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第6話 あやかし稲荷神社
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「これ、行儀よくせんか」
「「銀翔さま~、早くごはん食べましょうよ」」
わたしは緋勇くんのおうちの稲荷神社に来ています。
大きな和室の部屋にたくさんの人と、……よ、妖怪やあやかしたちがいる!
立派な木の脚が低いテーブルがいくつも並んでいて、まるで旅行で泊まった大きな旅館の宴会場みたい。
「では、恵みと自然に感謝をして。みな、夕餉《ゆうげ》を食《しょく》そうか」
「「はーい!!」」
「「いただきまーす」」
大勢でわちゃわちゃと盛り上がってるよ。
さいしょ、ここに入った時は初めてのことばかりでどきどきしたけど、すぐに馴染んで今は楽しい。
初めて来た、緋勇くんのおうち。
初対面のあやかしたち。
小鬼さんたちに、狛犬さんたち、狛兎《こまうさぎ》やちっちゃな河童《かっぱ》にちっちゃな天狗さん……あとは大蛇妖怪のオロチさん。
銀翔さんに紹介された妖怪たちは、愛嬌たっぷりだ。
妖怪ってひとことで言っても、いろーんな妖怪が居る。かわいい妖怪やかっこいい妖怪がいるんだなあ。
それからそれから、緋勇くんと龍太くんとスズネちゃんに。
お兄ちゃんと雪菜ちゃん、ナナコちゃんに銀翔さん。
「葵はカレーライス、中辛食べられるんだなんてすごいねっ」
「あっ、うん。でもわさびは無理だよ」
「スズネは辛いもの駄目。龍太はわさびもいけるんだよ。……緋勇はスズネと一緒」
「お、おまえっ、葵に余計なこというな。恥ずかしいだろっ」
わたしの右隣りにいる緋勇くんが真っ赤な顔になって、左隣りのスズネちゃんにつっこむ。
テーブルにはカレーライスや夏野菜サラダや肉じゃがや、茹でたとうもろこしとかとにかくたくさんのおかずが並んでいる。
てっきりお兄ちゃんや銀翔さんに、ちょっと妖怪について話を聞いたり注意事項を聞かされるだけだとおもっていたわたし。
まさかこんな、晩御飯におよばれしちゃうとか……。
うふふ、嬉しい。
となりに座る緋勇くん、……横顔もかっこいいなあ。
わたしはちょっと見惚れちゃう。
でも、お兄ちゃんがときどき友達のおうちで勉強会をしてご飯を御馳走になって帰って来る時があるけど……、それって稲荷神社でこうやって過ごしてるのかな?
わたしはうらやましくなっちゃった。
お兄ちゃんは雪菜ちゃんとナナコちゃんと、わたしの知らない世界を知っている。
「葵ちゃん……、どうしたの?」
「えっ? ああ、うん。なんでもないよ」
目の前の龍太くんがじっと私の目を見て心配してくれてる。
そこで涼しい顔した緋勇くんがカレーライスをパクっと食べて、こっちを向いてにんまり笑った。
「葵はさ。おおかた『お兄ちゃん羨ましいわ~、わたし!』とか思ってしんみりしてんじゃねえの?」
「えっ? なっ、なんで分かるの?」
「……さあ? 知らねえよ。葵が単純なだけじゃん。お前、顔に気持ちが出すぎなんだよ」
「緋勇はねえ、葵の警護をずっとしてたんだよ。だから分かるのかな~。……もごもご」
スズネちゃんがにこにこしながらわたしを見て、それから肉じゃがを頬張る。
「えっ、警護? 緋勇くんがわたしの……?」
「うっ! スズネ、お前はほんと余計なことばっかり言うなよな! ごちそうさんっ」
思いっきり慌てた緋勇くんはカレーライスをかき込むように食べ終えてしまい、立ち上がってどこかへ行ってしまった。
「ふふふっ。緋勇はほんと恥ずかしがり屋さんだね」
「龍太くん、スズネちゃん。わたしの警護って……」
「気になる?」
「そ、そりゃあ……気になります」
龍太くんは意味深にうふふって笑った。
スズネちゃんがわたしの顔をのぞきこんでくる。
「葵ってさあっ」
「えっ? なに? スズネちゃん?」
――どきっ。
「もしかして、もしかして!」
せまってくるスズネちゃんにわたしはタジタジになる。
「緋勇のことが大好き?」
「えっ、えええ! えっとぉ」
「そっか。やっぱり。ボクのことも好きになってよ」
「スズネのことも好きってなってほしいなー」
龍太くんとスズネちゃんにずばっと言い当てられたばかりか、無邪気に責めてこられて、どうしたらいいのか分からなくなる。
「あっ、えっと。……うんっ」
スズネちゃんがわたしに抱きついてきて、いつの間にか小鬼ちゃんたちがわたしの肩や膝の上に乗って甘えてくる。
か、かわいい。
でも急にモテモテになってしまったわたしはどう返していいのかわかんない。
「こらこら。葵に迫るな。ぐいぐいいきすぎだぞ、みんな。それにスズネ、龍太は手加減してやれ。うちの葵はまだここの雰囲気になれねーんだから」
わたしに助け舟を出してくれたのはお兄ちゃんだった。
「ずるーい。スズネは葵ともっと仲良しになりたぁい。薫は葵と四六時中一緒なんだから、ちょっとは葵と遊ばしてよ」
「はいはいはい。飯を食い終わったら銀翔が葵と話したいんだそうだ。お前と一対一《サシ》でな」
「サシ?」
「二人っきりでだと」
あの神狐の銀翔さんとわたしが二人っきりでお話をする……?
ど、どうしよう!?
ちょっと緊張してきちゃったよ~。
「「銀翔さま~、早くごはん食べましょうよ」」
わたしは緋勇くんのおうちの稲荷神社に来ています。
大きな和室の部屋にたくさんの人と、……よ、妖怪やあやかしたちがいる!
立派な木の脚が低いテーブルがいくつも並んでいて、まるで旅行で泊まった大きな旅館の宴会場みたい。
「では、恵みと自然に感謝をして。みな、夕餉《ゆうげ》を食《しょく》そうか」
「「はーい!!」」
「「いただきまーす」」
大勢でわちゃわちゃと盛り上がってるよ。
さいしょ、ここに入った時は初めてのことばかりでどきどきしたけど、すぐに馴染んで今は楽しい。
初めて来た、緋勇くんのおうち。
初対面のあやかしたち。
小鬼さんたちに、狛犬さんたち、狛兎《こまうさぎ》やちっちゃな河童《かっぱ》にちっちゃな天狗さん……あとは大蛇妖怪のオロチさん。
銀翔さんに紹介された妖怪たちは、愛嬌たっぷりだ。
妖怪ってひとことで言っても、いろーんな妖怪が居る。かわいい妖怪やかっこいい妖怪がいるんだなあ。
それからそれから、緋勇くんと龍太くんとスズネちゃんに。
お兄ちゃんと雪菜ちゃん、ナナコちゃんに銀翔さん。
「葵はカレーライス、中辛食べられるんだなんてすごいねっ」
「あっ、うん。でもわさびは無理だよ」
「スズネは辛いもの駄目。龍太はわさびもいけるんだよ。……緋勇はスズネと一緒」
「お、おまえっ、葵に余計なこというな。恥ずかしいだろっ」
わたしの右隣りにいる緋勇くんが真っ赤な顔になって、左隣りのスズネちゃんにつっこむ。
テーブルにはカレーライスや夏野菜サラダや肉じゃがや、茹でたとうもろこしとかとにかくたくさんのおかずが並んでいる。
てっきりお兄ちゃんや銀翔さんに、ちょっと妖怪について話を聞いたり注意事項を聞かされるだけだとおもっていたわたし。
まさかこんな、晩御飯におよばれしちゃうとか……。
うふふ、嬉しい。
となりに座る緋勇くん、……横顔もかっこいいなあ。
わたしはちょっと見惚れちゃう。
でも、お兄ちゃんがときどき友達のおうちで勉強会をしてご飯を御馳走になって帰って来る時があるけど……、それって稲荷神社でこうやって過ごしてるのかな?
わたしはうらやましくなっちゃった。
お兄ちゃんは雪菜ちゃんとナナコちゃんと、わたしの知らない世界を知っている。
「葵ちゃん……、どうしたの?」
「えっ? ああ、うん。なんでもないよ」
目の前の龍太くんがじっと私の目を見て心配してくれてる。
そこで涼しい顔した緋勇くんがカレーライスをパクっと食べて、こっちを向いてにんまり笑った。
「葵はさ。おおかた『お兄ちゃん羨ましいわ~、わたし!』とか思ってしんみりしてんじゃねえの?」
「えっ? なっ、なんで分かるの?」
「……さあ? 知らねえよ。葵が単純なだけじゃん。お前、顔に気持ちが出すぎなんだよ」
「緋勇はねえ、葵の警護をずっとしてたんだよ。だから分かるのかな~。……もごもご」
スズネちゃんがにこにこしながらわたしを見て、それから肉じゃがを頬張る。
「えっ、警護? 緋勇くんがわたしの……?」
「うっ! スズネ、お前はほんと余計なことばっかり言うなよな! ごちそうさんっ」
思いっきり慌てた緋勇くんはカレーライスをかき込むように食べ終えてしまい、立ち上がってどこかへ行ってしまった。
「ふふふっ。緋勇はほんと恥ずかしがり屋さんだね」
「龍太くん、スズネちゃん。わたしの警護って……」
「気になる?」
「そ、そりゃあ……気になります」
龍太くんは意味深にうふふって笑った。
スズネちゃんがわたしの顔をのぞきこんでくる。
「葵ってさあっ」
「えっ? なに? スズネちゃん?」
――どきっ。
「もしかして、もしかして!」
せまってくるスズネちゃんにわたしはタジタジになる。
「緋勇のことが大好き?」
「えっ、えええ! えっとぉ」
「そっか。やっぱり。ボクのことも好きになってよ」
「スズネのことも好きってなってほしいなー」
龍太くんとスズネちゃんにずばっと言い当てられたばかりか、無邪気に責めてこられて、どうしたらいいのか分からなくなる。
「あっ、えっと。……うんっ」
スズネちゃんがわたしに抱きついてきて、いつの間にか小鬼ちゃんたちがわたしの肩や膝の上に乗って甘えてくる。
か、かわいい。
でも急にモテモテになってしまったわたしはどう返していいのかわかんない。
「こらこら。葵に迫るな。ぐいぐいいきすぎだぞ、みんな。それにスズネ、龍太は手加減してやれ。うちの葵はまだここの雰囲気になれねーんだから」
わたしに助け舟を出してくれたのはお兄ちゃんだった。
「ずるーい。スズネは葵ともっと仲良しになりたぁい。薫は葵と四六時中一緒なんだから、ちょっとは葵と遊ばしてよ」
「はいはいはい。飯を食い終わったら銀翔が葵と話したいんだそうだ。お前と一対一《サシ》でな」
「サシ?」
「二人っきりでだと」
あの神狐の銀翔さんとわたしが二人っきりでお話をする……?
ど、どうしよう!?
ちょっと緊張してきちゃったよ~。
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