桜の木に寄り添う

月乃結海

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心の中

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 切ない。泣きたくて、泣きたくて仕方がなくて。でも不思議と涙は出ないんだ。
 ふとそう思う時もある。
 それでも、好きな気持ちは変わらない。

 人を好きになる事って、とても素敵な事だから。
 私は、このまま両思いになれなくてもそれでもいいと思っていた。

 私の気持ちを伝えようと思うけれど、好きになればなるほど、何も言えなくなってしまう。

 気持ちが伝わらないように、隠そうとする自分もいる。

 時々、言葉から想いが溢れそうになる。

 笑顔が頭から離れなくて、つらくなる。

 抑えてる気持ちと裏腹に、涙がポロポロ出てしまう。
 そんな時もあるけど、私は……今を楽しく生きたい。

 話をするだけでも、楽しくて、楽しくてたまらない。

 私の気持ちを伝えたら、どんな顔するかな。

 困ったような顔するのかな。

 笑って終わるのかな。

 私はふとこんな事を思うのであった。

 自分の心の声を拾いあげて、只々せつなくてたまらなかった。

 会って話ができないから、こういう気持ちになってしまうのだろうか。

 私の中で整理ができない気持ちが不安定になってしまう。
 楽しく毎日、笑顔でいられたらどんなに幸せだろう。
 どんどんマイナスな気分になってしまう事が、嫌で嫌で仕方ない。

 そんな私は自分の脚を、見つめている。

 どうして!こうなっちゃったの。
 手を強く握りしめて、自分の脚に問いかけていた。


 街で見かける普通のカップルみたいに、私も歩きたい。
 事故にあったときに、医者から言われた事をふと思い出した。

「リバビリをすれば歩けるようになるかもしれない。」

 でも、歩けるようになる事は奇跡に近いとも言われていた。

 奇跡と言われて諦めていた。

 当時の私は、ショックの方が大きくて、奇跡は絶対起きないと決めつけていたから。

 乗り越えるので必死すぎて、そんな勇気も起きなかった。

 もう一度、やってみようかな。

 好きな人の為にも。

 今の私は、当時の私とは明らかに違っている。

 奇跡が絶対起きないと当時の私は思っていた。
 でも……今なら。

 奇跡が起きるかもしれない!

 そんな風に思えるようになっていた。

 やっぱり私は、変わったんだ。

 ヒロキくんと再会できた事で変われたんだ。

 前を向いて進んでいたと思っていた私を気づかせてくれた。
 そう思えるようになったのは、ヒロキくんのおかげだよ。

 もう一度、勇気を振り絞りつらくても逃げずに、病院へ行こうとそう心に決めたのであった。
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