罪深き凡夫らの回旋

まる

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第一章

N1

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「罪深いですね、王子様」
 耳元で囁いてやると、ビクッと体が揺れるのが分かった。
 こちらに向けられた瞳も揺れる。
「あなたの神は、あなたのことを許さないのでは? こんなに汚れたあなたなど」
 下らない雑言だと思う。我ながら。
「この……悪魔……っ」
 罵ってくる声は弱々しい。その容姿には似合わない。通常時ならばここまで分かり易い動揺は見せないだろう。
「よして下さいよ。私が悪魔なら、今頃あなたはひき肉にでもなって地獄の釜で美味い料理にでもなっている所ですよ。それをこの程度で済ませているのですから、私など善良な隣人ではありませんか」
 はははっ、と嘲笑ってやる。
 笑いながら、腰を押し込む。
「う……っ、は……」
 王子様が顔を歪め、喘ぐ。男前が台無しだ。
「気持ちいいでしょう?」
 ぐちゃぐちゃと王子様の腹の中を掻き回す。
「ぁう、うっ……あっ」
 顔は歪んだままだったが、気持ち良さそうだった。陰茎はおっ勃って、先走りを垂れ流している。そもそも、脚もぱかっと広げられたままだし、突き飛ばそうとするでもない。
 つんと立った乳首を摘んで引っ張ると、「うう」と呻く。指を擦り合わせるように揉み潰すと、「あぁぁ」と泣き声じみた声を漏らした。
「あはは……悪魔に犯されて抵抗もせずによがっているのなら、どうしようもないですね」
「っ……」
 王子様の目に微かに力が込められた。それは憎悪に見えた。
 私は笑ってしまった。こちらこそ、この腹に詰め込んだ憎悪がはちきれそうだった。
「……別に、私は構わないのですがね。私が憎いなら殺せばいいでしょう、あなたの持つ権力を使って、私の存在を消してしまえばいい」
 王子様の目が眇められた。
 彼の考えなど分からない。何を考えているかなど知らない。知りたくもない。知る必要もない。
 気に入られなくていい。むしろ憎まれたい。いや、既に憎まれているだろう。だとしたら私は殺されてやる訳にはいかないか。憎い相手を殺すなんて、さぞやすっきりしてしまうことだろう。私がこの男を殺したならすっきりするように。
 ……違う。殺した程度ではすっきりしないからこその、今なのか。
 私は薄笑いを浮かべて、顔を近付けた。
 王子様は目を眇めたまま、こちらを見つめている。
 強くてかっこいい、素敵な王子様。クソな国教のそれなりの信者としての姿を見せながら、権力者の立場としてならばそれを一旦捨て置くこともできる。もし王位を継ぐことがあれば、きっといい王様になるだろう、この国の民にとっては。私はこの国の民ではない。
 私はこの男に、じゅくじゅくに膿んで二度と塞がらない傷を与えてやりたかった。その傷を持て余しながら、国民に手を振ればいいのだ。
 憎い。
 息をするのと変わらないくらい慣れ親しんでしまった感覚と共に、口接ける。
 王子様は避けない。それどころか、受け入れるように唇を開く。
 苛立ちながらも舌を絡ませると、は、と息を切らせるのが伝わってきた。
 唇を離して見下ろすと、些か潤んだ眼差しが向けられていた。眉は寄せられている。憎しみはきちんとその潤みの奥にあるのか、良く分からない。
「あは」
 笑ってしまう。
 止まっていた動きを再開させると、「んあっ」と小さく悲鳴を上げた。
「あっ……あ、んっ……は、ぁ」
 声が艶めかしい。この人の喉からこんな声が出るとは思いもよらなかった。
「はは……随分悩ましい声を聞かせてくれますね」
「っ……、う」
 王子様が唇を引き結んだ。眉を寄せ、責める目を私に向ける。
 目を合わせてじっと見返しながら、腰を引く。
「んん……」
 王子様も視線を合わせたまま、身体を震わせた。
 前立腺の奥辺りを力任せに突き上げると、「ひッ」と押し出されたような声を漏らした。ビクン、と大きく体を揺らす。
 そこで精液や先走りを漏らすではなかったが、もっとまずいものを漏らした。
「あはははは」
 笑ってしまった。
「……っ……」
 王子様が目を逸らし、顔を歪ませた。気持ち良すぎてのその表情なのか、屈辱でなのかは知らないが、恐らく後者だろう。
「何やってるんですか。いい歳して、教養も身分もお高い王子様がおしっこを漏らすなんて、みっともない。そもそも、私のような下賎のものに犯されて良すぎておしっこ漏らすって……あははははは」
 高笑いしつつ、ぐしゃぐしゃと王子様の直腸内を突き捏ねる。
「あっ、ぁう、あッ」
 同じ表情のまま、王子様が喘ぐ。もう男前が台無しもいい所だった。ベッドも様々な体液でとっくの昔に台無しだ。まあ、更に台無しにしてやろうと思っている。
「ぃ、やだ……っ、あ……」
「気持ち良いくせに」
 しつこく抽挿すると、だらしない水音に王子様の吐息が絡む。そのうち射精し、息を詰める気配が伝わって来た。でもやめてやらずに続ける。
「はぁ……ぁ……は……」
 王子様は眉を寄せ、少し苦しげに喘ぐ。
 ぬちゃぬちゃと卑猥な音が響く。
 幾度も嵌めて擦って中に出され、王子様のアナルはすっかりゆるゆるになっている。縁を脹れさせて口を開け、陰茎を繰り返し飲み込んでいる。
 また中に出してから、ずるりと肉棒を引き抜く。
「あ」
 王子様が切なげな声を出した。
 私は胡坐をかいた上に王子様の腰を引きずり上げ、開脚したままなので思いきり晒されている穴に片手の指を四本こじ入れた。
「あ……ッ、な……」
 王子様が身を竦めて声を掠れさせた。それでも抵抗しない。
 一頻り直腸中を掻き回してから、肛門を押し広げた。
「ゆるいから中丸見えですね」
 体液に濡れた生々しいピンク色の直腸壁が良く見えた。
「っ……だ、れのせいで……っ」
「私のせいですね。あはは。でもちんぽおっ勃っちゃってるのはあなたのせいですね」
「だ……まれ……っ」
「何だか、まだまだお元気そうですねえ」
 会陰を撫でて陰嚢を揉んでやると、低く呻いて先走りをだらだらと零す。
 私は抱え上げていた王子様の腰を下ろし、改めてその脚の間に体を入れ、身を乗り出した。左手で体重を支え、右の指で王子様の乳首を摘む。
「んっ」
 鼻にかかった吐息を漏らすのが聞こえた。
 私は「女兵士」としてこの城に来た。私は女としては異常に強い。当然だ。男でもあるのだから。
 そんな「異常に強い女兵士」にこの王子様が勝手に興味を抱いてくれた。有難いことだ。こちらから近付く手段を探しても、使い捨ての一兵卒ごときには見つけられなかったのだから。
 乳首を抓ってから離し、改めて両脚を抱え上げた。物欲しげに弛んだ肛門に、また亀頭を押し付ける。
 ずぶずぶと肉竿を入れた。
「……ぁあっ……」
 顔立ちは整い、美しい程ですらあるなりに、あくまで精悍な雰囲気には男前という形容が似合う、武にも優れた王子様。それの卑猥な喘ぎ声は聞いていると楽しい。
「あは」
 つい笑いながら、柔らかい内臓を突き上げる。
 もう幾度も褥は共にしている。
 最初は私を抱く気だったようだ。当然ではある。まあ……強制ではない。少なくない好意を向けられていた自覚もある。
 それをひっくり返して犯した。幾度も。決して乱暴でもないやり方で散々犯して、肉体的な快楽も背徳的な快楽もいやというほどその美しい体に刻み込んでやってから逃亡した。
 それをこの王子様は、わざわざ探し出して来た。
 そして私に憎しみと執着を向ける。難儀なことだ……いや、そう仕向けたのは私だろうか?
 褥の中での行為は誰も知らないから、単に私が慰みものにされているように受け取られるだろう。まさか、かの王子様が私の如き忌まわしいとされる存在にその体を弄ばれて悦んでいるとは、想像に難い筈だ。
「んっ……ふっ……んっ……」
 ゆるい肛門に陰茎が出入りしている。
 王子様は顔を赤らめ、目を潤ませ、筋肉質の長いおみ足をはしたなく開脚なさっている。
 潤んだ目が私を見上げる。それが揺れる大きな脂肪の塊に据えられる。
「はは」
 また笑ってしまった。
 私の体は極めて女寄りの作りをしている。戦うには些か邪魔にもなるような乳房をぶら下げてもいる。
 王子様が「女に犯される俺」という倒錯的な状況に興奮していることは分かっていた。実際私は女性器も持っているし生理も来る。それでいて男性器もえぐいほど立派だというのが面白いと、我ながら思う。
 そんなことを考えながら強く突き上げると、王子様が「あ」とか細く鳴き、出し過ぎて薄まった精液を漏らした。
 こちらもまた中に出してやると、小さく息をついて目を伏せる。ゆっくり肉棒を引くと、引き締まった腰をぶるぶる震わせた。ぬちゅ、と音を立てて肉穴から陰茎が抜けると、そこはだらしなく口を開けて内側を覗かせる。
 人差し指と中指をそこに入れ、中でぐっと押し開くと、穴は更に口を開けた。
「何度見てもいやらしいですねえ。男娼のケツ穴みたいですね」
 頻繁にでかいものを挿入し、執拗に擦る訳だ。最初慎ましやかだった窄まりはすっかり拡がっている。
「……よくもこの俺に、そこまでの、侮辱を……」
 王子様は私の手を乱暴に振り払い、ぎりぎりと歯軋りしそうな顔をした。
「ふうん? 事実でしょうが」
 私は薄笑い、様々な暗い興奮で再び勃起した自分のものを握った。
「どうでも宜しいんですけど、また入れてあげますから、お尻をこちらに向けて四つん這いになって、そのゆるゆるでいやらしい肛門を自分で拡げて見せて下さい」
「っ、な」
 王子様が目を見開き、それから忌々しさと憎々しさを最大限に滲ませて眇めた。
「ふざけたことを、言うな」
「じゃあもうやめます? 明日から暫く視察に行かれますよね。当分して差し上げられなくなるようですが……そこらの兵士を代用にでもされますかね」
 私の言葉に、王子様が驚いた顔をした。理由は知っている。彼は私を随行に入れたつもりの筈だ。
 彼は自らの希望と悟られないようややこしく手を回したらしいが、そうであるからこそ、簡単に外されたと聞く。そうしたのは大臣だったか何だったか。
 私というどこの馬の骨とも知れない兵士と王子の関わりを苦々しく思っている者は多いようだ。面白い。このまま揉めたらいい。
 まあ実際、私の正体が知れたなら、小さくない問題だろう。
 いつかはどこからかばれるかもしれない。王子様は自らのプライドに掛けて隠匿するかもしれないが……所詮私には王族の考えなど分からないことだ。雲行きが怪しくなったなら、その時点でさっさと切り捨てられるかもしれない。
 眺めていると、再度王子様の目が細められた。元々の顔立ちが決して優しげでは無い分、どこかしら凶悪にも見える。普段は育ちから来る気品で相殺されているが、私相手や戦場などではこんな感じで間違いではないのだろう。
「ふふ……」
 笑う私の表情は凶悪ではない筈だ。内に抱えたものがどうであれ。
 ベッドを降りる。止め立てる声は無かった。
 脱いだ衣服のポケットから紙包みを取り出して振り向いた瞬間、王子様と目が合っていた。
 そのまま、またベッドへと戻る。身を起こしかけていた王子様を倒して乗り上がる。
「……何だ」
 低い声。迫力もあるし美声だ。それが身も世も無く喘ぐのだから面白くて仕方ない。
 紙包みを破り、取り出したのは輪のピアスだった。私の髪のような金の軸に、私の目のような薄い茶色の石。高いものではない。
 同梱されていた太い針の尻をコルクで支え、摘んで引っ張った左乳首にその尖った先端を当てる。
「何をする気だ」
 何をされるかはもう悟っているだろうに、王子様が相変わらずの表情で低く問い掛けてくる。
「分かっているでしょう? 尊い王子様の大事な乳首に、卑しい私が選んできたセンスの欠片も無い安物のピアスを付けてやろうかと」
 嫌ならば拒めばいい。彼の力で本気で殴れば、私の動きは止められる。
 しかし何もして来ないから、ブツッ、と容赦なく針を突き刺す。
「ッ」
 王子様が体を揺らし、顔を顰めた。
 貫通させた傷口に、針に続けてピアスの軸を押し込む。
 音にならない、微かな息遣いが聞こえた。そりゃ痛いだろう。
 勝手に装着させ、滲む血を舐めとってから言う。
「傷が膿まないよう、暫くの間消毒はして下さいね。まあ……しないで膿んで、乳首取れても面白いですけど」
 笑う私を王子様が睨む。
 睨むくせに、大人しく乳首に穴を開けられている。
 もう一度顔を寄せて、金属を通された乳首を舐めた。軸の分が膨らんで、右乳首より幾分ぷっくりしている。
 乳首とピアスを舌先で転がしながら、もう一方の乳首を指で弄った。簡単に硬くなった突起を潰したり引っ張ったり引っ掻いたりと、好き勝手にしてから起き上がって体を離す。
 王子様は少し顔を上気させ、こちらを見上げていた。
 脚を開かせても抵抗しないし、肛門に潤滑油をぶっ掛けても抵抗しない。卑猥にゆるいその肛門に指を二本押し込んでも抵抗しない。
 ぐちゃぐちゃと直腸の中を掻き回すと、唇を引き結んで「ん」と鼻から音を漏らす。
 すぐに指を三本に増やし、良く知った感じるところを刺激してやると、「んっ、う」と呻く。
 暫くいじった後で指を抜くと、王子様が切なそうにまた呻いた。
「はぁ……ぁっ……」
 潤んだ目で私を見る。その表情はぐんと艶めかしい。
「入れて欲しいですか?」
 問い掛けると、王子様の眉が寄った。艶めかしさが幾筋か抜け落ちる。
「詰まらないですね」
 そう言うと、王子様が僅かに目を見開き、短く息を吸った。
 私如きにそんなことを言われるのは、心外極まりなかったのだろう。
 すぐに、憎しみを込めた視線を向けられた。
「何ですか?」
 王子様の口に指を突っ込む。舌を摘んで揉むように弄う。
「ん、ふ」
 少し苦しげに、王子様が眉を寄せた。
 上顎の裏や歯茎を撫でる。舌の裏も。延々と口中に触る。
「ん、んう……ん……」
「この指、あなたの直腸内にも触れてますが、どういう味がします? やはり苦いですかね?」
 睨まれた。
 やおら、がりっと噛まれた。
「あはは。噛むんですか。痛いですね」
 今更抵抗されてもねぇ、と呟きつつ、指を引いた。
 その指を、王子様の乳首にぶら下がっているピアスの輪に掛ける。
 それを軽く引っ張りながら、顔を近付けて囁く。
「乳首毟り取ってやろうか、クソ王子」
 あくまで優しく。
「私のような、あなたたちで言う所の忌まわしい者に犯されて興奮するような変態のくせに。……と申しますより、あなた、私以外とじゃ、もう満足できないでしょ」
 王子が私を凝視した。肯定もしないが否定もしない。こんなの、教会に知れたらえらい問題だろう。
「まあ、私のような生き物も、広い世界を探せばもう少しいるのでしょうけど……今となっては見つけるのは難しいことですね」
 言い終えて、見つめ合う。
 ましてや、こんな体にされてしまったあなたを満足させられる完全なる半陰陽なんて? と、考える。
 どちらも目を逸らさないから、睨み合いのようになった。負けたくない私は、手を下げて王子様の肛門に指を入れた。
「っ」
 王子様は息を飲み、それでも視線は外さなかった。
 ぬちゃぬちゃと淫靡な水音が響く。
「あ、っ……ぅ、く」
 眉が寄り、目が細められる。幾分乱暴に捏ねくり回すと、「ぁあ」と声を上げて目を閉じた。引きずられるように嬌声が続く。
「んっ、あ、あっ」
 柔らかい直腸の中を、オイルも腸液も私が注いだ精液も、全てが混ざって泡立ちそうなくらい掻き回した。
「あ、あう、あっ、は、あ」
 王子様が上擦った悲鳴を漏らす。
 縁が赤みを帯びて盛り上がった肛門に、私の指がぶっすりと入り込んでぐにぐにと動いている。
「んぁ、あっ、や、め、ぅあ」
「やめて欲しいのですか?」
 問い掛け、呼吸を塞ぐように唇を重ねた。
「ん、う」
 王子様が呻く。それでも、舌を絡めてくる。
 一頻りべちょべちょと口接けてから、顔を離した。間近から覗き込んで王子様の目を見ると、隠しきれない艶を湛えている。
 肛門に突っ込んだ指を少し弛め、悦がるところを刺激する動きに変えた。
「あっ……あっ」
 王子様が身を竦め、鳴き声を漏らす。恥ずかしいくらい先走りを垂れ流し、腰を震わせる。
「んぁ、あ……」
「入れてあげますから、お尻をこちらに向けて四つん這いになって、そのゆるゆるでいやらしい肛門を自分で拡げて見せて下さい」
 先刻と同じことを繰り返してやった。
 王子様は微かに唇を開き、何事か言いたげにしたが、そのうち目を逸らして従った。
 私の目前に形の良い引き締まった尻が差し出され、その尻たぶが持ち主自身の手で左右に強く開かれた。酷使されて弛んだ肛門はそれだけで中を覗かせている。
 はぁ、はぁ、と乱れた吐息が聞こえた。
「……いいですよ」
 私はほくそ笑み、興奮からびんびんに勃ったペニスを卑猥な肉穴に突っ込んだ。尻と股間がぶつかるくらい、勢い良く。
「ああぁっ……」
 押し出されたような泣き声が聞こえた。
 腰を掴んで、肉棒を激しく出し入れする。
「あっ、は……っ」
 尻から手を離した王子様はシーツを強く掴み、声を上げて尻を振った。
 その背に寄り添うように上から被さると、微かに王子様が動きを鈍くした。理由は簡単に想像がつく。私のやたらと豊満な乳房が背に乗っかったからだろう。
 ふん、と腹の中で笑いながら、前立腺の奥を強く擦り上げてやる。
「ひっ、ん、あッ……」
 その辺りをごりごり擦ると、ひんひん鳴く。面白い。
「あッ、あッ、あぁッ……、んッ、あ、あ」
 延々と鳴き声を上げる。動物のようだ。
 ゆるい肉穴もぐじゅぐじゅと卑猥な音を立てる。
「これだけゆるいと、セックスした後はさぞ快便でしょうね。漏らした事あったりします?」
「な、ない……っ」
 そこは必死に否定して来た。
「ふうん……」
 私がちんぽを突っ込んでいるのはあくまで排泄器官であって、性器ではない。膣のように纏わりつく感覚は無く、括約筋に締め上げられているだけだ。
 腸壁を先っぽで擦り上げると、尻を震わせて「あう」とエロく鳴く。
 引き締まった筋肉が波打つ背は程よく逞しく、分かり易い男性美を見せつけてくる。なのにその辺の淫乱な女のようにひんひん鳴く。最初よりどんどん良く鳴くようになってきている。面白い。
「あっ、あっ、ヘルガ……っ」
 上擦った声で、ついに私の名を呼んだ。
 私はその耳に唇を近付けて囁いた。
「ええ、あなたは今、ヘルガに肛門を犯されていますよ」
 笑いながらそう言い、腰を動かして王子様の直腸内をぐるぐる掻き回す。ビクビクと腰が震えるのが伝わってくる。
「ぁ、はっ、あ、あっあ」
 淫猥な喘ぎに、「ヘルガ」という呼び掛けが混じり始める。
「あぁっ、んっ、ヘルガ、ぁっ」
 私の名を連呼するようになったら、本格的に崩れてきた合図だった。
 多分もう、男前な美貌をぐしゃぐしゃに歪めて、涙と鼻水と涎で大変な有様だろう。
「ふふ……気持ちいいですか?」
「あ、い……っ、いい……ッ、ヘルガ、ぁぁ、ヘルガっ……」
 ぬちゅっ、と陰茎を引き抜くと、王子様が「な……」と掠れた声を漏らして肩越しに見上げてきた。その顔は私の想像通りになっていた。
 ひっくり返してやると、やおら王子様は自分から脚を拡げ、膝裏を掴んで持ち上げた。ぐちゃついた肛門が差し出される。
「入れて欲しいですか?」
「い、入れて、欲しい」
 顔を上気させ、上ずった声で言う。
「おねだりしてごらんなさい?」
 そう言うと、躊躇もなく言葉が返された。
「俺、の、いやらしいケツ穴に、奥まで入れて……腹の中がおかしくなるくらい……掻き回して」
「あはは」
 躾けた甲斐がある。すっかり崩れない限り言わないが、崩れたらこれくらい言う。
「良くできました。ふふ」
 そして後で死ぬほど自己嫌悪に陥る訳だ。
 告解などしていたりするのだろうか?
 していたら馬鹿だ。守秘義務があるからと言って、聖職者どもを信用しすぎだろう。まあ、多分していないとは思う。
 そんなことを考えながら、差し出されている肛門に陰茎を挿し込む。
「んっ、あっ……あぁ」
 語尾が裏返った嬌声。エロい。
 様々な女にこんな声を上げさせたことはあっても、自分がそうなるとは彼も思わなかったろう。
 ずぼずぼと抜き挿しを繰り返す。
「あっ、あっ、いく……っ、あ、う」
 垂れた涎を拭いもせず、弛緩した表情でそう口走る。
 ごりっと腸壁が擦れると、「ひ、っぁ」という泣き声と共に、だらだらと自分の腹の上に射精した。
 しかしこちらはまだなので、構わず腹の中を突き上げ続ける。
「うっ……うっ……」
 休む暇など与えてやらない。王子様は少し苦しげに眉を寄せて呻いた。それでも、前立腺の奥辺りを続けて擦ってやると、また簡単に声にも表情にも艶が戻る。
「ん……っ、あっ、あ、あっ……ん……」
 エロい。
 顔を寄せ、半ば開いたままの唇を舐めてやると、舐め返してきた。
 口を塞ぐように重ねると、苦しそうに息をつきながらも舌を絡めてくる。
「ッ、ふ……ッ」
 ン、と幾度も鼻に抜ける音を漏らす。
 唇を離すと、唾液の糸が引いた。そのまま見下ろすと、王子様の顔が視界一杯を占める。
 本来きつめの種類に分類される顔貌が、いいだけ弛緩していた。ぼんやりと潤んだ目は知性が薄れて見える。
「ふふ……」
 このまま、使い物にならないバカに成り下がらせてやりたい。
 だが残念ながらこの王子様は、必ず正気に戻る。
 ……苛つく。
 突き壊さんばかりに腹の中を掻き回してやると、「ああっ、ヘルガ」と鳴く。王子様は頑丈だから、そう簡単に壊れもしない。
 少し体を起こし、自分の陰茎が出入りしている部分を眺めた。ゆっくりと押し込んでは引き出す動きに変えると、王子様が体を震わせて嗚咽する。
 でかいものを頻繁に受け入れているせいで、穴は閉じている時でも縦に拡がったままで、すっかり卑猥な形状になっている。少し潤滑を足すだけで、前戯がほぼなくてもすぐに入る。
 折角そんな便利な穴になっても、他の男に抱かれる気配は無い。それはそうか。この王子様は、女でもある私にぐちゃぐちゃに犯されるのが好きなのだから。
「いやらしい肛門ですね。最初はギチギチだったのに、今ではこぉんなに簡単に、幾らでもずぷずぷ入る……」
 言いながら抽挿した。濡れた肉が音を立てる。
「ふ、ぁ」
 裏返りそうな泣き声。立派な腹筋が波打つ。
 この痴態を、彼を慕う騎士や兵士に見せてやりたいものだった。
「あっ、んっ……あ、あぁ、いいっ……は、ぁ……ん、あ……ヘルガ……あっ、ま、またいくっ……」
 あんあん鳴いていたかと思ったら、身を竦めて精液を吐く。射精にはさっきからもう勢いがない。
 ふうん、と思い、私もまた中に出した。
 ぶるっ、と王子様が身震いした。
「熱、……」
 うわごとのように呟く。
 ずりっと陰茎を引き出すと、「うう」と呻く。
 まだ脚が上げられたままなので、ぱっくり開いただらしない肉穴がよく見えた。
 私は笑い、ベッドに座って脚を開いた。王子様の直腸内に入りっぱなしだった代物を握る。
「王子様」
 呼びかけると、少しの後王子様が緩慢な仕草で起き上がった。まだ表情はぼんやりしている。
 その視線が、私の女性器に向けられ、男性器へと移る。女性器にこの王子様のものが入ったことは無い。
「後始末してください」
 そう呼びかけると、私の股間の間に膝をつき、身を屈めてきた。その舌が、様々な残滓がこびりついた肉棒に這わされる。
「あはは」
 私は笑った。
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