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2章 人間領へ行くことになりました
34. 断罪
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ローザ・ファルナーン
「二度と俺の前に現れるな反吐がでる」
そう、宣言したのはこの国の王子であり、つい5年前までは婚約者だったカミュだった。
いつか、こんな日がくるのではないか――そう覚悟はしていた。
けれど、愛した人にこのような仕打ちを受ける事になるとは――。
ずっと王子の許嫁として、王妃になるための教育を受け、彼にふさわしい女性になるべく、教養はもちろん、ダンス・琴・刺繍などを習い努力を重ね。
彼のためだけに人生の全てを捧げてきた――。
けれど、ある日それは狂ってしまった。
プレイヤーと呼ばれる少女がこの国にきてからだ。
最初国は、他のプレイヤーからの侵略から守ってくれた彼女を大歓迎していた。
そしてそれは今も変わらない。
そう――むしろ最初より彼女は歓迎されている。殿方全てから。
彼女はたった5年で国のあらゆる男性を虜にし、あっという間に実権を握ってしまったのだ。
何故か彼女のやることは、理にかなっていなくても、全て男性から賛同され、それに逆らった女性はすべて粛清された。
心優しかった王妃や、姫。彼女らも、プレイヤーの少女に逆らった罪で殺されてしまったのだ。
王妃や姫を心から愛し、親馬鹿扱いすらされていた、王も今は見る影などどこにもなく、プレイヤーのいいなりだ。
女性達はただひたすらに、プレイヤー カノ に目の敵にされないように彼女を褒め称えることしかできないのだ。
自分もその中の一人だった。
母や姉に、彼女だけには逆らうなと、カノには極力近づかない。
もし近づいてしまったらひたすら彼女を褒め称えよと言われていた。
堅実に自分はそれを守っていたつもりだった。
けれど――。
彼女は常にだれかを目の敵にしていないと気が済まない性格だった。
誰か一人に目をつけては、そのものの落ち度を延々と罵り、それを断罪し、ある時は殺してしまう。
最初は国王の一人娘。
とても気さくでいい子だったのだけれど――少し天然だった彼女は、カノに、無知を理由に殺された。
国を導くのに、貴族の作法もしらない、民を労われないなどという理由で。
この国の人間からすれば、カノの言う貴族の作法など、こちらの世界の国には存在しない作法だった。
そう、プレイヤーの国の貴族の知識などこちらの世界では通用しない。
それなのに、カノの知識の中にある貴族の作法とやらを振り回し、それに従わないと理由だけで姫様を殺してしまった。
そして、それを真っ当な理由で抗議した王妃様も。
その後カノのいじめの対象は次々と移り、不注意な発言をしてしまったメイド・彼女の好きな花を間違って切ってしまった庭師など時には対象は男になったりもした。
そしてついに自分の番がきたのである。
処刑台の上に乗りながら。目の前にはギロチンが鎮座している。
ローザは空を眺めた。
いつかこんな日がくることは覚悟していた。
カノのお気に入りの王子の婚約者など邪魔で仕方なかったろう。
それなのに5年も生き延びたことは奇跡としかいいようがない。
「貴方は自分の権力に誇示するあまり、カノに危害を加えた――間違いありませんか?」
神官ガリオリアがローザに尋ねる。この人も5年前までは知的で聡明な紳士だった。
だが、彼も今、カノのお気に入りの取り巻きの一人になってしまっている。
「危害?たかがドレスにワインをこぼしてしまっただけで、死刑とは。私刑以外の何ものでもないでしょう?」
私の言葉に、観覧席にいたカミュが
「貴様っ!!私とカノに嫌がらせをした数々を忘れたのか!!
私たちが二人で歩いているところを前を横切っただろう」
と、叫んでくる。
「私は何もしていません。そちらから絡んできて、難癖をつけてきただけではありませんか。
そもそも、王族でない女性に危害を加えただけで、死刑とは……単なる私刑ではありませんか」
言って、ローザはまっすぐとカノを見つめた。
王子の隣で、怖いといわんばかりに彼にすがりついている彼女に。
「自らが気に入らない人物を周りに、あの人は酷いと泣きすがっては、陥れいれる、まるで意地悪な幼子がそのまま大人になってしまったかのような可哀想な女。
そして、死刑になるまで陥れておいて、「私はそこまでする必要はないの!でも皆が……っ」とメソメソ泣いては周りに絶賛を浴びては満足している哀れな女。
これから気に食わない女が死ぬのはどんな気分なのかしら?」
ローザの言葉に、周りが一瞬静まった。
そしてそのあと
殺せ殺せと大合唱が沸き上がり、何か物のようなものが投げ込まれてくる。
「殺せっ!!いますぐそのあばずれを殺せ!!」
「カノになんてことを!この悪魔め!!」
とカミュやガリオリアまでもが叫ぶ。
カノも今回ばかりは演技ができなかったのか物凄い形相でこちらを睨んでいる。
こうなることはわかっていた。
もうこの国にまともな人などいないのだ。
みなカノを褒め称えるだけのお人形。
おままごと人形の中で満足しているだけの可哀想な存在。それがカノ。
風の噂では既にマケドニア帝国を、エルフの大賢者であるコロネ・ファンバードが解放したと聞いている。
もしかしたらこの国もと夢見たが……もしそうなったとしても自分の目で見ることは敵わないらしいとローザはため息をついた。
それでも、最後に言いたいことが言えた事をローザは誇る。
そのまま両脇の騎士に、槍で貫かれようとしたその瞬間。
「はぁぁぁぁい!!すとぉぉぉぉぉっぷうう!!!!」
声とともに、槍をもった兵士達が吹っ飛ぶのであった。
「二度と俺の前に現れるな反吐がでる」
そう、宣言したのはこの国の王子であり、つい5年前までは婚約者だったカミュだった。
いつか、こんな日がくるのではないか――そう覚悟はしていた。
けれど、愛した人にこのような仕打ちを受ける事になるとは――。
ずっと王子の許嫁として、王妃になるための教育を受け、彼にふさわしい女性になるべく、教養はもちろん、ダンス・琴・刺繍などを習い努力を重ね。
彼のためだけに人生の全てを捧げてきた――。
けれど、ある日それは狂ってしまった。
プレイヤーと呼ばれる少女がこの国にきてからだ。
最初国は、他のプレイヤーからの侵略から守ってくれた彼女を大歓迎していた。
そしてそれは今も変わらない。
そう――むしろ最初より彼女は歓迎されている。殿方全てから。
彼女はたった5年で国のあらゆる男性を虜にし、あっという間に実権を握ってしまったのだ。
何故か彼女のやることは、理にかなっていなくても、全て男性から賛同され、それに逆らった女性はすべて粛清された。
心優しかった王妃や、姫。彼女らも、プレイヤーの少女に逆らった罪で殺されてしまったのだ。
王妃や姫を心から愛し、親馬鹿扱いすらされていた、王も今は見る影などどこにもなく、プレイヤーのいいなりだ。
女性達はただひたすらに、プレイヤー カノ に目の敵にされないように彼女を褒め称えることしかできないのだ。
自分もその中の一人だった。
母や姉に、彼女だけには逆らうなと、カノには極力近づかない。
もし近づいてしまったらひたすら彼女を褒め称えよと言われていた。
堅実に自分はそれを守っていたつもりだった。
けれど――。
彼女は常にだれかを目の敵にしていないと気が済まない性格だった。
誰か一人に目をつけては、そのものの落ち度を延々と罵り、それを断罪し、ある時は殺してしまう。
最初は国王の一人娘。
とても気さくでいい子だったのだけれど――少し天然だった彼女は、カノに、無知を理由に殺された。
国を導くのに、貴族の作法もしらない、民を労われないなどという理由で。
この国の人間からすれば、カノの言う貴族の作法など、こちらの世界の国には存在しない作法だった。
そう、プレイヤーの国の貴族の知識などこちらの世界では通用しない。
それなのに、カノの知識の中にある貴族の作法とやらを振り回し、それに従わないと理由だけで姫様を殺してしまった。
そして、それを真っ当な理由で抗議した王妃様も。
その後カノのいじめの対象は次々と移り、不注意な発言をしてしまったメイド・彼女の好きな花を間違って切ってしまった庭師など時には対象は男になったりもした。
そしてついに自分の番がきたのである。
処刑台の上に乗りながら。目の前にはギロチンが鎮座している。
ローザは空を眺めた。
いつかこんな日がくることは覚悟していた。
カノのお気に入りの王子の婚約者など邪魔で仕方なかったろう。
それなのに5年も生き延びたことは奇跡としかいいようがない。
「貴方は自分の権力に誇示するあまり、カノに危害を加えた――間違いありませんか?」
神官ガリオリアがローザに尋ねる。この人も5年前までは知的で聡明な紳士だった。
だが、彼も今、カノのお気に入りの取り巻きの一人になってしまっている。
「危害?たかがドレスにワインをこぼしてしまっただけで、死刑とは。私刑以外の何ものでもないでしょう?」
私の言葉に、観覧席にいたカミュが
「貴様っ!!私とカノに嫌がらせをした数々を忘れたのか!!
私たちが二人で歩いているところを前を横切っただろう」
と、叫んでくる。
「私は何もしていません。そちらから絡んできて、難癖をつけてきただけではありませんか。
そもそも、王族でない女性に危害を加えただけで、死刑とは……単なる私刑ではありませんか」
言って、ローザはまっすぐとカノを見つめた。
王子の隣で、怖いといわんばかりに彼にすがりついている彼女に。
「自らが気に入らない人物を周りに、あの人は酷いと泣きすがっては、陥れいれる、まるで意地悪な幼子がそのまま大人になってしまったかのような可哀想な女。
そして、死刑になるまで陥れておいて、「私はそこまでする必要はないの!でも皆が……っ」とメソメソ泣いては周りに絶賛を浴びては満足している哀れな女。
これから気に食わない女が死ぬのはどんな気分なのかしら?」
ローザの言葉に、周りが一瞬静まった。
そしてそのあと
殺せ殺せと大合唱が沸き上がり、何か物のようなものが投げ込まれてくる。
「殺せっ!!いますぐそのあばずれを殺せ!!」
「カノになんてことを!この悪魔め!!」
とカミュやガリオリアまでもが叫ぶ。
カノも今回ばかりは演技ができなかったのか物凄い形相でこちらを睨んでいる。
こうなることはわかっていた。
もうこの国にまともな人などいないのだ。
みなカノを褒め称えるだけのお人形。
おままごと人形の中で満足しているだけの可哀想な存在。それがカノ。
風の噂では既にマケドニア帝国を、エルフの大賢者であるコロネ・ファンバードが解放したと聞いている。
もしかしたらこの国もと夢見たが……もしそうなったとしても自分の目で見ることは敵わないらしいとローザはため息をついた。
それでも、最後に言いたいことが言えた事をローザは誇る。
そのまま両脇の騎士に、槍で貫かれようとしたその瞬間。
「はぁぁぁぁい!!すとぉぉぉぉぉっぷうう!!!!」
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