桜の木に寄り添う

月乃結海

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楽しい食事

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窓から入ってくる冷たい風……
 私には、切なささえも感じた瞬間だった。

 こうちゃんが、私を呼びに部屋を覗いた。
「 なつ!ご飯できたよ!みんな揃ってるから、早くおいで! 」

「 はーい 」

 私がリビングの方へ移動すると、よっちゃんとリエも揃ってる。

 久しぶりに全員が揃った楽しい食事……
 こうやってみんなで集まる事ができたのは、あかりちゃんのおかげかもしれない。

 私は、逃げるようにしてこの家を出てしまったから。
 負い目を感じていたのもあったから……

「 わぁ!美味しそう! 」

 そんな久しぶりのみんなで食べるご飯は、すき焼きだった!

 昔、みんなで食べたのを思い出し涙が出そうになるのを必死に抑え、笑顔を振りまいていた。

「 あー!肉だ!いただき! 」

 よっちゃんは、いつもの明るいよっちゃんに戻っていた。
 今までの事を全部忘れたかのように、何も無かったように。

 いつもと変わらないこの雰囲気は、私達を和ませた。

「 なっちゃん?今日あかりと寝てくれる? 」

 あかりちゃんの健気な瞳に、すぐに了承してしまった。
 そんなあかりちゃんは、いつもよりもニコニコ楽しそうにしている。
 いつもこんなふうにニコニコしていて欲しい。
 心からそう願っているよ。
 あかりちゃんには、感謝とともにそういう想いも感じる。

 良かった……食事をしていると、ふとあの電車で出会ったお婆さんの言葉を思い出した……

「 その子が、いなくなった理由…… 」

 もう大丈夫なのかな。

 もうあかりちゃんの心の中の不安な気持ちは、もう解決したのかな。
 私が気にする事じゃないのかもしれない。
 それでも私は、あかりちゃんと一緒に寝る時に聞いてみようと思った。

 笑顔をずっと見ていたいと思うから。
 辛い気持ちがなくなりますように。
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