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1章 異世界に召喚されました
30話 魔王と女神
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「何故じゃ!?何故あの者はこうも尽く我の嫌がらせで死なぬのじゃ!?」
リリに映像を繋いでもらえば、そこは薄暗い部屋だった。
やけに露出の高い女が、いまいましげに叫ぶ。
薄暗くて、顔は見えないが、いかにも悪魔っ子です✩という格好の少女だ。
部屋の中には所狭しと、水晶が置いてある。
全ての水晶に映像が移っており、どうやら私達以外にも監視されている者がいるらしい。
「だから言っただろう。あれに手を出すのは止めておけ。
お前が手をだすと事態が悪化するだけだ」
ヒステリックな女の声とは対照的に、やけに冷静な男の声が答えた。
姿は……視覚外にいるのか見えない。
「なんじゃと!?」
「本当のことではないか?
殺すつもりがレベル上げの手助けをしただけ……笑い話にもならん。
貴様のせいで私の部下も一人やられたしな」
「本当だよ。クリファちゃん。マジドジっ娘属性?」
と、そしてまた別の声。
こちらも少女なのか幼い感じの声だ。
やはり水晶の視界外にいるのか姿は見えない。
「仕方ないじゃろう!?
時空をいじって死の回廊に放り込んだら、楽々レベル上げしました!などと誰が想像できよう!?
なんでよりによって、今日に限ってワイルードボアがわくんじゃ!?
突っ込むだけの馬鹿モンスターではないか!
そもそも最初からおかしかったのじゃ!
ホワイトドラゴンが神龍などとフザケたものを召喚しようとしたから、代わりにプレイヤーに入れ替えたらカエサルを倒しおった!
ありえぬじゃろう!?レベル200の雑魚プレイヤーがじゃぞ!!」
まるで駄々っ子のようにクリファとよばれた幼女が地団駄を踏む。子供かよ。
てかいきなり古代龍とかやっぱり自称女神様の嫌がらせだったのか……。
「そうだ。あれはおかしい。だから手をだすな。
そもそも もうお前では連れのドラゴンやエルフ相手でもきついのではないか?
下手に刺激をすれば、お前自身殺されかねんぞ?」
「なら!今のうちにお主が殺しておくべきじゃろう!!
あのまま放っておけば、パーティーとやらで高レベルのエルフや人間が量産されかねぬ!」
キーキー言うクリファだが
「気にするな。
せいぜい人間やエルフが上げられるレベルは400だ。
それ以上上げれば身体が魔力量に耐えきれなくなり死にいたる。
レベル400くらいが量産された所で私の脅威には成り得ぬ」
と、男に一蹴される。
「でも、あのコロネとかいう魔法使いレベル800になってるよ?」
クリファとは別の少女が聞けば
「あれは特別だ。
バトル参加NPCだったため、身体の構成はほぼプレイヤーと変わらぬ。
他のNPC達とは根本的に身体の作りが違う」
と、男が答える。
「じゃが!?プレイヤーのレベルはあげられるじゃろう!?」
「お前が好き好んで呼んだ、性格に難があるプレイヤーと、あれが意気投合するとは思えぬ。
だが召喚で間違って来たプレイヤーは可能性はあるがな。
戦力増強されたくなければさっさと面白がって壊した門を治しておくことだ」
「だーからーお主が今のうちに殺せばいいじゃろう!?」
「そうだよ。エルちゃん殺しちゃってよー」
「お前達……忘れたのか?私は結界で出れぬ。
それにもし出れたとしてもだ、あれはカエサルを倒している。
まだあれには……」
言いかけて、男の言葉が止まる。
しばしの沈黙が続き――
『気づかれた』
リリの言葉と同時に――鮮明だった映像が切れた。
妙な感覚の後、視界が元のダンジョンの白い壁へと戻る。
『向こうの魔力きられた こちらから あちら覗けない
でも向こうも リリたち覗けなくなった』
△▲△▲△▲△▲△▲
『なかなか興味深い会話でしたね』
コロネの言葉に私とリリは頷いた。
すでに場所はコロネの家へと移り、皆で食卓に並び会話をしている。
『女神のやつ人のこと おかしい だの あれ だの好き勝手言っててなんかムカツク』
それに――思う。
レベル上がりすぎると死ぬとか知りませんでした。すみませんでした。
もし、コロネが普通のエルフだったら4日目の砦に魔物が襲撃していたときに死んでたし!?
うおーやべー。ありがとうコロネ!レイド参加型NPCでありがとう!
異世界生活4日目でレベル上げしてたら仲間がなんかよくわからないけど死んだとか物凄い嫌すぎるよ!
内心ドキドキな私の考えなどよそに
『女はプレイヤー召喚した女神達。じゃあ男は誰だろ?』
リリが小首をかしげた。
『部下が一人やられた――というのが、私を精神世界に誘い込んだ魔族のことを指しているのなら
魔族を総べる王 魔王かと。魔王の名前はエルギフォスですから。
エルちゃんと呼ばれていても不思議ではありません。
彼らの話ではレベル900の猫様よりもレベルが高いようですし
魔王は伝承ではレベル1000超のはずです』
『なんだか女神だの魔王だの話が壮大になってきたなぁ。
そもそもあの女神誰だ?ゲーム上では幼女女神なんて存在してなかったと思うんだけど。
しかも二人女神はいるっぽい』
『そうですね。クリファという名前は聞いたことがあります。
異界の女神です』
『異界の女神?』
『はい。はるか昔、1000年以上前こちらの世界の神々を殺し自分たちがこの地の神になろうとした異界の神々がいたそうです。
彼らは結局、光神セシウス様に追い払われたそうですが、石碑に残る異界の神々の衣装と、先程の女神の衣装は酷似しておりました。
異界の女神の中にクリファという幼い女神がいるのも確認されています』
『ということは、あれか?
追い払われた異界の女神がまたこちらの世界にちょっかいを出してきたと言うことか?』
『こちらの世界の神々ならそのような秩序を乱すようなことを光神セシウス様がお許しになるはずがありません。そう考える方が自然かと思われますが……』
『ですが?』
コロネの言葉にリリが改めて聞き返せば
『それはそれで、何故神々が異界の女神を放置しているのか……という問題がでてきます』
まぁ、確かに。
ゲーム中ではバリバリ神様達世界の事に干渉してきたしなぁ。
異界の女神なんて異質な物が暴れまわっているのになぜ神々は動きもしないのだろう。
『まぁ、今ある情報だけじゃわからないこともあるんじゃないか。
とりあえず女神は異界の女神と仮定しておこう。あとは魔王だけど……』
私の言葉にコロネが頷いて、
『魔王についてですが、北方のマゼウス大陸にて結界で閉じ込められています。
魔王はここから出る事はできないはずです。
先日、猫様が結界を張ってくださった場所ですね』
『ああ、うん。あそこの聖樹は問題なかった』
『はい。ですが以前話した事があったと思いますが……異界の女神に召喚されたプレイヤーがエルフの領土で騒ぎを起こしたというのもそのマゼウス大陸にある集落でした。
もしかしたら、あのプレイヤーの目的は魔王が封じられた北方の地の結界を破ることだったのかもしれません
リュートに警戒を強めておくように伝えておきます』
と、コロネの言う一言は――わりと世界が深刻な事態になってるということを教えてくれただけだった。
リリに映像を繋いでもらえば、そこは薄暗い部屋だった。
やけに露出の高い女が、いまいましげに叫ぶ。
薄暗くて、顔は見えないが、いかにも悪魔っ子です✩という格好の少女だ。
部屋の中には所狭しと、水晶が置いてある。
全ての水晶に映像が移っており、どうやら私達以外にも監視されている者がいるらしい。
「だから言っただろう。あれに手を出すのは止めておけ。
お前が手をだすと事態が悪化するだけだ」
ヒステリックな女の声とは対照的に、やけに冷静な男の声が答えた。
姿は……視覚外にいるのか見えない。
「なんじゃと!?」
「本当のことではないか?
殺すつもりがレベル上げの手助けをしただけ……笑い話にもならん。
貴様のせいで私の部下も一人やられたしな」
「本当だよ。クリファちゃん。マジドジっ娘属性?」
と、そしてまた別の声。
こちらも少女なのか幼い感じの声だ。
やはり水晶の視界外にいるのか姿は見えない。
「仕方ないじゃろう!?
時空をいじって死の回廊に放り込んだら、楽々レベル上げしました!などと誰が想像できよう!?
なんでよりによって、今日に限ってワイルードボアがわくんじゃ!?
突っ込むだけの馬鹿モンスターではないか!
そもそも最初からおかしかったのじゃ!
ホワイトドラゴンが神龍などとフザケたものを召喚しようとしたから、代わりにプレイヤーに入れ替えたらカエサルを倒しおった!
ありえぬじゃろう!?レベル200の雑魚プレイヤーがじゃぞ!!」
まるで駄々っ子のようにクリファとよばれた幼女が地団駄を踏む。子供かよ。
てかいきなり古代龍とかやっぱり自称女神様の嫌がらせだったのか……。
「そうだ。あれはおかしい。だから手をだすな。
そもそも もうお前では連れのドラゴンやエルフ相手でもきついのではないか?
下手に刺激をすれば、お前自身殺されかねんぞ?」
「なら!今のうちにお主が殺しておくべきじゃろう!!
あのまま放っておけば、パーティーとやらで高レベルのエルフや人間が量産されかねぬ!」
キーキー言うクリファだが
「気にするな。
せいぜい人間やエルフが上げられるレベルは400だ。
それ以上上げれば身体が魔力量に耐えきれなくなり死にいたる。
レベル400くらいが量産された所で私の脅威には成り得ぬ」
と、男に一蹴される。
「でも、あのコロネとかいう魔法使いレベル800になってるよ?」
クリファとは別の少女が聞けば
「あれは特別だ。
バトル参加NPCだったため、身体の構成はほぼプレイヤーと変わらぬ。
他のNPC達とは根本的に身体の作りが違う」
と、男が答える。
「じゃが!?プレイヤーのレベルはあげられるじゃろう!?」
「お前が好き好んで呼んだ、性格に難があるプレイヤーと、あれが意気投合するとは思えぬ。
だが召喚で間違って来たプレイヤーは可能性はあるがな。
戦力増強されたくなければさっさと面白がって壊した門を治しておくことだ」
「だーからーお主が今のうちに殺せばいいじゃろう!?」
「そうだよ。エルちゃん殺しちゃってよー」
「お前達……忘れたのか?私は結界で出れぬ。
それにもし出れたとしてもだ、あれはカエサルを倒している。
まだあれには……」
言いかけて、男の言葉が止まる。
しばしの沈黙が続き――
『気づかれた』
リリの言葉と同時に――鮮明だった映像が切れた。
妙な感覚の後、視界が元のダンジョンの白い壁へと戻る。
『向こうの魔力きられた こちらから あちら覗けない
でも向こうも リリたち覗けなくなった』
△▲△▲△▲△▲△▲
『なかなか興味深い会話でしたね』
コロネの言葉に私とリリは頷いた。
すでに場所はコロネの家へと移り、皆で食卓に並び会話をしている。
『女神のやつ人のこと おかしい だの あれ だの好き勝手言っててなんかムカツク』
それに――思う。
レベル上がりすぎると死ぬとか知りませんでした。すみませんでした。
もし、コロネが普通のエルフだったら4日目の砦に魔物が襲撃していたときに死んでたし!?
うおーやべー。ありがとうコロネ!レイド参加型NPCでありがとう!
異世界生活4日目でレベル上げしてたら仲間がなんかよくわからないけど死んだとか物凄い嫌すぎるよ!
内心ドキドキな私の考えなどよそに
『女はプレイヤー召喚した女神達。じゃあ男は誰だろ?』
リリが小首をかしげた。
『部下が一人やられた――というのが、私を精神世界に誘い込んだ魔族のことを指しているのなら
魔族を総べる王 魔王かと。魔王の名前はエルギフォスですから。
エルちゃんと呼ばれていても不思議ではありません。
彼らの話ではレベル900の猫様よりもレベルが高いようですし
魔王は伝承ではレベル1000超のはずです』
『なんだか女神だの魔王だの話が壮大になってきたなぁ。
そもそもあの女神誰だ?ゲーム上では幼女女神なんて存在してなかったと思うんだけど。
しかも二人女神はいるっぽい』
『そうですね。クリファという名前は聞いたことがあります。
異界の女神です』
『異界の女神?』
『はい。はるか昔、1000年以上前こちらの世界の神々を殺し自分たちがこの地の神になろうとした異界の神々がいたそうです。
彼らは結局、光神セシウス様に追い払われたそうですが、石碑に残る異界の神々の衣装と、先程の女神の衣装は酷似しておりました。
異界の女神の中にクリファという幼い女神がいるのも確認されています』
『ということは、あれか?
追い払われた異界の女神がまたこちらの世界にちょっかいを出してきたと言うことか?』
『こちらの世界の神々ならそのような秩序を乱すようなことを光神セシウス様がお許しになるはずがありません。そう考える方が自然かと思われますが……』
『ですが?』
コロネの言葉にリリが改めて聞き返せば
『それはそれで、何故神々が異界の女神を放置しているのか……という問題がでてきます』
まぁ、確かに。
ゲーム中ではバリバリ神様達世界の事に干渉してきたしなぁ。
異界の女神なんて異質な物が暴れまわっているのになぜ神々は動きもしないのだろう。
『まぁ、今ある情報だけじゃわからないこともあるんじゃないか。
とりあえず女神は異界の女神と仮定しておこう。あとは魔王だけど……』
私の言葉にコロネが頷いて、
『魔王についてですが、北方のマゼウス大陸にて結界で閉じ込められています。
魔王はここから出る事はできないはずです。
先日、猫様が結界を張ってくださった場所ですね』
『ああ、うん。あそこの聖樹は問題なかった』
『はい。ですが以前話した事があったと思いますが……異界の女神に召喚されたプレイヤーがエルフの領土で騒ぎを起こしたというのもそのマゼウス大陸にある集落でした。
もしかしたら、あのプレイヤーの目的は魔王が封じられた北方の地の結界を破ることだったのかもしれません
リュートに警戒を強めておくように伝えておきます』
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