罪深き凡夫らの回旋

まる

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第三章

N9

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 王城から戻ったランディが、どえらく深刻な顔をして私の部屋に来た。
「どうしたんですか、妙な顔して。妙な顔しても格好いいですが」
「今日も適当だな、と突っ込む気すら起きない」
「それほぼちゃんと突っ込んでますけど、それはともかくどうしました」
 ランディがソファーにどすんと座った。私もその隣に腰を下ろす。
 そしてランディは天井を見上げ、「あー……」と呻いた後、言った。
「……今夜、俺を抱いてくれ」
「えっ!? 勿論いいですけど!? というか今すぐでも!」
「えっ、いや、まだいい! 食事も取りたいしな!」
「食べてていいからやらせて下さい」
「どういう状況だそれ……」
「椅子に座った私の上に跨ればいいのでは」
「……おまえの異常なでかさのちん……男性器を腹の中に入れられて、食べ物が消化できる気がしないぞ……」
「私のちんぽなんてせいぜい直腸から結腸くらいですから影響ないですよ」
「気分の問題が大きいよな!!」
「えぇー……?」
「そんな根性無しを見るような目を俺に向けるな」
 はぁー……と深い溜息を吐かれた。
「では一緒にお風呂入りましょう」
「では、って何だ。そしていやだ、絶対襲われる」
「何です、襲われない可能性なんてゼロに決まってるじゃないですか。全裸のランディを見て襲わなかったら、私もうあれですよ、深刻な勃起不全」
「ああもう、夜に抱かれると言っているんだから、そういうのはいいだろう??」
「ではせめてエッチな下着穿いてきて欲しいです」
「男のエッチな下着ってどんなだ!?」
「布面積が少なくて、こう、膨らみが強調されるような……」
「そんなもの持っていない」
「意外ですね。私の中でランディのヤリチン疑惑が少し薄れました。そして買いますか」
「買わない。買わないしヤリチンだってそんな下着なかなか穿かないしはっきり言っておまえの方がヤリチンだしもう……もう面倒すぎて気が狂いそうだから、呼んだら俺の寝室に来い。ベッドに全裸で大の字で待機しておくから、適当に勃起させて適当に入れろ。適当得意だろう」
「分かりました。それまでアナルプラグ入れといていいですか?」
「えっ、何でだ!?」
「入れたいからです。だって別にもう拡張する必要ないですし……」
「いやだから、俺が言っているのはその理由について……」
「あなたの可愛い妻が入れたいと言っているのは理由にはならないのですか」
「可愛い妻って……」
「別に可愛くない妻でもいいですけど」
「俺が言いたいのは……っ、ああもう……っ」
 ランディが自分の髪をぐじゃーと搔き回した後、言った。
「……分かった。もういい分かった。入れろ。ただし、呼ぶまでくれぐれも大人しくしていろよ」
「はぁい」





 と、そんなやり取りがあっての夜だった。
 メイドさんに呼ばれ、ランディの寝室に赴く。
 エッチな格好はしてくれないらしいがアナルプラグはずっぽり入れさせてくれたので、当方もお返しとして一応それっぽいネグリジェ的なひらついた寝衣を着ておいた。
 しかし私など、やたらとおっぱいがでかいだけで他の色気要素はあまりないと言える。そりゃそうか。夫のお尻を掘りまくりたい時点で最早違う何かだ。
 廊下から直接寝室に繋がるドアをノックすると、内側から開けられた。
「ランディ」
 全裸だった。エロい。自ら脱ぐ姿が見たかった。
「来たな。やるぞ」
「大の字で寝てないんですね」
「細かいことはいい。とりあえずやるぞ」
 私は首を傾げた。夕方からランディの態度はおかしい。
 やりたくもないのにやるやる言っている感、これは何だろう。
 ランディはベッドに歩み寄り、上げられたレースのカーテンをくぐって少し不自由げに寝転がった。アナルプラグのせいだろう。しかし大の字だ。
 私はその横に乗り上がり、「あのー」と話し掛けた。
「……何だ」
「とりあえず、プラグ抜きましょう。四つん這いになって」
「……う。……ああ」
 ランディが渋々感満載にベッドに這った。
 私はそのお尻の後ろに座り、プラグからぶら下がっているリングに指を掛け、引き抜いた。
「ぁっ、う」
 ランディの呻きと、ぬちゅっ、という卑猥な音が交じる。私はガラス製の立派なプラグを転がし、柔らかい肛門に指を入れた。
「ああいいですね、すっごく開きますね、エロいですね」
「……うう」
 ランディがまた呻く。
「手が入りそうですね」
「よ、よせ、そんな」
「しませんよ、ランディの大事な肛門及び直腸にそんなこと。でも私の腕の方がちんぽより色々と控えめな気はしますけど……」
 言いながら、潤滑油を肛門に塗りたくり、中にも丁寧に塗り付ける。ついでに陰嚢を揉んで会陰を舐める。
「っ、う、うっ……」
 ランディが震える。
「何だか反応悪くないですか?」
 問い掛けながら、アナルに指を四本挿し込み、ごりごりと前立腺を揉む。
「ひぃっ、あ、や、やめ、それ……っ」
 ランディがガクガクと膝を揺らす。
「気持ちいいでしょ」
「あっ、いいっ、けど、やめ、あぁっ、あっ、い、いくっ……!」
 ランディが悲鳴を上げて射精した。その後、ぐったりと上体を伏せた。
「……きつい……うう……」
「何がです。この程度どう考えてもきつさの欠片もないじゃないですか。どうしたんですか? あと今の体勢、お尻だけ突き出しててエロいですよ」
 私は肛門に指を掛けて左右に拡げた。
「や、やめろっ……それやめろ、頼むからっ……」
「何度もされてるのに」
 言いながら、舌を中に這わせて直腸壁を舐める。
「ひゃ、あ、あっ」
 一頻り中を舐め終えると、ランディが何だか死にそうになっていた。すごく勃起はしていたが。
「うう……恥ずかしい……死にたい……」
 何やらそんなことを呟いている。勃起しているくせに。
「ええっ。この程度で……? ほんとどうしましたか」
 私は首を傾げつつ、ペニスをランディのお尻に挿入した。それはいつものようにずぶずぶと入っていく。
「ぁあッ……! あ、あう、う」
「ほーら、奥まで入れますよ」
「あ、もうっ、腹、が、ああっ……」
 お尻と股間がぶつかると、ランディが「ひっ」と鳴いてまた射精した。
 そのまま抱えて、よいしょと座位にする。
「ああっ」
 ランディが色っぽく悲鳴を漏らした。
 私は前に回した片手でランディのペニスを掴み、もう一方の手のひらで亀頭を磨きでもするようにぐりぐりと撫で擦った。
「あっ、あ、なっ、あ」
 随分気持ちいいらしく、先走りを噴いた。それで下から突き上げると、「あう」と呻く。
「や……め……、おかしく、なるぅ……っ」
 上ずった呂律の回らない声でランディが言う。
「おかしくしたいんですけどねえ……」
 私はふふふと笑い、ぐいぐいと突き上げた。
「ぅ、あっ、あっ、あっ」
 散々ランディを鳴かせてから、そのお腹の奥に存分に精子をまき散らす。
 次にランディを仰向けに寝そべらせ、膝裏を抱えてがばっと開脚させる。そしてだらしなく口を弛めたアナルに、またペニスを埋め込む。
「あぁ……っ」
「あはっ、エロい顔」
 涙を滲ませて涎を垂らし、下手すると鼻水も? という状態のランディに、ちゅっ、とキスする。
 顔を上げ、「さー、気持ちいいとこ削げるくらい突いてあげますね」と張り切ったところで、ベッドの真横にあるクローゼットからがたんと音がした。
「……ん?」
 それ以前に。こんな所にクローゼットが有ったろうか。ランディに夢中で気付かなかったが……。
 私は首を傾げた。一気に不審な気分が溢れたので、確認することにした。
 ずりっ、と一気に引き抜くと、ランディが目を見開いて「ひぃっ」と悲鳴を上げた。
 私はベッドを下り、そこでランディが「あっ、待て……!」と声を掛けてきたが無視した。
 クローゼットの扉を開けると。
 なんと。
「……王子様???」
 驚きすぎて、殿下と言い損ねた。
 王子様は気まずさの最高値を究めた顔で目を逸らした。
「なに、してるんです……」
 そう呟いてから、私はランディの態度の合点がいった。
 王子様が私とランディのセックスが見てみたいと考える理由は想像がついた。
 私は大きな溜息を吐いてから、王子様をクローゼットから引きずり出した。流石に抵抗する余裕はないらしく、されるがままにベッドに連れて行かれ、そこに放られても文句は言わなかった。
 そしてベッドに並んだ二人が何とも言えない表情で顔を見合わせた。
 もうこの二人にセックスさせるという嫌がらせを敢行するか迷ったが、まず王子様の痴態をランディにも見せてやろうと思った。
 私は王子様のベルトを外し、下着と一緒に下衣を引きずり下ろした。
「な、何を……」
 狼狽する王子様を力任せに俯せにして上衣を捲り上げ、背のくぼみを舌で舐め上げる。
「あ」
 びくびく、と王子様が体を揺らした。
 私は潤滑油を王子様の尻の割れ目にぶちまけた。
「え。あの、ヘルガ」
 そう声を掛けてきたのはランディだった。
「うるさいですね」
 じろりと睨むと、彼は口を噤んだ。実際王子様の要望を断り切れなかったという経緯ではあろうが、こんなことを最終的に受け入れている彼にも咎は十分ある。
 私は王子様の腹の下に手を入れ、下肢を持ち上げて膝を突かせた。
「や、やめろ、ヘルガ」
 王子様が首を捩じって私を見た。少し怯えに似た色をその目に見い出し、もう絶対に犯そうと思った。
 前戯などいらないアナルに勃起した一物の先端を押し当てる。
 ぐちゅり、と穴に亀頭が沈んだ。
「あ、っ」
 首を戻し、王子様が喘いだ。
 ランディは凍り付いている。
 私はほんの少しだけ入れた状態で、アナルで扱いた。
「ん、う……う」
 王子様が呻く。
「……そのいやらしいアナルに、奥まで入れて欲しいでしょう?」
 そう問い掛けても、王子様は口を閉じたままだった。ランディに見られているからだろう。
「ふうん……」
 私はそのままペニスを抜いた。
「あ……」
 王子様が掠れた声を漏らした。
 ランディがどこかほっとした顔をしているのに気づき、「あんただって元凶のくせに」とイラついた。
 なので、ターゲットを変える。
「じゃあ続きをしますよ、ランディ」
「ええっ、それは無理だ……!」
 ランディが首を振った。
「うるさい」
 私は本気でイラつき、ランディを押し倒した。
「ヘルガ……!」
「この不愉快な状況はあなたたちのせいですよ、見られながら犯されるくらい我慢しなさい……って言うか、あなた既に思い切り見られてますしね??」
 私がランディの膝を掴むと、王子様が私の手を押さえて制止してきた。
「……よせ」
「何なんですか、さっきまで黙って見ていたくせに」
「そうだが……もうこれ以上見たくない」
「は?」
「こんなこと、頼まなければ良かった」
「良く分かりませんけど放しなさい」
「……したければ、俺を抱け。どんな風にでもすればいい」
「さっきしなかったでしょうが」
「……今、する」
 王子様は私の横でベッドに這い、乱れて纏わりついている下衣を、改めて自分で引き下ろした。
 そして尻たぶを掴み、左右に開いた。何とも思い切ったことだった。
「……俺の、いやらしいアナルに……奥まで、入れて、くれ」
 またランディが凍り付いた。
 可哀想なランディ! と思い、私はふんと笑って彼から体を離し、王子様の方へと寄ってその背に手を置いた。
「分かりました。入れますね」
 そして差し出されたアナルにペニスを挿入した。
「あっ、う……」
 王子様が声を漏らした。
「どうですか、いいですか」
「ん、っ、あ、いいっ……」
 王子様が尻を揺らす。私は自分の尻を掴んでいる王子様の手を掴み、そこから外させた。そして両手首共其々掴んだまま、セックスを続ける。
「あっ……あっ……」
 これ、体格の劣る方が立派な方にするのも変な感じ、と内心少し笑いつつ、腕を引きつつぐいぐい突く。
 しかも私ときたら、結構エロそうな寝巻を着ている。客観視すれば変な絵面だろうが、それは今に始まったことではない。
 そして、はあはあ、と俯いて喘ぐ王子様をひたすら犯す私に向け、ランディが極めて複雑げに呟いた。
「ヘルガ、おまえ見た目より力あるよな……」
「現実逃避気味の感想ですね」
 逃避したい気持ちは分かる。
 彼にとって恐らく、エロい好意も幾ばくかくらい向けているかっこいいばかりだった筈の高貴なご友人が、自分の妻もどきに思い切りがつがつと食われている光景がリアルに目前で繰り広げられているのだ。
「……あと」
「何です」
「……おまえの股間の凶器が……こうして横から見ると本当に凶悪過ぎて、むしろ自分に入れられるよりも恐怖を感じる……」
「そうですか」
 私はランディの愚痴(?)を聞き流し、その凶悪な凶器でせっせと王子様の腹の中を撹拌した。
 王子様も私たちの会話のせいか、喘ぎも小さくなっている。横でそんな世間話みたいなことをされれば盛り下がるのが正常ではある。
「だ、大丈夫なのか……」
「何が」
 返答が雑になって来ている自覚はある。
「……殿下の……」
「直腸と肛門? 大丈夫でしょうよ、あなただって大丈夫でしょ」
「……そうだが」
「呟いている暇があったら交ざりますか」
「ま……交ざるって」
「……王子様になら、二本入るでしょうしね。それが怖ければ私に入れてもいいですよ。まあ、反応は期待しないで下されば」
 そう何気なく言った途端、王子様が顔を上げた。そしてランディを見たようだった。
「っ、ヘルガには、入れるな。……勃つなら、俺に入れても、いい、から」
「駄目です、裂けたらどうされます!?」
 ランディが反射のようにそう言った。本当に心配している顔ではあったが、最初に言う言葉でもない気がした。
 普通なら、「入れません!」などと断るところかと思うが。まあいい。
「裂けたら、薬でも塗るんじゃないですか、一般的には」
 適当にそう言うと、ランディにじろりと睨まれた。
 わたしはその顔を見て、にやりと笑い返した。
「そんなに殿下が大事ですか。妬けますね」
 びく、と王子様の体が揺れた。
 ランディが目を見開く。その表情から何を思っているのかはあまり読み取れなかった。
 私は王子様の両腕を放り出してから、ずるんとペニスを抜き取った。
「だったら、一本だけで入れます?」
 ぶっといものが抜けた後の穴を指で拡げる。ランディの位置から中までは見えないだろうが。
「やめろ、ヘルガ……っ」
 私以外の二人の声が揃った。
 ランディも入れたいなら取りあえず入れときゃいいのに、と私は思い、肩を竦めた。
「こんなこと、もう無いんじゃないですか?」
 私が言う間に、王子様が身を起こし、下衣をずり上げた。ランディに必要以上は卑猥な姿を見せたくないのだろう。
「……それとも、折角だからあなたに殿下が入れた方がいいです?」
 問い掛けるも、ランディは私を見つめたまま動かない。
 何だかやれやれという気持ちになった。萎えてくる。
「……妬けたのか?」
 唐突にランディがそう聞いてきた。
「え」
 何が、と聞き返しそうになったが、何のことか気が付いた。
「あ、ええ……」
 つい曖昧な返事をしてしまってから、立て直す。
「そりゃそうですよ。私の愛する旦那様が、そんなに殿下を大事に思っている訳ですからね」
「おまえは俺を愛してなどいないだろう」
「え」
 何故この入れるか入れられるかという状況で、私は冷静にこのようなことを問い詰められているのか……。
 そう考え、つい「そんなのどうでもいいことでしょう」と言い掛けた。だがそれはあまりに雑な返事過ぎるだろうと思い直した。
「あなただって、特段私を愛してはいないでしょう」
 それはそれでどうなのか、という内容かもしれなかったが。
「……俺は」
 ランディが言い掛け、私が首を傾げようとした時、王子様が突然腕を掴んできた。
「な」
 驚いていると、引かれて向こうに乱暴に転がされた。
「わっ」
 転がる私の前で、王子様がランディを押し倒していた。
 謎めいた展開だ……と私がぼんやりしていると、王子様がランディに顔を近づけて何事か囁き、ランディが眉を寄せた。
「……それで?」
 いきなりこちらに顔を向け、王子様が言う。その目はいつもの強さに戻り、私を捉えていた。
「何が、ですか」
「……おまえは俺がランディを抱けば満足なのか。ランディが俺を抱けば満足なのか」
「え」
 特にどっちでも満足も何も、とは思った。
「……別に、その辺りはあなたとランディの問題なんじゃないですか」
「言いたくも無いが、俺の体はおまえに耳が腐る程言われ続けた通り、大分酷い有様だからな。個人的にはまだしもそこまでではないランディが抱かれた方が良いように思うが」
「……本気ですか、殿下」
 ランディが王子様に問う。
「だとしたら、嫌か?」
「殿下がお望みならば構いませんが……ただ、そんなことをしても、何も」
 そこでその唇が塞がれた。王子様の唇で。
 眺めていてもあまり情熱は伝わってこないような、互いの経験に基づいた行為をその通りに行うような義務感が垣間見える気もしたが、散々舌を絡め合う様子がエロいことに変わりはなかった。
 王子様は唇を離すと、は、と軽く息を吐いた。
「……変な感じだな」
「……そうですね」
 二人が呟き合う。
 このままこの二人が本気になったら、と考えながら眺める。腹の奥底に薄暗い解放感が蠢く。
 しかしその場合、王子様を殺したらさぞかしランディが悲しむだろう。困ったなあ、などと思う。
「……勃ちますか」
「……勃たせる」
「……お手伝いしますか」
「……では頼む」
「……手と口、どちらが」
「……手でいい」
 私が勝手に困っている間、二人が淡々と事を進めている。
 折角なんだから、ランディももっと情熱を剥き出しにすればいいのに、とも思った。
 そして暇だった。
「何なら私が扱きましょうか」
 王子様が私を見た。そして口が開く。しかしそこから音が発される前に、ランディが言った。
「いい。俺がする」
「そうですか」
 私は大人しく引いた。ランディに王子様に対する独占欲でも芽生えたならば、短時間で随分な発展だった。
 王子様が口を噤み、ランディを見つめる。
「……済みません」
「……いや」
 ランディの手が王子様の股間に伸ばされた。そのまま掴み、手を動かす。そのうち勃起した様子だった。
 ランディに覆い被さる体勢だった王子様が上体を上げた。近くに放置されていた潤滑油の瓶を取る。
「……殿下」
「……何だ」
「……多少の潤滑さえ考えて頂けましたら、そのまま入れて頂いて大丈夫だと思います」
「……そうか?」
「……まだその、恐らくかなり開いていると思うので……」
「……。……そうか。言われてみればそうだろうな」
「……萎えたのでしたらまた手でしますが」
「……問題ない」
 王子様が小さく息を吐いた。
 この場にいる三人とも、誰もそこまで興奮していない。実に奇妙な空気だった。
 私という第三者がいるからだろうか。そうかもしれない。
 そしてランディのお尻辺りに潤滑油が掛けられ、脚が持ち上げられた。
「……入れるぞ」
「……どうぞ」
 私は一体何を眺めているのだろう、という気持ちになってきた。
 王子様のぎんぎんにおっ勃っているとは言えないがそれなりに立派なことは確かなペニスが、ランディのアナルに挿入される。
 ランディが小さく呻いて顏を横に背けた。私のいない方に。
「……確かに開いているな。……あんなものを突っ込まれれば当然だな……」
 王子様が腰を動かして抽挿する。ランディもそれに合わせる。
「……そうですね。……根本的に、もう、かなり……挿入感が悪いと思いますので……」
「……俺に対する嫌味か」
 王子様がくたびれたような顔で呟いた。
「……そんなつもりは、ありません、済みません」
 顔を戻したランディも何だかくたびれた表情で謝罪した。
 二人とも幾らか息は乱しているが、とことん冷静だった。
 セックスってこんなんだったっけ……と私は幾らか困惑した。まあ、私の見ている前で痴態を晒したくもないだろうとも思う。
 ふ、とランディが不意に笑った。
「……ヘルガも大概に罪深い」
 私が「え」と思っていると、ランディがこちらに顔を向けた。
「……俺をこんな体にして」
 王子様が半分笑うような溜息を漏らした。
 やはり二人は何だか疲れたような雰囲気だった。
「……癪だな」
 王子様はそう言うと、抱えていた脚から片手を外し、それでランディの陰茎を握った。腰の動きに合わせて扱く。
「……っ、ご無理、なさらなくても」
「いや。いかせる。せめてそれくらいはする」
 王子様が宣言した。
 ランディが何やら複雑そうに眉を寄せたが、乱れた息の合間に「ん」と少し喘ぐ。
 刺激に応じて慎ましく喘ぐランディもなかなか色っぽかった。
「……ランディ。何だかそういう上品な反応もエロくていいです」
 思わずそんな感想を口にすると、色気を吹っ飛ばしたランディに「だまれ」と怒られた。
 王子様は私たちのやり取りなど無視し、職務を遂行するように行為を続けた。
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