122 / 187
3章 魔獣と神々
2.みーつーけーた
しおりを挟む「じゃあ、何か、コロネが自爆呪文使いながら、そのセファロウスの心臓核を破壊するっていうのか?」
コロネの説明を聞いたあと、私は改めて問う。
以前コロネに渡した、ゲームの攻略本にはセフィロウスの超回復の秘密♪などという隠し設定もちゃっかり記載されていたらしい。
その記載によると、セフィロウスが超回復するのはセフィロウスがもつ心臓核のせい。
心臓核はダメージをうけると、すぐさま新しい細胞をつくりだしセフィロウスを修復するのだ。
コロネが超回復を止めることができたのはその心臓核の動きを聖杯が封じる力があったかららしい。
「はい。攻略本にはこう記載されていました。
新たな細胞は、セフィロウスの古い細胞と合致した時、レベル1なのが同レベルになると。
つまり、細胞が誕生した時点ではレベル1です。
なんとか私の自爆攻撃で、セフィロウスから一瞬だけでも、心臓核だけの状態にすれば壊す事が可能ということになります」
「それを壊せれば……回復出来なくなるという事か?」
「はい。うまく行けばそのまま消滅させられると」
「……でも、コロネ いっぱい死ぬ?」
と、不満そうにリリ。
以前女神の嫌がらせで手に入れた魔法書の中に、自らの命と引き換えに、レベル補正関係なしに大ダメージを与える書がはいっていたらしい。
その技を連ちゃんで使えば、コロネの計算では心臓核の場所にまでたどり着けるらしいのだ。
「はい。ですがアルファーとファルティナが復活の魔法を使えます。
同じパーティーに入っていれば遠距離でも復活させる事も可能です。
二人が魔法が再度使えるまでのクールタイムの時間を計算すると、復活の指輪も所持している指輪を全て使うことになりますが……。
私の計算では、それで心臓核まで壊せるはずです。
それにもしかしたらゲームとは違い、ダメージを0にしても心臓核が残ってしまえば、生き返ってしまう可能性もあります。
闇の女神の涙などを使用するよりも確実に心臓核を壊せるこちらの作戦の方が有用かと思われます」
後ろで物凄い嫌そうな顔でレヴィンも聞いているが……やはりこれからの事を考えると対魔王用に闇の女神の涙はとっておきたい。
私達の預かり知らぬ場所で人間の命を捧げて復活しました!とかされる可能性もなきにしもあらずなのだ。
コロネが痛い思いをして死にまくるというのは正直賛同しかねるが……他にいい案も思いつかない。
「……わかった。何か他の作戦をいまから考えるけど、どうしてもダメなようなら、それでいこう」
私が言ったその時。
「……セフィロウス復活した!!」
リリががばっと立ち上がり叫んだ。
「え!?」
その場に居合わせた者の視線がみなリリに集中する。
「大きな大きな気がいま生まれた!! 帝都の近く!!
たぶんあれセフィロウス!!帝都に物凄い速さで向かってきてる!!!」
ああ、くそう!まだザンダグロムも来てないし、作戦も考えてないのになんでこうも速く復活するかな!?
もう少し時間をくれてもいいと思うのだけれど!!
「リリ様!竜化して皆をその場所まで!
レヴィンはこのことをマルクに伝えてください!」
私も慌てて魔力察知してみるが……確かにレベル1000の何かがこちらに向かってきている。
このままだと帝都やばい。マジでやばい。
「仕方ない!!さっきの作戦で!!
皆コロネのフォローを!!
行くぞ!!」
言って、私はコロネに指輪を渡すとひと足はやく、瞬間移動でセフィロウスの場所に向かうのだった。
△▲△
異様な光景だった。
魔獣セフィロウスはもともと、魔獣セギュウムと、よく似ている。
カエルが異形に変形したような姿で、身体の部分の他に無数の取り込まれた人々の顔があるのだが……。
そこに見慣れた顔があったのだ。
セフィロウスの頭のてっぺんに……コロネに残忍な拷問をしたプレイヤーレオンの顔が。
ゲームでは本来そこは宝石だったその場所に。
他にもプレイヤーらしき顔は見られたが、他の顔は瞳に色がなく、ただ、あああああと声にならない悲鳴をあげているだけなのだが……。
レオンの目にははっきりと色があり、愉快そうな笑いを浮かべている。
レオンの顔をもつ魔獣セフィロウスが、物凄い速度で王都に向かっているのである。
魔獣の通ったその道は、どす黒い紫色に変色し、死の香りを振りまいている。
『コロネっリリっ!!姿を隠して!!
まず私が様子をみるっ!!』
今向かっているであろう、リリとコロネに念話を送る。
――なんとなくだが、この魔獣にリリとコロネを見せてはいけない気がしたのだ。
もしかしたら、レオンの意思が残っているかもしれない。
そして、私は精神防御を解除し、リリやコロネ達にも私の見たものが伝わる状態にしておく。
「レオンっ!?」
私が空中で叫べば、魔獣セフィロウスの上部のレオンの顔がこちらを向き――にたりと笑った。
刹那。
私がいた空間を、何かが通り抜けた。
咄嗟にカンで瞬間移動で躱したが、その攻撃は早くてみえない。
魔獣セフィロウスの舌が私の横を通り過ぎ、そして再び口の中に戻る。
そして、私を見ていたレオンの顔がにんまりと微笑み。
「みーーつーーーけーーーた」
狂気じみた笑を浮かべるのだった。
0
お気に入りに追加
688
あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜
たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?
途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定?
※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる