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1章 異世界に召喚されました
閑話1(コロネ視点)
しおりを挟む……これは一体どういう状態なのだろうか?
コロネは戸惑いながら自分の状況を把握する。
結局あの後、二人で酔いつぶれるまで飲んでしまい……後半から記憶がない。
あまり酒に強い方でないことは自覚していたので、酒は控えていたはずなのだが、甘い口当たりの酒だったため、油断して飲みすぎてしまった。
思っていたより度数の高い酒だったらしい。
クラクラとする頭を抑えながら、起き上がれば、自分は猫に用意してもらったベッドで寝ていて何故か同じ部屋で猫がソファで熟睡していた。
恐らく、ここまで自分を連れてきてそのまま寝てしまったか、もしくは部屋を間違えて寝てしまったかのどちらかだろうが……。
……それにしても。
猫に掛ふとんをかけながら寝顔を見つめる。
本当にこの人は不思議な人で。
他のプレイヤーでは躊躇するような問題でも迷うことなく首をツッコミ……すべて解決してしまう。
ハルトたちともそこそこ交流があったが、気立てのいいハルト達でさえあそこまで、躊躇なく揉め事に首を突っ込むことはないだろう。
考えるより先に身体が動いている気配さえある。
リリを助けるために古代龍に一人で挑んだ時にはコロネの方が生きた心地がしなかったほどだ。
それも無謀に挑んでいるわけでもなく、全て計算しているようで。
かといって計算しているのかと思えば時折抜けていて。
精神世界で会った女性だった猫を思い出し、コロネはため息をつく。
こちらの世界の基準からすれば、腕も細く体つきも華奢でか弱そうな女性のはずなのになぜこうも強いのだろう。
NPCだった時代に、朧気に憶えている闘う姿から、ずっと男性だと思っていたため、女性と知った時は驚いたが。
時折聞いている方が赤面するようなセリフを宣言しては、それを本当に実現してしまう強さ。
仕方ない。無理だ。と自分なら諦めてしまう事をこの人は平気で何でも解決してしまう。
この人は本当に強くて。折れる事を知らない。
だからこそ不安になる。
その背にすべて背負い込まないかと。
挫折した時、その輝きを失わないかと。
自分の不注意で知られてしまった過去を。
感情移入しやすい彼女にとって、あの過去はどんなに残酷だったのだろう?
念話を通じて、感じた彼女の怒り。
今までどんなに自分が貶められても、最終的には同じプレイヤーだからと殺意など抱く事のなかった彼女が、始めてみせた殺意。
そんな感情を抱かせてしまったことを申し訳なく思う。
けれど、もし、殺意のままに本当にプレイヤーに手をかけることがあれば、この人はきっとその罪の重さを一生拭えない傷として背負うだろう。
心ねが優しすぎるのだ。
だから――守らないと。
物理的な強さにおいて自分がこの人を守れるとは思えない。
けれど、この人の意思になるべくそって、彼女が傷つかないように、その道を選ぶ事くらいなら出来ることはあるはずだ。
彼女が自分たちのために、その道を選んだのだから。
自分も全力でこの人を守りたいと心から思う。
自分とリリのために、世界を平和にすると、宣言した彼女を思い出し、思わず赤面する。
自分はきっとこの人に出会えて幸せなのだろう。
それが例えシステムに縛られていたものだととしても。
けれど――。
コロネはそのままがくんと膝をついた。
時折くる吐き気と目眩。そして頭痛に頭を抑える。
どうやら二日酔いらしい。
守りたいなどと誓いつつ、身体がこの状態ではどうしようもない。
コロネは自分の不甲斐なさに大きなため息をつくのだった。
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