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第9話 意外な来訪者
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「キャアッ! 止《や》めて、止めてっ」
「わぁっ」
いったいぜんたい、どこにこんなにいたんだろう!
小河童たちがわーっと集団で駆け寄り、集まってくる。
私と銀星の倒れた背中にどんどん乗って重なって、私たち二人は地面にべちゃっと押しつぶされる。
「これはこれは日本一の富士山みてぇだがや。カァッパッパッパ~。愉快愉快。絶景かな、絶景かな」
ううっ、重い。
だけど、私は雪女だもん。
こんな攻撃でやられるもんか。
「ゆ、雪華! 大丈夫っ? 今、僕が助けてやるから」
「うぅっ。わ、私なら大丈夫。銀星は?」
「雪華が大丈夫なら良かった。僕も大丈夫に決まってるじゃないか、こんなことで負けてられない。……僕の大切な雪華にこんなことするなんて。僕はもう容赦はしないよ」
あ、あれ。怒っちゃった……かな。
いつも冷静沈着な銀星を怒らすと、まずいよ。でも、先に仕掛けてきたのはそっちなんだから!
小河童たちにはちょっと可哀想だけど。
「風よ舞え、雪よ舞え」
「狐の烈火、火ぎつねを生め」
私の声と同時に銀星の怒りを含んだ声が聴こえる。
私は体から力を解放していく。
久しぶりに思いっきり冷気を放出すると、スカッと気持ちいい!
普段はいかに抑えるかって考えてて、妖力を内に溜め込んだまま。
学校のみんなにバレないように、雪女の私の力を隠して、気を使ってる。
でも、今は良いんだ。
私は雪女だもの。
これが、私の本来の姿なんだよ。
――私の体からブワーッと風雪が飛び出していく。
私たちに乗ってる小河童たちは一匹一匹は体が軽いからか、強風にいとも簡単に空中に飛ばされる。
さらに、ボウッと銀星の体から蒼白い炎が立ち、妖力で作った数匹の火ぎつねが小河童たちを口で次々とくわえて投げ飛ばし、私と銀星はあっという間に自由になった。
小河童の山が出来上がる。
重しがいなくなり、体が軽くなった私と銀星はすっくと立ち上がった。
「どんなもんよ。私たち妖怪探偵をなめてもらったら困るわ」
「また雪華に手出ししたら、ただじゃおかない。今度はもっと大暴れするけど?」
銀星は河童のスイコを睨みつけたまま、火ぎつねを空中に遊ばせてる。こちらはいつでも攻撃できますよと、威嚇するかのように。
銀星は怒りながら、不敵に笑った。
普段の銀星からは想像がつかないぐらい、危険な感じ。
河童のスイコは驚いた様子で、私たちを凝視している。
空中に投げ飛ばされた小河童たちは、目を回して倒れていて、ぐったりしてる。
しばらくは起き上がってこないだろう。
「これ以上そんなんされたら、オラのきゅうり畑が……、オラたちの……。分かった、観念する。オメエたちの話を聞くだ」
「良かった。私たちはきゅうり畑を荒らしに来たんでも、河童さんたちを困らせに来たのでもないの」
そう、ただ手かがりが欲しかっただけなんだもん。
私と銀星はゆっくり河童のスイコに近寄る。
「手荒な真似をしてごめんなさい」
「オラも悪かっただ。きゅうり畑が大事なばかりによく周りが見えなくなるべ」
なんだ。
良かった。
これでひょうたんを盗んだ小河童の話を聞けそう。
その時――。
「やるねぇ、雪女さん。噂に違《たが》わぬ大した妖力を持っている」
「えっ?」
誰の声?
「誰だっ!」
私と銀星の前に突然霧が立ち込め、中から現れたのは、狛犬のわん太を抱えた紅い着物の人。
人……?
違う!
顔に般若のお面をつけて、頭に二本の角が生えている。
「鬼……! な、なんでわん太といるの?」
「あんた、誰だ?」
銀星が私の前に出て匿うように、両手を広げる。
河童のスイコはといえば、鬼の出現にぽかーんと口を開けて見てるだけ。
この鬼、いったい誰?
そうかやっぱりここは鬼の棲家なの、ね。
それにしても、どうしてわん太と一緒に岩蔵《ここ》にいるのかな。
じっと、私は動けずにいた。
初めて会った鬼。
なぜか花のような甘い香りがする。
私のこめかみから、つつっと汗が垂れた。
「わぁっ」
いったいぜんたい、どこにこんなにいたんだろう!
小河童たちがわーっと集団で駆け寄り、集まってくる。
私と銀星の倒れた背中にどんどん乗って重なって、私たち二人は地面にべちゃっと押しつぶされる。
「これはこれは日本一の富士山みてぇだがや。カァッパッパッパ~。愉快愉快。絶景かな、絶景かな」
ううっ、重い。
だけど、私は雪女だもん。
こんな攻撃でやられるもんか。
「ゆ、雪華! 大丈夫っ? 今、僕が助けてやるから」
「うぅっ。わ、私なら大丈夫。銀星は?」
「雪華が大丈夫なら良かった。僕も大丈夫に決まってるじゃないか、こんなことで負けてられない。……僕の大切な雪華にこんなことするなんて。僕はもう容赦はしないよ」
あ、あれ。怒っちゃった……かな。
いつも冷静沈着な銀星を怒らすと、まずいよ。でも、先に仕掛けてきたのはそっちなんだから!
小河童たちにはちょっと可哀想だけど。
「風よ舞え、雪よ舞え」
「狐の烈火、火ぎつねを生め」
私の声と同時に銀星の怒りを含んだ声が聴こえる。
私は体から力を解放していく。
久しぶりに思いっきり冷気を放出すると、スカッと気持ちいい!
普段はいかに抑えるかって考えてて、妖力を内に溜め込んだまま。
学校のみんなにバレないように、雪女の私の力を隠して、気を使ってる。
でも、今は良いんだ。
私は雪女だもの。
これが、私の本来の姿なんだよ。
――私の体からブワーッと風雪が飛び出していく。
私たちに乗ってる小河童たちは一匹一匹は体が軽いからか、強風にいとも簡単に空中に飛ばされる。
さらに、ボウッと銀星の体から蒼白い炎が立ち、妖力で作った数匹の火ぎつねが小河童たちを口で次々とくわえて投げ飛ばし、私と銀星はあっという間に自由になった。
小河童の山が出来上がる。
重しがいなくなり、体が軽くなった私と銀星はすっくと立ち上がった。
「どんなもんよ。私たち妖怪探偵をなめてもらったら困るわ」
「また雪華に手出ししたら、ただじゃおかない。今度はもっと大暴れするけど?」
銀星は河童のスイコを睨みつけたまま、火ぎつねを空中に遊ばせてる。こちらはいつでも攻撃できますよと、威嚇するかのように。
銀星は怒りながら、不敵に笑った。
普段の銀星からは想像がつかないぐらい、危険な感じ。
河童のスイコは驚いた様子で、私たちを凝視している。
空中に投げ飛ばされた小河童たちは、目を回して倒れていて、ぐったりしてる。
しばらくは起き上がってこないだろう。
「これ以上そんなんされたら、オラのきゅうり畑が……、オラたちの……。分かった、観念する。オメエたちの話を聞くだ」
「良かった。私たちはきゅうり畑を荒らしに来たんでも、河童さんたちを困らせに来たのでもないの」
そう、ただ手かがりが欲しかっただけなんだもん。
私と銀星はゆっくり河童のスイコに近寄る。
「手荒な真似をしてごめんなさい」
「オラも悪かっただ。きゅうり畑が大事なばかりによく周りが見えなくなるべ」
なんだ。
良かった。
これでひょうたんを盗んだ小河童の話を聞けそう。
その時――。
「やるねぇ、雪女さん。噂に違《たが》わぬ大した妖力を持っている」
「えっ?」
誰の声?
「誰だっ!」
私と銀星の前に突然霧が立ち込め、中から現れたのは、狛犬のわん太を抱えた紅い着物の人。
人……?
違う!
顔に般若のお面をつけて、頭に二本の角が生えている。
「鬼……! な、なんでわん太といるの?」
「あんた、誰だ?」
銀星が私の前に出て匿うように、両手を広げる。
河童のスイコはといえば、鬼の出現にぽかーんと口を開けて見てるだけ。
この鬼、いったい誰?
そうかやっぱりここは鬼の棲家なの、ね。
それにしても、どうしてわん太と一緒に岩蔵《ここ》にいるのかな。
じっと、私は動けずにいた。
初めて会った鬼。
なぜか花のような甘い香りがする。
私のこめかみから、つつっと汗が垂れた。
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