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1章 異世界に召喚されました
35話 カンナちゃんの手料理
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「あーいい湯だった。やっぱり久しぶりのお風呂最高ー」
ほかほかの湯気を漂わせながらお風呂からでて、リビングに戻ると、私を見たコロネが所在なさげに視線をさまよわせた。
うん?あれか。もしかしてこの世界、女は風呂上がりを見せたら破廉恥?とかいう、風土なのだろうか。
「コロネ なんで視線そらす?」
「もしかして、こっちの世界だと風呂上がり見せたらNGとかあるの?」
私とリリの問いに、コロネはため息を付きながら
「はい。貴族の間では、夫婦以外でそのような行為をするのはあまり好ましくありません」
意外にこの世界はシャイな人が多いのだろうか。
うん、まぁそういう問題じゃないんだろうけど。
服もちゃんとしたものを着ていても駄目らしい。
こういう細かい風習の違いも気を付けないとなぁ。
「了解。気をつける
そういえば、夫婦で思い出したけど、コロネって結婚してるの?」
なんとなく、聞いてみる。
ゲーム時では独身のはずだったが、あれからもう300年もたっているのだ。
もしかして奥さんの一人や二人いるかもしれない。
いるなら疑われるような事は避けないと。
私の問いにコロネはしばし考えた後
「恐らく……ですが、結婚はしていません」
「おそらく?」
また、ずいぶんとあやふやだな、と思ったが次のコロネの返事で納得した。
「記憶がない時期がありますので」
「ああ、なるほど。
コロネが記憶がない期間ってどれくらいなの?
一年、二年くらい?」
私の問いにコロネは少し沈黙したあと
「そうですね……
つい最近までは私は人間の友人などの変化から四、五年間の記憶がないのだと認識していました」
「今は違うの?」
リリがきょとんと小首をかしげる。
「はい、最近得た情報と魔王と女神の会話で考えがかわりました」
「どんな風に?」
今度は私が聞くと、コロネは押し黙って
「私の考えを述べる前に、猫様にお聞きしたいのですが。
猫様の世界の知識からすれば、この世界はどのような状態なのだと思いますか?」
逆に聞かれる。コロネにしては珍しい。
そして、私はなんとなく察した。
コロネがいま考えていることは……かなりよろしくない事なのだろう。
下手な返答をすれば、よけいコロネを落ち込ませる結果になるかもしれない。
「え、えーと。
ちょっと私も考える時間がほしいかな
そろそろ体も男に戻さないとだし!
男の大きさの服に着替えておかないと」
曖昧に答える。うん、だっていきなり聞かれてもわからんよ!
ゲーム化しちゃった世界が元にもどっただけの話ではないのだろうか?
「ああ、そうでした。引き止めてしまって申し訳ありません」
そう、答えたコロネの表情は、残念というよりも、話が逸れてほっとした感じにも見えた。
△▲△
「ネコこれなぁに!?これなぁに!?」
お風呂から出て、男の姿に戻ったあと私が食卓の上にズラリと料理とお菓子を並べれば、リリちゃんがオメメをキラキラ輝かせた。
と、いうのもこの料理、全て私のゲーム友達のカンナちゃんの手作りなのである。
カンナちゃんが料理スキルをあげるために作った料理を貰っていたため、アイテムボックスから取り出したのだ。
元からリアルでもお菓子作りと料理が好きだったと公言するだけあって、カンナちゃんは料理が物凄く上手だった。
しかも、見かけにも凝るタイプだったので並べた料理すべてが子供が好きそうな飾りつけなのである。
チキンライスでできた熊さんが卵焼きのお布団をかけた料理とか、うさぎの形のシュークリームなど。
子供だったら見ていて楽しいだろうな、とは思う。
侍女さんたちがまだキッチンを使いこなせないので今日は私がご飯を用意したのだ。
っていってもアイテムボックスから出しただけだけど。
「オムライスだよ、あとこっちがシュークリームでこっちがパフェ。
美味しいから食べてみて」
私が言うとリリがウンウン頷き、一口食べ――
「美味しい!!」
と、とびっきりの笑顔で微笑む。
その後も美味しい!美味しい!と感動しながら料理を食べている。
ここまで喜ばれると作った本人じゃないのに嬉しい。
是非とも作ったカンナちゃんに見せたかった光景だ。
うん。リリちゃんマジ天使。
私は感動しているリリを横目にチラリとコロネを見れば、コロネ用に出したカンナちゃんお手製の釜飯をもくもくと食べている。
最初に美味しいですねと微笑んだあとはほぼ無言状態だ。
結局、あのあと男の姿に戻ったが、話を戻す事はなかった。
あれだけ真実が知りたいと、語っていたコロネが話を避けるくらいなのだから、今コロネの考えている推論はかなり後味の悪いものなのだろう。
よくよく考えれば、魔王の話だってかなり気になる部分があったにも関わらず、コロネは私に何一つ質問してこなかった。
もしかして、あの時点でなにか思うところがあったのかもしれない。
うん。私もちょっとコロネが何を考えてるかはわかる気がするんだよ。
なんとなく、その可能性はあるかなーと私も思っていた。
たぶん、恐らく、だけど――
コロネが本当はコロネ・ファンバードではない可能性があるということ。
よくある、オリジナルから記憶をもらっただけのレプリカ。
世界は一度滅んで、よく似た世界を作り、一度滅んだ世界の人間のレプリカをゲームの世界に再び作った。
アニメや漫画、ゲームなどではわりとよくある展開だ。
コロネが議論すら嫌がるということは、恐らくそういう後味の悪い推論なのだろう。
どうせここで議論したところで真実はわからないのだから、ここはスルーしておいたほうがいい。
たぶんコロネもそういう結論なんじゃないかな。
また新たな事実がでてくれば、答えは違うものになるかもしれないのだから。
私はちょっと憂鬱な気分になりながらも、カンナちゃんお手製のラーメンをすするのだった。
ほかほかの湯気を漂わせながらお風呂からでて、リビングに戻ると、私を見たコロネが所在なさげに視線をさまよわせた。
うん?あれか。もしかしてこの世界、女は風呂上がりを見せたら破廉恥?とかいう、風土なのだろうか。
「コロネ なんで視線そらす?」
「もしかして、こっちの世界だと風呂上がり見せたらNGとかあるの?」
私とリリの問いに、コロネはため息を付きながら
「はい。貴族の間では、夫婦以外でそのような行為をするのはあまり好ましくありません」
意外にこの世界はシャイな人が多いのだろうか。
うん、まぁそういう問題じゃないんだろうけど。
服もちゃんとしたものを着ていても駄目らしい。
こういう細かい風習の違いも気を付けないとなぁ。
「了解。気をつける
そういえば、夫婦で思い出したけど、コロネって結婚してるの?」
なんとなく、聞いてみる。
ゲーム時では独身のはずだったが、あれからもう300年もたっているのだ。
もしかして奥さんの一人や二人いるかもしれない。
いるなら疑われるような事は避けないと。
私の問いにコロネはしばし考えた後
「恐らく……ですが、結婚はしていません」
「おそらく?」
また、ずいぶんとあやふやだな、と思ったが次のコロネの返事で納得した。
「記憶がない時期がありますので」
「ああ、なるほど。
コロネが記憶がない期間ってどれくらいなの?
一年、二年くらい?」
私の問いにコロネは少し沈黙したあと
「そうですね……
つい最近までは私は人間の友人などの変化から四、五年間の記憶がないのだと認識していました」
「今は違うの?」
リリがきょとんと小首をかしげる。
「はい、最近得た情報と魔王と女神の会話で考えがかわりました」
「どんな風に?」
今度は私が聞くと、コロネは押し黙って
「私の考えを述べる前に、猫様にお聞きしたいのですが。
猫様の世界の知識からすれば、この世界はどのような状態なのだと思いますか?」
逆に聞かれる。コロネにしては珍しい。
そして、私はなんとなく察した。
コロネがいま考えていることは……かなりよろしくない事なのだろう。
下手な返答をすれば、よけいコロネを落ち込ませる結果になるかもしれない。
「え、えーと。
ちょっと私も考える時間がほしいかな
そろそろ体も男に戻さないとだし!
男の大きさの服に着替えておかないと」
曖昧に答える。うん、だっていきなり聞かれてもわからんよ!
ゲーム化しちゃった世界が元にもどっただけの話ではないのだろうか?
「ああ、そうでした。引き止めてしまって申し訳ありません」
そう、答えたコロネの表情は、残念というよりも、話が逸れてほっとした感じにも見えた。
△▲△
「ネコこれなぁに!?これなぁに!?」
お風呂から出て、男の姿に戻ったあと私が食卓の上にズラリと料理とお菓子を並べれば、リリちゃんがオメメをキラキラ輝かせた。
と、いうのもこの料理、全て私のゲーム友達のカンナちゃんの手作りなのである。
カンナちゃんが料理スキルをあげるために作った料理を貰っていたため、アイテムボックスから取り出したのだ。
元からリアルでもお菓子作りと料理が好きだったと公言するだけあって、カンナちゃんは料理が物凄く上手だった。
しかも、見かけにも凝るタイプだったので並べた料理すべてが子供が好きそうな飾りつけなのである。
チキンライスでできた熊さんが卵焼きのお布団をかけた料理とか、うさぎの形のシュークリームなど。
子供だったら見ていて楽しいだろうな、とは思う。
侍女さんたちがまだキッチンを使いこなせないので今日は私がご飯を用意したのだ。
っていってもアイテムボックスから出しただけだけど。
「オムライスだよ、あとこっちがシュークリームでこっちがパフェ。
美味しいから食べてみて」
私が言うとリリがウンウン頷き、一口食べ――
「美味しい!!」
と、とびっきりの笑顔で微笑む。
その後も美味しい!美味しい!と感動しながら料理を食べている。
ここまで喜ばれると作った本人じゃないのに嬉しい。
是非とも作ったカンナちゃんに見せたかった光景だ。
うん。リリちゃんマジ天使。
私は感動しているリリを横目にチラリとコロネを見れば、コロネ用に出したカンナちゃんお手製の釜飯をもくもくと食べている。
最初に美味しいですねと微笑んだあとはほぼ無言状態だ。
結局、あのあと男の姿に戻ったが、話を戻す事はなかった。
あれだけ真実が知りたいと、語っていたコロネが話を避けるくらいなのだから、今コロネの考えている推論はかなり後味の悪いものなのだろう。
よくよく考えれば、魔王の話だってかなり気になる部分があったにも関わらず、コロネは私に何一つ質問してこなかった。
もしかして、あの時点でなにか思うところがあったのかもしれない。
うん。私もちょっとコロネが何を考えてるかはわかる気がするんだよ。
なんとなく、その可能性はあるかなーと私も思っていた。
たぶん、恐らく、だけど――
コロネが本当はコロネ・ファンバードではない可能性があるということ。
よくある、オリジナルから記憶をもらっただけのレプリカ。
世界は一度滅んで、よく似た世界を作り、一度滅んだ世界の人間のレプリカをゲームの世界に再び作った。
アニメや漫画、ゲームなどではわりとよくある展開だ。
コロネが議論すら嫌がるということは、恐らくそういう後味の悪い推論なのだろう。
どうせここで議論したところで真実はわからないのだから、ここはスルーしておいたほうがいい。
たぶんコロネもそういう結論なんじゃないかな。
また新たな事実がでてくれば、答えは違うものになるかもしれないのだから。
私はちょっと憂鬱な気分になりながらも、カンナちゃんお手製のラーメンをすするのだった。
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