言うと、泉に視線を落とす。
「しかし万が一、セファロウスが負けた場合――あのプレイヤー達はさらにレベルを上げることになる。
そして、お前を危険視して倒しにくる可能性も高くなるが……。
その時はどうするつもりだ?」
その仮面のせいで顔は見えないが、女神には魔王がにやりと悪い笑を浮かべたように見えた。
相変わらずこの男は意地が悪い。
存在が滅びかけていた異界の女神である自分を何故か保護し、このようにゲーム化した世界に魂を定着させるという、離れ業をやってのけたのだ。
この男はきっととてつもない強さなのだろうと、女神――クリファは思う。
だが考えている事がさっぱりわからない。
魔王だというのに、世界を滅ぼす気があるのかないのかわからないのだ。
今もこの状況を危機的状況というよりも、楽しんでいる節がある。
「そ、それは、ナスターシャがなんとかしてくれるはず!!」
と、クリファはもう一人の双子の神。ナスターシャの名をあげる。
「………恐ろしく他人頼みだな」
魔王が呆れながら言えば
「仕方ないじゃろう!!あやつは私よりは頭が廻る!!」
と、クリファ。
「頭が良くないという自覚はあったのか」
「余計なお世話じゃ放っておけ!!」
「ナスターシャでも無理だった場合はどうするつもりだ?」
「その時は……呼ぶ事も検討するしかあるまい」
「ほう……何をだ?」
「散り散りになった他の神々もじゃ。
どうせならわらわとナスターシャの二人でこの世界の神に君臨したかったが、それが無理そうなら姉君達を呼び寄せる。
まさか邪魔するわけではあるまいな?」
女神の問いに魔王は沈黙し――
「邪魔をするといったらどうするつもりだ?」
「もちろん諦めるにきまっておろう!!
お主に逆らうことは死を意味するっ!!
しかし、諦めろというならお主が責任をもってあのプレイヤー達を始末するべきじゃ!!」
と、叫ぶ女神。
「――ふむ。そうだな――。
だが答える前に、まずはあれのお手並みを拝見しようじゃないか」
言って手から黒いコウモリのような悪魔を召喚する。
「さぁ、行け。我が隸よ。我の代わりにその目となるがいい」
言うと同時――。黒いコウモリの悪魔は消えるのだった。
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