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1章 異世界に召喚されました
36話 心の友
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「おおおおお!!さすが我心の友猫まっしぐら殿!!たった一日で建物まで立て替えてしまうとは!!」
と、次の日。何故かクランベールがコロネの屋敷にやってきて開口一番そう言った。
玄関で出迎えた途端、 私の手を握るとぶんぶんと振り回している。
うん?私、クランベールの心の友になった記憶はまったくないのだが。
こう――悪い人ではないんだけど、なるべく距離を置いておきたいタイプなんだよねこの人。
相手をすると疲れるタイプというか何というか。
「いつ。誰が心の友と認めたのでしょう?」
コロネがクランベールの耳を引っ張りながら、私から引き離す。
クランベールが情けない声で謝り、コロネがため息をつきながら
「にしても、どうかしましたか?
わざわざ貴方がここに来るとは珍しいですね」
問えば
「おお、これは失礼!!
コロネ殿の屋敷が一瞬で別のものになったと街中でも噂になっておりまして。
念のため、皆様が無事か確認してくるようにとリュート王子に命令を賜りましてな!」
と、胸をえっへんと貼りながらクランベールが言う。
ああ、そうだよね。
コロネの家って庭がだだっ広いから忘れてたけど結構な街中にあったもんね。
そりゃあれだけの事があれば悪目立ちするかもしれない。
よく見れば、門の外から野次馬がワイワイ覗いていた。
「ああ、そうですね。
念の為王子にも連絡しておくべきだったかもしれません。
にしても……」
言ってコロネは目を細め
『猫様一度屋敷の中へ戻りましょう』
と、パーティーチャットでコロネが話しかけてくる。
『うん?構わないけど何でだ?』
『第一王子と第二王子の手の者が野次馬の中に多数混ざっています。
恐らく、猫様との繋ぎをつけたくて、こちらに接触を試みているのでしょう
外にでれば確実に声をかけられると思います』
と、コロネ。
うん。やばい。安易にリュートのレベルを上げたせいで目をつけられたのかもしれない。
ちょっと行動が迂闊だったかなと、私はため息をつくのだった。
△▲△
「やっぱり目を付けられたのか?」
部屋の中に戻り、ソファに座りながら私が尋ねれば
「ええ、間違いなく。
猫様の人柄の良さはすでに彼らも調べて熟知しているでしょう。
リュートのように親睦を深めて、レベルを上げてもらおうと躍起になっているかもしれませんね。
私の屋敷は特別な魔道具が設置してありますから、中に入られるという事はありませんが念のため気を付けてください」
と、コーヒーを飲みながらコロネ。
その横ではリリがいい子に座りながらクランベールがもってきたおせんべいを食べている。
「うーん。頼まれたらホイホイレベル上げ手伝う程お人好しじゃないんだけどなぁ
そんなお人好しに見られているわけか?」
私が言うとコロネはこめかみを掴みながらため息をつくと
『……無自覚でしたか。
猫様の世界の基準はわかりませんが
こちらの世界の基準で言わせていただけば、バカがついてもおかしくないほどのお人好しです』
言われてしまう。
コロネに馬鹿がつくとか言われると地味に傷つくんですけど!?
『あのような装備や呪文書を容易く人に譲ってしまったり、レベル上げに協力したり……こちらの世界では考えられません』
言われて口ごもる。
『うーーん。まぁ、そこは確かに言われてみればゲーム感覚だったかな、反省する』
そう、私は昔からMMOなどのネトゲゲームでもちょっと気に入った初心者にはホイホイアイテムをあげてしまうタイプだった。
実際リュート王子達にあげた装備は、初心者の子を見かけたらあげよう!と、とっておいた装備だったりする。
ゲームでも見る人から見たら、甘やかしてると思われるかもしれない。
ゲームの中でさえ、甘やかしてると思われる行為をリアルになった世界でもやってしまっているのだ。
他人から見ればお人好し馬鹿と言われても仕方がないだろう。
『その行為自体が絶対に悪いと言いたいわけではないのです。
ただ、そういった行為をしていれば、自ずと、猫様の善意を利用しようとするものが集まってしまう事になりますので。
今回のリュートの件がいい例です。
リュートがレベルをあげてもらえたのなら自分もと、他の王子達が我先にと接触を計ってくるのは当然の事かと』
――うん。言いたい事はわかる。
ちょっと安直だったかもしれないと反省はしている。
『勿論、止めなかった私にも責任はあります。
そのことで猫様を責めるわけではありません。
助かる部分も大きいのは事実ですから。感謝しております。
ですが、これから人間領にいくなら今以上に気を付けねばなりません。
人間はエルフなどよりずっと狡猾ですから』
言ってコーヒーカップをおき
『恐らく神々の結界で封じられた地域にいる魔物を除けば、猫様に敵うものなどいないでしょう。
利用しようとする者はあとを絶たないはずです』
そう話したコロネの表情が複雑なものになる。
なんとなく、コロネも苦い経験をしたことがあるのが伝わってきた。
そういえば、コロネだってレベル143でNPCの中では最強だったわけで、プレイヤーが来る前は今の私と似たような立場だったのだろう。
『それと、これは猫様だけでなく、リリ様貴方にも当てはまります』
『え?リリ?』
急に話をふられて、リリが思い切り動揺する。
『猫様が規格外すぎて、忘れているかもしれませんが、リリ様のレベルもありえないレベルです。
むしろ男性姿の猫様より、幼い少女のリリ様の方が御しやすいと思われる可能性が高い。
ですから気を付けてください。
特にリリ様は一人で抱え込んでしまう傾向があります。
周囲に頼る事は悪いことではありません。決して一人で抱え込まない事。
必ず何か頼まれた時には私と猫様に相談すること――いいですね?』
こくこくとリリが真剣に頷くのだった。
と、次の日。何故かクランベールがコロネの屋敷にやってきて開口一番そう言った。
玄関で出迎えた途端、 私の手を握るとぶんぶんと振り回している。
うん?私、クランベールの心の友になった記憶はまったくないのだが。
こう――悪い人ではないんだけど、なるべく距離を置いておきたいタイプなんだよねこの人。
相手をすると疲れるタイプというか何というか。
「いつ。誰が心の友と認めたのでしょう?」
コロネがクランベールの耳を引っ張りながら、私から引き離す。
クランベールが情けない声で謝り、コロネがため息をつきながら
「にしても、どうかしましたか?
わざわざ貴方がここに来るとは珍しいですね」
問えば
「おお、これは失礼!!
コロネ殿の屋敷が一瞬で別のものになったと街中でも噂になっておりまして。
念のため、皆様が無事か確認してくるようにとリュート王子に命令を賜りましてな!」
と、胸をえっへんと貼りながらクランベールが言う。
ああ、そうだよね。
コロネの家って庭がだだっ広いから忘れてたけど結構な街中にあったもんね。
そりゃあれだけの事があれば悪目立ちするかもしれない。
よく見れば、門の外から野次馬がワイワイ覗いていた。
「ああ、そうですね。
念の為王子にも連絡しておくべきだったかもしれません。
にしても……」
言ってコロネは目を細め
『猫様一度屋敷の中へ戻りましょう』
と、パーティーチャットでコロネが話しかけてくる。
『うん?構わないけど何でだ?』
『第一王子と第二王子の手の者が野次馬の中に多数混ざっています。
恐らく、猫様との繋ぎをつけたくて、こちらに接触を試みているのでしょう
外にでれば確実に声をかけられると思います』
と、コロネ。
うん。やばい。安易にリュートのレベルを上げたせいで目をつけられたのかもしれない。
ちょっと行動が迂闊だったかなと、私はため息をつくのだった。
△▲△
「やっぱり目を付けられたのか?」
部屋の中に戻り、ソファに座りながら私が尋ねれば
「ええ、間違いなく。
猫様の人柄の良さはすでに彼らも調べて熟知しているでしょう。
リュートのように親睦を深めて、レベルを上げてもらおうと躍起になっているかもしれませんね。
私の屋敷は特別な魔道具が設置してありますから、中に入られるという事はありませんが念のため気を付けてください」
と、コーヒーを飲みながらコロネ。
その横ではリリがいい子に座りながらクランベールがもってきたおせんべいを食べている。
「うーん。頼まれたらホイホイレベル上げ手伝う程お人好しじゃないんだけどなぁ
そんなお人好しに見られているわけか?」
私が言うとコロネはこめかみを掴みながらため息をつくと
『……無自覚でしたか。
猫様の世界の基準はわかりませんが
こちらの世界の基準で言わせていただけば、バカがついてもおかしくないほどのお人好しです』
言われてしまう。
コロネに馬鹿がつくとか言われると地味に傷つくんですけど!?
『あのような装備や呪文書を容易く人に譲ってしまったり、レベル上げに協力したり……こちらの世界では考えられません』
言われて口ごもる。
『うーーん。まぁ、そこは確かに言われてみればゲーム感覚だったかな、反省する』
そう、私は昔からMMOなどのネトゲゲームでもちょっと気に入った初心者にはホイホイアイテムをあげてしまうタイプだった。
実際リュート王子達にあげた装備は、初心者の子を見かけたらあげよう!と、とっておいた装備だったりする。
ゲームでも見る人から見たら、甘やかしてると思われるかもしれない。
ゲームの中でさえ、甘やかしてると思われる行為をリアルになった世界でもやってしまっているのだ。
他人から見ればお人好し馬鹿と言われても仕方がないだろう。
『その行為自体が絶対に悪いと言いたいわけではないのです。
ただ、そういった行為をしていれば、自ずと、猫様の善意を利用しようとするものが集まってしまう事になりますので。
今回のリュートの件がいい例です。
リュートがレベルをあげてもらえたのなら自分もと、他の王子達が我先にと接触を計ってくるのは当然の事かと』
――うん。言いたい事はわかる。
ちょっと安直だったかもしれないと反省はしている。
『勿論、止めなかった私にも責任はあります。
そのことで猫様を責めるわけではありません。
助かる部分も大きいのは事実ですから。感謝しております。
ですが、これから人間領にいくなら今以上に気を付けねばなりません。
人間はエルフなどよりずっと狡猾ですから』
言ってコーヒーカップをおき
『恐らく神々の結界で封じられた地域にいる魔物を除けば、猫様に敵うものなどいないでしょう。
利用しようとする者はあとを絶たないはずです』
そう話したコロネの表情が複雑なものになる。
なんとなく、コロネも苦い経験をしたことがあるのが伝わってきた。
そういえば、コロネだってレベル143でNPCの中では最強だったわけで、プレイヤーが来る前は今の私と似たような立場だったのだろう。
『それと、これは猫様だけでなく、リリ様貴方にも当てはまります』
『え?リリ?』
急に話をふられて、リリが思い切り動揺する。
『猫様が規格外すぎて、忘れているかもしれませんが、リリ様のレベルもありえないレベルです。
むしろ男性姿の猫様より、幼い少女のリリ様の方が御しやすいと思われる可能性が高い。
ですから気を付けてください。
特にリリ様は一人で抱え込んでしまう傾向があります。
周囲に頼る事は悪いことではありません。決して一人で抱え込まない事。
必ず何か頼まれた時には私と猫様に相談すること――いいですね?』
こくこくとリリが真剣に頷くのだった。
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