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1-3 上杉拓斗
隠されていた秘密
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「拓斗だよ。悠太起きてる?」
「ぅぅん…。」
小さな唸り声がした後、悠太は起き上がった。
「ぁ、悪いな。ここまで遠かっただろ。」
明らかにいつもの元気がない。
「全然遠くなかったよ。落ち着く町だな。初めて来たけどすごく気に入った。」
「そういってくれてうれしいな。」
すぐに今日の球技大会の話を出すことはできなくて、俺は彼の部屋を見渡した。
ベッドの向かいにテレビがあり、そしてその横には机とコンピューターがあった。ベットの横にある棚にはいくつかの参考書と楽譜が大量に入っていた。
「すごい数の楽譜だな。」
「うん。もともとピアノ教室行ってて、ずっと課題で楽譜渡されていたんだ。あれほとんど課題。一部は個人で購入したものだけど。」
ずっとおいてるってことは好きなんだなピアノ。いつか聞いてみたい。そして自分が習っているヴァイオリンに合わせたいな。
楽譜の中で一番奥にあったものが目に留まった。3年前くらいに流行った恋愛の曲『君に弾きたい』。俺は手にとった。
「この曲懐かしいな。良い曲だよな~」
「まって、それは!!」
その時。その楽譜の間から1枚の写真がひらりと出てきた。まるで、ずっと秘められていた宝石のように。
「だめ!!」
だが、遅かった。俺は見てしまった。その写真……悠太と遠崎先輩が笑顔で横に並び頭をくっつけていた。そして手を繋いでいた。
もしかして、もしかして…2人って…。
「付き合ってたの!!!???」
「……うん。俺が中1の頃だけどな…。」
「そっか…そっか…」
ずっと違和感があった。なんでそこまで先輩のこと気にしているのだろうと。やっと理解した。
「もともと仲良かったってこの前言ってたじゃん。仲悪くなった原因って向こうから振られたの?」
振られて、気持ちが混乱して彼女に嫌がらせをしてしまったんだろうな…。そう思って聞くと、答えは逆だった。
「俺が振った。」
悠太が振ったの!?
「なんで!?好きじゃなかったの?」
「向こうが俺に気がないって知っちゃって…。それに周りから色々言われてたから。」
遠崎先輩が悠太に気がない、か…何があったか知りたいけど、今の状態で話を聞くのはやめておこう。
「辛かったんだね…。」
「俺の気持ち変えようと思ったけど、変えられなかった…。」
一途な悠太。俺はそんな彼に何かしてあげたいと思った。
「学校は少し休みたい…。」
「わかった。またゆっくりしてからでいいから学校来て。」
「……うん。」
傷心中に学校へ行って体調崩すのは避けたい。悠太は少しの間休むべきだ。
その間。俺は……遠崎佳奈のことを調べる。
調べて状況を何か良い方向へ変えるのだ。
俺は力強く拳を握った。
「ぅぅん…。」
小さな唸り声がした後、悠太は起き上がった。
「ぁ、悪いな。ここまで遠かっただろ。」
明らかにいつもの元気がない。
「全然遠くなかったよ。落ち着く町だな。初めて来たけどすごく気に入った。」
「そういってくれてうれしいな。」
すぐに今日の球技大会の話を出すことはできなくて、俺は彼の部屋を見渡した。
ベッドの向かいにテレビがあり、そしてその横には机とコンピューターがあった。ベットの横にある棚にはいくつかの参考書と楽譜が大量に入っていた。
「すごい数の楽譜だな。」
「うん。もともとピアノ教室行ってて、ずっと課題で楽譜渡されていたんだ。あれほとんど課題。一部は個人で購入したものだけど。」
ずっとおいてるってことは好きなんだなピアノ。いつか聞いてみたい。そして自分が習っているヴァイオリンに合わせたいな。
楽譜の中で一番奥にあったものが目に留まった。3年前くらいに流行った恋愛の曲『君に弾きたい』。俺は手にとった。
「この曲懐かしいな。良い曲だよな~」
「まって、それは!!」
その時。その楽譜の間から1枚の写真がひらりと出てきた。まるで、ずっと秘められていた宝石のように。
「だめ!!」
だが、遅かった。俺は見てしまった。その写真……悠太と遠崎先輩が笑顔で横に並び頭をくっつけていた。そして手を繋いでいた。
もしかして、もしかして…2人って…。
「付き合ってたの!!!???」
「……うん。俺が中1の頃だけどな…。」
「そっか…そっか…」
ずっと違和感があった。なんでそこまで先輩のこと気にしているのだろうと。やっと理解した。
「もともと仲良かったってこの前言ってたじゃん。仲悪くなった原因って向こうから振られたの?」
振られて、気持ちが混乱して彼女に嫌がらせをしてしまったんだろうな…。そう思って聞くと、答えは逆だった。
「俺が振った。」
悠太が振ったの!?
「なんで!?好きじゃなかったの?」
「向こうが俺に気がないって知っちゃって…。それに周りから色々言われてたから。」
遠崎先輩が悠太に気がない、か…何があったか知りたいけど、今の状態で話を聞くのはやめておこう。
「辛かったんだね…。」
「俺の気持ち変えようと思ったけど、変えられなかった…。」
一途な悠太。俺はそんな彼に何かしてあげたいと思った。
「学校は少し休みたい…。」
「わかった。またゆっくりしてからでいいから学校来て。」
「……うん。」
傷心中に学校へ行って体調崩すのは避けたい。悠太は少しの間休むべきだ。
その間。俺は……遠崎佳奈のことを調べる。
調べて状況を何か良い方向へ変えるのだ。
俺は力強く拳を握った。
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