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第二章
N3
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登城するランディのしゅっとした姿が格好良かったのでお尻を撫でた。
「……何だ」
昨晩のことでも思い出したのか、少し顔を赤くしてそう言ってくる。
それから彼は急にはっとして、次いで渋い顔をした。
「……俺の反応おかしいだろう。おまえもまるっきり普通のことのように俺の尻を触るな」
「ランディのお尻っていい形してますよね」
「……どうも」
溜息を吐かれた。
それから、「ではな」と部屋を出ようとする彼を少し引き留めた。
「私はずっとお留守番ですよね」
「伯爵夫人だからな。戦わせる訳にはいかんだろう」
「私強いのに。使わないの勿体ないですよ」
「そうは言ってもな」
ランディが首を傾げた。
「……まあ、おまえは女主人として家政を取り仕切るより、剣を振り回していた方が楽だろうとは思うが」
「はい。家政の諸事は、今は家令さんとランディが分担されてますよね」
「妻がいない時期が長かったからな」
「私、がんばりますけど……力不足の感は強いですよね」
「まあ……マナーから始まってる状態だしなあ。それに別段俺は、今まで通りで構わんぞ。慣れているし。おまえは適当にぶらぶらしていたらどうだ」
「うーん……それだと、私はランディ専用セックスマシンみたいでどうなんですかね。他の機能殆どないよ、っていう感じが、こう」
「俺専用……」
ランディが呟いた。
「ええ」
「……殿下とはしていいぞ」
「あらまあ。ご自分は浮気したら尿道が被害に遭うというのに、私は良いのですね。寛容ですね」
「尿道が被害という言い方をやめろ」
「尿道を開発」
「俺の言い方が間違っていた。尿道の話自体やめろ」
「そうですか? とりあえず、殿下からはお誘いがないので」
「……大丈夫なのか、殿下は」
「大丈夫とは?」
「毎夜のようにおまえとセックスしていたのだろう」
「そうですね。……どっかで代わりの絶倫巨根野郎でも見つけているのでは?」
王子様を馬鹿にするような言い方はランディの前では控えていたつもりだが、今、うっかりぽろっと出てしまった。
ランディがじっと私を見つめた。
「……いえ。分かりませんけど。……どうであれ、こちらから押し掛けるようなものではないでしょう」
「俺が行けと言ったら?」
「仕方ないですね。ランディがそう言うなら行きますよ?」
私は笑って首を傾げておいた。
今日はランディが王城に泊まるので、その間にやっておいてくれという話になった。どうやら彼が自ら「うちの妻を貸しますよ」と王子様に申し上げるらしい。酷い話だ。普通ならば。
私は薄々と、毎晩やられ過ぎていき過ぎて腰とアナルと前立腺が壊れちゃいそうなの、たまには休ませて! という気持ちもあるのではないかと推測している。
予定通り、夜になってもランディは戻らず、馴染みの年若い侍従を伴って王子様が現れた。陰で護衛にあたっている者はいるかもしれないが、表立っては二人だった。
当主であるランディとご友人であるだけに当然王子様の来訪は初めてではなく、慣れた風に使用人らも私にそれを告げに来た。行くというより来る形が現状では相応しいのだろう。
王子様のいる来賓室に行くと、見慣れた仏頂面が目に飛び込んできた。侍従は別の部屋に案内されたらしく、いない。
そんな表情ではあれど、変わらずすらりとした長身に乗っかっている美貌だ。地味めな装いでも隠しきれない気品と迫力がある。が。
「へえ。来るんですね」
挨拶もなくそう言うと、王子様の眉が動いた。
対してそちらもまた挨拶もなく言う。
「ドレスが似合わんな」
「でしょうよ。それで? ランディに貞操を誓えとかなんとか仰っといて、だったらご自分でも断ればいいのに」
王子様が微かに視線を揺らした。無言になる。
「まあいいです。隣の寝室行きますよ」
無造作に移動しても、王子様はついてきた。腰を抱えてベッドに放っても、責める目で見たが逆らわなかった。
その体の上に、似合わないドレスで身を包んだまま乗り上がる。
シャツの前を開き、肌を露わにさせた。乳首には例のリングがまだ付いていて、少しびっくりした。
ふうん、と思い、リングに指を通して引っ張った。
「っ」
王子様が私を見上げる。
「……これねえ。あなたに自分のマークでも付けてやる気でやったんですけど、もう必要ないし外しましょうね」
留め金になっている石のついたボールを緩めようとすると、王子様の手で止められた。
「……別に、付けておけばいい」
「あなたは私のものではないでしょう?」
「俺は……」
王子様の声が掠れて消える。眉が強く寄せられていた。
顔を横に背ける。
「……俺が、おまえのものである筈がない」
「でしょうね。外しますよ」
ボールを外し、軸を乳首から抜く。そしてサイドテーブルに無造作にピアスを置いた。王子様がぼんやりとそれを目で追った。
下衣を緩めて引き下ろし、片足ずつ脱がせる。脚を開かせて持ち上げても、王子様はどこかぼうっとしたままだった。
相変わらず、見事に使い込まれたアナルが晒される。
「脚、自分で抱えてて下さい」
無造作に指示すると、王子様が従った。アナルにオイルをぶっ掛け、そこに指を三本突っ込む。
「……っ」
王子様が少し身じろいだ。
「……時間経っているのに変わらずゆるいですね。巨根のいい玩具でも見つけました?」
ランディに先刻言ったようなことを本人にお伝えすると、王子様がかあっと赤面した。何だこの反応、と思っていると。
「……自慰など、俺の勝手だろう」
「え」
赤面と自慰で、理解した。私の言葉がそのままの意味に受け取られ、そして事実だったということだ。
「……侍従にでも用意させたんですか」
その問いに返答はなかった。
私は入れた指を回転させた。ぐちゅっと音がした。
「ふ、あ」
「へえ。だからですか。面白いからそれ、今度持ってきてください」
王子様は顔を赤らめたまま無視をしている。ふうん、と思い、指を動かしながらその触感の感想を言う。
「……このゆるゆる具合って、私一人がここまでにしたとはっきり知っていなければ、ちょっと突っ込むのに躊躇するくらいですよねえ……いえ、不特定多数との行為に伴う性病の確率的な意味でね? ゆるさ自体は卑猥でいいですよね。ランディもそこそこゆるくなりましたけど。でもまあ、結構丁重に扱ってますし」
目を見て言うと、王子様が瞬きもせずに暫し私を凝視した。それから、ぐっと眉を寄せて目を眇めた。怒りの表情にも見えたし、苦しげでもあった。
「何か? ……あなたが私達を結婚させたんですよ。……ランディも可哀想に。あなたに従いさえしなければ、私のようなおおよそ釣り合わない蛮族を妻にし、日々お尻を掘り返されることも無かったでしょうにねえ……」
結婚前に一回していたが、細かいことは良いだろう。
「……ランディと結婚することが、おまえの為になるかと、思った」
「……は?」
何を言い出すのかと心の底から思った。びっくりした拍子に指が抜ける。
「っ……ランディは、良いやつだ」
「……ええ、まあ」
「……おまえも、あいつを好いている」
「……まあ……そうですね」
恋愛感情ではないが、確かに好きだ。体も好きだ。
「でも、ランディの気持ちは無視しましたね? あなたは身分差を使い、彼に強制した」
「……断る余地は残しておいた」
「それでもあなたは彼の忠実さを利用した。……断られるとは思っていなかったでしょう?」
取りあえず責め立てる。
実際はどうだか、という部分はある。ランディはこの王子様に大きな貸しを作ったことに愉悦を感じているようだし、そこまで私を厭うでもない。
しかし何もかも、あくまで見た限りではある。特段人を見る目に自負があるでもない私が、貴族という良く分からないバックグラウンドを持つ男に対して感じることなのだ。
そして貴族が良く分からない、というのなら、王族である目前の男はより一層だ。だが彼に対しては、分からないというより、分かる気が無いような気はする。
「……そうだな。お前の言う通りだ。俺はランディを利用した。厄介なおまえを押し付け、身分を課して幾らかでも制御しようとした。……これで満足だろう?」
「そうですね」
笑う私を、王子様が見つめる。その表情は少し悲しそうにも見えた。何故悲しいのかも分からないし、そもそも悲しくはないのかもしれない。
力なくぺたんとしている陰茎が目に入ったので、そのうち尿道に突っ込む棒でも調達しておいてやろうと思った。私はこの男には酷いことができる。反応が可愛くていじめたい、だとかそういうのではなく。純粋に、酷いことをしてやりたい。
なのに私を好きだなんて。
第三者から見たならば、滑稽であり哀れでもあるだろう。しかし私は当事者なので、滑稽とは思いこそすれ哀れではない。
あはは、と声に出して笑ってから、とりあえずやることを済ませるべく、暗い興奮で勃起した代物を王子様に突っ込んだ。
「う」
王子様が小さく呻く。それでも我ながら凶悪な容量と思うくらいの代物が簡単に奥まで収まる。
「自慰も勝手になさればいいですけど、これ以上拡張して私ですらどうにもならないくらいガバガバにしないで下さいね。挿入感も無いレベルにされたら、もう犯したくもない」
適当に馬鹿にすると、王子様に睨まれた。
「俺は、拡張などしたくて、自慰をしているのでは、ないっ……」
微かに息を上がらせながらそう言ってくる。
「へえ。では、私が恋しくて?」
続けて適当に言うと、王子様が目を見開き、それからまた眇めた。
「……そうだと、言ったら? 俺が何を言おうと、おまえは、馬鹿にするだけ、だろうが……っ」
それから顔を背ける。
「へぇ……まあ、そうですね」
頷き、抽挿を始める。
「ん、っ、ぁ……」
王子様が喘ぐ。
「……そりゃあね。……私、定期的に夢を見るんですよね。親とか、兄弟姉妹とかの。ごく普通に、暮らしていた時の。目が覚めた瞬間は戸惑いますよ。何が現実か分からなくて。本当にね……あなた達に皆が殺された現実の方が夢じゃないかと、混乱しますよね……」
「っ」
王子様が私を見た。
「実際あなたの態度は間違っていないと思います。……土下座されたって許せもしないのだから、何もしないのが正解でしょう」
そう言ってから、抽挿を速めた。
「っ、は、うっ、うっ……」
王子様が声を漏らす。それは内臓に受ける衝撃からの生理的なものらしく、表情自体は苦しげで楽しくなさそうだった。
はぁ、はぁ、と息を乱しながら、いつも程の嬌声は上げずに、じっと私を見つめ続ける。
「何ですか? キスでもしましょうか?」
私は弄うように言い、動きを止め、ちゅっと軽く口接けた。
唇が離れて暫くして、王子様が掠れた小声で「……済まない……」と呟いたのが聞こえた。
「……何だ」
昨晩のことでも思い出したのか、少し顔を赤くしてそう言ってくる。
それから彼は急にはっとして、次いで渋い顔をした。
「……俺の反応おかしいだろう。おまえもまるっきり普通のことのように俺の尻を触るな」
「ランディのお尻っていい形してますよね」
「……どうも」
溜息を吐かれた。
それから、「ではな」と部屋を出ようとする彼を少し引き留めた。
「私はずっとお留守番ですよね」
「伯爵夫人だからな。戦わせる訳にはいかんだろう」
「私強いのに。使わないの勿体ないですよ」
「そうは言ってもな」
ランディが首を傾げた。
「……まあ、おまえは女主人として家政を取り仕切るより、剣を振り回していた方が楽だろうとは思うが」
「はい。家政の諸事は、今は家令さんとランディが分担されてますよね」
「妻がいない時期が長かったからな」
「私、がんばりますけど……力不足の感は強いですよね」
「まあ……マナーから始まってる状態だしなあ。それに別段俺は、今まで通りで構わんぞ。慣れているし。おまえは適当にぶらぶらしていたらどうだ」
「うーん……それだと、私はランディ専用セックスマシンみたいでどうなんですかね。他の機能殆どないよ、っていう感じが、こう」
「俺専用……」
ランディが呟いた。
「ええ」
「……殿下とはしていいぞ」
「あらまあ。ご自分は浮気したら尿道が被害に遭うというのに、私は良いのですね。寛容ですね」
「尿道が被害という言い方をやめろ」
「尿道を開発」
「俺の言い方が間違っていた。尿道の話自体やめろ」
「そうですか? とりあえず、殿下からはお誘いがないので」
「……大丈夫なのか、殿下は」
「大丈夫とは?」
「毎夜のようにおまえとセックスしていたのだろう」
「そうですね。……どっかで代わりの絶倫巨根野郎でも見つけているのでは?」
王子様を馬鹿にするような言い方はランディの前では控えていたつもりだが、今、うっかりぽろっと出てしまった。
ランディがじっと私を見つめた。
「……いえ。分かりませんけど。……どうであれ、こちらから押し掛けるようなものではないでしょう」
「俺が行けと言ったら?」
「仕方ないですね。ランディがそう言うなら行きますよ?」
私は笑って首を傾げておいた。
今日はランディが王城に泊まるので、その間にやっておいてくれという話になった。どうやら彼が自ら「うちの妻を貸しますよ」と王子様に申し上げるらしい。酷い話だ。普通ならば。
私は薄々と、毎晩やられ過ぎていき過ぎて腰とアナルと前立腺が壊れちゃいそうなの、たまには休ませて! という気持ちもあるのではないかと推測している。
予定通り、夜になってもランディは戻らず、馴染みの年若い侍従を伴って王子様が現れた。陰で護衛にあたっている者はいるかもしれないが、表立っては二人だった。
当主であるランディとご友人であるだけに当然王子様の来訪は初めてではなく、慣れた風に使用人らも私にそれを告げに来た。行くというより来る形が現状では相応しいのだろう。
王子様のいる来賓室に行くと、見慣れた仏頂面が目に飛び込んできた。侍従は別の部屋に案内されたらしく、いない。
そんな表情ではあれど、変わらずすらりとした長身に乗っかっている美貌だ。地味めな装いでも隠しきれない気品と迫力がある。が。
「へえ。来るんですね」
挨拶もなくそう言うと、王子様の眉が動いた。
対してそちらもまた挨拶もなく言う。
「ドレスが似合わんな」
「でしょうよ。それで? ランディに貞操を誓えとかなんとか仰っといて、だったらご自分でも断ればいいのに」
王子様が微かに視線を揺らした。無言になる。
「まあいいです。隣の寝室行きますよ」
無造作に移動しても、王子様はついてきた。腰を抱えてベッドに放っても、責める目で見たが逆らわなかった。
その体の上に、似合わないドレスで身を包んだまま乗り上がる。
シャツの前を開き、肌を露わにさせた。乳首には例のリングがまだ付いていて、少しびっくりした。
ふうん、と思い、リングに指を通して引っ張った。
「っ」
王子様が私を見上げる。
「……これねえ。あなたに自分のマークでも付けてやる気でやったんですけど、もう必要ないし外しましょうね」
留め金になっている石のついたボールを緩めようとすると、王子様の手で止められた。
「……別に、付けておけばいい」
「あなたは私のものではないでしょう?」
「俺は……」
王子様の声が掠れて消える。眉が強く寄せられていた。
顔を横に背ける。
「……俺が、おまえのものである筈がない」
「でしょうね。外しますよ」
ボールを外し、軸を乳首から抜く。そしてサイドテーブルに無造作にピアスを置いた。王子様がぼんやりとそれを目で追った。
下衣を緩めて引き下ろし、片足ずつ脱がせる。脚を開かせて持ち上げても、王子様はどこかぼうっとしたままだった。
相変わらず、見事に使い込まれたアナルが晒される。
「脚、自分で抱えてて下さい」
無造作に指示すると、王子様が従った。アナルにオイルをぶっ掛け、そこに指を三本突っ込む。
「……っ」
王子様が少し身じろいだ。
「……時間経っているのに変わらずゆるいですね。巨根のいい玩具でも見つけました?」
ランディに先刻言ったようなことを本人にお伝えすると、王子様がかあっと赤面した。何だこの反応、と思っていると。
「……自慰など、俺の勝手だろう」
「え」
赤面と自慰で、理解した。私の言葉がそのままの意味に受け取られ、そして事実だったということだ。
「……侍従にでも用意させたんですか」
その問いに返答はなかった。
私は入れた指を回転させた。ぐちゅっと音がした。
「ふ、あ」
「へえ。だからですか。面白いからそれ、今度持ってきてください」
王子様は顔を赤らめたまま無視をしている。ふうん、と思い、指を動かしながらその触感の感想を言う。
「……このゆるゆる具合って、私一人がここまでにしたとはっきり知っていなければ、ちょっと突っ込むのに躊躇するくらいですよねえ……いえ、不特定多数との行為に伴う性病の確率的な意味でね? ゆるさ自体は卑猥でいいですよね。ランディもそこそこゆるくなりましたけど。でもまあ、結構丁重に扱ってますし」
目を見て言うと、王子様が瞬きもせずに暫し私を凝視した。それから、ぐっと眉を寄せて目を眇めた。怒りの表情にも見えたし、苦しげでもあった。
「何か? ……あなたが私達を結婚させたんですよ。……ランディも可哀想に。あなたに従いさえしなければ、私のようなおおよそ釣り合わない蛮族を妻にし、日々お尻を掘り返されることも無かったでしょうにねえ……」
結婚前に一回していたが、細かいことは良いだろう。
「……ランディと結婚することが、おまえの為になるかと、思った」
「……は?」
何を言い出すのかと心の底から思った。びっくりした拍子に指が抜ける。
「っ……ランディは、良いやつだ」
「……ええ、まあ」
「……おまえも、あいつを好いている」
「……まあ……そうですね」
恋愛感情ではないが、確かに好きだ。体も好きだ。
「でも、ランディの気持ちは無視しましたね? あなたは身分差を使い、彼に強制した」
「……断る余地は残しておいた」
「それでもあなたは彼の忠実さを利用した。……断られるとは思っていなかったでしょう?」
取りあえず責め立てる。
実際はどうだか、という部分はある。ランディはこの王子様に大きな貸しを作ったことに愉悦を感じているようだし、そこまで私を厭うでもない。
しかし何もかも、あくまで見た限りではある。特段人を見る目に自負があるでもない私が、貴族という良く分からないバックグラウンドを持つ男に対して感じることなのだ。
そして貴族が良く分からない、というのなら、王族である目前の男はより一層だ。だが彼に対しては、分からないというより、分かる気が無いような気はする。
「……そうだな。お前の言う通りだ。俺はランディを利用した。厄介なおまえを押し付け、身分を課して幾らかでも制御しようとした。……これで満足だろう?」
「そうですね」
笑う私を、王子様が見つめる。その表情は少し悲しそうにも見えた。何故悲しいのかも分からないし、そもそも悲しくはないのかもしれない。
力なくぺたんとしている陰茎が目に入ったので、そのうち尿道に突っ込む棒でも調達しておいてやろうと思った。私はこの男には酷いことができる。反応が可愛くていじめたい、だとかそういうのではなく。純粋に、酷いことをしてやりたい。
なのに私を好きだなんて。
第三者から見たならば、滑稽であり哀れでもあるだろう。しかし私は当事者なので、滑稽とは思いこそすれ哀れではない。
あはは、と声に出して笑ってから、とりあえずやることを済ませるべく、暗い興奮で勃起した代物を王子様に突っ込んだ。
「う」
王子様が小さく呻く。それでも我ながら凶悪な容量と思うくらいの代物が簡単に奥まで収まる。
「自慰も勝手になさればいいですけど、これ以上拡張して私ですらどうにもならないくらいガバガバにしないで下さいね。挿入感も無いレベルにされたら、もう犯したくもない」
適当に馬鹿にすると、王子様に睨まれた。
「俺は、拡張などしたくて、自慰をしているのでは、ないっ……」
微かに息を上がらせながらそう言ってくる。
「へえ。では、私が恋しくて?」
続けて適当に言うと、王子様が目を見開き、それからまた眇めた。
「……そうだと、言ったら? 俺が何を言おうと、おまえは、馬鹿にするだけ、だろうが……っ」
それから顔を背ける。
「へぇ……まあ、そうですね」
頷き、抽挿を始める。
「ん、っ、ぁ……」
王子様が喘ぐ。
「……そりゃあね。……私、定期的に夢を見るんですよね。親とか、兄弟姉妹とかの。ごく普通に、暮らしていた時の。目が覚めた瞬間は戸惑いますよ。何が現実か分からなくて。本当にね……あなた達に皆が殺された現実の方が夢じゃないかと、混乱しますよね……」
「っ」
王子様が私を見た。
「実際あなたの態度は間違っていないと思います。……土下座されたって許せもしないのだから、何もしないのが正解でしょう」
そう言ってから、抽挿を速めた。
「っ、は、うっ、うっ……」
王子様が声を漏らす。それは内臓に受ける衝撃からの生理的なものらしく、表情自体は苦しげで楽しくなさそうだった。
はぁ、はぁ、と息を乱しながら、いつも程の嬌声は上げずに、じっと私を見つめ続ける。
「何ですか? キスでもしましょうか?」
私は弄うように言い、動きを止め、ちゅっと軽く口接けた。
唇が離れて暫くして、王子様が掠れた小声で「……済まない……」と呟いたのが聞こえた。
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