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1章 異世界に召喚されました
43話 魔道具屋
しおりを挟む「おーコロネ。待ってたぞ!とうとう嫁さんでも連れてきたのか?」
次の日。コロネが案内したのはそこそこ大きい魔道具屋だった。
義手を治すために材料と道具が必要とかでコロネの知り合いの魔道具屋さんを訪れたのだ。
店に入ると店の店員に案内され奥まった部屋に案内され、部屋に入るなり男が放ったのがその言葉だった。
エルフなだけあって、やはり美形でダンディな顔つきのいかついおじさんだ。
「まったく、貴方は、何をフザケた事を。そんなわけが……」
コロネが言いかけるが
「で、どっちが嫁さんだ?男か幼女か?
うん。どっちをとっても変態なのがお前らしいな」
と、私とリリを見比べて話を進める。
「ああ、グラッド……。
どうやら貴方は一度死にたいようですね。とういうか死になさい。
安心してください。生き返らせる術はありますから」
「じょ、冗談!!冗談だって!!
ってかお前やばい!目が本気すぎるだろっ!!」
左手に魔力を貯めた状態ですごむコロネにグラッドと呼ばれたおっさんが慌てて謝罪をはじめる。
ヒゲ系のダンディさんがペコペコシーンとか誰得やねん。
「え、えーっと」
私が所在なさげに話にはいろうか迷うと
「ああ、猫様申し訳ございません。
これが魔道具の専門家のグラッドです。性格に難はありますが、腕は確かです」
グラッドがコロネに紹介されて私に頭を下げる。
「大賢者様が様呼びとか、まさか王族か何かか?」
グラッドがヒソヒソ声でコロネに問いかけるが
「事情を話せば長くなります……」
「おぅ」
「ですので話しません」
「ちょ!?お前っ!!ひでぇ!!」
真顔で答えるコロネにグラッドが悲鳴をあげる。
何故か漫才をはじめる二人。
コロネって私たち以外でもこういう対応することあるのか。
それだけ仲がいいということなのだろうか。
「大体、お前。施設が借りたいとか言ってたらしいが、お前の家の設備の方がすごいだろう。
なんでわざわざうちに来んだ?」
「跡形もなく全て壊れました」
「跡形もなくって、なんでだよっ!?モンスターにでも襲われたのか!?」
「理由は察してください」
「いや、無理だろっ!!説明しろやっ!!」
「それはともかく、猫様。
私はしばらくこちらで魔道具を作りたいと思いますが猫様とリリ様はいかがなさいますか?」
わめくグラッドを無視し、コロネはこちらに尋ねる。
うん、グラッドさん可哀想になるくらい塩対応。
「うーん。
それじゃあ、街を見て廻ろうかな。
リリもそれでいいか?」
「うん!ケーキ屋行きたい!」
私の提案にリリが賛成する。ここに居ても特に役にたてることもなさそうだし。
……あ、そうだ。
「そういえばコロネ。魔道具の素材ならドロップしたものがあるが、使うか?」
「素材ですか……?
そうですね。義手にもう少し魔力強度の高い素材を探そうと思っていましたから。
いただけるなら助かります」
「了解。用途がわからないから全部ここに出すよ」
△▲△▲△▲△▲△▲
「うわ、すげぇ!!!
これゴールデンゴーレムの心臓じゃねーか!?
こっちはキメライアンの鱗まであるぞ!??」
「既に天界にしか存在しないというクラシスの聖樹核から古代龍の牙までありますね……いやはや」
二人が私が並べたアイテムを見ながら感嘆の声をあげる。
鑑定してあげなくても見ただけで判別できちゃうところは流石二人ともプロなだけはある。
「なぁ、兄ちゃん、この七色に光ってる牙は何だ?」
グラッドがわくわくした様子で聞いてくる。
「魔竜ボグデウスの牙ですね」
私が答えるとグラッドは目を輝かせ
「ちょ!?マジか!?
コロネ、お前の義手。神話級の武器並み性能にできるじゃねーか」
「そうですね。この素材ならなんとか私の魔力にも耐えられると思います」
真剣に牙を観察しながら言うコロネに
「……って、これ使わないと耐えられないってお前の魔力どうなってんだよ!?」
やっぱり突っ込むグラッドさん。
グラッドさんはいいツッコミ系漫才師になれると思うの。
「に、してもこんな神話級の素材を持ち歩いってるって事は兄ちゃんもプレイヤーか?」
「ええ、まぁ」
私は言葉を濁した。いや、だってこっちの世界プレイヤー評価最悪だし。
あまり胸張って言えることじゃないよね。
なんであんなクズばかりをこっちの世界に召喚したのかなあの駄目女神。
「ってことは、ひょっとしてあれか、この都市を魔物から守ったっていうプレイヤーはお前さんか」
「あー、たぶんそうなのかな?」
私が頷くと、
「すごいな兄ちゃん!
有り難うな。恩にきるぜ。
にしても、兄ちゃんがプレイヤーか!?」
と、グラッドが顎に手を添えて私をジロジロと観察をはじめた。
「グラッド。
猫様に不躾な視線を向けるのはやめていただきましょうか?」
青筋をたてて、コロネがグラッドの耳をひっぱる。
「悪い悪い。見慣れない装備だったからつい。
プレイヤーっていえば未知の装備だぞ。
興味あるだろお前だって」
と、涙目になってあやまるグラッド。
「だからといって、猫様にそのような視線を向けるなど許しません。
それにしても困りましたね。この素材で最初から作るとなるとかなり時間がかかってしまいます」
コロネが並べられた素材を見ながらため息をつく。
「別に自分は構わないから、最初から作り直せばいい。
たぶん次に挑むエルフの大神殿は、自分たち三人で全力をだして、やっと勝てるか勝てないかだろうし。
装備は万全にするべきだ」
「ネコがいるのに、勝てないかもしれないの?」
私の言葉にリリが聞き返す。
「ああ、たぶん街中にあるダンジョンの場合ほぼ「チャレンジミッション」だからな。
あそこは、特殊なダンジョンで、全員レベルが敵のボスと同じレベルに下げられる。
つまりボスレベルが800だから、自分もレベルは800まで落ちるからな。
敵のダメージは普通に通る。
本来8人で挑むダンジョンにたった3人で挑むのだから、正直かなりきつい
恐らく時間制限があるだろうし」
「ってか、兄ちゃんたちレベル800とか何の話してるんだ?
まさかレベル800もあるのか!?」
グラッドさんが驚愕の声を上げる。
ああ、やばいこの人いた事忘れてた。
コロネがグラッドに顔を近づけて
「もしこのことを他言したら……わかっていますよね?」
漫画だったらズゴゴゴゴゴという効果音がつきそうなほどの威圧を放ちながらコロネが言う。
「わ、わかってるよ!
この世で一番敵にしたら恐ろしい奴の情報なんか誰が流すもんか!?」
「なら結構。
それに猫様、リリ様もです。
グラッドは一応信頼できる人物ですから問題ありませんが。
他の場所でむやみにレベルなどの話は控えてください。
どこに他のプレイヤーの間者がいるかわかりませんから」
「ごめん 気をつける」
「悪かった。油断してた」
「会話はなるべく念話でお願いします」
そういってコロネはにっこり微笑んだ。
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