【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

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1章 異世界に召喚されました

23話 異世界の現実

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『これは……ハルトやマリアですか……』

 丸い黒い物体の顔を見てコロネが念話で驚きの声をあげた。
 どうやらコロネの知り合いらしい。
 物体に何個も張り付いている顔からは「うううう」「ああああ」と意味不明な声が漏れている。
 その顔を数えてみれば女性1人に男性5人。
 その顔は苦渋に満ち、目から血の涙を流している。

 鑑定スキルで鑑定してみれば、既に物扱いで、呪われた物体と表示される。
 
『もうこの人達 魂囚われて逃げられない 苦しむだけの存在』

 リリが悲しげに視線を逸らした。

『どういうこと?』

『魔族が得意とする呪いです。
 人々の魂を取り込んで、死ぬことも転生することも叶わぬ、存在に作り替える。
 永遠にその魂は苦しみ悶える呪いと言われています。
 この状態を救う術を私は知りません』

 と、コロネ。

 ……っちょ、それかなり惨いんですけど。マジ悲惨なタイプの呪いじゃないですか。
 私が少したじろぐと、急に床がぱぁぁぁぁっと光だし、私たち三人を取り込むかのように魔方陣が出現する。

 しまった!?この魔法陣は!?
 私は身構えた。
 そう、この魔法陣に私は見覚えがあった。ラファの転移の魔方陣だ。

「魔物に気を取られるとかマヌケもいいとこ。
 こっちの作戦通りって感じー?」

 声が聞こえた方に振り返ればそこにいたのはラファ。
 こちらが魔物に気を取られているうちに転移してきたらしい。

「ラファ!!いつの間に!!」

 私が慌てるとラファはにやりと微笑んで

「まさかカエサルを倒すとは思わなかったし。
 今度はマグマの中に転移するからちゃんと死んで」

 ラファが言い、私たち三人の下の大きな魔方陣が光り輝いた。

 そして!
 
 
 ………。

 ………………。


 …………………。

 うん。何も起きない。
 魔方陣がまるで効力をなくしたかのようにその光を一瞬で失ったのだ。

 どうやらコロネに移動の魔方陣を無効化するからともらった指輪の魔道具はちゃんと作用したらしい。

「……なっ!?」

 ラファが思わぬ事態に悲鳴に近い声をあげる。

「転移の魔方陣はゲーム化で生まれたものではありません。
 こちらの世界の独自の技術です。それもゲーム化前の。
 少し工夫すれば発動しないようにするだけなら簡単です。
 何故一度相手に使った技がもう一度効くと思い込んでいるのか理解に苦しみますが。
 それにしても転移の魔方陣が使えるとは貴方は本当にプレイヤーですか?」

 ラファにコロネが睨みながら尋ねた。

「お前が何かしたわけっ!?」

 想定外の事に慌てた様子でラファが答えれば

 ゴンッゴンッ。

 ラファの周りをぐるりと囲むかのように石の魔法が放たれる。
 もうギリギリラファに当たらないという位置で石がラファの後ろの壁にめり込み動けなくなるようにその岩がラファを拘束した。

「質問しているのはこちらです。
 誰が余計な事を言っていいといいましたか?」

 凄むコロネにラファが思わず息を呑んだ。
 普段柔和な笑を浮かべているキャラなだけあって、凄むとマジ怖い。
 うん。私も怖い。

「そもそもあなたたちプレイヤーはこちらの住人をNPCだったという理由で甘く見すぎなのですよ。
 エルフの集落を襲撃した神威といい、貴方といい。何もできないと思い込んでいる。

 もう一度聞きます。
 ハルト達をこのような姿にしたのは貴方ですか?」

 何時もの温和な感じとは全然違い、冷たい殺気を放つコロネに問われたラファは

「そうだと言ったらどうなるわけー?」

 と、冷や汗をかきながら答えた。

『どうなのでしょうか?リリ様?』

 コロネが念話でリリに尋ね。

『この女 女神と魔族に頼んで ハルトとかプレイヤーを魔族と融合した。
 理由は――リリに殺されなかったから』

 言ってリリは目を伏せる。

『どういう事?リリ?』

 念話で私が問えば

『口で伝える。時間かかる。ネコとコロネ。直接頭におくる』

 言って送られてきたのは――プレイヤーハルト達がこうなってしまった経緯だった。

 元々プレイヤーハルトは正義感あふれる好青年プレイヤーだった。
 この世界に来た頃はまだ平和で、アケドラル帝国の姫君マリアとのんびりと旅をしていた。
 だが、ハルトとマリアが不在の最中、女神に召喚されたプレイヤーにアケドラル帝国が乗っ取られてしまう。
 帝国を乗取ったプレイヤーを倒すべく、彼女とその仲間たちとレベルを上げていたのだ。
 それを危険視したのが女神。彼女はラファに神託という格好で指示をだし、殺すように命令してくる。
 ラファも女神にそれなりの報酬をもらっていたので、女神の命令を聞いていた。
 この失われた技術である転移の魔方陣も女神から教わったものだ。

 だが一つ問題があった。
 ハルトのレベルは280。そのほかの仲間も一緒にレベルをあげて200となっていた。

 レベル200のラファ一人で殺すのは無理だろう。
 だから、手をかりることにした。
 女神に。
 女神の指示で、カルネル山脈のダンジョンレベル400のボスモンスターである、リリの前に転移させたのだ。

 ハルトたちのレベルは最高で280。ダンジョンボスのリリのレベルは400。

 ホワイトドラゴンならハルト達を殺せるとラファも思っていたのだが、予想外にハルト達は生き残った。
 ボスモンスターであるリリをプレイヤーが使うはずの『ダンジョン脱出の巻物』でダンジョン外に追い出したのだ。
 ダンジョン脱出の巻物とはその名の通り、どんな状況でも強制的にダンジョンから出ることのできるアイテムだ。
 なかなか便利なアイテムだが、ダンジョン脱出の巻物は1人にしか使えない。
 そのため、もしハルトが全員の命を救おうとするのなら、リリを追い出すほうが現実的だったのだろう。
 こうしてリリを追い出しハルト達は無事に危機を脱したのだが……それで困るのはラファだった。
 仕方なく女神に相談すれば、あとは魔族にやらせるからと言われ、久しぶりにきてみたらこの状態だったわけである。

 ああ。なるほど。元々この山には結界を破った魔族がいたはずだ。
 その魔族あたりにやらせたのだろう。

 ちなみに――ラファが女神に仕えてる理由は貢献度によって神にしてもらえるという話らしい。

 リリに見せてもらった記憶では他にも何人か転移させて殺している。
 
 うん。何故だし。
 こちらの世界の住人も許せないが、5000歩くらい譲ってNPC感覚で殺してしまったというのはあるかもしれない。
 でも、なんで同じ日本からきたプレイヤーを殺せるのかな。
 女神に報酬が貰えるからとかそんな理由で。
 いや。本気でわからん。
 何考えてんだこの女。

「お前、そうやって何人のプレイヤーや現地人を殺したんだ?」

 私が怒鳴ればラファがぺっとつばを吐いて

「やだー。お説教?」

「お説教もなにもないだろう!何で殺せるんだよ!プレイヤーっていったら同じ日本人だろ!!」

「だから?」

 声を荒らげていう私にラファがにたりと笑ってこちらに問う。

「だからって……?」

「だってここ異世界だよー?
 同じ日本人とか何甘いこと言ってるのー?
 やだーあんたみたいに異世界きても覚悟のできてないタイプ?
 そういうタイプ嫌いなんだよねー。
 あ、もしかして、助けあいの精神とか?
 
 うっわー青。

 異世界では現実が違うの。
 そういう馬鹿がまっ先に死ぬのが異世界なの。それがこちらの世界の現実なの。
 わ・か・る?」

 と、ラファ。

「………」

 黙る私。
 うん。やべぇ。私も大概中二病だがこいつもかなりの中二病だ!しかも重度の!
 私とはベクトルの違う意味で!
 異世界で、現実見れちゃう、私すげぇぇぇぇに酔いしれてる感がありありとある。
 やばいリアル知り合いなら逃げ出したいくらいのお付き合いしたくないタイプだ。

 てか、この子は自分の置かれた状況を理解してないのだろうか。
 何故捕まった状態でそんな偉そうな口聞けるかな。
 何か逃げるための秘策があるのだろうか。
 でもそれにしてもレベル200だしな。

 と、私がドン引きしていると

「ちょ!?何引いてるの!?感じ悪いしー!」

 と、ラファ。
 うん。どうやら思いっきり顔にでてしまったらしい。

「そうですね。
 こちらの欲しい情報はすでに全て手に入りました。
 貴方にもう利用価値はありませんね。
 異世界の現実とやらで死んでいただきましょう」

 言ってコロネが空中に巨大な槍を魔法で出現させる。
 レベル400のコロネの攻撃をラファが耐えきることなどできないだろう。

「なっ!?ちょっと待ちなさいよ!!
 何も無抵抗の人間を殺す必要ないでしょっ」

「それが異世界なのでしょう?
 貴方たちプレイヤーは人を殺すときは現実などと言っておきながら、何故か自分たちが危うくなると助けてもらえると思い込んでいる。
 まったく意味がわかりませんね。自分は覚悟など出来ていないのに相手にだけは覚悟を求める。
 ああ、いい加減反吐がでます」

 殺気のこもった瞳で見つめるコロネからは、真剣さが伺えて、ラファの顔が一気に青ざめる。
 コロネの言うとおり、ラファは覚悟していなかったのだろう。自分が殺されるという現実を。
 異世界に来たことで、自分に主人公補正が働いて、何故か最後は助かると思い込んでいる。
 だからこそ、捕まった状態なのにあんな口をきけた。
 一番現実が見えてないのはラファの方だ。

「ちょ、止めなさいよ!猫まっしぐら!!
 日本人は殺しちゃだめなんでしょう!?」

 ラファの言葉に私は大きくため息をつき

「いや、そうだな。
 異世界に日本の常識は通用しない。自分が甘かった。
 大人しく殺されてくれ」

 と、にっこり言う私。

「――んなっ!!??」
 
 ラファの顔が真っ青になった。
 それを合図にコロネの槍がそのままラファめがけて飛んで行き――


 ザシュ。

 その身体を貫くのだった。
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