もう一度君と…

海津渚

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1-3 上杉拓斗

思わず

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 遠崎佳奈…あなたは悠太のことどう思っているのか。

 少なくとも嫌いではないと思う。
 嫌いだったらかばう必要がないし。むしろ振ったことを噂で広めるはずだし。

「朝陽先輩、今日一緒に帰りませんか。」
「おっけ!」
 話し合いの後、俺は先輩に話しかけた。遠崎先輩のことをもっと知らないといけない。

「何か聞きました?」
「何も。井原の名前出したら無視されるんだよね…」
「そうですか…」
 難しいか…嫌いな人のこと話されるのは自分だったら嫌だ。
「まあ、でもなんとか聞き出してみるよ。井原のこと。」
 朝陽先輩がそう言った瞬間、後ろでため息が聞こえた。

「どんだけ井原のこと知りたいんだよ…。」
 そこには遠崎先輩がいた。
 まずいと思ったが遅かった。

 彼女の目から炎が出ているようだった。
「朝陽いい加減にしなよ。後輩まで巻き込んで。何してるかわかってる?勝手に人の事情に踏み込んでさ…」
「…っ」
 朝陽先輩はしまったという顔をしている。
「ほんと何がしたいわけ?朝陽もあいつみたいに自分の学校生活をめちゃくちゃにしたいの?」
 めちゃくちゃにしたい??何言っているんだこの人。悠太はそんなこと思っていない。むしろ彼は…

「謝りたいだけです。悠太は…遠崎先輩に謝りたいだけです!!!」
「え…」
「何があったか知らないんですけど、彼は中学でのことを謝りたいって言っていました。学校生活をめちゃくちゃになんてしたいと思ってません!!!」

 腹が立った。悠太のこと何も知っていないくせに彼のことを恨み、後輩の前では良い人のように振る舞う遠崎先輩に。そしてそんな彼女のことを想っている悠太に。

「俺帰ります。朝陽先輩もさよなら。」
「上杉くん!!」

 タッタッタッ
 力いっぱい坂道を走った。
 
 悠太ごめんな…

 
 




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