罪深き凡夫らの回旋

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第一章

N4

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 王都に戻って数日、私は鬱々とした気持ちを持て余していた。
 逃げ出すかどうか、もしくは王子様のメンタルに打ち込めるような楔は無いか、ずっと考えている。結論は出ない。
 夜は呼び出せないよう宿舎から抜け出し、適当にどこかで眠る。野宿など慣れてはいるが、ちゃんとしたベッドがあるのに馬鹿馬鹿しい気はした。
 同室の女兵士は、私が良く部屋を抜け出し、または何者かに呼び出されていることを知っている。だから、いつものことの延長として特に何を言ってくるでもない。状況から察して相手は身分のある人だとは思っているようだが、それだけだった。
 そんなある日突然、視察の際に私を押し付けられた例の伯爵に呼び出された。ウォルステンホルム伯ランドルフ・スタンリー・アルドリッジ。
 彼が所属するのは、この国の実質第二騎士団である、白銀の獅子騎士団。構成する騎士たちは、件の伯爵やその叔父であり団長である侯爵に認められた者、らしい。身分ある者もそうでもない者も交ざった団である分、その辺りのいざこざは多いイメージだった。
 王城内の豪勢かつ洒落た副団長の部屋にて、突然言い渡される。
「今日から、正式に俺の従卒になってもらうから、宜しく」
「えっ」
 実に一方的だった。まあ、私如き身分の者に、ああだこうだと言う余地もなくはある。が。
 優雅な刺繍の長椅子に優雅に座った伯爵は、やや垂れた形の目をこちらに向ける。この男もまた、随分な美形だった。麗しいとさえ形容出来てしまう顔のせいか何となく柔弱な雰囲気はあるが、小耳に挟んだ噂によれば実質がそうという訳ではなさそうだった。
「ではヘルガ・カトラル。本日をもって俺の従卒に任ずる」
 およそ適当に任ぜられ、呆気にとられて立ち尽くしていると、伯爵が立ち上がった。私の目前に立ち、少し腰を屈めて顔を覗き込んでくる。この男は王子様と同じくらいの長身だった。きらきらしたプラチナブロンドと美貌とが視野を占める。
「美人だな」
 任命に対する私の返答も待たずにそう言う。必要とされていないのだろう。単なる決定事項だから。
「いえ……恐れ入ります」
「これでその辺の騎士より強いんだから凄いな」
「はあ……」
「実際、俺や叔父上が目をつけても不自然じゃない」
 うんうん、と頷くと、副団長は顔を離した。
「別に、俺の世話はしなくていい。騎士団の連中にくっついて鍛錬でもしてどんどん強くなれ。その方が面白いし」
「は……あ……」
「最低限の礼儀作法程度は身に着けてもらうが……まあ、頼めばそんなもの殿下が教えてくれるだろう?」
「え。……いえ、殿下とは、決してそんな間柄では」
 マナー講座を開いてもらえるような仲ではない。
「そうか?」
 副団長が笑う。
「先にいる従卒らは男だし、狭いが個室を与えるから」
「……。……恐れ入ります」
 返答に困る。
 副団長が何を思っているのかも分かる。そして何故こんなことになっているのかも分かる。
「まあ、呼び出されたりした時は相手して差し上げて大丈夫だ」
「……。……恐れ入ります」
 私はただ、同じ無難な言葉を繰り返すしかなかった。
「あの方、どこかしら堅物そうな雰囲気も出しつつ結構やることはやっておられるんだが」
「……はあ」
 それは私の認識と一緒だ。
「ヘルガのことはかなり気に入ってるようだな」
 最初から名前で呼ばれるらしい。何となく漂う軽い雰囲気はその通りなのかもしれない。
「……。……恐れ入ります」
 そして私は溜息を噛み殺した。彼の口にした内容に対するうんざり感は、奥へと押し込める。
 とはいえ、私はこんな状況に陥っても決して身動きが取れないということは無い。守るものは何もないのだ。





 無造作に奥まで突っ込むと、「ひ」と鳴いて王子様が精液を漏らした。
「今日はいつもに輪をかけて簡単ですね」
 小馬鹿どころか、大いに馬鹿にした口調でそう言ってやる。
「っ、黙、っ、あっ」
 言い返そうという言葉は嬌声に紛れる。
「あっ……んっ、っ、あっ……あ、あっ」
 腹の中をぐちゃぐちゃに突き捏ねられて大変気持ち良さそうだった。
 王子様を抱くのはかなり久し振りだった。もう面倒なので「脱いで下さい」と開口一番言うと大人しく裸になり、「ベッドに寝て股を開いて下さい」と言っても、大人しく従った。怒った顔はしていたが、そこはどうでもいい。
「あっ……あ」
 こちらの動きに合わせて腰を振り、着衣のままの私を見上げる。
「ヘルガ……っ、あ、……あ」
 ぼんやりとした艶めかしい眼差しで、弛んだ声で私の名を呼ぶ。
 いらいらした。
「何ですか。鬱陶しいですね。私はあなたなんて大嫌いなんですよ。黙って腰振ってさっさと満足して帰らせて下さい」
 冷たく言い放つと、王子様の目が揺らいだ。それが傷ついたように見えて、じわりと暗い快感を覚えた。
「っ……」
 王子様が首を横に反らし、意識して腰を動かすのが伝わってきた。
「んっ……んっ……」
 眉を寄せ、目を伏せて、唇を噛むようにしている。
「あはは」
 私は笑い、王子様の脚の膝裏を改めて強く掴むと、ぐいっと腰を突き入れた。
「あ、っ」
 びくっ、と王子様の体が揺れた。
 激しく抽挿すると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋に響く。
「んんっ、あッ、あぁ」
 悲鳴じみた声も、所詮気持ち良くて上げているのだから、いらいらする。精液に濡れた綺麗な腹筋には、今は先走りがたっぷりと漏らされている。
 腸壁を擦り上げて奥を突くと、「ひっ」と泣き声が聞こえた。
「黙れませんか?」
「う……ッ、……うっ、んっ」
 何を考えているのかは知らないが、王子様が声を噛み殺した。
 私は笑いながら、その腹の中を乱暴に掻き回し続けた。
「んッ、んッ、んッ……ふ、う」
 語尾が嗚咽に崩れた。
「ううっ……う、んっ、ふっ……」
 動きを止めて顔を近づけると、戸惑うようにこちらを見た。
 そのまま近づけて、軽く口接ける。
「ふふ……その顔、少し可愛いですね。あなたのことは嫌いですけど」
 そう言ってもう一度唇を触れさせると、向こうに外された。
「嫌でした?」
「……弄ばれているようで、不快、だ」
「え、何を言っているのです? これだけ散々喜んで弄ばれておいて?」
 ずる、と陰茎を引き、「ひ」と喘ぐところに深く突き入れる。
「あぁ、っ」
 王子様は射精してしまった。
「ほら。何を言っているのかさっぱり分かりませんよ、ねえ、王子様?」
 ぬちゅっ、ぬぷっ、ずぷっ。
「あう、うっ、あ」
 王子様は眉を寄せ、顔を赤らめて喘ぐ。今日も休ませずにしつこく突く。
「はぁっ……あ……は……」
 苦しげに喘ぐ顔はとても色っぽい。普段、こんな表情など連想もさせないタイプの男だから尚更かもしれない。
 笑いが込み上げてきた。少し楽しい。
「私が好きですか?」
 ゆるいアナルに執拗に太いペニスを抜き差ししつつ、優しく問い掛ける。
 すると睨まれた。大分、憎々しげに。
「ふうん」
 体に心が引きずられたのだか、強い女が好きなのだか、思うようにならない女が好きなのだか、何だか知らないが。
 罪深い、とはもう言う気は失せた。
「あなたが私の一族を滅ぼさなければ、私も好きになったかもしれません」
 嘘ではない。可能性はゼロではない。どこかで見かけたなら、「何て格好いい王子様だろう」と思いはしただろう。何かの拍子に、もしかしてその王子様の住まう城の兵士に応募したかもしれない。その場合、それほど必死に審査を通ろうと努力はしなかったかもしれないが……どうであれ、可能性はゼロではない。
「……俺は、必要なことを為した。……滅ぼさない可能性は、ない」
 やたらときっぱりと言い切られた。
「……そうですか」
 私は違うことを言ったらしい。煽りにはならなかったようだ。それとも……
 ……いや。
「……ふふ」
 笑いが込み上げ、零れる。
 恐らく、私の一族を滅ぼすにあたり、色々な情報や影響を精査はしただろう。正しいか間違っているか、ではない。彼の立場においてそうするべきか否か。
 彼の基準において、私の一族は滅ぼすべきものだった。
 そうであれば、私も必要ではなく、滅ぼすべきものであるはずだ。
 私は、ずるっとペニスを引っこ抜いた。それは萎えていた。
「……何をしているのですか、あなたは?」
 そう言い、王子様を見下ろす。
 歪んだ笑みが私の顔に張り付いている。
「あなたにとって、私も滅ぼすべきものでしょう? 何を喜んでセックスしているのです?」
 王子様がこちらを見上げた。あまり表情は動かない。さっきまで、色気を駄々漏らしながら掘られていた男には見えない。
「私のことは、お好きなんだか何なんだか知りませんが」
 顔を近づける。
「私も殺さないと」
 暫らくの間の後、王子様の形の良い唇が開いた。
「……俺が滅ぼしたかったのは、我らが教義における魔性の血脈だ。おまえという個人のみでは、幾らの影響もない」
「この体にもしっかりと魔性の血脈は受け継がれておりますが?」
「だから……おまえ一人では、脅威になど値しない」
 王子様が言いたいことは分かる。クソ国教であるトゥオミ教においての、悪魔とされるような者らの一種。単なる突然変異の枠を超えて、一族内で生み継ぐ者らのほぼ全てが両性を備える、忌まわしき異形。
 確かに、一族の血同士が掛け合わない限り、そうも高確率で両性を具有はしないのだ。だから私一人では……絶えることがほぼ確定した現状では、どうということもない、と。
 しかしそれは言い訳にも聞こえた。
「私は殺したくないですか? ですよねえ。私が死んだら、あなたはもう一生、欲求不満に苦しみますものね」
 恐らく王子様は私の一族に対して、そこまで深く何かを思うでもなかったろう。教会の思惑や、何かの利権、そんなものが絡んだ結果だったのではないだろうか。
 逆に言えば、そんなことの為に滅ぼされた訳だ。
「ははっ」
 私は笑いながら言う。
「あなたに恨みなど抱いていない真性半陰陽をお探しになったらどうです。あなたの権力をもってすれば、もしかして何人か見つけられるかもしれませんよ?」
 見つけたとして、それがこの強そうな王子様に対して、嬉々としてちんぽおっ勃ててぶち犯しにかかれる性格かどうかは知らないが。
 そして王子様は、笑う私を黙って見つめている。いつもの険悪な眼差しで。
「……まあ、わざわざウォルステンホルム卿に頼む程、私にご執心頂いているようですけど」
 私は、この強そうな王子様に対して、嬉々としてちんぽおっ勃ててぶち犯しにかかれる性格だ。
 何なら、彼の意味の分からない恋心もどきをズタズタにする為に、その辺の男でも女でも入れるのでも入れられるのでも山ほどやり散らかしたい気持ちはあるのだが、この国でこの体を気軽に晒す訳にはいかない。
「そおんなにお好きなら、妃にでもすればいいのに」
 そのようになどして下さった暁には、丁度良いパーティーでも見繕って、素性を名乗りながらこの胸と股間を披露してやる。
 王子様もそれが分かっているから、あまり近くには置かないのだろう。何か不測の事態が起きても、握り潰せる程度の距離までだ。
 それでも、まあ……やはり昔に比べて随分ぐらついてはいる。ウォルステンホルム卿を巻き込んでいるのが良い証拠だ。
 もっと揺さ振ればもっとぐらついて、いずれは崩れるのだろうか。
 ……崩れるとは、どういう状態だろうか?
 私を妃にすることだろうか。それとも、土下座して許しを請われることだろうか。いっそ愛していると取り縋られ、国を捨てるから共に、と懇願されること?
 いずれも、あまりリアリティを感じなかった。
 どちらかと言えば、何かの針が振り切れて、私を斬り捨てる方が想像し易かった。
 それでも良いような気はした。私を殺せば、流石にこの王子様も後悔はするだろう。肉体的に……というか、性的に。その時まで恋心もどきが健在であれば、精神的にも。
 それは、以前考えた「メンタルに打ち込む楔」になり得る気がした。
「妃になどしない」
 唐突に王子様が返答してきた。
「残念ですねえ」
 大変残念だ。妃になどして下さったら、相当なことができるのに。
「そして、そんなにお好きだというのは否定しないのですね」
 嘲るように言うと、王子様はまた黙った。
「王子様はすぐ黙りますね。私ごときと長々会話するのはご面倒でしょうか?」
 王子様の眉が苛立たしげに寄せられた。
「……好きだと言えば満足なのか」
 ふざけるな愚民、とでもいう言葉の方が似合う口調だった。
「……その内容を聞かされて、罵られた気分になるのは何故でしょうね」
「……知るか」
 王子様が顔を背けた。
「そうですか。でもどうせ口にするなら、もっとそれらしく言わないと何の効果もないですよ」
「おまえが俺を好くことは無い。何の意味がある」
「もしかして何かしらの効果はあるかもしれないじゃないですか」
 そう言い、私は横たわったままの王子様の首筋に顔を寄せた。跡がつかない程度に軽く吸い、舐める。手を体に這わせ、撫でる。
 王子様が何か言いたげにこちらを向いたので、唇を重ねた。舌を絡ませる。
 唇を離してから、顔に幾つか口接けを落とす。
「……好きですよ」
 青い瞳を見つめる。その目が眇められ、歯軋りしそうな表情になった。
「……とか、した方が、ね。何だか随分嫌そうな顔をされてますけど」
「馬鹿にするな」
「何です、今更。馬鹿になんて、いつも山ほどしていますよ」
「俺は、おまえが好きだと言っている」
「そうらしいですね。聞こえていますよ」
 恋慕の情を伝えられて、こんなにも心が動かない。
 そもそもこの王子様に、ということではあるのだろうが……あの日から、何かを恋い慕う気持ちが思い出せなくなった。
 正直、思い出す必要も無いとは思う。
 じっと王子様を見つめると、見つめ返してくる眼差しは冷徹だった。恋心を口にしている人間のものにも見えない。
 まあ、仮にも好きだという相手の一族郎党を滅ぼしておいて平然としているくらいだ。
「でも、本当にお好きなんですか? 散々私に犯されまくって、錯覚でも起こしているんじゃないですかね」
 王子様は黙っている。表情も変えない。全く、セックスの時以外は可愛げのない人だ。
「私が認めさせたことではありますけど……」
「そうだ。おまえが認めさせた」
「それでも認めなきゃ良かったのに。どうせ、私に馬鹿にされるだけで良いことなど無いじゃないですか」
 王子様が少し目を伏せた。
「……分かっている」
「もしかして、実は言いたかったのですか? 私にわざわざ、好きだって」
 ものすごく馬鹿にした口調で言うと、返事は無かった。王子様はずっと同じところを見つめたまま無言でいる。
「何なんですかね……」
 呆れを込めて呟くと、王子様の視線がこちらに向けられた。それを見返して続けた。
「……別に悔いもしない、謝罪もしない、償いなど当然する筋合いもない、憎まれているのは承知、好かれるつもりもなければ好かれるとも思っていない。……でも、好きだとは言いたい?」
 改めて言葉にしてみると、意味が分からな過ぎて笑えた。
「そうですか。まあ、良いのですけどね。あなたのことを知りたい訳ではないですから」
 王子様はじっと私を見つめ続けている。睨まれているのかもしれない。目の力が強いので、凝視されると大体睨まれているように感じる。
 ……以前もちらりと考えたことだが、本当に私が好きだと思い込んでいるのなら……別の誰かとどうにかなってやれば、ある程度のダメージは与えられるだろう。
 ただ、この体……。
 具体的に考え始めると難しい。
 恐らく、彼と同じ性別である男を相手にした方が、より不快な気持ちにはさせられると思う。そして、半陰陽の体に怖気を震わず、セックスできる程に信心が薄い者。入れられようが入れようが、ある程度はどちらでも構わなくはあるが……大人しく入れられる男も少ないだろう。レイプでは意味がない。
 男色者で抱かれ慣れている者ならば……いや、そもそも私の外見は思いきり女だ。向こうにしてみれば生理的に無理なのではなかろうか。
 やれやれ。手当たり次第引っ掛けられるようなものではないから、厄介だ。
 首を振っていると、王子様が体を起こした。こちらに這い寄り、私を押し倒す。
「……何なんですか」
 うんざりしながら聞き返すと、目前で眉が寄った。王子様はふいと顔を反らすと、私の間抜けに放り出されていた陰茎を握った。手で扱かれても私がうんざりしたままでいると、体を下げて亀頭に舌を這わせてきた。
 王子様はこちらを見ず、暫く舐めた後で口に含んだ。相変わらず大して上手くはない。前回考えた理由の他に、奉仕など基本的にする側の人間ではないからかもしれない、というものも思い浮かんだ。それでもしつこくしゃぶられ、刺激で勃つだけは勃った。
 唇の端切れてそうだな、と無責任な感想を抱いていると、王子様はずるっと口から抜いた。はぁ、と息をついて私に跨ってくる。
 握った私の陰茎を肛門に宛がい、ゆっくりと腰を下ろす。
「ん……っ……」
 鼻にかかった声を漏らしながら、肉棒をずるずると体内に収める。
「……っ、ふ」
 喘ぎながら全て入れると、私を見た。
 眉の寄せられた表情はどこか切なげにも見えたが、良く分からない。
 それから、腰を上下させ始めた。
「ん、んっ、あ、んっ」
 はぁはぁと息を乱し、合間に声を漏らす。
 フェラは下手だが、腰使いは上手い。散々女相手に培ったものだろう。
 まあ、立場を逆にしてその技術を披露する羽目に陥っている状況は面白い。
「はぁ……っ、あ、う」
 一人で腰を振って一人で喘いでいる。こんなのなら、相手が私である必要も無いだろう。棒の生えた丸太か何かで十分だ。
「っ……、く」
 王子様が体を反らせるように後ろに片手をついた。脚は大きく開かれているから、接合部分と勃起して涎のように先走りを垂らしているペニスが良く見えた。
「……見えるか。俺に……おまえの、ペニスが、入っているのが」
「……見えますよ。卑猥ですね」
 王子様は口を噤み、もう片方の手指で接合部分をなぞった。
「俺は……、おまえに、こんな体に、されて」
「そうですね。エロい体にされましたね」
 言いながら突き上げてやった。
「ぁあッ」
 目を見開き、びくんっ、と王子様が体を揺らした。
 続けて突き上げ続けると、呻きながら体勢を戻し、動きを合わせてきた。そのうちすぐに、声に艶めかしさが戻る。
「あッ、んっ、んんッ……あ、……いい……っ……」
 ゆるんだ口調で涎を垂らしながら、唐突に問い掛けてきた。
「おまえ……は、きもちいい……のか……?」
「……どうだっていいでしょう」
 突き放すと、王子様が一瞬口を噤んだ。
 何だかこのゆるゆるした交わりが面倒になり、言った。
「どいて下さい。それで、四つん這いになって」
 王子様は微かに目を眇めた後、私の言うことに従った。尻をこちらに向け、卑猥に口を緩めた肛門を差し出す。
 そこに陰茎を捻じ込んだ。
「ああ……!」
 ぐちゃぐちゃと王子様の直腸内を掻き回す。
「あッ、ひ……あっ、あっ、あっ」
 悲鳴に近い嬌声を上げ、尻を振る。
「あぁっ、ヘルガ、あっ、あぁあ……っ」
「きもちいいです?」
「あ、すごく、い……っ、あ、あ、いく、あ」
「そうですか、良かったですね」
 私は手を回し、王子様のびんびんに勃ったペニスの根元を強く握った。
「ひぁ」
 王子様の体が震えた。
「や、やめ……」
 声も震えている。しかし無視して握りしめたまま、尻を突き上げる。
「あうっ、や、やめ、あ、こん、なっ……」
 声に嗚咽が混じる。
 少しぞくぞくした。
「へぇ……つらいですか」
「あっ、つら、いっ……」
「あはは。じゃあ、もう許して下さいって言ってごらんなさい?」
「っ、よく、もっ、あ……っ、おれ、は」
「私が好きですか?」
「あ、ッ、ああっ、すき、だ……っ、も……ゆる、し」
 ゆるして、と掠れた泣き声が聞こえた。
 なので、手を離してやった。
 思う存分に精を吐き出してから、王子様はシーツに突っ伏した。
「ん……は……」
 荒く呼吸しながら、ぼうっとしている。
 投げ出されたその体は、良く出来た彫像のように美しい。
 私は引っこ抜けしまったので勃起したままの自分のペニスを握った。始末をつけようと手で扱き始めると、それに気づいた王子様が、のろのろとまた這う姿勢を取った。
「……また入れて欲しいのですか?」
「……俺は、もういい。……ただ、おまえが、満足していないなら……」
「別に、あなたの穴も手で扱くのも、大して変わらないですよ」
 私がそう言うと、王子様は黙った。
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