桜の木に寄り添う

月乃結海

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もう…

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しばらくして、病室に戻るとお母さんは戻っていた。

「なつ、ありがとね。」

「お母さん、私に隠さないで。見たの。薬飲んでるの。具合悪いんじゃない?」

「バレてたかー。ごめんね、お母さん長く生きれないと思う。なつが心配だよ。一人にしちゃうから。」

「私の事は心配しないでいいから、ゆっくり療養してよね。」

「うん、さすが私の娘!強いぞ!」

二人とも涙目になりながら、話し合った。


私は部屋に戻り、部屋の片づけや家事を始めた。

ピンポーン

「はーい。」

安西さんだった。

「ちょっといい?」

「どうぞ。」

いつもは優しい顔の安西さんが少し怖い顔をしていた。

私は紅茶をいれた。

「なつみちゃん。知り合いだったんだね。二人とも嘘つき。」

すぐにわかった。

「ごめんなさい。言おうと思ってたんです。なかなか言い出せなくて・・・。」

「こそこそ会うなんて。いい子ぶらないでよ。」

「ごめんなさい。」

「最近、ヒロ、会ってくれないと思ったらこういう事だったなんて。」

「え?」

「連絡も取れないし、前からなんか変だからなつみちゃんとこに来てみたの。」

「今日は突然だったので。」

「もう会わないで。お願いします。」

「・・・。」

安西さんはそそくさと出て行った。

やっぱり。そうだよね。

ごめんなさい。

もう会いません。会いたいとも思いません。

だから許して。

憧れや懐かしさから、いつしか恋愛感情へと変わっていたのかもしれない。

涙が止まらなくなってしまう。

いつもと違う安西さんは、とてもとっても。怖かった。

色々あって疲れた。ベッドへ横になろう。
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