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第15話 校庭キャンプのお誘い

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 一度、生徒会室から出て行った先輩は数分後には戻って来て、私とポスター貼りをしている。

「で、啖呵《たんか》切った感じで出て行っておいて、なんで戻って来たんですか?」

 銀星はツンツンとげとげした態度。
 茨木先輩だけには、相変わらずの仏頂面なんだものね~。
 銀星って普段周りの人には優しくて親切で、人当たりがいい。
 私は、ニコニコしてる銀星が好きなんだ。
 あからさまに愛想が悪いのは茨城先輩を相手にしてる時ぐらいだよ~。なんでそんなに敵対心丸出しの攻撃的な態度なんだろう?

「いいじゃない。生徒会長だもの、責任感があるんだよ」
「あんな、キ、キスを雪華に無理矢理迫るような野郎が責任感があるとか、僕はそうは思えないね」

 私、さっきのこと、怒ってないよ。茨木先輩とのキス未遂事件……、そんなに気にしてないんだ。
 からかっただけで、ほんとにキスする気なんかなかったんじゃないかな~。違う?
 茨木先輩のこと、キライじゃない。
 もちろん私、急に迫られてすっごくびっくりしたよ。
 心臓がドッキドッキして、めちゃくちゃ焦ったもん。
 もっと怒っていいのかもしれないのだけれど、なぜか怒れない。
 同じ人間の世界で隠れて頑張る妖怪仲間だからというのもあるのかな。
 あとはね、茨木先輩がなんか寂しそうに見えちゃったから。
 ふと、黙った時とかの表情かな。
 私には銀星がいるけど、もしかしたら茨木先輩って気を許せる友達いないんじゃないかな?
 クラスの子に教えてもらったけど、茨木先輩はファンクラブもあるし、いつも大勢のファンに囲まれてるらしいの。
 でも、心から仲の良い学校の友達はいるのかな?

「俺も一応生徒会長なんでね。手伝いの雪華さんに押しつけるわけにはいかない」

 ま、正確には銀星も手伝ってくれてるから、3人でね。
 特大のポスターは生徒会主催の夏休み校庭キャンプの告知だった。
 昇降口を入ってすぐの掲示板に目一杯に脚立に昇って貼る。
 私は脚立を押さえて、脚立には茨木先輩が昇り、銀星は両面テープとポスターを持って立っている。
 校庭キャンプ。なんて楽しそうな響きだろう。
 学校の横には民宿があるので、お風呂はそこで露天風呂が借りられるみたいだよ。
 キャンプでご飯作り、花火や川遊びにホタル観賞会に校内肝試し……わくわくなんだか楽しそう!

「茨木先輩、校庭キャンプなんてすっごく面白そうですね」
「うん、毎年楽しいよ。雪華さん。良かったら君も参加してよ」
「銀星も参加しようよ」
「そりゃあ、雪華が参加するならもちろん僕も参加するよ! だけどこのキャンプ、二泊三日模試祭り付きって書いてあるぞ」
「模試!? テスト三昧ってこと?」
 そこで茨木先輩はニンマリと笑った。
「楽しく学力アップ! 申し分ないイベントだろ? なあに、テストは朝の1時間だけだよ。もちろん自由時間に勉強したって構わない。各教科の教師もいるから、質問したり教えてもらえるさ」
 私、理科とか国語とか歴史は好きなんだけど、数学がかなり苦手。
 小学生の頃は算数は好きだったのに、中学生になって数学に変わったら急によく分からなくなっちゃったの。
 銀星は数学が得意なんだよ。宿題で分からない時は教えてくれる。

 校庭キャンプかぁ。
 夏休みまでテストをやるのは気がのらない、でもかなり魅力的だよね。
 とっても楽しそうだもん。
 妖怪探偵のお仕事、小河童ひょうたん事件捜索もあるし忙しいけれど、なんとか参加したいなぁ。

 私は、夏だからこそ楽しめるイベント満載な校庭キャンプに興味津々。
 どうにか都合をつけちゃおうって、あらためて自分に気合いを入れたよ。
 よしっ、まずは小河童を捜しだそう。
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