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第四話 濃に土産だ
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「三郎さま」
濃が騒ぎを感じて広場に来ると、三郎信長がやって来ていた。
彼の背後には、濃も見知りの忍者が五人いて片膝をつき控えている。
「濃。土産だ」
三郎信長は、担《かつ》いでいた籠《かご》から自分で仕留めた雉子《キジ》やイノシシや鮎や岩魚《いわな》などを出して見せてから、濃の白く美しい両手に籠ごと渡した。
「私《わたくし》に?」
「そうだ。濃に土産をやるためだけに、俺は今日もここに来たんだぞ。お前の他に俺は会いたい奴などいねえからなぁ。はっはっはっ」
三郎信長は豪快に笑った。
濃は顔を真っ赤にして、恥ずかしくてたまらず袖で顔を隠しながら、クスリと笑った。
濃が騒ぎを感じて広場に来ると、三郎信長がやって来ていた。
彼の背後には、濃も見知りの忍者が五人いて片膝をつき控えている。
「濃。土産だ」
三郎信長は、担《かつ》いでいた籠《かご》から自分で仕留めた雉子《キジ》やイノシシや鮎や岩魚《いわな》などを出して見せてから、濃の白く美しい両手に籠ごと渡した。
「私《わたくし》に?」
「そうだ。濃に土産をやるためだけに、俺は今日もここに来たんだぞ。お前の他に俺は会いたい奴などいねえからなぁ。はっはっはっ」
三郎信長は豪快に笑った。
濃は顔を真っ赤にして、恥ずかしくてたまらず袖で顔を隠しながら、クスリと笑った。
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