桜の木に寄り添う

月乃結海

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私は、一枚の絵に詰まった沢山の思い出を感じていた。
 幼い時に別れてしまった私達が、こうやってみんなと共に再会できた事は、何か意味があるのだろう。

 大人になってしまった私達は、昔みたいに無邪気に、素直に自分の想いを伝える事が出来なくなっていた。
 だからこそ、言葉にしなければいけない。

 私は、これからどうなっていくんだろう。
 不安で押し潰されそうなのを必死にこらえている。
 無理矢理、明るく振る舞うようにしている。

 だって、明るくしていないとみんなを心配させてしまうのは、わかっているから。

 やらなければいけない事もまだまだ沢山あるから。
 絵を見ながら、色んな事を思い返していた。

 ガチャ

 駅に着いて、車のドアがあいた。

「 なつ?車酔いした? 」

 リエが心配そうな顔をしている。

「 え?大丈夫だよ! 」

 手伝ってもらいながら、私は車を降りた。

「 なんか顔色が悪い気がしたから 」

「 大丈夫だよ! 」

 リエとよっちゃんが、荷物を持ってくれて私は自分の荷物を膝の上に乗せた。

「 よし!行こう 」

 こうちゃんとあかりちゃんが、手を振って見送ってくれているなか、私達は進み出した。

「 電車、まだ来そうにないね 」

「 仕方ないよ、気長に待とう 」

 二人の会話を聞きながら、私はついて行く。

 今日は、晴れていて雲ひとつない空だった。

 都会で見る空とは違う、広くキレイに見える空だった。
 私がモヤモヤしてる気持ちをいつも晴らしてくれる。
 前向きな気持ちにもさせてくれるのだ。

 もうこの広い空は、しばらく見れない。

 そう思うと、少し寂しい気持ちにもなってしまった。
 だから、今はずっと見ていたい。

 電車を待ちながら、私はずっと上を見ていた。
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