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第二話 少年信長

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 信長は疾走《しっそう》する。
 今日もうつけと呼ばれながら。
 
 愛馬を力強く乗りこなし、手綱《たづな》を巧みに操り、家臣も従者も引き連れずにやって来る。一人で悠々と村々を回る。馬で、時には自分の足で走りながら。

 身分が違うことを忘れて、まるで自分が殿様の息子ではないかのように農民たちと会話を楽しむ。

 いや――
 信長は一人ではなかった。

 普通の者たちには、信長一人が村に遊びに来ているように見えている。

 だが――
 忍ぶ者。
 森に木に潜む。
 茂みに潜む。
 民家の屋根や暗がりに潜む。
 通りのふとした影に潜んでいる。
 忍びの者。
 信長にひっそりと付き添いし、影の者たちが彼を世間から忍びながら……身を挺して守っているのだ。

 人々から、隠れながら姿を変え、忍びの姿を明かさぬよう、見せないように守っている。
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