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2章 人間領へ行くことになりました
16. 聖水
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結局、コロネをそのままテント内の寝室へと運ぶ。
よほど眠かったらしく、抱きかかえて運んでも目を覚ますことはなかった。
コロネをベッドで寝かせたところで
「所でアルファーも寝てないはずだけど、大丈夫なのか?」尋ねれば。
「守護天使は睡眠は必要ありません。
深夜1時に疲労が自動的にリセットされます」
「なんつーか、守護天使はかなりゲーム時代のシステム引き継いでいるんだな」
「そうですね。どうせならNPCを殺す命令も不可だった縛りも残してくれれば嬉しかったのですが」
と、ため息をつく。
うん。望まない殺戮は嫌だもんね……って、でも……。
「どうかなさいましたか?」
考え込んだ私にアルファーが問う。
「うーーん。この世界ってどういう世界なんだろうなぁって。
中途半端にシステム残したり、かといってゲームとは別の事も多々あったり。
守護天使だってこっちの世界にいないわけだろ?
なのにシステムを残したり残さなかったりしてちゃんとシステム周りをいじってたりするし。
いないならシステム全部そのまま残っててもいい気がするんだけど。
ちゃんとシステム周りをいじっているということは、守護天使もこの世界を探せばいるのか?」
「……どうでしょうか。
もしくは……こうやって召喚されてこの世界に我々が来る事も神々は想定済みだった可能性も」
私はアルファーの言葉にはっとする。
……ああ、そうか。
その可能性も十分あるのか。
もしかして、この召喚されてプレイヤーがこちらの世界に来る事も考慮してシステムをいじっているなら……
神々は召喚を歓迎しているのだろうか?
もしくは、召喚させるために、私達の世界でVRMMOのゲームを始めたのだろうか?
「だとすると、目的はなんだろう?」
「神々のお考えになることは下々の私たちには理解りかねます」
と、アルファーはあっさり思考を破棄する。
うん、コロネと違ってこういう議論はあまり好きではないらしい。
「……それに」
「……それに?」
「猫様、私は考える事は得意ではありません
頭より身体が先に動くタイプです」
きりっと真顔でアルファーが告げる。
……うん。その自ら脳筋宣言するスタイル嫌いじゃないわ。
△▲△
……さて。
私はアルファーも別室で休ませ腕を組んだ。
食料問題は確かに早急になんとかしなきゃいけない。
身体の中の魔力が悪さをしているというのなら一度魔力を吸い取ってみようか?
MPを吸い取る罠は存在する。
だがこれで身体の不純物までとれるかは謎だし。
結局あれだよね。トイレとか行く必要がなくなったということは、食べたものはそのまま蓄積されている。
しかも、農作物が水や肥料などで育つ訳じゃなく魔力で育つということは……農作物も魔力100%だ。
今この世界の生き物はほぼ魔力で体も構成されているってことかな。
しかもトイレとかにいかないから不純物も取り出せない。
……ってか何か誤飲した場合はどうなるのだろうか?
お腹から取り出す他ないってことかな?
やばいこの世界マジどうなってんだ。
これ以上考えると気になりすぎて収集がつかなくなりそうなのでやめておく。
胃液がどうなってんだとか、そもそも魔力で身体ができあがってるとかおかしくねとか。
考えだしたらきりがない。
とりあえず解決方法を模索しないと。
私はアルファーに持ってきてもらった作物のうち、りんごを一つ鑑定する。
鑑定内容にあきらかに
***
林檎
アケドラル産のりんご
呪い:ダンジョンに生息する魔物の魔力を吸い込んでいる・長期にわたって摂取すると人体に影響する恐れがある
***
と、きっぱりはっきり明記されていた。
他の果物や穀物もそうだ。
そしてエルフの里から仕入れたといわれる作物には呪いの表記はない。
って、毒扱いじゃなくて呪い扱いなのか。
他のプレイヤーが解決できなかったのはこのせいなのかな?
このゲーム、呪いは状態異常扱いではなく、聖女か神官か巫女が除霊しないと治らない。
そのためどんなに状態異常回復の魔法を使ったところで回復できないのだ。
私は試しに除霊の札でりんごを除霊してみれば……あっけなく普通のりんごにもどる。
うん。これ呪いだわ。
あれか、ダンジョンの魔物が怨霊になって~的扱いなのだろうか。
ってことは身体が動かなくなっている人も呪い扱いなのかもしれない。
問題は呪いをどう解くか、だ。
除霊の札は現在手持ちは88個。
全国民に配れる量じゃない。
ゲーム上では神官・巫女・聖女・大神官の4つの職業で解除はできた。
が、これも魔法ではなくスキル扱いなのである。
スキルを仕様すれば解除できるはずだが………。
そもそもこちらの世界の住人はスキルを使用できない。
プレイヤーで聖女か大神官の職を持つものを探し出したところで、一人が呪いを解ける量などたかが知れている。
国中の人の呪いを解除してね✩などと頼めば、それこそブラック企業どころの話じゃない。
錬金術師のsionに作成を頼むとしても、あいにく私は除霊の札の作り方はわからない。
ガイアサーバーの出身のsionも恐らく知らないだろうから作れないだろう。
これはあれだ。浄化といえば天使。天使といえば守護天使。
天使のアルファーに期待するしかない。
△▲△
「呪いの解除……ですか?」
窓辺で一人部屋で黄昏ていたアルファーに話しかければ、私は大きく頷いた。
「申し訳ありません。自分は戦闘特化型の守護天使ですから。
可能性があるとすれば回復系を得意とするファルティナですが……。
恐らく彼女も一人、二人を解除することはできますが、広範囲となると無理かと思われます」
「うーん。それは困ったなぁ」
「聖水ではダメなのでしょうか?」
「聖水?」
「はい。神々が住まうレイゼル霊峰より湧き出る呪いを解く泉の水です。
ゲーム時代イベントでとりに行った記憶があります」
「あーーあった!そういえばあった!」
アルファーの言葉に私は頷いた。
ポーションを作る時の素材扱いで、それ単体で使用できなかったため、すっかり忘れていたが呪いを解く水として聖水があった。
ゲームでは使用できなかったけど、こっちの世界ではどうなんだろう?
私はアイテムボックすから聖水を取り出すと、今度は呪われた桃にかけるのだった。
よほど眠かったらしく、抱きかかえて運んでも目を覚ますことはなかった。
コロネをベッドで寝かせたところで
「所でアルファーも寝てないはずだけど、大丈夫なのか?」尋ねれば。
「守護天使は睡眠は必要ありません。
深夜1時に疲労が自動的にリセットされます」
「なんつーか、守護天使はかなりゲーム時代のシステム引き継いでいるんだな」
「そうですね。どうせならNPCを殺す命令も不可だった縛りも残してくれれば嬉しかったのですが」
と、ため息をつく。
うん。望まない殺戮は嫌だもんね……って、でも……。
「どうかなさいましたか?」
考え込んだ私にアルファーが問う。
「うーーん。この世界ってどういう世界なんだろうなぁって。
中途半端にシステム残したり、かといってゲームとは別の事も多々あったり。
守護天使だってこっちの世界にいないわけだろ?
なのにシステムを残したり残さなかったりしてちゃんとシステム周りをいじってたりするし。
いないならシステム全部そのまま残っててもいい気がするんだけど。
ちゃんとシステム周りをいじっているということは、守護天使もこの世界を探せばいるのか?」
「……どうでしょうか。
もしくは……こうやって召喚されてこの世界に我々が来る事も神々は想定済みだった可能性も」
私はアルファーの言葉にはっとする。
……ああ、そうか。
その可能性も十分あるのか。
もしかして、この召喚されてプレイヤーがこちらの世界に来る事も考慮してシステムをいじっているなら……
神々は召喚を歓迎しているのだろうか?
もしくは、召喚させるために、私達の世界でVRMMOのゲームを始めたのだろうか?
「だとすると、目的はなんだろう?」
「神々のお考えになることは下々の私たちには理解りかねます」
と、アルファーはあっさり思考を破棄する。
うん、コロネと違ってこういう議論はあまり好きではないらしい。
「……それに」
「……それに?」
「猫様、私は考える事は得意ではありません
頭より身体が先に動くタイプです」
きりっと真顔でアルファーが告げる。
……うん。その自ら脳筋宣言するスタイル嫌いじゃないわ。
△▲△
……さて。
私はアルファーも別室で休ませ腕を組んだ。
食料問題は確かに早急になんとかしなきゃいけない。
身体の中の魔力が悪さをしているというのなら一度魔力を吸い取ってみようか?
MPを吸い取る罠は存在する。
だがこれで身体の不純物までとれるかは謎だし。
結局あれだよね。トイレとか行く必要がなくなったということは、食べたものはそのまま蓄積されている。
しかも、農作物が水や肥料などで育つ訳じゃなく魔力で育つということは……農作物も魔力100%だ。
今この世界の生き物はほぼ魔力で体も構成されているってことかな。
しかもトイレとかにいかないから不純物も取り出せない。
……ってか何か誤飲した場合はどうなるのだろうか?
お腹から取り出す他ないってことかな?
やばいこの世界マジどうなってんだ。
これ以上考えると気になりすぎて収集がつかなくなりそうなのでやめておく。
胃液がどうなってんだとか、そもそも魔力で身体ができあがってるとかおかしくねとか。
考えだしたらきりがない。
とりあえず解決方法を模索しないと。
私はアルファーに持ってきてもらった作物のうち、りんごを一つ鑑定する。
鑑定内容にあきらかに
***
林檎
アケドラル産のりんご
呪い:ダンジョンに生息する魔物の魔力を吸い込んでいる・長期にわたって摂取すると人体に影響する恐れがある
***
と、きっぱりはっきり明記されていた。
他の果物や穀物もそうだ。
そしてエルフの里から仕入れたといわれる作物には呪いの表記はない。
って、毒扱いじゃなくて呪い扱いなのか。
他のプレイヤーが解決できなかったのはこのせいなのかな?
このゲーム、呪いは状態異常扱いではなく、聖女か神官か巫女が除霊しないと治らない。
そのためどんなに状態異常回復の魔法を使ったところで回復できないのだ。
私は試しに除霊の札でりんごを除霊してみれば……あっけなく普通のりんごにもどる。
うん。これ呪いだわ。
あれか、ダンジョンの魔物が怨霊になって~的扱いなのだろうか。
ってことは身体が動かなくなっている人も呪い扱いなのかもしれない。
問題は呪いをどう解くか、だ。
除霊の札は現在手持ちは88個。
全国民に配れる量じゃない。
ゲーム上では神官・巫女・聖女・大神官の4つの職業で解除はできた。
が、これも魔法ではなくスキル扱いなのである。
スキルを仕様すれば解除できるはずだが………。
そもそもこちらの世界の住人はスキルを使用できない。
プレイヤーで聖女か大神官の職を持つものを探し出したところで、一人が呪いを解ける量などたかが知れている。
国中の人の呪いを解除してね✩などと頼めば、それこそブラック企業どころの話じゃない。
錬金術師のsionに作成を頼むとしても、あいにく私は除霊の札の作り方はわからない。
ガイアサーバーの出身のsionも恐らく知らないだろうから作れないだろう。
これはあれだ。浄化といえば天使。天使といえば守護天使。
天使のアルファーに期待するしかない。
△▲△
「呪いの解除……ですか?」
窓辺で一人部屋で黄昏ていたアルファーに話しかければ、私は大きく頷いた。
「申し訳ありません。自分は戦闘特化型の守護天使ですから。
可能性があるとすれば回復系を得意とするファルティナですが……。
恐らく彼女も一人、二人を解除することはできますが、広範囲となると無理かと思われます」
「うーん。それは困ったなぁ」
「聖水ではダメなのでしょうか?」
「聖水?」
「はい。神々が住まうレイゼル霊峰より湧き出る呪いを解く泉の水です。
ゲーム時代イベントでとりに行った記憶があります」
「あーーあった!そういえばあった!」
アルファーの言葉に私は頷いた。
ポーションを作る時の素材扱いで、それ単体で使用できなかったため、すっかり忘れていたが呪いを解く水として聖水があった。
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