もう一度君と…

１－４ 遠崎佳奈

本当は

『謝りたいだけです。悠太は…遠崎先輩に謝りたいだけです！！！』

　上杉くんの声が私の頭の中でエコーする。
　足が歩くのをやめ、涙が自然と溢れてきた。

「…」
　朝陽は何も言わず、ただ私の背中をさすった。
　
　私、ほんとに最低なことをした…。球技大会の時に井原のことを傷つけてしまった…。それに朝陽や井原の同じクラスの上杉くんまでも巻き込んで…。最低な人間だ。中学の井原と同じことをしてしまった…。

「朝陽…、ごめん……。」
「全然。佳奈にもいろいろあったんだろ。深入りしようとしてた部分は俺も悪かったし…。」
　この状況を変えないといけない。私はすべて朝陽に話す決意をした。
「ねぇ、朝陽…ちょっとさ話聞いてくれる？」
「いくらでも聞くよ。」
　彼は近くのベンチに連れていってくれた。
　もうすっかり日は暮れ、辺りはしーんとしていた。


　中学の時、井原と付き合っていた。同じ委員会で仲良くなってそれで…でも、楽しい日々はすぐに終わってしまった。彼に振られた。理由はわからない。聞こうとしたが無視されて…辛かった。でもそれ以上にその後が辛かった。まるでそれまで過ごした時間がなかったかのように、まるで人が変わってしまったかのように、彼の私への態度は冷たかった。
　再会した時、信じられなかった。またしんどい思いをすることになると思った。
　それに複雑だった。苛立ちや憎しみはもちろんあったが、それと同時に話したい、関わりたいっていう思いもほんの少しあった。やっぱり初めて付き合った人だったし。あの頃みたいに仲良くしたいななんて…。これを未練というのだろうか。


　途切れ途切れだったが、私は今の心情を伝えた。
「…まじか、２人付き合ってたんだ。」
「まあね……。」
「１回２人で話すべきだと思う。まかせて、俺がなんとかするから。」
「ありがとう。」

　彼は微笑む。
　月明かりが私たちを明るく照らした。