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第29話 音の正体。意外な助っ人参上!
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「ひゃあっ!」
なんなの、なんなの。
後ろから火の着いた大きな木の車輪が転がりながら、私達に向かって襲って来る。
「あれは妖怪火車だ。たぶん、緋勇くんの抱えてる小河童の亡き骸を狙って追いかけて来てるんだ」
「ひどいっ、絶対に渡さない」
妖怪火車がガラガラってすごいスピードで、ずっと私達を追いかけて来るから、出入り口に向かってもうひたすら必死に逃げる。
火の車輪の妖怪火車が通った跡の床や柱には、どんどん火が着いていく。
「さっきから起きてる火事は、あの妖怪の仕業だったんだっ」
「銀星、私、あの妖怪を止める!」
「やめとけ、雪華。銀星も止まったらだめだ。走れっ。火の回りは思った以上に早い。今は凪さんを安全な所に運ぶのが先決だよ」
私は妖怪火車に立ち向かおうとしたけど、緋勇くんに諭《さと》されてハッとする。
向こう見ずな判断は誰かを犠牲にしてしまうかも知れない。
私が勝手に暴走すれば、私は間接的に誰かを巻き込んで傷つけてしまったかも知れなかった。
私は悔しく思いながらも、逸《はや》る気持ちを抑えて走る。
「グオォォォッ……!」
妖怪火車がさらに加速する。
私達もラストスパートをかける。
やっと明るい光が見えてきた。出入り口が近いみたい。
無我夢中で、一心不乱に走る。
あちこち朽ちて外からの光が漏れ入って来てる扉を、一気に開けて外に出る。
「やったっ」
「ハァハァ」
抜けたっ――!
「銀星っ」
「雪華っ」
私達が外に出たからって、妖怪火車の勢いが止まるわけじゃなかった。しつこく追いかけてくる。
私が銀星に叫ぶと、銀星はどうするか察してくれたみたい。
「出《いで》よ。妖狐特製、火ぎつね火焔乱風《かえんらんか》」
妖怪火車に銀星の狐炎で出来た火ぎつね達が噛みつく。すると妖怪火車の燃えてなかった顔の部分もボッと燃え上がって、バタンと横倒しに倒れた。
動きが止まったところで、私が冷気を放出する。
「吹雪け、凍れ、降り注げ氷天《ひょうてん》の剣《つるぎ》」
私は思いっっきり妖力を解放する。普段あまり力を出さないように気をつけてるけど、今日は今は違う。
剣のような形の氷を妖怪火車に怒涛の雨みたいに降らせる。
ここぞとばかりに、これまで溜まっていた妖力を放って、妖怪火車に当てまくる。
バキパキパキと音が空中に響いて、妖怪火車は凍っていく。
完全に動きを封じた時には、妖怪火車の車輪の火は消えていた。
「死んじゃったの?」
「そんなにこいつはヤワじゃないよ」
「あっ、茨木先輩」
「星熊童子、一振りしてくれ」
「よし来たっ。オイラに任せとけぇっ」
茨木先輩に言われた星熊童子が金棒をスイングすると、あんな巨大なのに妖怪火車が空の彼方に飛んでった。
「あーあ、飛んでちゃった」
「雪華さん、あの妖怪はこれでしばらく懲りて大人しくするさ」
「そうだと良いけど」
鬼婆の屋敷を燃やす火の手の威力が止まらない。
茅葺屋根と木で出来た屋敷は、思ったよりもかなり早く猛火に包まれた。
わん太の背から降りて、凪ちゃんが私のそばに来る。
「雪華どうしよう。火が竹林に移ったら大変よ。私も少しは雨を降らせることは出来るけど、私だけじゃそんなに威力がないと思う」
「……燃え広がれば山も町も焼けちゃうよね。私も力の限り雪を降らせるよ」
銀星も緋勇くんも難しい顔をする。
そんな顔をしてるのは、二人は雨や雪は降らすことは出来ないから。銀星は神狐だからいずれは雨も操れるようになると思うけど、今はまだ火炎しか作れないって言ってた。
茨木先輩も星熊童子も、じっとこちらを見ている。
「このまま火事を放っておいたら鬼の里も危なくなるな。雪華さん、俺も協力しよう。まずは酒呑童子様のひょうたんを返してもらっても良いかな?」
「はい、分かりました」
私は緋勇くんの腕の中にいる小河童の動かない手から、そっとひょうたんを外す。
茨木先輩がひょうたんを手に握り三回叩くと、ひょうたんがピカッと光って揺れ、中から無数の魂が飛んで出た。
段々と日が暮れて、夕焼けと薄い夜の帳がベールのように空を覆う。
魂達は、まるでほたるの光みたいに発光してふわふわ飛んでいる。
あっそうか。魂は自分自身を、自分の体を探してるみたいだね。
一つの魂が小河童の鼻の穴に吸い込まれるように入った。
「えっ!?」
「あっ!」
その場にいた皆が息を飲んだと思う。私はその光景に目が釘付けになっていた。
「ううっ」
苦しく唸るような声を一度出して、小河童が目を開けた。
生き返った!
死んだはずの小河童が生き返ったんだ。
「ははっ。お前、他の魂も連れて咄嗟に酒呑童子様のひょうたんに逃げ込んだのか」
「よく覚えてないだ」
「良かった!」
緋勇くんの腕から飛び降りて、小河童はすかさず逃げ出そうとする。
「待って! さっきは凪ちゃんの居場所を教えてくれてありがとう。ねえ、良かったら火事を消すのを手伝ってくれないかな?」
「オ、オイラが手伝うのか?」
「そうよ。あなたも私と同じ河童だもの。出来るわよ」
「……うん、分かっただ」
私の提案の後に凪ちゃんがひと押ししたら、小河童は逃げかけたのをやめ、こちらに戻って来た。
「雪女の雪華、待ちくたびれて来ちまったァ。話は聞いただ。オラ達も手伝うだ。オラは河童の親分! 河童界の荒くれ者の水虎《すいこ》がこんな火、すぐに消してやるだよ」
竹林から河童の水虎が現れた。
後ろにたくさんの子分の小河童をわらわらと連れて登場した。
なんなの、なんなの。
後ろから火の着いた大きな木の車輪が転がりながら、私達に向かって襲って来る。
「あれは妖怪火車だ。たぶん、緋勇くんの抱えてる小河童の亡き骸を狙って追いかけて来てるんだ」
「ひどいっ、絶対に渡さない」
妖怪火車がガラガラってすごいスピードで、ずっと私達を追いかけて来るから、出入り口に向かってもうひたすら必死に逃げる。
火の車輪の妖怪火車が通った跡の床や柱には、どんどん火が着いていく。
「さっきから起きてる火事は、あの妖怪の仕業だったんだっ」
「銀星、私、あの妖怪を止める!」
「やめとけ、雪華。銀星も止まったらだめだ。走れっ。火の回りは思った以上に早い。今は凪さんを安全な所に運ぶのが先決だよ」
私は妖怪火車に立ち向かおうとしたけど、緋勇くんに諭《さと》されてハッとする。
向こう見ずな判断は誰かを犠牲にしてしまうかも知れない。
私が勝手に暴走すれば、私は間接的に誰かを巻き込んで傷つけてしまったかも知れなかった。
私は悔しく思いながらも、逸《はや》る気持ちを抑えて走る。
「グオォォォッ……!」
妖怪火車がさらに加速する。
私達もラストスパートをかける。
やっと明るい光が見えてきた。出入り口が近いみたい。
無我夢中で、一心不乱に走る。
あちこち朽ちて外からの光が漏れ入って来てる扉を、一気に開けて外に出る。
「やったっ」
「ハァハァ」
抜けたっ――!
「銀星っ」
「雪華っ」
私達が外に出たからって、妖怪火車の勢いが止まるわけじゃなかった。しつこく追いかけてくる。
私が銀星に叫ぶと、銀星はどうするか察してくれたみたい。
「出《いで》よ。妖狐特製、火ぎつね火焔乱風《かえんらんか》」
妖怪火車に銀星の狐炎で出来た火ぎつね達が噛みつく。すると妖怪火車の燃えてなかった顔の部分もボッと燃え上がって、バタンと横倒しに倒れた。
動きが止まったところで、私が冷気を放出する。
「吹雪け、凍れ、降り注げ氷天《ひょうてん》の剣《つるぎ》」
私は思いっっきり妖力を解放する。普段あまり力を出さないように気をつけてるけど、今日は今は違う。
剣のような形の氷を妖怪火車に怒涛の雨みたいに降らせる。
ここぞとばかりに、これまで溜まっていた妖力を放って、妖怪火車に当てまくる。
バキパキパキと音が空中に響いて、妖怪火車は凍っていく。
完全に動きを封じた時には、妖怪火車の車輪の火は消えていた。
「死んじゃったの?」
「そんなにこいつはヤワじゃないよ」
「あっ、茨木先輩」
「星熊童子、一振りしてくれ」
「よし来たっ。オイラに任せとけぇっ」
茨木先輩に言われた星熊童子が金棒をスイングすると、あんな巨大なのに妖怪火車が空の彼方に飛んでった。
「あーあ、飛んでちゃった」
「雪華さん、あの妖怪はこれでしばらく懲りて大人しくするさ」
「そうだと良いけど」
鬼婆の屋敷を燃やす火の手の威力が止まらない。
茅葺屋根と木で出来た屋敷は、思ったよりもかなり早く猛火に包まれた。
わん太の背から降りて、凪ちゃんが私のそばに来る。
「雪華どうしよう。火が竹林に移ったら大変よ。私も少しは雨を降らせることは出来るけど、私だけじゃそんなに威力がないと思う」
「……燃え広がれば山も町も焼けちゃうよね。私も力の限り雪を降らせるよ」
銀星も緋勇くんも難しい顔をする。
そんな顔をしてるのは、二人は雨や雪は降らすことは出来ないから。銀星は神狐だからいずれは雨も操れるようになると思うけど、今はまだ火炎しか作れないって言ってた。
茨木先輩も星熊童子も、じっとこちらを見ている。
「このまま火事を放っておいたら鬼の里も危なくなるな。雪華さん、俺も協力しよう。まずは酒呑童子様のひょうたんを返してもらっても良いかな?」
「はい、分かりました」
私は緋勇くんの腕の中にいる小河童の動かない手から、そっとひょうたんを外す。
茨木先輩がひょうたんを手に握り三回叩くと、ひょうたんがピカッと光って揺れ、中から無数の魂が飛んで出た。
段々と日が暮れて、夕焼けと薄い夜の帳がベールのように空を覆う。
魂達は、まるでほたるの光みたいに発光してふわふわ飛んでいる。
あっそうか。魂は自分自身を、自分の体を探してるみたいだね。
一つの魂が小河童の鼻の穴に吸い込まれるように入った。
「えっ!?」
「あっ!」
その場にいた皆が息を飲んだと思う。私はその光景に目が釘付けになっていた。
「ううっ」
苦しく唸るような声を一度出して、小河童が目を開けた。
生き返った!
死んだはずの小河童が生き返ったんだ。
「ははっ。お前、他の魂も連れて咄嗟に酒呑童子様のひょうたんに逃げ込んだのか」
「よく覚えてないだ」
「良かった!」
緋勇くんの腕から飛び降りて、小河童はすかさず逃げ出そうとする。
「待って! さっきは凪ちゃんの居場所を教えてくれてありがとう。ねえ、良かったら火事を消すのを手伝ってくれないかな?」
「オ、オイラが手伝うのか?」
「そうよ。あなたも私と同じ河童だもの。出来るわよ」
「……うん、分かっただ」
私の提案の後に凪ちゃんがひと押ししたら、小河童は逃げかけたのをやめ、こちらに戻って来た。
「雪女の雪華、待ちくたびれて来ちまったァ。話は聞いただ。オラ達も手伝うだ。オラは河童の親分! 河童界の荒くれ者の水虎《すいこ》がこんな火、すぐに消してやるだよ」
竹林から河童の水虎が現れた。
後ろにたくさんの子分の小河童をわらわらと連れて登場した。
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